【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第211話 ダンジョン市場の競合他社

「どうです! 私だって、着飾ることができるんですよ! さあ、遠慮なくほめなさい!」

 

「ええ、いや、本当にきれいです」

 

「そ、そうですか……」

 

 おい、そこでなんで声が小さくなっていくんだ。

 数秒前の自信満々だったフィオナ様は、どこに消えてしまった。

 

「魔王様も成長されたのですね。自分から、服を作ってほしいと私に頼みにくるなんて……」

 

 どうやら、フィオナ様はおしゃれ関係のステータスは、9999ではなかったようだ。

 だけどラプティキさんのおかげで、そんなフィオナ様も少しずつおしゃれポイントが増えているらしい。

 ……案外、そのあたりが目的で、ラプティキさんを蘇生したのかもしれないな。

 

「失礼しま~す」

 

「あら、マギレマ。見なさい。魔王様ですら、進んでおしゃれをするようになったのよ」

 

「ですらって……」

 

 ラプティキさんの一言に、地味にフィオナ様がショックを受けている。

 しかし、言った本人は気がついていないので、俺がフィオナ様をなぐさめておこう。

 

「ほんとだ~。魔王様かわいい~」

 

「ありがとうございます。レイはどう思います?」

 

 さっき言ったじゃん……。

 

「きれいだと思いますけど」

 

「ふふん!」

 

 さっきと違ってしおらしくない。なんか……うっとうしい。いや、さすがに魔王相手に不敬だしやめておこう。

 なんだあのどや顔。思わずいつもと逆に、俺が頬を引っ張りたくなったぞ。

 

「相変わらず、仲いいね~」

 

「まあ……仲はいいですよ?」

 

「私とレイですからね!」

 

 マギレマさんの犬たちが、俺のほうに寄ってくる。

 よしよし、最近ソウルイーターばかりにかまっていたから、なんかこの子たちと触れ合うのも久しぶりだな。

 

「私のレイですからね!」

 

「わ、わかってますよ~……」

 

 フィオナ様が俺を抱えるようにして、犬たちから引き離した。

 マギレマさんも、自分の足を軽く叱っているので、本意ではなかったんだろう。

 

「そうだ。それよりも、ちょっと気になることがあるんですよね~」

 

「気になること、ですか」

 

 マギレマさんの表情を見るに、どうやら真剣な話のようだ。

 レストランのほうで、なにかあったみたいだな。

 

「ええ、単刀直入に聞きますけど、レイくん」

 

「え、俺ですか?」

 

 レイは俺しかいないので、当然俺に向けての言葉なのはわかるけど、なぜ魔王であるフィオナ様でなく、俺に?

 

「アルマセグシアに、私のレストラン以外のダンジョンって作った?」

 

「いや……今あるダンジョンは、この地底魔界の本拠地を入れても、五個だけど」

 

 エーニルキアのゴブリンダンジョン。

 プリズイコスの対獣人ダンジョン。

 アルマセグシアのレストランダンジョン。

 ダークエルフの村の欲望のダンジョン。

 そして、ここ地底魔界の俺たちの居住地。

 

 ドワーフダンジョンはもう潰れているから、その五つですべてのはずだ。

 

「そうだよね~。う~ん……魔王様も、新しいダンジョンなんて作っていませんよね?」

 

「はい。私は働く気は……ダンジョンの管理は、すべてレイに任せていますので」

 

 働く気がない宣言をしそうになっていたぞ。

 取り繕おうとしているけれど、もはやこの場にいる誰一人としてごまかせていないことに、気づいているのだろうか。

 マギレマさんどころか、ラプティキさんまで苦笑しているので、魔王軍には順調に、フィオナ様のポンコツぶりが露呈しているらしい。

 

「魔王様はそれでいいとおもいますよ~。たぶん……働きすぎでしたから」

 

「……」

 

