【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第215話 感極まれしうかつな行動

「どうせなら、そのダンジョンに転移罠とかあったらよかったのになあ……参考にしたかった」

 

「す、すみませんっす! 自分がふがいないせいで、罠の研究が停滞してしまって!」

 

「ああ、いや。どっちかというと俺が力をうまく使いこなせていないせいだから」

 

 いつもなら、なんやかんやで望んだ機能の設備が出てくれるのに、最近のダンジョンマスタースキルさんは、どうにも甘やかしてくれない。

 

「転移温泉……なかなか手ごわいじゃないか」

 

 なかなか行き詰まってきたな。

 いっそのこと、ルトラやプリミラも交えて温泉の変化からアプローチを変えてみるか。

 あるいは、クララみたいな魔力の操作に長けている者を追加して、テクニティスとは別側面の意見を期待するか……。

 

「せいが出ているようだな」

 

「成果は出ていないけどね……」

 

 今日も成果なし。そう諦めていると、ダスカロスが風間たちを連れてやってきた。

 やってきたというよりは、向こうの本日の授業が終わったので、温泉を利用しにこちらに来ただけか。

 というか、もうそんな時間か……。

 

「そもそも、君たちは何を作成しているんだ?」

 

 そういえば、ダスカロスたちには言っていなかったな。

 案外、知識が広いダスカロスに相談したら、解決するんじゃないか?

 

「温泉と転移罠を融合させたいと思って」

 

「……君は、型破りなことを考えるんだな」

 

「型破りかな? いや、温泉と罠なんて、俺以外にも簡単に思いつくし、その範疇だろ」

 

「私の記憶では、温泉は宿や店舗と同じく、安全を約束していたのではなかっただろうか」

 

「まともなお客さんにはね。ただ、不正利用したやつだけを、マグマ温泉とか、凍結床に転移させたくて」

 

「ならば、問題ない」

 

 さすがダスカロスだ。よくわかってくれている。

 俺だって、なにも温泉の客全員を、罠にはめようなんて考えていない。

 

「それで魔力に通じているテクニティスと、日々悩んでいたわけか」

 

「ふがいないっす! 自分の得意分野でお役に立てないなんて!」

 

「あまり背負い込まないことだ。レイがそう責めたわけでもあるまい?」

 

「どっちかというと、俺のスキル制御の問題だからなあ」

 

 テクニティスはあくまでサポートしてくれている立場なので、そんな協力者に責任を押し付けるつもりはない。

 

「思うに」

 

 そんなふうに責任の所在について考えていると、ダスカロスは顎に手を当てて意見を述べた。

 

「まずは転移のみに、しぼったほうがいいのではないか?」

 

 なるほど……。いきなり温泉+転移と考えていたけれど、その前に転移の機能だけを完成させるべきか。

 たしかに、あれもこれもと考えるよりは、一つずつ解決していくのが大切だ。

 どうにも、頭の中まで行き詰っていたらしい。そんな手段すら思いつけなくなっていたとは。

 

「ありがとう。ちょっと、そこからアプローチしてみるよ」

 

「無理はしないように。テラペイアが嘆くからな」

 

 大丈夫。さすがに、テラペイアが嘆くような、ワーカーホリック組ほどは残業しないから。

 ただ、せっかくの構想なので、試せるうちに試したいな。

 

「レイ様! 自分まだまだいけるっす!」

 

 そんな俺の気持ちを汲んでくれたのか、テクニティスは業務終了後だというのに、力強く申し出てくれた。

 

「無理してないか?」

 

「サラマンドラというか、精霊舐めちゃだめっすよ」

 

 ……ピルカヤ。ルトラ。なんということだ。精霊といえば、仕事中毒じゃないか。

 テクニティスはしっかりと切り替えられるタイプなので気づかなかったが、もしかして精霊という種族が元々疲れ知らずなので、あいつらは平然とそれをこなしているだけなのか?

