【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第206話 前に進む蘇生の列

「というわけで、蘇生のお時間です」

 

 すでに蘇生薬は三つともフィオナ様に献上済みだ。

 今回はすべて使用するわけだが、フィオナ様がうきうきしているので、落として割ったりしないか心配になる。

 

「まずは、テクニティスですね」

 

 テクニティス。魔法細工師とやらであり、プリミラの武器に潮流の宝玉を埋め込めるらしい魔族だ。

 手先が器用なのか、あるいはクララたち以上に魔力の扱いが得意な種族ってことだろうな。

 

 そんな想像をしているうちに、フィオナ様はすでに蘇生を開始したらしく、テクニティスがぼんやりと形を作っていく。

 これは……炎か? まさかのピルカヤかぶりなのか?

 ピルカヤのほうを見ると、彼はいつもと変わらない様子で、蘇生の様子を眺めていた。

 

「っは!? あ、あれっ!? なんすか? なんか、勇者にぶっ殺されるいや~な夢を見てたんですけど」

 

「夢じゃありませんけど、蘇生したのでもう大丈夫ですよ。久しぶりですね。テクニティス」

 

「お、お久しぶりっす! え~……まじっすか? 自分、勇者の野郎にぶっ殺されてました?」

 

 テクニティス 魔力:80 筋力:57 技術:88 頑強:69 敏捷:77

 

 なるほど、こういう感じの魔族か。

 いや、魔族というかやっぱり精霊だろうな。ピルカヤほど炎そのものではないが、体には炎をまとっている。

 それでいて、若干ディキティスやウルラガを彷彿させる、いわゆるトカゲ属性だ。

 

「しょうがないよ。あいつらかなり強いし、なんかボクらと戦うときには、さらに強くなるっぽいから」

 

「ピルカヤ様っ! すみませんでしたっ! 自分があっさり死んだせいで、皆さまにご迷惑をおかけしたようで!」

 

「気にしないでいいよ。ボクも死んだし」

 

「はあっ!? 自分はともかく、ピルカヤ様までっ!? あんにゃろう! ちょっと、ぶっ殺してきます!」

 

 あ、この魔族もルトラと同じでピルカヤ信者だ。

 やっぱり、精霊系の中ではピルカヤが一番偉いのかな。

 

「返り討ちに逢うだけだからやめとけ~」

 

「リグマさん! しかし……」

 

 一応リグマの言うこともちゃんと聞くってことは、四天王以上の魔族には従うってことだろう。

 なんというか、上下関係をはっきりしているタイプに見える。

 

「下手に勇者にちょっかい出したら、レイくんの地底魔界復興計画の邪魔になっちまうんだよ」

 

「レイクン……?」

 

「レイなら、そこにいるよ~」

 

「どうも、魔王軍末席のレイです」

 

 どうせなら、全員蘇生してからがいいと思うのだが、紹介されたのなら名乗らないわけにもいくまい。

 俺の存在に気がついたのか、テクニティスは目を細めてまじまじと見つめてきた。

 

「誰っすか? あんた。いや、名前は今聞いたっすけど……」

 

「下っ端です」

 

「レイくんがしゃべるとややこしくなりそうだから、ちょっと黙っていような」

 

 なんだと!? 俺への質問を俺が答えるのに、なんでややこしくなるんだよ。

 心外な言葉に抗議しようとも思ったが、ピルカヤが俺をたしなめるので機を逸した。

 というか、ピルカヤがそんなふうに俺に接するからか、テクニティスの目つきはますます悪くなる。

 

「まあ、要するにだ」

 

「はいっす」

 

「俺たち全員がこの場に揃っているのは、レイくんの蘇生薬のおかげ。もちろんお前も」

 

「すみませんっした!!」

 

 うわっ……。そんな深々と土下座されたら困る。

 下手に転生者組とかに見られると、俺がパワハラ上司みたいな噂を立てられかねない。

 

「そんな謝らなくても大丈夫ですけど」

 

「自分なんかに敬語なんて使わないでください!」

 

「え、うん……」

 

 これまでも、敬語はいらないと言ってくれた魔族は数多くいるが、ここまで下手に出られたのはテクニティスが初めてなんじゃないか?

