【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「ええい! ダスカロス! 蘇生しなさい!」
覚悟を決めたのか、フィオナ様がやや投げやりに最後の蘇生を開始した。
まず、身長はなかなか高いな。というか、ガタイがいい。そのシルエットはどことなくテラペイアを思い出す。
だが、顔が鳥というわけでもなければ、翼が生えているわけでもない。
テラペイアが鳥なら、彼は狼だ。二本足で立つ大きな狼男。ワーウルフという種族だろうか。
「……魔王様。お役に立てず申し訳ございません」
「い、いえ? まあ、なんとかなりましたし。次がんばりましょう」
他の二人と違い困惑する様子もなく、ダスカロスは蘇生して早々に状況を把握したのか、フィオナ様に謝罪した。
フィオナ様は、やや緊張した様子で受け答えするが、やはり苦手な相手なんだろうか。
ダスカロス 魔力:77 筋力:77 技術:77 頑強:77 敏捷:77
なんか、すごいバランスがいいというか、縁起がよさそうなステータスだな。
「む? 君」
「え、俺ですか?」
フィオナ様との挨拶も終えたということなのか、ダスカロスは突然俺に話しかけてきた。
ああ、見知らぬ魔族である俺がいたため、不審に思ったということか。
「君は魔王軍の者なのだろう?」
「はい。新参者のレイです」
「私は人狼のダスカロスという。不用心に他人の鑑定を行うことは、あまり褒められたものではないな」
人狼。やはりワーウルフということらしい。
見た目としては、どちらかというとモンスター寄りだが、こうして会話もできるし理性的だ。
うちのモンスターたちも賢いが、彼はさらに知性を感じさせる。
とまあ、そんな彼の特徴よりも、勝手にステータスをのぞき見したことが問題だった。
リピアネムやテラペイアにもばれていたし、この癖改めないとな。
「すみません。次からは断りを入れてから」
「違う」
違う? ああ、そもそも失礼だから、他人のステータスを覗き見ること自体よくないか。
「ばれないようにやるのであれば問題ない。だが、君の技術はいささかお粗末だな」
「え、そっち?」
「おおよそは理解できている。私の記憶が飛んでいるのは、おそらく死んだからだろう。そして意識を取り戻した先にいたのは、魔王様と四天王、そして君だ。それだけ君が重要な存在ということになる。そんな君がつたない鑑定術を敵に使ったら窮地を招く」
なんか……いろいろと考えている魔族だな。
というよりも、今回は俺が考えなしに鑑定を使ってしまったのが問題か。
「反省します」
「ああ、精進しなさい」
なるほど。これが先生として期待されているダスカロスという男なのか。
これならば、たしかに
そして、これならば、たしかにフィオナ様をお説教してくれそうだ。
「それで、私を蘇生したということは、魔王様の教育をすればいいということでしょうか?」
「いえ、私の方は間に合っていますので、あなたには新たな部下」
「間に合っていますか? それでは、魔力の扱いについてテストしますが」
「……う、疑いますか! 魔王なのに!」
「以前までの魔王様は、魔力量の多さにかまけてコントロールが苦手だったはずです」
「もう大丈夫です! なので、あなたには他の者の教育をお願いします!」
すごい疑われている。
たぶん、フィオナ様の教育係だったんだろうな。
だけど、フィオナ様はたぶん今では魔力の扱いは上手になっていると思う。
あれだけのステータスなのに、イドだけを一瞬で燃やしたりできるし。
「今の私は、宝箱に注ぐ微量な魔力量ですら調整できますからね!」
「宝箱……?」
「あ」
フィオナ様は、しまったというような表情を浮かべた。
本当は宝箱ガシャのことを内緒にしたかったんだろうが、つい口が滑ったといったところか?
