【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第152話 這い寄る産地直送

「くそっ、また出やがった!」

 

 仲間の一人が恨めしそうに叫ぶも、彼も周囲の者たちもすでに撤退を準備している。

 というか、すでに全力で迷路を逆走している。

 一向に進まない……。ソウルイーターのやつ、まるで自分が迷路に住んでいることがばれたので開き直ったかのようだ。

 俺たちが侵入するたびに、こちらを襲撃するようになってしまった。

 これでは、迷路の調査どころではない。

 

「まずいな……。このままでは、ソウルイーター相手にまるで調査が進展しない」

 

「せっかくアンデッドたちの脅威は消えたというのに、この状態が続くのはよくないわね」

 

「別の道を探すか? 拠点を設置しようとした分かれ道があるんだろ?」

 

「行き止まりなうえに、落石が頻繁に発生するから危険みたい……」

 

 手詰まりになりそうだ。

 俺たちは、あの迷路とソウルイーターという凶悪な組み合わせを潜り抜けない限り、先に進めないということになる。

 ならば仕方がない。腹をくくってあれが有利となる狭い通路で戦うしかないか……。

 

    ◇

 

「あの……聖光の刃の方々が言っていたソウルイーターの対策は、どうなっているのでしょうか?」

 

 飼い主たちに尋ねてみる。

 この前からダンジョンの調査も進展しており、機嫌よく答えてくれるだろうという確証があったためだ。

 

「あら、またその話なの? ジノ」

 

「よっぽどダンジョンが好きなのかしら? あんな汚らわしいだけの場所。魔力がなかったら、入りたくもないんだけどね」

 

「安心なさい。翠光の弓を派遣したわ。ソウルイーターくらいならどうにでもなるでしょう」

 

「翠光の弓……」

 

 たしかに、それならば俺の飼い主たちの余裕の態度もうなずける。

 翠光の弓は、聖光の刃に匹敵する強者の集団。

 遠距離魔法特化の特殊部隊であり、遠距離からの一方的な攻撃は恐ろしく優秀だ。

 

 ゲームで敵対したときに、近づくこともできずに何度敗北したかわからない。

 そのぶん、味方になるルートでは非常に頼りになる集団でもある。

 

 彼らならば、ソウルイーター相手でも集中砲火で簡単に沈めることができるだろう。

 指揮官のモレーノをはじめとした固定砲台のスペシャリストたちは、その魔法の威力だけであれば聖光の刃をも上回るのだから。

 

    ◇

 

「いいか、時間との勝負だ。こう狭いと今までのように、全員で攻撃とはいかない。順次入れ替わりながら魔法を浴びせていく」

 

「大丈夫ですよ。指揮官。俺たちの連携なら、一斉攻撃と変わらないほどに絶え間なく攻撃し続けられますって」

 

 頼もしい言葉を背に受けながら、まずは俺からだ。

 さあ、かかってこい醜い化け物。いい加減、お前をかわしながら迷路を進むのは、嫌気がさしていたんだ。

 

 こちらの位置を察知したらしいモンスターに備えて、各々が攻撃魔法を構築する。

 先頭に立つ俺はそいつの接近を感じ取り、そのまま一直線に炎の大弓で矢を放ち、顔面を攻撃した。

 

「次、行け!」

 

 そう指示をしながら、すぐに後続と入れ替わる。

 さすがに一斉攻撃とはいえないが、間髪入れずにモンスターに向かって攻撃を続ける。

 モンスターの突進力は、こちらの攻撃によってわずかに鈍る。

 その隙に、さらに後続へと変わっての攻撃を続ける。

 

 いける……。

 波状攻撃では、先に敵がこちらを食い破るかと思ったが、存外俺たちの連携も捨てたものではないようだ。

 再び魔力を練り上げ、魔法の構築が完了したため、次は俺の番だ。

 敵はまだまだこちらの攻撃に怯んで近づけずにいる。

 このまま、押し切ってやる……。

 

「な……なにが……」

 

 魔法で作り出した弓を構え、炎の矢を放とうとしたその時、体が言うことを聞かなくなった。

 指一本動かすことができず、番えた矢は手から離れることがない。

 

「指揮官! ソウルイーターが…………」

 

 こちらの失態に悲鳴のような声を上げる仲間だったが、叫び声は途中で消えてしまった。

 ソウルイーターに襲われたからではない。あいつはこうして目の前に大口を開けて迫っている。

 おそらく……俺と同じなのだろう。

 

 いつからだ……。

 なんという失態を……。

 仲間たちも、俺もすでに体中に麻痺毒が回っていたことで、自由を奪われていたのか……。

 

 視界の隅に、俺たちをこんな目にあわせたであろう忌々しい蛇の群れが見えた。

 ありえない…………。ソウルイーターにかまけていたとはいえ、周囲の索敵だって行っていた。

 いくら脆弱なモンスターとはいえ、これだけの群れの接近に気がつかないはずがない。

 まして……全滅するほどの麻痺毒を許すほどの距離なんて……。

 

 思考はそこで停止した。

 まもなくして、醜悪な化け物は俺たちを一人残らず呑み込むだろう。

 

    ◇

 

「ああ、やっぱり索敵にも自信があるタイプだったのか。ピルカヤが言った通りだったな」

 

「手段は全然違うけど、ボクもそういうの得意だからね~。クララが言うように、エルフってことだから魔力による感知だったのかな?」

 