 ……いや、それならテラペイアに止められるのはおかしいな。

 やっぱり、あの二人は無茶する組なだけだろう。

 

    ◇

 

「それじゃあ、叱られない程度にちょっとだけ試すとしよう」

 

「了解っす!」

 

 とはいってもだ。テクニティスのほうはともかく、俺はなにを作ればいいんだろう。

 転移罠に発展しそうな罠……。大きな湖でも作って、そこに入った者を転移させるとか……。

 いや、それなら温泉と発想が同じか。

 

「レイ様大丈夫っすか? 疲れているのなら、自分は明日でも問題ないっすけど」

 

「いや、ちょっと考え事をしていただけで……」

 

 テクニティスが、こちらを心配したように尋ねてくる。

 だけど、俺はまだまだ元気なので大丈夫だ。

 これまでと違って温泉で作業する必要はないし、とりあえず、適当な部屋で作業を開始してしまうか。

 そう思いながら、空いている部屋の扉を開く。

 

 ……扉。

 

「これか……?」

 

 ダンジョンは、主に道と部屋で構成されている。

 それらを隔てているものこそ、この扉であり、これを開いて出入りするのは、別の場所に行く行動に他ならない。

 それに、扉を開けたら別の場所に転移する、というイメージは非常になじみ深いものだ。

 

「やってみるか」

 

「閃いたっすか!?」

 

「ああ。これからこの扉を作ったり消したりするから、テクニティスは、扉自体に転移魔法をほどこせないか試してみてくれ」

 

「レイ様……疲れているっすか?」

 

 失敬な。正気だし、むしろいいアイディアが思い浮かんだと自負しているぞ!

 まあ、こっちの世界ではなじみがないか。

 

「大丈夫だから、とりあえずやってみようか」

 

「了解っす!」

 

 扉を消す。扉を作る。傍らでテクニティスが、その様子の魔力を観察し続ける。

 何度か繰り返すうちに、テクニティスは扉の作成時に、自身の魔力でこちらの補助をしてくれるようになった。

 なんとかならないかなあ……。もう少しで、なんかつかめそうなんだけど……。

 

「レイ~。仕事終わりましたよね~? 一緒に、ご飯食べましょう」

 

「あ」

 

 やば。扉を作成しようとした瞬間に、フィオナ様が近づいてきた。

 あのままでは、フィオナ様が作成した扉に挟まれてしまう。

 

「キャンセル。キャンセル。キャンセル!」

 

 そんな機能はない。だけど、ついそう言いながら、なんとか扉を別の場所に作成する。

 危なかった……。まあ、フィオナ様であれば扉に挟まったり、切断されることはないだろうし、なんなら扉の方が壊れるだろうけど。

 とにかく、扉とフィオナ様が融合するような事故は防げた……。

 融合か。もしかして、順番が逆なんじゃないか?

 

「テクニティス」

 

「はいっす」

 

「先に、転移魔法を作ることってできる?」

 

「できるっすけど……自分の転移魔法はクララたちと同じで、あらかじめ設置した座標に飛ぶもんっすよ?」

 

「うん。座標はとりあえずいらないから、転移魔法だけ作ってみて」

 

「それだと、どこにも転移できないっすけど……いや、やってみるっす!」

 

 疑問に思う部分もあったのだろうけど、俺の頼みを優先してくれるのはありがたい。

 テクニティスは、どこにも飛ぶことができない転移魔法を作成し始めた。

 こちらも、その様子をよく観察して、タイミングを見計らって……。

 

「ここか」

 

 転移魔法に重ねるように、扉を作成する。

 

「うわっ……ど、どうしたっすか? レイ様。あ、すみません。自分の魔法消えちゃったっす」

 

 いや、たぶんテクニティスの魔法は成功している。

 そして、俺の扉作成も成功している。

 その扉は、これまでと違って、マーブル状の怪しげな色をしていた。

 

「できたかもしれない」

 

「まじっすか!?」

 

 あとはこれを試してみるだけだ。

 と、その前に、フィオナ様を放置してしまっていた。

 

「フィオナ様。ありがとうございます。おかげで、取っ掛かりがつかめた気がします」

 

「なんだかよくわかりませんが、レイが嬉しいのなら私も嬉しいです。感謝の気持ちとして、私にハグしてもいいんですよ?」

 

「ええ、本当にありがとうございます」

 

 フィオナ様を抱きしめながらお礼を言う。

 やっと……成果のようなものが出来上がりそうだ。

 

「……あ、あの」

 

 なんだ? フィオナ様が照れくさそうにしているけど、なにを今さら。

 フィオナ様だって、いつも俺のことを抱きしめてくるじゃないか。

 あれ、そういえば、俺から抱きしめたことはないな。まあ、些細な違いにすぎないだろう。

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