【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第210話 ポンコツアンドロイドにでも託します

「あ~疲れた~……」

 

「なんかだんだん痛みにも慣れてきちゃってるわね」

 

「……すまない。もっと僕が強ければ、君たちを守れるのに」

 

 勇者なのになあ……。いや、勇者だと偉ぶるつもりはないんだけど、せめて好きな人たちくらい守りたい。

 あのときのように、危険な場所に出ないようにして守るのではなく、もっと情けなくない姿でいたい。

 

「なに言ってんの! 私も(あらた)も、武巳(たけみ)だけに任せて安全な場所にいるつもりはないからね!」

 

「そうだよ。私なんて、聖女だから。一緒にいたら、すぐに回復できてお得だよ~」

 

「あ、ずるい!」

 

 どうやらというか、やはりというか、彼女たちは僕が考えるよりもずっと強い。

 だったら、三人で強くなっていこう。

 明日もダスカロス先生に指導してもらって、ただそればかりにかまけるのもよくないから、マギレマさんのレストランのウェイターに、カール師匠の石細工に……。

 う~ん……やっぱり、温泉で疲れをとって徹夜しちゃだめかな?

 自分がもう三人くらいほしい。ピルカヤさんはそれが実現できるからいいなあ。

 

「あ! 新ちゃん! 友香(ともか)ちゃん!」

 

芹香(せりか)ちゃん。どうしたの? そんなに急いで」

 

「いいから、急いだほうがいいわよ。私たちは特に」

 

江梨子(えりこ)まで……冷静なあなたがその様子ってことは、もしかしてまた魔王様のガシャ配信?」

 

 ああ、それなら……いや、奥居(おくい)さんは、私たちは特にって言っていた。

 魔王様の宝箱の儀式は、別に僕たちに限ったことではなく、すべての従業員が楽しみにしていることだ。

 だから、わざわざ自分たちだけと強調するのもなにかおかしい気がする。

 

「好きな服を作ってくれるかもしれないんだって!」

 

「よくわかんないけど、急ぐわよ!」

 

「え、服!? なんでも!?」

 

 新も友香も、獣人の女の子二人について走っていった。

 訓練も終えてへとへとのはずなのに、あんなに活力があるなんて。

 ……僕が考えるよりもずっと強いなあ。

 

    ◇

 

 なんだかやけに人だかりができていると思ったが、その中心にはどうやらラプティキさんがいるようだ。

 フィオナ様が、突発でガシャを引こうとしたのかと思ったけれど、そうでないようでよかった。

 

 よくよく見ると、ガシャのときと面子が違うもんな。

 ガシャのときは、どの種族も性別関係なく集まって、恐ろしいことにフィオナ様のガシャのハズレを望んでいるわけだが、今回はそうではない。

 集まっているのは女性が多く、特定の種族はまったく見かけない。

 ドワーフは全然いないし、獣人は女性が何人かいるくらいか。

 

 そんな数少ない獣人のうちの二人が時任(ときとう)と奥居か。

 なるべく前に行くようにと、ぐいぐいと人だかりを押しのけるように進んでいく姿は、ふだんの彼女たちらしからぬ行動だ。

 

「なんなんだろう」

 

「ラプティキのことですから、みんなの服作りじゃないですかね~?」

 

 ぽつりと疑問を口にすると、イピレティスがそう答えてくれた。

 まあ、彼女の役割を考えると、自分の職務を全うすべく行動を開始したってことだろうけど、それでこの人だかりは……。

 ああ、そうか。前の世界でのバーゲンセールで戦う人たちみたいなんだ。

 そんな自分の考えにいくらか納得した。

 つまり、ここに集まった者たちは、ラプティキさんという職人に、自分たちの理想の服を作ってもらおうとしているのか。

 早い者勝ちなのかはわからないけれど、それで各々ができる限り先に注文しようとしているわけだ。

 

「かわいいのでよろしく~」

 

「そうは言っても、結局露出多めでシンプルなのがいいんでしょ。あなた、作り甲斐ないのよ」

 

「ゴテゴテしてるの好みじゃないからね~」

 

 今はマギレマさんが、ラプティキさんに注文しているところだ。

 たしかに、彼女の服装ってシンプルなチューブトップだもんな。

 しかも下半身は犬だから、必要な服ってそれくらいだ。

 

「ええ、次は……」

 

「こんな感じでお願いします!」

 

「あら、わかりやすくていいわね」

 

 気合を入れたように奥居が手渡したのは、おそらく求める服のイメージ図だろう。

 文字だけでなく、なにやら絵のようなものが描かれているのがわずかに見えた。

 

「いいな~! 江梨子ちゃんいいな~!」

 