 迷路に配置したソウルイーターが、侵入者をすべて呑み込み終わるのを見てから、こちらも一息ついた。

 

「さいっこうです!」

 

「あ~、どうも……」

 

 興奮気味に至近距離まで顔を寄せるイピレティスを引き離す。

 なんか息荒いし、本当に殺意が高すぎやしないか。この子。

 

「いや、実際見事な手際だった。シャドウスネークが感知されないように、敵陣ど真ん中に召喚までできるとは」

 

「今回はたまたま運よく良い位置に出てきただけで、かなりギャンブル性高いけどな」

 

「ギャンブルですって?」

 

 なぜそこでフィオナ様が反応するんだろう……。

 あなたとうとう宝箱ガシャ以外にも興味がお有りで?

 一度ロペスにポーカー勝負で惨敗したら、目を覚ましてくれるだろうか。

 

「まあ、今回はたまたま最高の結果だったが、あれを作戦に組み込むのはやめたほうがいいな。レイくんうちの宿に罠しかけたことあったし」

 

「僕のところにもしかけてたね。ドワーフなんて岩の布団で寝ろって意味かと思ったよ」

 

 ここぞとばかりにリグマとカーマルが念を押してくる……。

 アナンタ。俺だってドワーフがそんなもので寝るなんて思っていないから、まじかこいつみたいな顔で見ないでくれ。

 

「今回はどこに作成しても、そのまま迷路に向かってもらう予定だったからいいんだよ」

 

「そりゃそうだな。まあ、レイくんの日ごろの行いがいいから運がよかったんだろ」

 

「……日ごろの行い」

 

「たぶん、働けってことだと思います」

 

 リグマの発言に心当たりがあったのか、フィオナ様が己を省みる。

 間髪入れずにプリミラが正論を突き付けるが、フィオナ様は明後日の方向を見てとぼけてしまった。

 もしかして、本当にそういうところがガシャ結果に表れているのだろうか……。

 

「しかし、これでエルフの強者たちも全滅か。たかだか麻痺してソウルイーターに呑みこまれただけだというのに、あきらめの早いことだ」

 

「いやいや、そこから挽回できるのネムちゃんだけだと思うな~」

 

「なに? テラペイアもなんとかなるだろう」

 

「……まあ、解毒さえすればな。ソウルイーターであれば、内部から切り刻むほうが簡単ではある」

 

 テラペイアももしかして強くて戦闘が好きな魔族なのか……?

 それにしても解毒と内部からの攻撃か……。

 ソウルイーターの弱点を補わせるために、小回りがきくようにと育成中なのだが、そのあたりもいずれは改善が必要か。

 いや、解毒はシャドウスネークのほうの課題だったな。

 

「まあ、とにかくやばそうなエルフ集団が増える前に全滅できてよかったよ。あとは、前にきた聖属性集団だけだな」

 

 そう、今回の集団を撃破したことで、そちらが再び現れる可能性だってある。

 エピクレシの研究が間に合えばいいのだが……最悪の場合は、こちらの対処法も考えておくか。

 

 やっぱり迷路と毒? いや、聖属性って回復得意そうだし、テラペイアコースでソウルイーターがやられるか?

 いっそのこと、ラッシュガーディアンを複数体作成して、罠まで強制的に移動させるとか……。

 う~ん……なんだか、どれも対処されそうだな。

 今回の連中みたいに、案外あっけない相手だったら助かるのだけど……。

 

    ◆

 

「ふざけんな! ふざけんな! ふざけんな!」

 

 ゲーム画面は恐ろしいほどの多彩なエフェクトと音で、やたら派手で見栄えだけはよかった。

 もっとも、それが敵の遠距離からの魔法攻撃なのだから、たまったものではない。

 

「なにこれ~……」

 

 先ほどの色とりどりの画面とはうってかわり、暗い画面とゲームオーバーの文字。

 コントローラーを持つ手が力なくだらりと落ち、青年は集中力が途切れてしまった。

 

「鬼のような遠距離攻撃のオンパレードだな」

 

「オーガのほうがましだっつーの! なんだこのエルフども! 一生嫌ってやる!」

 

 そんな発言をした数週間後。

 画面が再び派手なエフェクトにまみれる。

 

「よっしゃあ、いけ~!」

 

 しかし、主人公を操作している青年に、今度は悲壮感は一切ない。

 以前と違い、操作キャラの目の前からではなく、背後から魔法がとびかっているのだ。

 そして操作キャラの横をすり抜けて、数々の魔法が敵キャラを攻撃していく。

 

「最強すぎる! 翠光の弓万歳!」

 

「一生嫌っている翠光の弓の援護だぞ」

 

「これ、俺がいなくても勝てるだろ!」

 

「手のひらの回転すげえな」

 

 青年の言葉通り、操作キャラが死なないように立ち回るだけでよかった。

 そうやってゲームオーバーを避けるだけで、翠光の弓による遠距離攻撃のサポートはついにはボスまで撃破する。

 

「俺、もうエルフの国に仕えるわ」

 

「人間裏切るなよ。リックがエルフの勇者になったら、パワーバランスめちゃくちゃになるぞ」

 

 当然だが、そんなルートまでは用意されておらず、この後青年が操作するリックは変わらず人間の国の勇者として活躍を続けるのだった。

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