【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第207話 嵐の後の足の痺れ

「ええい! ダスカロス! 蘇生しなさい!」

 

 覚悟を決めたのか、フィオナ様がやや投げやりに最後の蘇生を開始した。

 まず、身長はなかなか高いな。というか、ガタイがいい。そのシルエットはどことなくテラペイアを思い出す。

 だが、顔が鳥というわけでもなければ、翼が生えているわけでもない。

 テラペイアが鳥なら、彼は狼だ。二本足で立つ大きな狼男。ワーウルフという種族だろうか。

 

「……魔王様。お役に立てず申し訳ございません」

 

「い、いえ? まあ、なんとかなりましたし。次がんばりましょう」

 

 他の二人と違い困惑する様子もなく、ダスカロスは蘇生して早々に状況を把握したのか、フィオナ様に謝罪した。

 フィオナ様は、やや緊張した様子で受け答えするが、やはり苦手な相手なんだろうか。

 

 ダスカロス 魔力:77 筋力:77 技術:77 頑強:77 敏捷:77

 

 なんか、すごいバランスがいいというか、縁起がよさそうなステータスだな。

 

「む? 君」

 

「え、俺ですか?」

 

 フィオナ様との挨拶も終えたということなのか、ダスカロスは突然俺に話しかけてきた。

 ああ、見知らぬ魔族である俺がいたため、不審に思ったということか。

 

「君は魔王軍の者なのだろう?」

 

「はい。新参者のレイです」

 

「私は人狼のダスカロスという。不用心に他人の鑑定を行うことは、あまり褒められたものではないな」

 

 人狼。やはりワーウルフということらしい。

 見た目としては、どちらかというとモンスター寄りだが、こうして会話もできるし理性的だ。

 うちのモンスターたちも賢いが、彼はさらに知性を感じさせる。

 

 とまあ、そんな彼の特徴よりも、勝手にステータスをのぞき見したことが問題だった。

 リピアネムやテラペイアにもばれていたし、この癖改めないとな。

 

「すみません。次からは断りを入れてから」

 

「違う」

 

 違う? ああ、そもそも失礼だから、他人のステータスを覗き見ること自体よくないか。

 

「ばれないようにやるのであれば問題ない。だが、君の技術はいささかお粗末だな」

 

「え、そっち?」

 

「おおよそは理解できている。私の記憶が飛んでいるのは、おそらく死んだからだろう。そして意識を取り戻した先にいたのは、魔王様と四天王、そして君だ。それだけ君が重要な存在ということになる。そんな君がつたない鑑定術を敵に使ったら窮地を招く」

 

 なんか……いろいろと考えている魔族だな。

 というよりも、今回は俺が考えなしに鑑定を使ってしまったのが問題か。

 

「反省します」

 

「ああ、精進しなさい」

 

 なるほど。これが先生として期待されているダスカロスという男なのか。

 これならば、たしかに風間(かざま)たちの先生役として、色々と教えてくれそうだ。

 そして、これならば、たしかにフィオナ様をお説教してくれそうだ。

 

「それで、私を蘇生したということは、魔王様の教育をすればいいということでしょうか?」

 

「いえ、私の方は間に合っていますので、あなたには新たな部下」

 

「間に合っていますか? それでは、魔力の扱いについてテストしますが」

 

「……う、疑いますか! 魔王なのに!」

 

「以前までの魔王様は、魔力量の多さにかまけてコントロールが苦手だったはずです」

 

「もう大丈夫です! なので、あなたには他の者の教育をお願いします!」

 

 すごい疑われている。

 たぶん、フィオナ様の教育係だったんだろうな。

 だけど、フィオナ様はたぶん今では魔力の扱いは上手になっていると思う。

 あれだけのステータスなのに、イドだけを一瞬で燃やしたりできるし。

 

「今の私は、宝箱に注ぐ微量な魔力量ですら調整できますからね!」

 

「宝箱……?」

 

「あ」

 

 フィオナ様は、しまったというような表情を浮かべた。

 本当は宝箱ガシャのことを内緒にしたかったんだろうが、つい口が滑ったといったところか?

