【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第177話 出禁にしたいリピーター

 リックたちからのせっかくの厚意だし、ダークエルフの村に向かうことにした。

 彼らの言うように休んでもいいけれど、どちらかというとジノのような協力者に出会えないかという思いのほうが大きかった。

 そうして、特にトラブルもなくたどり着いた。たどり着いたのはいいのだけど……。

 

「ここが……」

 

 ダークエルフの村?

 あってるよね。ゲームと同じ場所だったし、どことなく見覚えがある。

 だけど、ここまで人の気配がないような場所なのか?

 

「すみませ~ん」

 

 家の中に声をかけてみるも反応はない。

 どの家も同じで、そもそも人の気配が……。

 ああ、そうか鑑定で見ればよかった。

 なんだか村の気配が異常で、ついついそれを忘れてしまっていた。

 

「……いない。どこにも、ダークエルフがいない」

 

 やはり、無人だ。

 それを確信したときに、一気にこの村全体が不気味なものに感じる。

 ゲームでは……どうだった? たしか、迫害されて……もはや滅ぶ寸前だったはず……。

 

「滅んだ……?」

 

 建物はすべて壊れているから、そう考えるべきなのかもしれない。

 だけど、鑑定した限りでは、壊れてからそこまでの時間は経過していない。

 ここでなにか起こったというよりは、住民たちが消えてから家が壊れているような気がする。

 

 だめだ、なんだか恐ろしい。

 たしか、ダンジョンのほうに宿があるって話だったし、そちらに行こう。

 今は無性に誰かに会いたい。

 

    ◇

 

「よかった……」

 

 ダンジョンの入り口を目指すと、徐々に同じような目的の人たちが見えた。

 彼らについていくように歩を進めると、そこにはよく見るダンジョンの入り口があり、中にはたしかに宿や店があるようだ。

 

「とりあえず、部屋を先にとらないと」

 

 村の不気味さとは打って変わって、賑わいを見せる宿に安堵を覚える。

 周囲が岩壁の洞窟内ってことを差し引いても、あの村よりずっとまともな場所だ。

 

「すみませ……ん」

 

 宿に入ると、そこには何人かの人間、獣人、ハーフリング、わずかにドワーフもいる。

 それはまあいい。盛況なのは、外からもなんとなくわかっていたから。

 だけど、その客の列を受け付けている者たちを見て、驚いてしまった。

 

「ダークエルフ……」

 

 なんだ。そういうことか。

 あの村が無人だったのは、単にダークエルフたちが、こちらの手伝いに駆り出されていたからであり、なんの事件性もなかった。

 それにしても、従業員のほとんどはダークエルフみたいだな……。

 もしかして、彼ら彼女らがこちらで商売を始めたのだろうか?

 

「おい、列の最後尾はあっちだ」

 

「あ、すみません」

 

 獣人の男性にそう言われ、大人しく列に並ぶ。

 ドワーフたちのときもそうだったけど、ここのダンジョンでもわりと行儀よく並ぶんだねと感心してしまった。

 

 せっかくなので、並んでいる間に有力なNPCか、転生者でもいないかと探してみるか。

 ……ダークエルフたちは、そこまでのステータスじゃない。

 まあ、そんなすごいステータスなら、ここで宿の受付なんかしていないか。

 

「転生者は……残念ながら見当たらない。せっかく、ジノと話しているうちに転生者の見分け方を見つけたのに。そううまくはいかないか……」

 

「お待たせしました。次の方どうぞ」

 

 ダークエルフは、丁寧に応対してくれた。

 まるで、本当に宿やホテルの受付を相手にしているみたいだ。

 てっきり、無理やり働かされていて、たどたどしい対応になると思っていたんだけど……。

 

 それに、ゲームのときと全然違う。

 ゲーム画面からすら伝わってきそうな、あの死んだような目もしていなければ、悲壮感なんてまったく感じられない。

 さすがに、あんな終わってしまった状況じゃ不憫だからと、追加のイベントでもあったのかな。

 ダークエルフたちを救うようなイベントが……もしかして、転生者がそのイベントを発生させた?

