【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第128話 とんだ降臨の儀式

「レイ様~。プリミラ様~」

 

 プリミラの畑やモンスターたちの働きを見学しつつ、今後追加できそうな子がいないかを考えていると、イピレティスがやってきた。

 側近とは言うが、いつもともに行動しているわけではなく、彼女は彼女でなにか動いているらしい。

 とはいえ、フィオナ様と俺を優先しているため、こうして途中で合流することは珍しくなかった。

 

「イピレティスか。どうした?」

 

「ピルカヤ様が、お二人を呼んでいますよ~」

 

「ピルカヤが?」

 

 珍しい。ピルカヤなのだから、用件があるなら直接話しかけそうなものなんだけど。

 わざわざイピレティスに呼びにこさせた理由が思い当たらない。

 

「なんでも、魔王様と四天王様方とレイ様で相談したいとか」

 

「そういうことなら、行くか」

 

「ええ、それでは後のことは頼みましたよ」

 

 プリミラがゴーレムや妖精に言いつけると、彼らはしっかりと肯定の意を示して畑で作業を再開した。

 よく働くな。プリミラにもなついてくれているし、いいことだ。

 

    ◇

 

「魔王様。お二人をお連れしました」

 

「ご苦労さま。休んでもらってかまいませんよ。イピレティス」

 

「は~い。失礼しま~す」

 

 どうやら俺たちが最後だったようで、玉座の間にはすでにフィオナ様と他の四天王たちが揃っていた。

 部屋から去るイピレティスとすれ違うように、俺とプリミラもみんなと合流する。

 

「それではピルカヤ。私たちに判断を仰ぎたいということについて、話してくれますか?」

 

「はい。まあ、話すよりも見てもらった方が早いかなあ?」

 

 そう言いながら視界が共有される。

 これは、ダークエルフのダンジョンだな。

 最近では毎日のようにダークエルフの女王と、その部下らしき者たちが訪れるが……。

 ああ、やっぱり今日もいるじゃないか。

 

 あれ……? なんか、いつもと様子が違くないか?

 周囲を調査しているのは同じだが、モンスターたちを倒すでもなく、アイテムを探すでもない。

 ましてや、探索してダンジョンを攻略するような様子が見られない。

 あれはなんというか……。

 

「なんだあれ。今さらダンジョンに興味でも出たか?」

 

「なんだか、より調査に重きを置いているみたいですね」

 

「ダンジョン攻略というよりは、ダンジョンの研究者のようだな」

 

 本格的な調査を開始するには、いささか今更感も否めないが、攻略が困難と判断して切り口を変えたのか?

 だとしたら、やはりエルフ種は獣人のように単純ではなさそうだし、警戒度を上げたほうがいいかもしれないな。

 

「調査されたところで、俺もどうなってるかよくわからないけどな」

 

 だって、認めたくないが女神から与えられた力だし。

 その仕組みがどうなっているかとか、作ったダンジョンからなにがわかるのか、俺には知る由もない。

 

「ところで、あのダークエルフの女王は、さっきから何をしているんですか? 私にはそちらのほうが気になるのですが」

 

 誰もがあえて触れなかったことに、フィオナ様が口火を開いた。

 さすがは魔王様だ。きちんと問題に取り組んでくれる。

 

 さて、ダークエルフの女王だが、なんだか怪しげな儀式をしているようにしか見えない。

 魔法陣みたいなものがあり、キャンプファイヤーでもするのかという火を焚いて、周囲にはよくわからない供物? 生贄?

 

「悪魔でも召喚しようっていうのか?」

 

「あんなもので召喚されません」

 

 そうだった。俺の隣の小さな悪魔が心外だとばかりに口を挟む。

 悪魔もこの世界には普通に存在するし、あんなところから出てくることもないだろう。

 

「ほんと、なにしてんだかね」

 

「あれは、祈りですね。彼女らもまた、ガシャに祈りをささげる者たちだったのでしょう」

 

「なるほど……さすがは魔王様。聡明であらせられる……」

 

「リピアネム。冗談ですよ?」

 

 わかりにくい冗談が、リピアネムに通じると思わないことだ。

 フィオナ様の場合、ふだんからガシャのためによくわからない宗教を作るのだから、なおさらわかりにくい。

 

「なにをしているかは、すぐわかりますよ……」

 

 ピルカヤがやけに疲れた様子でそう言った。

 つまり、ピルカヤはダークエルフたちの行動の意味を理解できているらしい。

 もしかして、精霊やエルフのような、古い種族にだけ伝わっている文化なのか?

