【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第214話 混雑気味の文殊の知恵

「うわあ、逃げんなよビビり」

 

「たかだか矢で攻撃されただけなのに、なっさけない」

 

「他のやつみたいに奥まできて、俺たちの経験値になれよ」

 

 根性がないNPCだな。そもそもNPCなんだから、根性とかもともとないか?

 獲物はそれなりにかかるが、途中で諦めて引き返すやつらもわりと多い。

 このあたりの無駄を、もっと改善したほうが効率的にレベル上げできそうだな。

 

「餌が足りないんじゃないの?」

 

「無茶言うなよ。俺の力だって有限なんだから、あいつら用の餌はそんなに作れないって」

 

「まあ、そんなに使い勝手よかったら、そもそもあいつらの餌にしないで、自分でアイテム作るもんね」

 

「悪かったな。しょぼいアイテムしか作れなくて。たまに良い物が出たら、ちゃんとダンジョンの奥に配置しているだろ」

 

 山川(やまかわ)が、不満そうな反応を見せる。

 こいつは、一日に何度か低品質のアイテムを作る力を、女神から授かっている男だ。

 たしかに、こいつが作るアイテムは大したことないし、金儲けや魔王退治には使えない。

 だが、こうしてダンジョンの餌とするくらいなら十分だ。

 

「それより、やっぱり広すぎるんじゃないのか? だから、根性のないNPCどもが疲れて帰っていくんだよ。奥の方が危険っていうのもあるけど、単純に距離が長すぎて引き返しているやつも相当多いぞ」

 

「しょうがないじゃない。加減が大変なのよ。あんたみたいに、大ざっぱに結界を張って終わりなのはいいわよね」

 

 げ、こっちに流れ弾が……。勘弁してくれよ。

 というか、俺だって大変なんだぞ。

 

「お前なあ……俺の結界のおかげで魔王軍には認識されないし、万が一にでも魔王軍が入れないようになっているんだろうが。それがないと、とっくに魔王に目をつけられているからな?」

 

 なんせ、こっちが行っていることは、魔王に罪を着せたNPC狩りだ。

 どうせ魔王もNPCだろうが、こいつらわりと高性能だからな。不満があったりと人間のふりがうまくて不気味だ。

 そんなやつらだからこそ、こちらに罪を着せられたと知ったら、一丁前に怒りを覚える動作をするかもしれない。

 力だけは俺たちより上だろうからな。そんなやつの怒りを買うのは得策ではない。

 

「さすがに、ラスボスが殴り込みに来たら困るからなあ」

 

「だろ? それに、常に結界を張るなんて俺の力じゃないと無理だ。俺は見えないところで貢献してるんだよ」

 

 俺が女神からもらった力。なわばりのおかげで、対象を魔王軍と限定すれば、ダンジョンを見つけられず侵入できないような結界を張れるし、ダンジョンの中の侵入者どもの様子を知覚できる。

 

 南風(みなみかぜ)の建築は、大ざっぱなものしか作れないが、ダンジョンみたいな建物を作れる。

 俺のなわばりは、その建物の認識を阻害する結界を作ったり、内部の様子を知覚できる。

 山川のアイテム作成は、侵入者用の餌であるアイテムを作れる。

 池田(いけだ)の魔物従属は、弱いモンスターを従えさせることができる。

 高槻(たかつき)の罠作成は、ダンジョンにモンスターだけでなく、罠まで設置できる。

 塚本(つかもと)の共有は、俺が知覚した情報や、池田のモンスターや高槻の罠で死んだNPCから得た経験値を他の仲間たちにも共有できる。

 

 俺たちは全員が揃うことで、噂のダンジョンのようなものを作り運営することができるんだ。

 これだけ相性のいい力の組み合わせを思いついたのだから、この世界のやつらを食い物にして、せいぜい俺たちは甘い汁を吸わせてもらおうじゃないか。

 

    ◇

 

「見つけてきたよ~!」

 

「あ、ピルカヤもか」

 

「ボクも?」

 

 監視ができないながらも、ピルカヤは情報収集をがんばってくれていたらしい。

 あの様子だと、きっと有力な情報を集めて戻ってきてくれたのだろう。

 それだけに、本当のことを伝えるのはわりと心苦しいな……。

 

「マギレマさんのところでも、一通りの情報が集まったから、取りまとめたものを聞いていたところなんだ」

 

「え~! なんだ~……出遅れちゃったか~」

 

「むしろ、ルカちゃんよく集められたねえ。聞いたところだと、ルカちゃんの天敵みたいな相手だよ?」

 

「だから、場所だけつかんで終わりだよ。残念だな~」

 

 それでも場所だけはわかるあたり、ピルカヤの能力のすごさを改めて理解する。

 対策していてもこれなのだから、人類側も相当手を焼いていそうだよな。

 