 

「あの……」

 

「はい。宿泊でしょうか? それとも、温泉のみのご利用でしょうか?」

 

 あ、そういえば温泉もあるんだったっけ。

 アイテム入れたら、なんか変化するのかな……。

 いや、もしも変化するとしても、勝手に温泉を変化させたら迷惑すぎる。

 ここは、普通に疲れを取りつつ、何泊かして仲間を探してみるか。

 

 とりあえずは、このダークエルフたちのことを確認しよう。

 

「ずいぶんと立派な宿ですね。ダークエルフだけで、経営しているんですか?」

 

「いいえ、私たちにも慈悲をくださる優しい方々がいまして、その方たちにこうして仕事をいただいているのです」

 

「そうですか……ぜひお会いしてみたいのですが」

 

「申し訳ございません。しばらくは、ここを私たちに任せて、離れております」

 

「わかりました……では、もしも戻られたら、ぜひ話をさせてください」

 

 どうやら、複数の者たちがダークエルフを支援しているようだな。

 ということは、複数の転生者グループが、こうしてイベントを進めているのかもしれない。

 ……もしも、その人たちと合流できるのなら、仲間になれるのなら、ここにきた意味は非常に大きなものになりそうだ。

 

    ◇

 

国松(くにまつ)……どこにでも現れるな」

 

 早期に発見できたのは、ありがたい。

 勇者もいない。ジノもいない。捕獲か討伐のチャンスだ。

 ……と言いたいところだけど、慎重な男なのは相変わらずらしく、ダンジョンの浅い場所でしか活動していない。

 これでは、モンスターたちをこっそりと作成しても、他の者に見られて噂がたちまち広まるだろう。

 まあ、奥までこないのなら、変に探りを入れられることもないと割り切るか。

 

「ね? やっぱり、ボクがいつでも働いていたほうがいいでしょ?」

 

 ピルカヤが胸を張って、自分の活躍を俺にアピールしてきた。

 まあ、実際に今回はピルカヤのおかげで助かった。

 

「危なかったかもしれねえな……ジノの知り合いなんだろ? 俺がこんなところで働いてるなんて知られたら、怪しまれていたかもしれねえ」

 

 ロペスがそう言うってことは、きっとその予感は正しいんだろうな。

 それに、ロペスの後ろで暇そうにしているウルラガも同じだ。

 なんせ、ステータスはリグマほどではないけれど、かなり高い。

 万が一、二人が鑑定でもされたら、一気に不信感を抱かれていただろう。

 そう考えると、カーマルと鉢合わせになったときって、だいぶ危なかったな。

 

「だけど、それとこれとは話が別だと思うぞ」

 

「パワーアップしたボクだからこそ、気づかれることなく監視できたんだけど~!」

 

「それはすごいけど……だからこそ、休めるときに休んでもらわないと、ピルカヤがいないと魔王軍が大変だからな」

 

「……しょうがないな~。レイがそこまで、ボクを頼るっていうのなら、たまには休んであげるよ」

 

 なんだこの会話。

 休ませたい俺と、休みたくないピルカヤって……普通逆だろ。

 ただ、少しは譲歩してくれる気があるようなので、まだなんとかなりそうだ。

 

「レイ」

 

「どうした? テラペイア」

 

「今後も、ピルカヤを定期的に説得してくれ」

 

「あ~……テラペイアも大変だなあ」

 

「テラペイアもすごいけど、今は、ボクのほうが活躍してない?」

 

「ああ、ピルカヤはすごいよ。本当に」

 

「うん。ボクすごいんだ」

 

 そんなに念を押さなくたって、ピルカヤのすごさはここにいる誰もが理解しているだろうに。

 これだけすごいのに、手柄や評価にこだわるのは、実は自信がないことへの裏返しだったりするのだろうか。

 

「ピルカヤは本当に頼りになりますね」

 

「へへへ。魔王様とレイにそこまで言われるなんて、ボクってすごいですよね~」

 

「ええ、これからも頼りにしていますよ」

 

 よかった。魔王軍トップの誉め言葉なら、ピルカヤも満足するだろう。

 ついでに、フィオナ様に頭を撫でられて、えらく満足気だ。

 

「では」

 

 ん?

 ピルカヤの頭を撫で終えたフィオナ様が、俺に頭を差し出してくる。

 ……撫でろと?

 

「え、なんでですか?」

 

「いいじゃないですか~。四天王の仕事をしたピルカヤを私が褒めたのなら、魔王の仕事をした私はレイが褒めるべきです!」

 

「それだと、俺が魔王の上の魔族みたいに……」

 

 上目遣いに俺のことを見ないでください……。

 というか、照れくさそうにするくらいなら、言わなければいいじゃないですか。

 ああ、もう!

 

「普通、他人に髪触らせるのって嫌がりそうなもんですけどねえ……」

 

「レイならかまいません」

 

 今はいいけど、そのうち他の魔族がかまいそうなんだよなあ……。

 それまでには、フィオナ様を甘やかす癖を改めねば……。

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