【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第213話 OJT産ダンジョンの挑戦者

「それにしても、ここに住んでる人たちが知らないっていうのも変な話だよな」

 

「噂は聞いたことがあるみたいだが、ダンジョンそのものは見たことがない。ということは、発見しづらい場所にあるんじゃないのか?」

 

「俺たちみたいなの以外は、わざわざ危険なダンジョンなんて探さないだろうからな。発見した冒険者も、自分たちで独占したいから、あまり口外しないんだろ」

 

「でも、噂が出回っているんだよな」

 

「自慢したくてつい話すやつは、どこにでもいるってことだろうさ」

 

 人間たちは、アルマセグシアという大国を探し回っているから、かなり時間がかかっているみたいだね。

 火のないところがやっぱり怪しいのかなあ……。でも、その場合はこの人間たちも見失っちゃうし、ある程度のあたりがついたら、報告するってことになっちゃうか。

 だからさあ。さっさと、ボクが監視できないような場所を探してくれないかなあ。

 

「次はこっちに行ってみるか」

 

「相変わらず広いからなあ。ちょっと離れただけで、どこになにがあるかわからなくなってきそうだ」

 

 こりゃあだめそうだなあ。そっちにも火はあるから、ボクの監視はまだまだ続けられそうだ。

 普段なら助かるんだけど、今回は早く監視できないようになってくれと思っているんだから、なんだかおかしな話だよねえ。

 なかなか先に進まないため、こちらに割く集中を減らして、別の分体たちのほうの集中力を増すようにした。

 だから、一瞬見落としかなと思ってしまった。

 

『……消えた? あいつら、どこ行ったの?』

 

    ◇

 

 間違いない。ここだ。この先に何かがあるけれど、ボクでは知覚できないし、入ることもできない。

 結界か……。つまり、ダンジョンそのものを隠蔽しているってわけ。

 あのオリーとかいう女と同じ能力? いや、どちらかというと、魔族避けの結界っていうほうがイメージが近いかも。

 

 それに、人間たちもこの先を見ても何も言っていない。

 ダンジョンがこの先にあるなんて、誰一人として気づいていない。

 ということは、この結界の先に足を踏み入れたときに、初めてそのダンジョンに気がつくってことかな。

 一人。また一人と、消えていく。やっぱり、ここに結界が張られていて、そこを通過したら見えなくなるみたいだ。

 

「見つけた。まずは、レイに報告だね」

 

    ◇

 

「なんで、急にダンジョンが……」

 

「結界に隠されていたってことか……?」

 

 身を守るためではなく、姿を隠すための結界。

 おそらく、それが広範囲に展開されていたのだろう。

 結界の中に足を踏み入れた瞬間に、それまで見えていなかったダンジョンを発見した。

 この範囲に常に結界を展開していた? そんなことができるのは、エルフの最高評議会くらい……。

 いや、もう一人いた。魔王か。

 

 正直なところ、この国にダンジョンがなどという話は眉唾物でもあった。

 試しに探してみようくらいの思いで、ないのなら再び欲望のダンジョンに通えばいい。

 そんな思いでの行動だったのだが……。

 これを見ると、案外本当に魔王が作成したダンジョンなのではと思えてくる。

 勇者たちと痛み分けで終わり、その傷を癒すために水面下で行動している可能性が高くなってきたな……。

 

「とりあえず、入ってみるだろ?」

 

「ここまで来たからにはな」

 

 今日はまだ街中を探し回っただけで、なにも消耗していない。

 当然ながらここで引き返すなんて選択はなく、俺たちはダンジョンの中へと足を踏み入れることにした。

 

「宿と店は……ないな」

 

 この場所はまだ発見されていないのか。

 商売好きなハーフリングが、店を建てているなんてこともないようだ。

 いずれ、ここも他のダンジョンのように店が建つのかと思うと、俺たちはダンジョン発見当初の現場に立ち会っているということで、どこか感慨深いものもある。

 

「さすがに第一発見者というわけではないな」

 

 まあ、そうなんだよな。

 数こそ少ないものの、俺たち以外の冒険者は何人かいるようだ。

 そうでなければ、この場所の噂なんて広まらないだろうし当然か。

 

「俺たちも、負けずに探索しないとな」

 

 だが、情報はまだまだ出揃っていないだろう。

 倒しやすいモンスターや、高レアアイテムを落とすモンスター、宝箱や鉱床などの場所、ダンジョンそのもののマップ。

 開拓していけるものなど、いくらでもあるはずだ。

 