「アルマセグシアのここにあるっぽいよ」

 

「うん。セラちゃんにハラちゃんが、お客さんから聞いた情報と同じだね。じゃあ、やっぱりそこで間違いないみたい」

 

「複数の情報が一致したとわかるだけでも助かるな」

 

 なので、ピルカヤの働きも無駄ということではない。

 情報の確度を上げるためには、必要だったということになる。

 それがわかっているからか、ピルカヤはいつものように手柄を誇るように胸を張っていた。

 

「ただ、そうなると他の情報も本物ってことになりそうですね」

 

「ええ、やはり魔王様が作られたダンジョンとして認識されているみたいです」

 

 そこなんだよな。

 フィオナ様とプリミラの言うとおりだ。

 俺は断じて勝手にダンジョンを作っていないし、フィオナ様だってそれは同じこと。

 だけど、そのダンジョンに挑んでいる者たちは、フィオナ様が作ったダンジョンだと信じてしまっているらしい。

 

 宝は他よりも大したものではないが、ダンジョンそのものの難易度も低いため、ゴブリンダンジョンのような初心者用ダンジョンと言われている。

 だが、それはあくまでも浅い場所を探索した者たちの意見であり、奥まで進むと宝の質も上がり、死ぬ危険も増しているらしい。

 今の欲望のダンジョンと同じような作りというわけだ。

 それなら、似たような構造だと思って、俺たちが作ったダンジョンだと勘違いされるのもしかたがないのかもしれない。

 

「聞けば、被害者の数もそれなりに出ているとか」

 

「そうみたいですね~。自然発生したダンジョンかと思いましたけど、宝にモンスターに罠が、的確に配置されているなら、レイくんみたいに誰かが作ったダンジョンなんじゃないですか?」

 

「ついに、俺にも競合他社が……」

 

 こっちも負けていられないな。

 もっと、効率的にモンスターや罠を配置して、侵入者たちを撃退し続けるダンジョン作りを……。

 

「たぶんよぉ……レイの考え間違ってるぜ」

 

「そうか? 後でちょっと相談しながら作ろう」

 

「うわぁ……絶対疲れるんだろうなぁ……」

 

 大丈夫だ。あくまでも話し合いだから。実際に魔力を消費するのは俺だけだから。

 

「そんで、どうしますか? 魔王様。適当にウルラガでも突入させて、そのダンジョン壊します?」

 

「お、いいぜ。俺だったら、そんなダンジョン簡単にぶっ潰してやる」

 

「私も……」

 

「てめえは顔が割れてんだろ。リピアネム」

 

「残念だ」

 

 たしかに、ウルラガとリピアネムが突入したら、そのダンジョンもクリアしそうだな。

 

「いえ、私のせいとされて恨みを買うなんて今さらですし。こちらに被害がないのであれば、関わる必要もありません」

 

 フィオナ様は、特に興味がなさそうにそう言った。

 まあ、競合他社とは言ったけど、それでうちのダンジョンの侵入者が大きく減ったわけでもないからな。

 あまりにも客を持っていかれるようなら対策は必要だけど、今のところは気にする必要もないということか。

 ……でもなあ、そいつらフィオナ様に罪を着せようとしているわけだろ?

 

 ――なんか、ムカつくなあ。

 

 マギレマさんのところで収集した情報からフィオナ様がそう判断したのであれば、そのダンジョンに俺たちが関わることはないだろう。

 少し残念だ。そのダンジョンから何か学べることが期待できないのであれば、潰しておきたかったんだけど……。

 

「さて、調査も終わったことですし、ゆっくりと休みましょう」

 

 この場をお開きにすべく、フィオナ様がそんな言葉で締めくくった。

 

「ボク、別の監視しますね~」

 

「あたし、料理を待ってる子たちがいるんで~」

 

「私は畑の収穫をしに行きます」

 

「おじさんは、宿の新人教育残ってたか……」

 

 だが、さすがにまだ昼前なので、各々が本来の仕事に戻るようだ。

 

「みんな、真面目ですねえ……」

 

 なんか、若干落ち込んでいるのは、自分の指示を誰も守らなかったからだろうか?

 しかたない。ここは、俺一人で我慢してもらうとするか。

 

「俺が、フィオナ様のぐーたらに付き合いましょうか?」

 

「私を甘やかすのはレイだけです!」

 

 やや、さみしそうな顔が一気に嬉しそうに変わる。

 う~ん……このころころ変わる表情がかわいいからか、つい甘やかしている気がする。

 だが、すでに言葉は放ってしまったので、成り行きを任せるしかない。

 俺を逃さないように、しっかりと抱きしめられているので、どのみち抵抗は出来ないだろう。

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