【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第209話 それぞれの進捗は順風満帆

「まったく……以前よりもにぎやかでいいことだ」

 

「すみません……」

 

「いや、これは皮肉などではなく事実だ」

 

 お説教はもう終わったので、ダスカロスもすでに切り替えているらしい。

 そのうえでにぎやかだと思ったのであれば、彼の言うとおり実際ににぎやかなのだろう。

 もっとも、これからもどんどん魔族を蘇生していく予定なので、よりにぎやかになっていくだろうけど。

 

「それにしても、プリミラもすごいけど、テクニティスもすごいな」

 

「いえ! プリミラさんのお力あってのことっす!」

 

 謙遜するが、プリミラだけの力でなく、潮流の宝玉のおかげだと思う。

 そして、そんなアイテムを武器に完璧に一体化できたのは、やはりテクニティスの技術によるものだろう。

 

「とても使いやすかったです。実は試しに宝玉のみで使ったこともありますが、そのときよりもはるかに効果も大きく、制御も容易になっていました」

 

「そう言っていただけると、こちらもうれしいっす!」

 

 現に、我に返ったプリミラはすぐに水を引っこめていたからな。

 あれだけの水を簡単に出し入れでき、水浸しだった部屋やエピクレシも、しみ込んだ水分だけを綺麗に処理していた。

 

「鬼に金棒みたいな感じだった」

 

「悪魔です」

 

「槌っす」

 

 そうじゃない。いや、こっちの世界にはない言葉なのかもしれないし、俺が悪いか。

 ともかく、テクニティスの技術があれば、その者の強みを何段階か引き上げられるってことになる。

 

「テクニティスって、魔法細工師なんだよな?」

 

「そうっす! 自分、それだけならけっこうやれるほうっす!」

 

 謙遜も混じっているが、そこにはたしかな自信が声に現れていた。

 魔法細工……魔法系統の技術提供者ってことだよな。もしかしたら、テクニティスならいけるのか?

 

「ちょっと、相談したいことが」

 

「なんすか? レイ様の相談なら、自分にできるかぎり対応するっすよ」

 

 それは、前回あえなく失敗してしまった施設の話だ。

 なんとなく及第点くらいのものはできあがったのだが、俺はまだまだ満足していない。

 しかし、テクニティスならば、どうにかしてくれるんじゃないかという期待が大きくなってきた。

 

「転移系の魔法を組み込むのって得意?」

 

「転移っすか……う~ん。繊細な魔力の制御が必要っすからね。ものによるという答えになってしまうっす」

 

 テクニティスの技術をもってしても、成功を確約できないということか。

 だとしたら、俺が一人であがいていたところで、どの道成功はしなかったんだろうなと確信する。

 

「ちなみに色々試してみた結果、今は移動式粘着温泉になっているんだけど」

 

「……なんでそうなったんすか?」

 

 なんでだろうね?

 でも、これはこれで及第点を取れるくらいには、それなりにがんばってくれているんだよ。

 

「テクニティスだったら、この温泉を転移罠みたいにできない?」

 

「む、無茶苦茶なことを考えるっすね……でも、やってみるっす!」

 

 頼りになるやつだ。俺もなにか活路を開くべく手伝わせてもらおう。

 まずは……何個も作ってみるとするか。

 

「レイ様。ノープランですね」

 

「うっ……プリミラにはわかるか」

 

「ですが、今回はテクニティスもいることですし、それで何かがわかることもあるかもしれません」

 

 そうだよな。なにごともまずは試してみてからだ。

 以前のように、なんの算段もなしに、無駄に魔力と回復薬を消耗するだけではないと信じたい。

 ということで、俺は回復薬を片手にいくつかの温泉を作成してみた。

 

「なるほど……これがレイ様のお力というわけっすね」

 

 そういえば、テクニティスの前では施設を作るのは初めてか。

 俺の力も魔力によるものだからか、テクニティスは作成されていく温泉を興味深そうに観察していた。

 

「転移罠みたいなの仕込めそう?」

 

「う……う~ん……が、がんばるっす!」

 

 難しそうか? やはり高望みなのか?