 そうか? いや、そうかもしれないか。

 今でこそ、ぐーたらしているフィオナ様だけど、よくよく考えれば前は一人で地底魔界を住みよい場所にしようとしていたらしいからな。

 それに、魔王軍が全滅状態になってもがんばっていたと考えると、今は休息期間といえるのかもしれない。

 そう考えると、俺の力って案外ちょうど役立てるものだったかもしれないな。

 少なくとも、地底魔界の拡張に関しては、とても効率よく行えるわけだし。

 

「っと、すみません。話がそれました。ねえねえレイくん。うちのお客さんたちが、こんな話をしているのを、最近よく耳にするんだけど」

 

 気を取り直したように俺のほうを向いたマギレマさんからは、たしかに俺を疑うべき言葉が告げられた。

 

「アルマセグシアのダンジョンに挑戦するとか、そこの情報交換とか、仲間が何人かそこで死んだって」

 

「……身に覚えがない」

 

 なにそれ? もしかして、俺が無意識でダンジョンを作り出したってこと?

 俺もいよいよ意識せずにダンジョンを作れるようになったのなら、今後はちょっと便利そうだなと一瞬考えてしまった。

 いや、考え直そう。管理がめんどうくさい。アナンタとプリミラに迷惑をかけることになる。

 ということで、俺は無実だと思う。

 

    ◇

 

「話が全然違うんじゃないか?」

 

「そうねえ。ダンジョンの中にお店なんてあったっけ?」

 

「そのロペスってやつのせいだろ。そりゃあ、好き勝手している転生者がいてもおかしくない」

 

 現に、俺たちだってこの世界のことなんてどうでもいいしな。

 女神を名乗る女に急にゲームの世界に行けなんて言われ、しかもそこで魔王を倒せなんて馬鹿も休み休み言えって感じだ。

 そんなやり取りだけで、真面目に魔王退治に取り込む人間が何人いるんだか。

 ……まあ、一応神であることは本当だと信じざるを得ないし、魔王討伐後に願いを叶えるっていうのは興味がある。

 だけど、俺たちが魔王を倒せるとは思っていない。

 

 だったら、そのロペスとかいう転生者が一番利口だろ。

 この世界で生きていく。そして、転生者としての力で金を儲けて地位を得る。

 娯楽もなにもない場所かと思っていたけれど、案外そうでもないようだし、食事情だって変わらない。

 そりゃあ、元の世界に帰れるのが一番いいさ。だけど、命を懸けてどころか、高い確率で犬死するくらいなら、ここでの快適な生活を目指すべきだろう。

 

「先を越されたって感じだなあ」

 

「むしろ、あれパクろうよ」

 

「そうそう、幸い俺たちの国にはダンジョンないし。全部真似すればいいんだよ」

 

 俺たちが転生した先は、水の国アルマセグシアという、交易が世界一盛んな大国の大都市だった。

 国は当たり。そして、種族も気持ち悪い魚類なんかじゃなく人間だったので、これも当たり。

 肝心の女神からの力。それも、まあ工夫でどうにかなりそうだし、なんとかなりそうだ。

 どうせ、ゲームのNPCなんだから、俺たち人間であれば簡単に思い通りに操れるだろ。

 

「他の転生者がきちゃったらどうする?」

 

「ついでに殺せばいいんじゃね?」

 

「そうだな。どうせ、全部魔王のせいになるし、俺たちには関係ないよ」

 

 ありがたいことに、俺たちがこれからすることの責任は全部魔王が引き受けてくれる。

 まあ、魔王だしな。この世界で一番悪いやつなんだから、ちょっとくらい罪が増えても関係ないだろ。

 

「しかし、めんどくさいなあ。本当にいるか? このピルカヤ対策」

 

「死んだって話だけど、ピルカヤ以外ももしかしたら盗聴とか盗撮できるやつがいるかもしれないし、一応やっておこうぜ」

 

「疲れるんだけどなあ」

 

 文句は言いたくなるが、情報遮断結界はしっかり貼るしかないな。

 万が一があって、魔王に目をつけられても面白くない。

 

「それじゃあ、そろそろ取り掛かるか。ダンジョンもどきの作成に」

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