 なんだかこっちが委縮しそうなので、やめてもらいたいような……。

 

「申し遅れました! サラマンドラのテクニティスっす! 魔法細工師として、主に魔力関連のアイテムや装備の調整を行っているので、レイ様も気軽にお声がけくださいっす!」

 

 サラマンドラ……。なるほど、俺が抱いたイメージも案外間違いでもないようだ。

 なんか精霊っぽくてトカゲっぽい。きっと、彼はその両方の要素を持っているんだろうな。

 

「わりと暑苦しいしうるさいけど、それなりに腕はいいよ」

 

「ありがとうございます!」

 

 褒めたの? まあ、ピルカヤもテクニティスも炎系だし、暑苦しいも誉め言葉になるのかもしれないな。

 

「それで、自分が蘇生していただけたということは、なにか依頼があるっすか?」

 

「まあ、そうだけど、それは後にして他の魔族の蘇生を先にしよう」

 

「了解っす! ……他? 蘇生薬っすよね? そんな簡単に何個も……?」

 

「それがレイです!」

 

 フィオナ様の一言がダメ押しとなったのか、なんかテクニティスからの俺への印象が決定づけられた気がする。

 ……まあ、いいか。そのうち誤解もとけるだろう。

 

「じゃあ、次はダスカロスさんですか?」

 

「……え~と、蘇生薬は二つありますね。なら、先にもう一人を」

 

 なんで、後回しにするんだろう。

 まあ、最終的に蘇生するのであれば、些細なことではあるか。

 

「ラプティキ~。蘇生のお時間ですよ~」

 

 次の蘇生対象として選ばれたのは、ラプティキという魔族のようだ。

 すでに形が出来上がりつつあるのだが……でかい。

 これまでの魔族たちは、みんな人間サイズだったがラプティキは違う。

 どちらかというと、ソウルイーターを思い出すサイズ感だ。

 だが、それはどうやら下半身だけであり、上半身にはしっかりと人間に近い姿が形成されていく。

 

 そうか……。この巨大な下半身は大蜘蛛だな。

 そこに人間のような上半身がくっついているのであれば、説明されずとも俺でもわかる。

 彼女は、アラクネだ。

 

「あら? 地底魔界……? いえ、こんな場所あったかしら? ……ま、魔王様! 失礼しました!」

 

「いえ、しっかりと蘇生できたようでなによりです。ラプティキ」

 

「蘇生……もしかして、私死んでいましたか?」

 

「ええ、ですがもう大丈夫です。私のレイがあなたもテクニティスも蘇生させましたから」

 

「レイ……。えっと」

 

 ラプティキがきょろきょろとあたりを見回す。

 そして、唯一知らない顔だったためか、俺と目が合うと視線はそこで止まった。

 

「あら、あなたのことかしら? ……敬語で敬ったほうがいいですか?」

 

「いや、それほどの者では」

 

「レイ様は、魔王軍を蘇生してくださったすげえ人っす!」

 

 テクニティスうるさい。

 

「レイは私のですから、そんな細かいことは気にしません。好きにしていいですよ? あと、私のです」

 

「は、はい……じゃあ、レイさん。よろしくね。アラクネのラプティキよ」

 

 ラプティキ 魔力:65 筋力:55 技術:88 頑強:78 敏捷:85

 

 ああ、やっぱりアラクネであっていた。

 なんというか、まともな女性っぽい……と言うと、他の魔王軍の女性陣に怒られそうだからやめておこう。

 

 ポンコツ。無表情ロリ。悲しい怪物。犬足ギャル。研究オタク。物騒なウサギ。人見知り。精霊信者。

 うん、なんかあれだ。気にしないようにしよう。

 

「そういえば、ラプティキさんは、どんな役職なんですか?」

 

 フィオナ様がなにか不思議そうに考えるような顔をしていた。

 あのままでは、また頬を引っ張られかねないので、ごまかすように尋ねると、そちらに意識を割かれたようだ。

 よし、今日もちょろくてかわいいな。

 

「ラプティキは、縫製師です。どんな衣服も作れるので、トキトウたちが喜びそうですね」

 

 なるほど……自分で出した糸を使ったりするのかな?

 たしかに、服をオーダーメイドできるというのなら、女性陣が喜びそうだ。

 

 さて、これで二人が蘇生した。

 ということで、最後の一人だ。

 

「あとは、ダスカロスですよね?」

 

「……まあ、そうなんですけど。まあ、そうなんですよね」

 

 気が乗らなさそう。

 

「ダスカロスは優秀です」

 

「そうなんですか」

 

「とても優秀で、プリミラのような存在です」

 

「女性なんですか?」

 

「いえ、男性ですし、種族や見た目は別に全然似ていません」

 

 やはり、わかってきたぞ。

 つまり、フィオナ様にお説教できる魔族ということだな。

 それで気が進まないような態度なのか。

 だが、いずれはすべての魔族を蘇生させるわけだし、フィオナ様のことだからダスカロスを嫌ってるわけではないはずだ。

 ただ、今後自分をお説教する人が倍になるのが恐ろしいだけだろう。

 

「大丈夫ですよ。いざというときは、俺も一緒にお説教されますから」

 

「お説教前提なんですか!? うぅ……まあ、レイと一緒なら大丈夫でしょう! それじゃあ、蘇生させますよ!」

 

 よかった。フィオナ様も決心したようだし、このまま三人目も蘇生してもらうとするか。

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