「落ち着きなさい。そのうち、あんたの分も描いてあげるから」

 

「あの~……私も」

 

「私は? 私のもいい!?」

 

 転生者女子グループが、なんかわちゃわちゃしている。

 あのグループの場合、現代からやってきた女子たちだもんなあ……。

 特に、そういうものには飢えていたのかもしれない。

 そういえば、フィオナ様がアクセサリーっぽいアイテムの詰め合わせ引いたときも、けっこう食いついていたからな。

 

「なんだか、すごいことになっていますね……」

 

「女子のパワーってすごいな」

 

 隣にやや呆然としてように風間がやってきた。

 自分の連れの女子たち二人のパワーに、さすがの風間も戸惑っているようだ。

 だが、こいつもどちらかというと、そつなくオシャレな着こなしをする現代の人間側っぽいんだけど、興味はないんだろうか?

 

「風間は、あそこに混ざらなくていいのか?」

 

「いえ……あれは、さすがに興味本位で混ざるのは、よくなさそうです」

 

「まあ、押し負けそうだよな。だけど、風間ってもっと服装とかに興味あるかと思っていた」

 

「ああ……僕の場合、だいたい新か友香の付き合いで買い物に行って、そこで選んでもらっていましたから」

 

 さらっと頻繁にデートしていることを話されてしまった。

 さすが、モテる男は違うな。

 

「じゃあ、もしかしたら世良と原は、ラプティキさんに風間の服の作成も頼んでいるかもしれないな」

 

「僕は別に後回しでいいんですけどね……」

 

 そうもいかないだろ。愛されているやつは違う。

 素直にその愛を受け止めておくがいい。

 

「まあ、そこまで混乱しているようじゃないみたいだし、しっかりとこの人数をさばけそうだし、ここはラプティキさんに任せておいて大丈夫そうだな」

 

「レイさんは、ラプティキさんに頼まなくていいんですか?」

 

「俺? 俺は別にそういうの無頓着だし」

 

「じゃあ、魔王様の分とかは……」

 

「フィオナ様? ……あの方もあまり気にしてないんじゃないか? それに、必要なら自分で頼むだろうし」

 

 なんせ、魔王だ。

 ここにいる全員より優先で作ってもらえても不思議ではないだろう。

 それでも、ラプティキさんに依頼しにこないということは、他の者たちを優先してくれているか、特に興味がないかのどちらかだろう。

 案外どっちもっぽい気がする。

 

「そ、そうですか……まあ、お二人の関係は、僕たちが口出しできるようなことじゃありませんし」

 

 そうだな。

 魔王とその部下として、俺たちよりもずっと前からの関係なんだろうし、今さらフィオナ様とラプティキさんの関係にどうこう口をはさむ隙などないだろう。

 世良と原を待っている風間をその場に置いて、俺はイピレティスとともに立ち去った。

 

 ……そういえば、イピレティスも興味ないんだな。

 メイド服しか着ないとか、そんなこと言ってたからしょうがないか。

 

    ◇

 

「さすがはラプティキですね。あの子、マギレマと同じで仕事が早いタイプですから、今の状況はきっと楽しいんじゃないでしょうか」

 

「あ~……なんか、そんな雰囲気でしたね。テラペイアの負担にならないかが問題ですけど、ダスカロスもいるし大丈夫そうですかね」

 

「ええ。そのうち、自らの糸で縛られて宿に放り込まれると思います」

 

 それは、大丈夫と言っていいんだろうか……。

 いや、休むだけましか。

 

「それにしても、オクイも大したものですね。自らの望む服をデザインできるなんて、私も絵心を勉強するべきかもしれません」

 

 ん? この言い方だと、もしかしてフィオナ様も服が欲しいとか?

 

「フィオナ様って、服に興味あったんですか?」

 

「な! なんて失礼な! それともなんですか!? レイは、服を着ていない私をご所望ですか! やってやりますとも!」

 

「すみません! すみませんって! いったん落ち着いてください。今、すごいこと言ってますからね!?」

 

 しまった。フィオナ様の乙女心を暴走させてしまった。

 その結果が全裸の魔王との対面とか、俺はどうすればいいかわからなくなるし、なんとか落ち着いてもらわねば。

 ……そうだよな。魔王だし、女性だし、きっとそういうことにも気を配っているのだろう。

 

「俺は、今のフィオナ様の姿が、とても似合っているので好きですよ」

 

「! そ、そうですか? ならいいでしょう。まったく、正直じゃない子ですね」

 

 よし、なんとかなった。

 ちゃんと本音も言っているから、別に問題はない。

 フィオナ様もすっかり落ち着いてくれて、なんとか裸の魔王様事件は未然に防ぐことができた。

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