 

『精霊様。魔王軍四天王ピルカヤ様。我々の前に姿をお見せください』

 

「ピルカヤ」

 

「うん」

 

「呼ばれてるぞ」

 

「行きたくないんだけど!?」

 

 だめか。

 なんか面倒くさそうなやつらだから、ピルカヤに対処してもらおうと思ったのだが……。

 ピルカヤ自身もあれの相手をしたくないのだろう。

 だから、フィオナ様や他の四天王たちに判断を仰いだというわけか。

 

「ぶふっ……さ、さすがは……古の精霊様……信仰されるほどの偉い方だったみたいだな」

 

「あんな信仰いらないんだけど~!」

 

「まあまあ、もらうだけなら損はないぞ。ピルカヤ様」

 

「もう、誰だよ~! 精霊のことを変な風に勘違いしたやつらは!」

 

 まあ、あんなので出てくると思われたら誰だって嫌だよな。

 

『だめか……』

 

「だろうね!」

 

『女王様! ここにも、焦げ跡が!』

 

『どれどれ……ふむ、やはり単なる自然の火ではないな。濃密な魔力が混ざっている。それも見たことないような特別な火の痕跡だ』

 

『ということは、やはりピルカヤ様は、このダンジョンに来訪されたことがあるということでしょうか?』

 

 おい……。

 やばい連中だと思っていたが、その意味が変わってきたぞ。

 こいつら、おかしなやつらだと思っていたが、ピルカヤのことを探り当てたというのか?

 

「つまりこういうこと。なぜかボクに執着して、接触しようとしている。燃やそうとも思ったけど、魔王様とダンジョンの管理者であるレイの許可は必要かなと思って」

 

「どうします? フィオナ様」

 

「ピルカヤの知り合いではないんですよね?」

 

「まさか! そもそも、ボクはダークエルフ自体と関わったこともありませんよ」

 

 ピルカヤの回答を聞いて、フィオナ様は考え込んでしまった。

 わりと真剣だ。ガシャを引く時より真剣な気がする。

 

「ピルカヤの痕跡を探し、ピルカヤと接触しようとしている。それもピルカヤ様と呼ぶほどには、自分たちが下だとわきまえている」

 

 たしかに、そこが腑に落ちない。

 四天王の生き残りを探し出して倒そうというよりは、あちらの立場のほうが弱いというような態度だ。

 時任(ときとう)たちのような、こちらに降伏した者たちに似ている。

 

「罠かもしれませんよ?」

 

 当然ながら、プリミラの言う可能性もありえる。

 

「ですが、ピルカヤの生存をどこで知ったか。どこまでを知っているか。誰が知っているのか。そのくらいは、確認しておきたいですね」

 

 野放しにしておくのは危険だもんな。

 口を封じるとしたって、ダンジョンにやってきた連中だけでは足りないかもしれない。

 最悪の場合、ディキティスに頼んで、モンスターを引き連れて殲滅する必要さえある。

 魔王軍の幹部が生きているほうがばれてしまうが、四天王の生存がばれるよりはずっとましだ。

 

「じゃあ、ちょっと行ってきましょうか? あれと話すの嫌ですけどねえ……」

 

 悩んでいる俺たちとは裏腹に、ピルカヤは散歩に行くような気軽さで意見を述べた。

 やばい連中かもしれないんだから、もう少し警戒を……。

 

「勇者のときみたいに、雑魚な分体で会ってきますね~」

 

「念のため、これを」

 

「不死鳥の羽……いらなくないですか? 分体が蘇生したほうが困りますし」

 

「うう……気をつけてくださいね」

 

「は~い」

 

 心配するフィオナ様に軽い返事を返すと、ピルカヤは分体を作り、ダークエルフたちの怪しげな炎に送り込んだ。

 

    ◇

 

「やはり……ここにはいないのか? あくまでも、廃棄されてしまったダンジョンか……」

 

「しかし女王様。ピルカヤ様の炎の痕跡らしきものは、いくつか見つかっています」

 

「常識で考えていい相手ではなかったのかもしれないよ? なんせ四天王だ。遠い昔の炎の残滓が最近のものに感じたとしても、おかしくはないからね」

 

「これほどの魔力が、遠い昔のものだった……であれば、やはりかなりの力が」

 

 そのかなりの力のさらに上。魔王様にお会いするために、ピルカヤ様にお会いしたかったが、無理か……。

 散々探索してわかった。このダンジョンというもののすさまじさを。

 理由まではわからないが、なるべく侵入者を無事に帰そうと、モンスターたちに加減するように命令までできる。

 罠もそこかしこに設置されており、これほどに手の込んだダンジョンを作れる。

 そして、それを放棄できるほどの方だ。

 

 このダンジョンの作成者に従属できれば……。

 今後ダークエルフたちの立場が悪くなることはないと思っていたのだが……。

 そう簡単な話ではなかったようだ。

 やはり、私たちにはなにもない。願ったところでなにかが叶った試しなど一度もない。

 

「はあ……なんか用?」

 

 …………だから、これが一度目であり、最後かもしれない。

 この願いの成就を、なんとしてでも実りあるものにしなければならない……。

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