 だが、テクニティスも諦めてはいないようだし、なんとか取っ掛かりだけでも見つけたいところだ。

 

    ◇

 

「悪くないな」

 

「ロマーナさんから……基礎は、教わりました……からっ!」

 

「なるほど、彼女のことは私も覚えている。指揮も個人の力も優秀だったが、教導もできる者だったか」

 

「い、いえ、私は別にそれほどのことは……」

 

 ロマーナさんとダスカロス先生の指導を受けたことで、僕たちは以前よりもさらに力を引き出せるようになったと自負できている。

 勇者に聖女に賢者なんて、最初は名前負けもいいところだった。

 モンスター相手に三人がかりでも負けそうになるなんて、今考えると最初に僕たちを保護した国では相当なお荷物だったと思う。

 だけど、最近ではなんとなく戦うということもわかってきた。

 

 これは、おそらく勇者としての補助効果もあってだろうと、ダスカロス先生は教えてくれた。

 逆に言うと、僕たちみたいな能力でないと、戦いというものを忌避してしまう場合もあるということだ。

 能力におぼれて無茶をする者もいた。それと同じくらい、能力があると言われても戦えない者がほとんどだった。

 だから……国松(くにまつ)くん。君ってがんばってたんだな……。

 

 あのときの僕には余裕がなく、一人だけこの世界で立場を確保している彼に、八つ当たりをしていたと理解してしまう。

 ああ……なんて馬鹿なことをしていたんだろう。

 彼は、当時の僕たちという足手まといを見限って、それでも一人で抗っていただけなんだろう。

 

「気が入っていない。やり直せ」

 

「はいっ!」

 

 そうだ。そんなことを考えているだけの余裕など僕にはない。

 だから、目の前のガーゴイルたちを相手にすることだけを考えないと。

 

「うっ!」

 

武巳(たけみ)!」

 

 ああ、気持ちを切り替えるのが遅かったか……。

 重い打撃が腹部を打ち抜く。それでも骨折とかはしていないと思う。

 何度も打ちのめされてきたから、自分の肉体へのダメージが大まかにわかるようになってしまった。

 

 (あらた)の聖女の力によって、すぐに回復する。

 しかし、傷は治っても痛みは残っているというのが、なんとも不思議な感覚だ。

 これにも慣れるようにして、すぐに戦線に復帰できるようにしないと。

 

「今の攻撃は、現時点の万全の状態の君であれば防げたはずだ。集中ができていない」

 

「はいっ! すみません!」

 

 嬉しいことにダスカロス先生は、あんな重い攻撃も僕が全力を出せば防げると評価してくれている。

 もっと勇者の力を使いこなさないと。そうすれば、僕たちも戦力になれるはずなんだ。

 戦力……というとおこがましいか。

 僕たちが必死に鍛えても、きっとレイさんが作るモンスターよりは弱いはずだからね。

 それよりは、最低限身を守れて、足手まといにならないことを目指すべきだ。

 

「今度は力みすぎている。君の力は感情によって出力が変わる不安定なものだからな。まずは、感情をぶれさせないようにすることだ」

 

 感情を……うわあ、苦手かも。

 

「……」

 

「先生?」

 

 僕に指導した後に、先生はなぜか黙ってしまった。

 どうしよう。もしかして、あまりにも見込みがなくて呆れてしまったとかかな。

 

「勇者だけでなく、聖女に賢者も……感情がないほうが安定する? まるで、人形のように戦うのが最適であるかのように……」

 

 なんか……怖いこと言い始めた。

 たしかに、痛みとかにひるんでいるのは、この世界では隙をさらすだけというのはわかるけど、最終的に感情を殺した人形みたいになるのは嫌だなあ……。

 

「っと、すまない。注意していたはずなのに、私のほうが気がそぞろになっていては示しがつかないな」

 

「いえ、先生はずっと僕たちの指導をしてくれていましたから。無理せず休んでください」

 

「ありがたいが心配は無用だ。だが、そろそろいい時間か。最後にガーゴイル相手に本気で戦ってみるといい」

 

 うわあ……最後がそれかあ。

 ガーゴイルは、見た目とは裏腹に愉快な性格なのか、遠慮せずにこいとばかりに軽く肩を叩いてくれた。

 それじゃあ、付き合ってくれる彼にも、少しは成長した姿を見せるとしよう。

 

 ――まあ、そう簡単に強くなれたら苦労しないよね。という話だと思うよ。

 つまり、結果はそういうことだ。

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