【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第204話 歩きだす新米勇者

「最近忙しそうだね」

 

「おお、タケミか。どうにも思いついちまったことがあってな。やってみたら悪くない結果で、ボスからも好評だ。忙しいが悪くはないといったところだな」

 

「そうか……さすがはロペスだね」

 

 本当にそう思う。

 転生者でありながら、彼はこの世界で十分に活躍している。

 ここ地底魔界にもすぐに馴染んで、魔王様やレイさんにもこうして様々なことを任されているからね。

 

「どうした? 悩みがあるなら聞くぜ?」

 

「ありがたいけど、う~ん……」

 

 なんとなく、分野が違うなと思う。

 

「言いづらいか?」

 

「いや、君のようにここで活躍できないかと思って」

 

 君のようにとは言ったものの、正直無理だろうなということはわかっている。

 彼の活躍は、彼自身の有能さによるもので、決して女神からの力やこの世界の知識を活用したものではない。

 おそらく、僕たちと違って元の世界でも、有能な人物だったんだろうと想像はつく。

 

「なんならカジノで働いてみるか?」

 

「そのカジノにしたって、そつなく運営できているのがすごいと思うよ」

 

「俺はその手の役割が得意だからなあ……タケミだって、カールのじいさんに弟子入りしたり、マギレマの姐御のレストランで十分戦力になってるだろ」

 

「そうかもしれないんだけど……」

 

 やっぱり、ロペスのように華々しく活躍したいというのは贅沢な悩みだ。

 彼には能力があり、こちらは最近ようやくこの世界に慣れたばかり、だけど年齢もそう変わらない彼が活躍しているのを見ると、なんだか複雑な感情になってしまう。

 素直に尊敬する。だけど、同時にうらやましさと、自分はこれでいいのかという思いも湧いてくる。

 

 彼はいいやつだ。なぜか魔王様とレイさんにだけは、ガチガチになるけれど、基本的にどんな相手ともうまく付き合える人だ。

 だから、僕がこのままでもそれは変わらないだろう。

 だけど……もっと対等な関係になりたいとも思ってしまう。

 

「そうだなあ……例の勇者の力とか使ってみるとかはどうだい?」

 

「なるほど……たしかに、それなら僕も役に立てるかもしれない」

 

「ああ、現にあの温泉だって、タケミたちがいなければできなかっただろうしな」

 

 温泉か……。ただ入っただけだから、僕たちの手柄という実感はないんだよな……。

 

「ありがとう。ちょっと、そっちの方面で考えてみるよ」

 

「ああ、いつでも相談にのるぜブラザー」

 

 そう言って、ロペスは嫌そうな顔一つせずに去っていった。

 きっとカジノに向かって、今日も忙しく働くのだろう。だというのに、こんな相談にも乗ってくれていいやつだ。

 僕もしっかりしないとな。

 

 勇者としての力……。つまり、戦える力を身につけないと。

 

    ◇

 

「お帰り、遅かったわね」

 

「ああ、ちょっと途中でロペスと話していてね」

 

 今日はエピクレシさんの研究所というか私室で、僕たちの力の検証を行う日だ。

 部屋に到着すると、先に研究所に向かってもらっていた友香(ともか)が出迎えてくれた。

 (あらた)のほうは、なにやら器具を取り付けられて聖女の力を研究中らしい。

 

「ロペスのやつ、最近忙しそうよね」

 

「ああ、それだけ活躍しているってことでもあるね」

 

「まあ、あれは私たちには真似できないし、こっちはこっちでがんばりましょ」

 

「そうだね。そこで考えたんだけど、僕は勇者としての力も鍛えていこうと思う」

 

「おや、私が教えている基礎だけでなく、本格的にということですか?」

 

 こちらの会話も聞こえていたのか、僕たちの会話に割り込むようにエピクレシさんが疑問を口にした。

 本人の前で言うのも悪いかなと一瞬逡巡するも、彼女自身が前もって言っていたことでもある。

 

 エピクレシさんからは、魔力や属性を引き出す方法を教わってはいるものの、その分野の専門ではないのであくまでもさわりだけらしい。

 であれば、専門の人から教われば、もっと魔王軍の力になれるんじゃないだろうかと思ったのだ。

 

「そうですね……レイさんに相談しようかとも考えています」

 

「う~ん……たしかに、私では教えられそうにありませんからね。そもそも、私はひ弱いので、アンデッド任せの戦いしかできませんし」

 

 ……それは本当かな?

