【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第216話 どこまでもどこへでも

 フィオナ様と抱きしめあうこと数秒。こちらに向かってくる足音が聞こえた。

 俺のほうからは見えているが、あれはダスカロスと風間(かざま)たちだな。

 

「……無理をしていないか、様子を見に来たのだが、邪魔してしまったようだ。すまない」

 

「ひゃあ! だ、ダスカロス! な、なんでしょうか? 邪魔じゃないですけど? 別にやましいことなど何一つしていませんが!?」

 

 フィオナ様の目が、心なしかグルグルとしている。

 さすがに、大勢の前で抱擁しているところを見られるのは、フィオナ様といえど恥ずかしいらしい。

 

武巳(たけみ)~。私もあれやって~」

 

「あ、ずるい。私も~」

 

「はいはい」

 

 そして、風間たちよ。お前ら強いな……。

 人目をはばからずに、三人で抱擁しあう姿には、これっぽちも恥ずべきことはないといった感じで、非常に堂々としている。

 

「この扉は……」

 

 ダスカロスはダスカロスでマイペースなのか、そんなフィオナ様や風間たちを気にすることもなく、俺が作成したばかりの扉を観察していた。

 

「テクニティスの転移魔法に、扉を混ぜてみたらなんかできた」

 

「なんか……で、できるものなのか。私の常識にはないな。それは」

 

「合成魔法みたいなのって、ないの? あと、アイテムと魔法の合成とか」

 

「非常に繊細な力加減と運が必要で、失敗したら消滅するし、周囲への被害も大きい。勝算もなくやるべきではないな」

 

 思いつきでやってすみません……。

 なんなら、今後はいろんな魔法と設備を組み合わせようとまで考えていたけれど、どうやらあまり褒められたやり方ではないようだ。

 

「だが、こうも見事に魔法と物質が混ざっているとは、どうやら私の常識では測れない存在らしいな」

 

 それは、扉が? 俺が? テクニティスが?

 

「試してみたのかね?」

 

「いや、今できたばかりだから、まだ検証はしていないよ」

 

「なるほど、それで魔王様と抱擁しあっていたと」

 

「いけませんか!? レイは私のですし、問題ないと思いますけどねえ!」

 

「落ち着いてください。責めていません」

 

 恥ずかしさが勝っているのか、フィオナ様は開き直ってしまった。

 まあ、風間たちみたいに、周囲の目を気にせずに完全に自分の世界に入るのは、あれはあれで相当難しいことだからな。

 魔王といえど、最低限周囲への配慮があって、いいことじゃないか。

 

「レイ様。この扉、試してみるっすか?」

 

「そうだな。ちょっと、試して今日はそれで終わりにしておこう」

 

 これ以上働いていると、テラペイアに要注意魔族として認定されかねない。

 なので、結果だけを見て終わりにしよう。

 

「それじゃあ、扉を開けて……」

 

「え、なに? みんなでおじさんのお風呂シーン覗いて、どこに需要あるの?」

 

 うん。どうやら、大成功といえるだろう。

 扉の先には、入浴中のリグマがいた。

 なので、一度閉める。すると、リグマの声はもうこちらへは届かない。

 どうやら、扉を閉めることで、完全に向こうとのつながりは途絶えたらしい。

 

 もう一度開いて試してみるか。

 リグマのお風呂シーンにつながるというのであれば、危険なことはなにもないからな。

 そう思い、軽い気持ちで扉を開く。

 

「村……?」

 

 ダンジョンではない。どこかの村みたいな場所につながった。

 まずいと思って、すぐに扉を閉める。

 あれ、絶対外界につながったってことだよな……。

 幸い、誰かに姿を見られてはいなかったようだけど、最悪の場合は魔王軍の姿が見られてしまっていた。

 

『レイ~。なんか、ダークエルフの村に、君が現れていたよ~』

 

「ピルカヤ……。そうか、さっきのはクララたちの村か」

 

 なら、人もいないだろうし、誰かに見られた心配はいらないだろうな。

 よかった……。あれが、主要な国だったりしたら、勇者たちのいる場所だったりしたら、大問題だったな。

 イドとか、こっちを見た瞬間に全力で殺そうとしてきただろうし。

 

「ということは、開けるたびにランダムな場所とつながる扉?」

 

「そうみたいっすね……ちょっと、使い勝手は残念といいますか……」

 

「だよなあ……」

 

 まず、自分たちで使うのは遠慮しておきたい。

 外界にもつながるというのであれば、つながった先が敵地なんてことは、珍しくもないだろう。

 ならば、侵入者へのトラップとして使うか?

