【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「期待しないでくださいよ……」
「しますけど?」
なんだこのパワハラ上司!
ついに成果を出すことを前提としはじめたぞ。
だが……。
「レイなら大丈夫です」
そんなに、信頼しきった目を向けられると……。
「なんせ、私のレイですからね!」
近いし。抱きしめながら耳元で囁くのは、ずるいんだよなあ……。
しかたない。別にこれはフィオナ様に屈したわけではない。
俺もそろそろガシャを回そうと思っていたからであり、決してこんなフィオナ様ごときに篭絡されたわけではない!
とりあえず……三回。いや、四回ほど回してみるとしよう。
幸いなことに、今回のフィオナ様のガシャはゲリラ開催だった。
なので、過度な期待を俺に込める者は、フィオナ様しかいない。
フィオナ様一人程度ならどうとでもなるし、誰か来る前に決着をつけてしまおう。
「それじゃあ、四回いきますね」
「私より一つ多いですね。レイも私の敵を討つために、奮発してくれているというわけですか」
なでられた。
その上機嫌がいつまでもつか見ものだな。
いつまでも、俺が当たりを引けるとは思わないことだ。
「一つ目……」
「ほほう!」
……俺の運がどんどん無駄に浪費されていく。
「二つ目……」
「いいですね!」
まずい。このままでは、なんらかの事故で死ぬ可能性すらある。
大丈夫だよな。なんか急にダンジョンが崩落して巻き込まれたりしないよな。
ジェルミの野郎……実は生きてたとかじゃないだろうな。
「三つ目……」
「良い子です!」
三連続で蘇生薬か~……。実は蘇生薬って、そんなにレアじゃないのかもしれない。
そうでも思わないと、なんだか俺の今後の運を消耗している気がして怖い。
「四つ目……よかった」
「ええ!? なんで、外れると喜ぶんですか!?」
事情があるんです……。
なんだか鱗っぽい盾が出てきたことで、ようやく外れたかとほっとした。
それにしても、よく見るとリピアネムやウルラガの鱗に似ているな。
もしかして、ドラゴンたちの鱗を素材とした盾なのだろうか。
「フィオナ様、これなんですか?」
「蘇生薬よりもそっちを気にしますか。なるほど……これが物欲を回避する方法」
というか、最近だと当たると怖いので、わりと本気で蘇生薬を引きたくない。
引きたくないというか、あまり引きすぎると怖い。
「参考にしましょう。ええと、それは竜の鱗の盾ですね。ほら、このへんなんとなくリピアネムに似てませんか?」
「それは俺も思いました」
「呼びましたか!?」
ドカンという音が聞こえたかと思ったら、リピアネムがドアを開いて入ってきた。
ドアの方は……よし、無事だな。壊さずに入ってこられるなんて、リピアネムのやつ偉いじゃないか。
「偉いぞ」
「う、うむ? そ、そうか……」
今後もこうやって破壊活動をしないようにがんばってほしい。
そんな思いも込めて褒めてみると、困惑と喜びが入り混じったような複雑な感情へと変わった。
リピアネムって、複雑なことできたんだな。
「私も偉いと思います!」
「そうですね。フィオナ様もすごく偉いです」
「ふふんっ!」
なんか犬を相手にしているような気がしてきた。
犬か……マギレマさんの犬たちと、後で戯れようかな。
「魔王様とレイ殿はなにを? お二人でカジノでしょうか?」
「いえ、カジノではありません。もっといいギャンブルです!」
「さすがは魔王様! 新たな催しをお考えですか!」
いかん。この二人だけだと止める者がいない。
掛け値なしに盛り上がってうるさくなりそうだ。
「リピアネム」
「なんだ?」
なので、強制的に二人の会話に割り込んで、話題をそらしてしまおう。
「この盾なんだけど、どう?」
「む……ほう。ドラゴンの鱗を使っているとは、かなりの強度だな。いいと思うぞ。レイ殿が使うのか?」
「いや、わりと重いしかさばるから、俺じゃなくて誰かに渡すべきだと思っているけど」
リピアネムは……本人がドラゴンで鱗もあるし、あまり意味がなさそう。
ディキティス? あいつの武器は両手持ちの矛だし、邪魔になるか。
イピレティス。身軽なのが売りだし、かさばって重い盾はいらないよな。
「盾といえば、勇者であろうな。カザマに渡すのはいかがだろう?」
「あ~……」
そっか。もともと今回のガシャも、
なんだか、強くなりたがっているみたいだし、あいつにあげるのがいいかもしれない。
「ありがとう。そうしてみるよ」
「うむ、喜ぶだろう」
それにしても、急に強くなりたがるなんて、なにか切っ掛けでもあったんだろうか。
……案外、
おのれ、イチャイチャしやがって。
「お~い、リピアネム~!」
おや、今度はリグマがやってきた。
もしかして、リピアネムのやつ、リグマの作業の手伝い中に抜け出してきたか?