「ダスカロス。魔王様は、蘇生薬を作成するために、日々宝箱に魔力を注いでいます」
「宝箱……それが、レイの力というわけか」
「それでも一部だぜ。レイくんはわりとやりたい放題だ」
「興味深いな。なるほど、魔王様もそのおかげで魔力のコントロールが上達したわけか」
それはどうだろう。
宝箱にはまる前からだいぶ上手だった気がするし、ダスカロスの教えのおかげなんじゃないだろうか。
「そして、熱中しすぎて玉座の魔力をすべて使い切りました」
「……」
「あ、プリミラ!」
プリミラを制したところですでに遅い。
ダスカロスは毅然とした態度で、フィオナ様に淡々とお説教を続けることとなった。
転生者や、魔族以外の従業員がこの場にいなくてよかったな……。
◇
「なぜ君たちまで正座をしているんだ」
「魔王様だけに正座をさせるわけにはいかないっす!」
「なんか、雰囲気に飲まれたというかねえ」
お説教が終わったとき、フィオナ様はかわいそうな状態になっていた。
そして、気づいたら、テクニティスとラプティキも正座をしていた。
ダスカロス。たしかに優秀なんだろうけど、フィオナ様が蘇生を躊躇したのもわかる気がする。
「さて、私たちが蘇生されたということは、各々の役目があるということだろう。私たちはなにをすればいい?」
「あ、俺に聞くんだ」
「魔王様はしばらく頭の中を整理する時間が必要だ」
ダスカロスのお説教が大量に入ってきたからな。
たしかに、それらを整理しないことには、まともな判断ができないかもしれない。
「それじゃあ、ダスカロスは転生者で勇者であるやつらに、勇者の力の使い方を教えてやってほしい」
「承知した」
あ、もう敬称とか忘れてる。
だが、そのあたりは気にしないようなので、いつもどおりこの口調で接することとしよう。
「テクニティスは、プリミラの武器に潮流の宝玉を取り付ける作業かな」
「了解っす!」
返事がいい。まだ彼の実力を見たわけではないが、カールも無理ということができるのなら、きっと頼りになることは間違いないだろう。
「ラプティキは……」
「ええ」
……そういえば、ラプティキはどういう意図だったか聞いていないな。
フィオナ様が言っていたように、当面は衣類を作ってもらうってことでいいか。
「うちの従業員たちのために、服を作ってもらうってことになると思う」
「なんで、私のときだけ自信なさそうなのかしら」
「フィオナ様に聞いていなかったもので」
「そういうこと。まあ、私にできることはそれくらいだから、間違いはないと思うわ」
「わりといろんな種族が増えてきたから、大変だろうけどよろしく」
「えっ、もしかして服にも興味ある子が増えてるのかしら?」
意外そうな表情でラプティキに尋ねられる。
どうだろう……。時任や奥居、それに世良に原あたりは、かなり興味ありそうだよな。
「獣人と人間。もしかしたら、ダークエルフもかな?」
「やだ、早く言ってよ! よしっ! 気合入れて作るわよ」
もしかして、今まではファッションに興味がある魔族がいなかったとか?
……たしかに、その手の興味がありそうなのって、せいぜいマギレマさんとイピレティスくらいか。
だが、マギレマさんは下半身があれなので、あまり選り好みできないだろうし、イピレティスは、ずっとメイド服着てるな。
魔王軍、わりとラプティキの服に興味ない面子ばかりかも……。
「ふぅ……嵐はさりましたね」
そんなこんなで、フィオナ様が再起動した。
嵐というか、ダスカロス単独に打ちのめされた形になるが。
「フィオナ様って、普段着ている服とかどうしていたんですか?」
「ラプティキの有り余る創作意欲により、私は一時期着せ替え人形になっていたことがあります」
「なんか……お疲れ様です」
「本当に、どうなっているんですかね……あの状態で、あそこまで」
フィオナ様もぐったりするようなほどの大量の服か……。
今では同じ服ばかり着ているところを見ると、残念ながら地底魔界が崩壊したときに、それらも失ってしまったんだろう。
今後は、ラプティキの復活により、またフィオナ様の服が増えそうだが、そのたびに着せ替え人形にされそうだな。