 なんか、エピクレシさんって単独でも強そうなんだけど。

 彼女だけでなく、料理人のマギレマさんや医者のテラペイアさんもそうだ。

 魔族って、もしかすると戦闘に長けた種族なのかもしれない。

 

 そこまで考えて、ふとレイさんのことを思い出す。

 あの人、身体能力とかだけならそこまで高くなさそうだし、魔族といっても全員が武闘派ってわけじゃないのかもしれない。

 

『ダスカロスがいれば、なんでも教えてくれそうなんだけどね~』

 

「げぇっ! やめましょうよ。口うるさいのは、テラペイアだけで十分です」

 

『レイに伝えておくね~!』

 

「やめましょうって! あ~……ピルカヤ様、もういない」

 

 突然声だけを発したピルカヤさんが、これまた突然いなくなってしまった。

 どうやら、レイさんに今の話を伝えてくれるようだ。

 ダスカロス……さん? そんな名前は知らないし、きっとまだ復帰していない魔王軍なんだろうな。

 それにしても、エピクレシさんの様子を見るに、その方はテラペイアさんみたいな真面目な方っぽいな。

 

「あ! いいことを思いつきましたよ!」

 

 エピクレシさんの大きな声が、研究室内に響き渡る。

 この人、たまに声のボリューム壊れるよね……。

 

「ロマーナ! ロマーナ!」

 

 驚いている僕らを気にもせず、エピクレシさんが名前を呼ぶ。

 ロマーナさん……たしか、エルフの侵入者で、エピクレシさんが殺した後に仲間にしたという人だったか。

 殺しあうほどの敵だったのに、倒した後に仲間にする方も、仲間になる方も、ずいぶんと割り切っているなと思う。

 このへんは、ここがゲームの世界であり、僕たちが考えるよりも、死が軽いのかもしれない。

 勇者とか生き返るみたいだし、さっき名前があがったダスカロスさんとやらも、そのうち蘇生するだろうからね。

 

「は、御用でしょうか」

 

 ロマーナさんは、洗練された凛とした姿勢でエピクレシさんの呼びかけに応じる。

 かっこいい女性だ。雰囲気としては、リピアネムさんに似ている気がする。

 エルフだからか、姿も美しいが、欠損した右腕に取り付けられた鎖が目を引く。

 

「あなた、聖属性得意ですよね?」

 

「ええ、私の得意分野です」

 

「じゃあ、この子たちに教えてあげてください。勇者と聖女と賢者です。生徒としてはなかなか面白いですよ」

 

「承知しました」

 

 エピクレシさんの言葉に絶対服従なのか、ロマーナさんはあっさりと話を承諾した。

 そうか、この人は聖属性が得意なエルフという話だった。

 たしかにそれなら、エピクレシさんよりも、僕たちを教えるのに適していそうだ。

 

風間(かざま)武巳(たけみ)です。よろしくお願いします」

 

「ロマーナだ。よろしく頼む」

 

 こうして、僕たちはロマーナさんという新たな指導者のもと、各々の素質を鍛えることにした。

 

    ◇

 

「ということみたいですよ~」

 

「なるほど、ダスカロスですか……」

 

 ピルカヤの報告を聞き、フィオナ様が思案を巡らせる。

 蘇生したい候補がなんやかんやで増えていくな。

 それ自体はかまわない。フィオナ様のことだから、きっと適切な人材を選んでくれるだろうし。

 それよりも問題は……。

 

「とは言っても、肝心の蘇生薬が予備のぶんしかありませんよ?」

 

「うっ……私がふがいないばかりに……」

 

 前回のガシャの失敗を意外とひきずっていたらしい。

 めんどくさいことになりそうだ。帰ろうかな。

 

「レイ! 私の仇をとってください」

 

 ……ほら、めんどくさいことになった。

 

「レイ!」

 

「はぁい……」

 

 まあ、レストランだけでなくカジノも盛況だからな……。

 ガシャに回す魔力は多少あるし、ここらでフィオナ様の鬱憤を晴らしておくとしよう。

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