 

「ダスカロス。魔王様は、蘇生薬を作成するために、日々宝箱に魔力を注いでいます」

 

「宝箱……それが、レイの力というわけか」

 

「それでも一部だぜ。レイくんはわりとやりたい放題だ」

 

「興味深いな。なるほど、魔王様もそのおかげで魔力のコントロールが上達したわけか」

 

 それはどうだろう。

 宝箱にはまる前からだいぶ上手だった気がするし、ダスカロスの教えのおかげなんじゃないだろうか。

 

「そして、熱中しすぎて玉座の魔力をすべて使い切りました」

 

「……」

 

「あ、プリミラ!」

 

 プリミラを制したところですでに遅い。

 ダスカロスは毅然とした態度で、フィオナ様に淡々とお説教を続けることとなった。

 転生者や、魔族以外の従業員がこの場にいなくてよかったな……。

 

    ◇

 

「なぜ君たちまで正座をしているんだ」

 

「魔王様だけに正座をさせるわけにはいかないっす!」

 

「なんか、雰囲気に飲まれたというかねえ」

 

 お説教が終わったとき、フィオナ様はかわいそうな状態になっていた。

 そして、気づいたら、テクニティスとラプティキも正座をしていた。

 ダスカロス。たしかに優秀なんだろうけど、フィオナ様が蘇生を躊躇したのもわかる気がする。

 

「さて、私たちが蘇生されたということは、各々の役目があるということだろう。私たちはなにをすればいい?」

 

「あ、俺に聞くんだ」

 

「魔王様はしばらく頭の中を整理する時間が必要だ」

 

 ダスカロスのお説教が大量に入ってきたからな。

 たしかに、それらを整理しないことには、まともな判断ができないかもしれない。

 

「それじゃあ、ダスカロスは転生者で勇者であるやつらに、勇者の力の使い方を教えてやってほしい」

 

「承知した」

 

 あ、もう敬称とか忘れてる。

 だが、そのあたりは気にしないようなので、いつもどおりこの口調で接することとしよう。

 

「テクニティスは、プリミラの武器に潮流の宝玉を取り付ける作業かな」

 

「了解っす!」

 

 返事がいい。まだ彼の実力を見たわけではないが、カールも無理ということができるのなら、きっと頼りになることは間違いないだろう。

 

「ラプティキは……」

 

「ええ」

 

 ……そういえば、ラプティキはどういう意図だったか聞いていないな。

 フィオナ様が言っていたように、当面は衣類を作ってもらうってことでいいか。

 

「うちの従業員たちのために、服を作ってもらうってことになると思う」

 

「なんで、私のときだけ自信なさそうなのかしら」

 

「フィオナ様に聞いていなかったもので」

 

「そういうこと。まあ、私にできることはそれくらいだから、間違いはないと思うわ」

 

「わりといろんな種族が増えてきたから、大変だろうけどよろしく」

 

「えっ、もしかして服にも興味ある子が増えてるのかしら?」

 

 意外そうな表情でラプティキに尋ねられる。

 どうだろう……。時任や奥居、それに世良に原あたりは、かなり興味ありそうだよな。

 

「獣人と人間。もしかしたら、ダークエルフもかな?」

 

「やだ、早く言ってよ! よしっ! 気合入れて作るわよ」

 

 もしかして、今まではファッションに興味がある魔族がいなかったとか?

 ……たしかに、その手の興味がありそうなのって、せいぜいマギレマさんとイピレティスくらいか。

 だが、マギレマさんは下半身があれなので、あまり選り好みできないだろうし、イピレティスは、ずっとメイド服着てるな。

 魔王軍、わりとラプティキの服に興味ない面子ばかりかも……。

 

「ふぅ……嵐はさりましたね」

 

 そんなこんなで、フィオナ様が再起動した。

 嵐というか、ダスカロス単独に打ちのめされた形になるが。

 

「フィオナ様って、普段着ている服とかどうしていたんですか?」

 

「ラプティキの有り余る創作意欲により、私は一時期着せ替え人形になっていたことがあります」

 

「なんか……お疲れ様です」

 

「本当に、どうなっているんですかね……あの状態で、あそこまで」

 

 フィオナ様もぐったりするようなほどの大量の服か……。

 今では同じ服ばかり着ているところを見ると、残念ながら地底魔界が崩壊したときに、それらも失ってしまったんだろう。

 今後は、ラプティキの復活により、またフィオナ様の服が増えそうだが、そのたびに着せ替え人形にされそうだな。

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