【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「最近忙しそうだね」
「おお、タケミか。どうにも思いついちまったことがあってな。やってみたら悪くない結果で、ボスからも好評だ。忙しいが悪くはないといったところだな」
「そうか……さすがはロペスだね」
本当にそう思う。
転生者でありながら、彼はこの世界で十分に活躍している。
ここ地底魔界にもすぐに馴染んで、魔王様やレイさんにもこうして様々なことを任されているからね。
「どうした? 悩みがあるなら聞くぜ?」
「ありがたいけど、う~ん……」
なんとなく、分野が違うなと思う。
「言いづらいか?」
「いや、君のようにここで活躍できないかと思って」
君のようにとは言ったものの、正直無理だろうなということはわかっている。
彼の活躍は、彼自身の有能さによるもので、決して女神からの力やこの世界の知識を活用したものではない。
おそらく、僕たちと違って元の世界でも、有能な人物だったんだろうと想像はつく。
「なんならカジノで働いてみるか?」
「そのカジノにしたって、そつなく運営できているのがすごいと思うよ」
「俺はその手の役割が得意だからなあ……タケミだって、カールのじいさんに弟子入りしたり、マギレマの姐御のレストランで十分戦力になってるだろ」
「そうかもしれないんだけど……」
やっぱり、ロペスのように華々しく活躍したいというのは贅沢な悩みだ。
彼には能力があり、こちらは最近ようやくこの世界に慣れたばかり、だけど年齢もそう変わらない彼が活躍しているのを見ると、なんだか複雑な感情になってしまう。
素直に尊敬する。だけど、同時にうらやましさと、自分はこれでいいのかという思いも湧いてくる。
彼はいいやつだ。なぜか魔王様とレイさんにだけは、ガチガチになるけれど、基本的にどんな相手ともうまく付き合える人だ。
だから、僕がこのままでもそれは変わらないだろう。
だけど……もっと対等な関係になりたいとも思ってしまう。
「そうだなあ……例の勇者の力とか使ってみるとかはどうだい?」
「なるほど……たしかに、それなら僕も役に立てるかもしれない」
「ああ、現にあの温泉だって、タケミたちがいなければできなかっただろうしな」
温泉か……。ただ入っただけだから、僕たちの手柄という実感はないんだよな……。
「ありがとう。ちょっと、そっちの方面で考えてみるよ」
「ああ、いつでも相談にのるぜブラザー」
そう言って、ロペスは嫌そうな顔一つせずに去っていった。
きっとカジノに向かって、今日も忙しく働くのだろう。だというのに、こんな相談にも乗ってくれていいやつだ。
僕もしっかりしないとな。
勇者としての力……。つまり、戦える力を身につけないと。
◇
「お帰り、遅かったわね」
「ああ、ちょっと途中でロペスと話していてね」
今日はエピクレシさんの研究所というか私室で、僕たちの力の検証を行う日だ。
部屋に到着すると、先に研究所に向かってもらっていた
「ロペスのやつ、最近忙しそうよね」
「ああ、それだけ活躍しているってことでもあるね」
「まあ、あれは私たちには真似できないし、こっちはこっちでがんばりましょ」
「そうだね。そこで考えたんだけど、僕は勇者としての力も鍛えていこうと思う」
「おや、私が教えている基礎だけでなく、本格的にということですか?」
こちらの会話も聞こえていたのか、僕たちの会話に割り込むようにエピクレシさんが疑問を口にした。
本人の前で言うのも悪いかなと一瞬逡巡するも、彼女自身が前もって言っていたことでもある。
エピクレシさんからは、魔力や属性を引き出す方法を教わってはいるものの、その分野の専門ではないのであくまでもさわりだけらしい。
であれば、専門の人から教われば、もっと魔王軍の力になれるんじゃないだろうかと思ったのだ。
「そうですね……レイさんに相談しようかとも考えています」
「う~ん……たしかに、私では教えられそうにありませんからね。そもそも、私はひ弱いので、アンデッド任せの戦いしかできませんし」
……それは本当かな?