「それじゃあ、油断せずに進むとしようか」

 

 警戒だけは怠らずに、うす暗い洞窟の中を進んでいく。

 これまでのダンジョンと違い、どこか人工的な雰囲気を感じさせるのは、魔王が最近になって作成したためだろうか。

 あのゴブリンダンジョンと同じように、道が舗装されていて歩きやすいというのは、それだけで助かるな。

 

「前から、モンスターがくるぞ」

 

 先が長い道のため、接敵前にモンスターの存在に気がつくことができた。

 それは向こうも同じことであり、俺たちを発見したゴブリンたちが、一目散にこちらへと駆けてくる。

 

「いつもどおりで。俺たち前衛が食い止めている間に、お前ら後衛で攻撃してくれ」

 

 最低限の指示で問題ない。

 それだけで、こちらの意図を汲んでくれるし、このくらいの指示で食い違いは起きないからだ。

 指示を出した後も、まだ敵との距離は離れているため、後衛の魔法使いたちは先手を打って遠距離から攻撃してくれた。

 

 一匹、また一匹とゴブリンたちが倒れていく。

 ……あれ? 倒れているな。

 

「なんか……弱くない?」

 

 仲間たちも、俺と同じ疑問を感じたようだ。

 特に、実際に攻撃を行っている魔法使いたちは、その手ごたえのなさを直接感じているためか、首をかしげるようにしていた。

 

「俺たちが強くなった……というわけじゃないよな」

 

 さすがに、それに気づかないということはない。

 日々の戦いで成長したというのであれば、欲望のダンジョンのモンスター相手に、もっと無茶できただろうからな。

 なら、このダンジョンでは俺たちが強化されるかといったらそれも違う。

 さすがに、自身の力が強化されていたら、それにもすぐ気づけるはずだろう。

 

 ということは、ゴブリンたちが弱いのだ。

 

「まあ、まだ入り口だからな。こんなもんか」

 

 序盤も序盤だし、モンスターが弱いというのもわかる。

 だけど、ゴブリンダンジョンで戦ったやつらよりも、弱い気がするな。

 なんだか頭が悪いというか、攻撃されても馬鹿正直に一直線に走ってくるのは、さすがにどうかと思う。

 

「とりあえず、このまま進むとしようか」

 

 窮地というほどでもない戦闘を切り抜け、そのまま先へと進む。

 

 その後も、コボルトや虫系のモンスターなどが出てきたが、今のところは脅威ではない。

 ただ、奥に進むほどに徐々に敵は強くなっているし、気を抜くわけにはいかないか。

 

「それにしても、モンスターがいるだけだな。宝の一つもない」

 

 仲間の一人が不満そうに声に出す。

 それは俺も薄々感じていた。なんだか広いだけで、大したことのないダンジョンのようだ。

 それとも、奥の方ならもっと良い物でもあるのか?

 

 なにもないということは、探索を続けても消耗が少ないということでもある。

 俺たちは、これまでのダンジョンよりもはるかに速いペースで、ダンジョンの探索を続けていった。

 

「広いな……」

 

 そこでわかったのだが、ここは広すぎる。

 無駄に歩かされて、戦わされて、そして奥に進めばたしかに敵も強くなるし、アイテムもちらほらと発見できるようになってきた。

 しかし、そのために行わなければならない探索量が、これまでの比ではない。

 

 だからか。

 そうして無駄に歩かせて、疲れさせて、集中力がなくなった状態では、罠やモンスターへの対処が遅れる。

 だから、こんな簡単に罠にかかってしまったということか……。

 

「くそっ! こっちが本命ってわけか!」

 

「じっとして! すぐ回復するから!」

 

 仲間の一人の足に矢が刺さる。

 スイッチを踏むことで壁から飛んでくる、よく見る罠ではあるが、集中力を欠いた状態だったためか、回避できなかった。

 そして、モンスターたちと違って、罠のほうは威力も高く非常に厄介といえる。

 案外、ここも危険な場所なのかもしれない。

 なにもない道が延々と続き、思い出したかのように攻撃されるということか……。

 

 今回は、ここまでだな。

 アイテムで負傷を治せるとはいえ、この集中力が欠けた状態が問題だ。

 このまま進んでも、また罠にかかるか、最悪モンスターの餌食になる。

 出直して、長期的に探索する必要がありそうだ……。

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