「どうした。リグマ」
「どうしたって、お前さんまた厨房で作業中に走り去ったろ。マギレマが飯抜きって言ってたぞ」
「そ、そんな!」
「……リピアネムは、私の呼びかけに応じて参じたので、マギレマにはそう伝えておきましょう」
「ええ、なので魔王様も飯抜きというか、二人とも簡素な飯になるそうです」
「なんでですか!」
マギレマさん強ええ……。
やはり、食を司る者というのは強いんだな。
俺も、彼女を怒らせないように気をつけよう。
『みんなでなに馬鹿なことしてんのさ』
「いや、俺はただマギレマの言伝をだな……」
「ボクが伝えておいたよ。新しい仲間が復活しそうだから、大目に見てあげてって」
さすがはピルカヤだ。なんと頼りになる。
そして、マギレマさんの怒りを治められているあたり、こいつも優秀な四天王だよな。
「あと、プリミラさんも呼んでおいたよ~」
「呼ばれました」
こうして、カジノにはフィオナ様と四天王が勢ぞろいとなった。
なんだか、結局のところいつもどおりだな。蘇生する際のいつもの重鎮たちが勢ぞろいだ。
「おや、蘇生薬が三つ……さすがはレイ様です」
「私という可能性がこれっぽっちも考慮されていませんね!」
「では、魔王様が引き当てたのですか?」
「……レイは私のもので、レイのものは私のものです」
合ってるけど、さすがに無理があると思ったのか、フィオナ様も伏し目がちだ。
プリミラの前では、フィオナ様なんてこんなものだ。しかたがない。
「まあいいでしょう。四天王もそろったことですし、蘇生の儀ですよ。前回後回しにした、プリミラの武器加工のための蘇生も行います」
「ありがとうございます」
たしか、魔法細工師だっけ?
あれ以来プリミラが戦うことはなかったが、万が一イドとかが攻めてきたら万全で迎え撃ちたいからな。
プリミラ強化のためにも、ここはぜひ蘇生しておきたいところだ。
「あとは、レイが希望していたので……まあ、いいですけどね。いつかは必要なことですし、ダスカロスを……蘇生させましょう」
なんか、気が進まなそうだな。
もしかして、わりと癖の強い魔族なんだろうか。
いや、魔族の王たるフィオナ様が、そんな選り好みはしないだろう。
ということは、どちらかというとフィオナ様が苦手なタイプ……。
ああ、だいたいわかった。プリミラみたいにフィオナ様にお説教できるタイプだ。
教師ということだし、その可能性が高いだろうな。
「あと一つはどうします? 保険に残しますか?」
「う~ん……テクニティスを蘇生するのであれば、役割の相性がいいラプティキも蘇生しちゃいますか」
「いいと思います」
フィオナ様の提案に、プリミラが賛同し、それこそ他の四天王たちも少々考えてから頷いた。
すごい。四天王たち全員が納得するような提案をできている。まるで四天王を統べる魔王様だ。
「……なんか、このまま長引くとレイが私を見くびりそうなので、ちゃちゃっと蘇生しちゃいましょう」
「そんなことないですよ?」
濡れ衣を着せられるのは嫌なので、俺もフィオナ様の意見には賛成だ。
さて、今回は三人か。順番に蘇生していくとしよう。