なんか、エピクレシさんって単独でも強そうなんだけど。
彼女だけでなく、料理人のマギレマさんや医者のテラペイアさんもそうだ。
魔族って、もしかすると戦闘に長けた種族なのかもしれない。
そこまで考えて、ふとレイさんのことを思い出す。
あの人、身体能力とかだけならそこまで高くなさそうだし、魔族といっても全員が武闘派ってわけじゃないのかもしれない。
『ダスカロスがいれば、なんでも教えてくれそうなんだけどね~』
「げぇっ! やめましょうよ。口うるさいのは、テラペイアだけで十分です」
『レイに伝えておくね~!』
「やめましょうって! あ~……ピルカヤ様、もういない」
突然声だけを発したピルカヤさんが、これまた突然いなくなってしまった。
どうやら、レイさんに今の話を伝えてくれるようだ。
ダスカロス……さん? そんな名前は知らないし、きっとまだ復帰していない魔王軍なんだろうな。
それにしても、エピクレシさんの様子を見るに、その方はテラペイアさんみたいな真面目な方っぽいな。
「あ! いいことを思いつきましたよ!」
エピクレシさんの大きな声が、研究室内に響き渡る。
この人、たまに声のボリューム壊れるよね……。
「ロマーナ! ロマーナ!」
驚いている僕らを気にもせず、エピクレシさんが名前を呼ぶ。
ロマーナさん……たしか、エルフの侵入者で、エピクレシさんが殺した後に仲間にしたという人だったか。
殺しあうほどの敵だったのに、倒した後に仲間にする方も、仲間になる方も、ずいぶんと割り切っているなと思う。
このへんは、ここがゲームの世界であり、僕たちが考えるよりも、死が軽いのかもしれない。
勇者とか生き返るみたいだし、さっき名前があがったダスカロスさんとやらも、そのうち蘇生するだろうからね。
「は、御用でしょうか」
ロマーナさんは、洗練された凛とした姿勢でエピクレシさんの呼びかけに応じる。
かっこいい女性だ。雰囲気としては、リピアネムさんに似ている気がする。
エルフだからか、姿も美しいが、欠損した右腕に取り付けられた鎖が目を引く。
「あなた、聖属性得意ですよね?」
「ええ、私の得意分野です」
「じゃあ、この子たちに教えてあげてください。勇者と聖女と賢者です。生徒としてはなかなか面白いですよ」
「承知しました」
エピクレシさんの言葉に絶対服従なのか、ロマーナさんはあっさりと話を承諾した。
そうか、この人は聖属性が得意なエルフという話だった。
たしかにそれなら、エピクレシさんよりも、僕たちを教えるのに適していそうだ。
「
「ロマーナだ。よろしく頼む」
こうして、僕たちはロマーナさんという新たな指導者のもと、各々の素質を鍛えることにした。
◇
「ということみたいですよ~」
「なるほど、ダスカロスですか……」
ピルカヤの報告を聞き、フィオナ様が思案を巡らせる。
蘇生したい候補がなんやかんやで増えていくな。
それ自体はかまわない。フィオナ様のことだから、きっと適切な人材を選んでくれるだろうし。
それよりも問題は……。
「とは言っても、肝心の蘇生薬が予備のぶんしかありませんよ?」
「うっ……私がふがいないばかりに……」
前回のガシャの失敗を意外とひきずっていたらしい。
めんどくさいことになりそうだ。帰ろうかな。
「レイ! 私の仇をとってください」
……ほら、めんどくさいことになった。
「レイ!」
「はぁい……」
まあ、レストランだけでなくカジノも盛況だからな……。
ガシャに回す魔力は多少あるし、ここらでフィオナ様の鬱憤を晴らしておくとしよう。