 それも、難しいだろう。兎にも角にも、つながる先がランダムなのが、使いにくさを助長させている。

 

「没かなあ……」

 

「でも、前には進めたっす! この調子で」

 

「休みなさい、君たち。それは徹夜コースだぞ」

 

「たしかに……」

 

 ダスカロスに止められてしまったが、このままだと納得がいく成果が出るまで、根をつめそうだったし、ちょうどいい区切りかもしれないな。

 となると、この失敗作はどうするか。

 メニューを確認する。すると、やはりというべきか、しっかりとこの扉も追加されていた。

 

 転移扉作成:消費魔力 30

 

 わりと高いな……。おのれ、足元を見やがって。

 失敗作だからか、魔力消費についつい愚痴りそうになる。

 いや、ダンジョンマスターさんはがんばってくれている。失敗した俺が問題なのだろう。

 

「とりあえず、この扉は破棄しておくか」

 

「ええ!? もったいないっすよ! せっかく、転移効果が付与されたっすから。保管しておかないっすか?」

 

「テクニティスの言うとおりだ。なにも、破棄しなくてもいいのではないか?」

 

 む……。たしかに、消費魔力30とはいえ、再作成には魔力を消費するからな。

 俺の魔力だと三つも作れないし、四分の一ピルカヤくらいと考えると、無駄にするのも問題か。

 

「じゃあ、明日はこの扉を検証しつつ、転移先を固定できないか考えようか」

 

「了解っす!」

 

「では、食事に行くとしよう。マギレマが待っている」

 

「あれ、ダスカロスもまだなの?」

 

「ああ、私は……なんというか。マギレマが少し苦手でな」

 

 意外だ……。人当たりのいいマギレマさん。良識のあるダスカロス。

 二人に限っては、誰かを苦手に思ったり、争ったりなんてことはないと思うのだが。

 

「昔なんかあったとか?」

 

「いや、マギレマというか。彼女の足が、私を威嚇してくる」

 

「……犬系だからか」

 

「そのようだ。あちらのなわばりを奪うつもりなどないというのに」

 

 あの子たち、けっこう本能のままっぽいからなあ……。

 自分たちの領域に、ダスカロスという強そうな狼が来たら、威嚇するのもしかたがないのかもしれない。

 

「ということで、君に期待している」

 

「俺?」

 

「聞けば、マギレマの足は君に懐いているそうじゃないか。君が同行してくれたら、私も安心して食事ができると思う」

 

「まあ、ちょうどいいし。それくらいなら、全然問題ないよ」

 

 どうせ、俺とテクニティスもこれから食事だったからな。

 というのは、どうも浅慮すぎたらしい。

 

    ◇

 

「違うと言っている!」

 

「こら! 大人しくしなさい! ダスカロス~! なんで、よりによってレイくんと一緒にきちゃうの~」

 

 ……レストランに着いた瞬間、マギレマさんの足は一瞬で状況を理解したらしい。

 俺とダスカロスが一緒に食事に来た。それはつまり、俺という存在をダスカロスに奪われたと思ったようだ。

 なわばりだけでなく、俺まで奪われたと勘違いした犬たちは、それはもうすごいことになった。

 この子たち、胴が長いのでその気になればソウルイーターみたいに、巻き付けるんだな……。

 

「レイ様。大人気っすね……」

 

「代わるか?」

 

「いえ、自分には荷が重いっす……」

 

 マギレマさんの足がすべて俺の体に巻き付き、顔中を舐められる。

 いくつかの足は、ダスカロスに向けて唸り声をあげている。

 これ、俺が一緒じゃないほうがよかったよな……。

 

「あ、なにしているんですか! レイは、私のなんですけど!」

 

「あの……フィオナ様まで混ざると、収拾がつかなくなりそうなので、後にしてもらえると助かります……」

 

「むむむ……まあ、私はちゃんと待てる魔族ですからね。その代わり絶対に、抱き枕にしますので」

 

 なんだか……大変なことになってしまった。

 ダスカロスに謝罪されるが、彼はまったく悪くないと思う……。

 俺も悪くない。だいたいマギレマさんとフィオナ様のせいだな。

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