【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第217話 新装開店サービス期間は終わりました

 長い。ひたすらに長い通路を進む。

 そんな道中で、たまに現れるモンスターを倒し、罠を回避し、宝箱からそこそこのアイテムを回収する。

 これだけならば、やたらと広いだけのゴブリンダンジョンみたいなものだ。

 だから、本命はこのあくびが出るような道の先にある。

 

「やっと、変化したか」

 

「噂どおりだな。奥に進んだら単調なダンジョンではなくなり、そこのモンスターも罠も凶悪になる。代わりに回収できるアイテムは期待できると」

 

 そのあたりは、欲望のダンジョンに少しだけ似ているかもな。

 もっとも、あちらは序盤から見返りもあるし、ここまで面倒な道のりを進む必要もない。

 欲をかかなければ問題ないはずだが、肝心のアイテムへの期待は、あちらのダンジョンと比べてだいぶ怪しくなってきている。

 

 問題は、やはり罠か。

 モンスターたちは、はっきりいってそこまで強くない。

 ただ、数が多いのでうっとうしく、奥の部屋では、モンスターと罠が同時に襲いかかることもある。

 それが実に厄介であり、ここから先はそう簡単には突破できないようだ。

 

 それならば、引き返すしかない。中には、無理に進んで怪我をするか、最悪命を落とす者さえいる。

 だけど、俺たちはこのダンジョンは、そこまでして攻略すべきものじゃないと思い始めた。

 どうも、アイテムの質がよくない。これならば、欲望のダンジョンに通ったほうがいいだろう。

 

「はあ……うまみがないな」

 

「ないわけじゃないけど、少ないよね」

 

「なんかもっと、危険に見合ったリターンが欲しいところだ」

 

 まあ、無茶は言っているとわかっている。

 魔王だって、別に俺たちにアイテムを与えているわけではないのだから、そんなこと言われても困るだろう。

 だが、こっちも命がけで探索をしている以上は、危険と報酬が釣り合わないダンジョンなんて入りたくない。

 

「ここはもう、放棄するか」

 

「だな。目ざといやつらは、とっくに放棄し始めているし、俺たちもそれに続くべきだろう」

 

 むしろ、今までのダンジョンが良すぎたんだ。

 少し前であれば、ダンジョンの攻略中に、満足できるアイテムを回収できることなんて、ほとんどなかったからな。

 最近発見されたダンジョンが、やけに効率がよかったせいか、知らず知らずのうちに俺たちは贅沢になっていたらしい。

 

「モンスターがあふれるようであれば、国が間引くだろう」

 

 それが、ダンジョンの正しい在り方だった。そんな一昔前の在り方に戻るだけ。

 俺たち冒険者は、近いうちに全員ここから撤退することになるだろうな……。

 うまみがないダンジョンは、国が最低限の対応をすればいいだけだ。

 

    ◇

 

「来た来た! 今度はちゃんと殺せよ!」

 

「そんなこと言われたって、モンスターにはもう指示を出しているから、今さらできることはないぞ」

 

「罠も同じ~。なんか、最初のころと違って、簡単に死なないやつばっかりで、嫌になるわね」

 

 そう、最近のダンジョンは空振りばかりだ。

 侵入したやつらをしとめることができず、アイテムだけを盗まれていく。

 せっかく配置したモンスターも、罠も、だんだんと慣れてきたのか、対処されることばかりだ。

 

 モンスターは弱いからしかたないにしても、罠はそれなりに威力が期待できるはずなのに、なんでこうも上手くいかない。

 そもそも、侵入者の数が少なすぎる。おかしい。アイテムはちゃんと用意しているだろ。なにが不満なんだ。

 

「ああ、くそっ! こっから先が罠ゾーンなのに、逃げすぎだろ!」

 

「やる気ないなら、来んなっつーの」

 

「なんか、根性ないやつばっかりになってきてない?」

 

「それに、ダンジョンにくるやつもかなり少なくなっているみたいだぞ。やっぱり、宿とか商店が入り口にないとまずいんじゃないか?」

 

 何が違うんだ?

 俺たちのダンジョンだって、モンスターもアイテムもあるだろ?

 この国では情報が多く行き交うから、ダンジョンのことだって散々聞いてきたぞ。

 要するに、簡単に倒せて経験値を稼げるモンスターと、金を稼ぐためのアイテムを持ち帰れるようにすればいいんだろ?

 

 そうして、欲につられたNPCたちを好きに殺し続けて、レベルを上げるだけじゃないか。

 街の中にダンジョンを作ったから、通うだけならこっちのほうが近いだろ。

 それに、宿や商店は、街から通うのであれば、わざわざダンジョンに作る必要はないはずだ。

 

「わっかんねえ……なんなんだよ」

 

「ここまで大がかりな準備をしたんだから、今さら引き返せないわよ? なんとかして、NPCたちが大量にここにくるようにしないと」

 

「いっそのこと、ここに魔王とか魔王軍の幹部みたいなのがいるって噂流す?」

 

「そうか……そうすれば、さすがに国もほうっておけないからな」

 

    ◇

 

 ロマーナさんとダスカロス先生から、勇者として鍛えてもらっている。

 カール師匠から、石細工の技術を教えてもらっている。

 マギレマさんのレストランで、魔王軍の一員として働いている。

 休日は、新《あらた》と友香《ともか》と、外出したり、ダンジョン内を楽しんだり、のんびりと過ごしている。

 充実している。それは間違いない。間違いないんだけど……。

 

「時間と体がもっとほしい」

 

武巳(たけみ)くん……。それは、あまりよくない兆候だと思うよ?」

 

「そうよ。ピルカヤさんやマギレマさん、それに他の魔族やダークエルフの人たちみたいに、テラペイアさんに怒られるわよ?」

 

「だよねえ……。でも、その人たちの気持ちもわかるよ。やれることとやりたいことがどんどん増えてきて、毎日楽しいから」

 

 城の中で、なにもわからず、なにもできず、ただ無駄な時間が過ぎるのを待っていたのが嘘みたいだ。

 あのときに、もっと自分から率先して動いていたら、あの国でももっと充実した日々を過ごせたのだろうか。

 思えば、国松(くにまつ)にもっと必死に食らいつくべきだったはずなのに、八つ当たりでひどいことをした。

 

「おや、カザマたちもご飯っすか?」

 

「テクニティスさん。いえ、僕たちはマギレマさんのところで働いているので」

 

「ああ、仕事っすか。お疲れっす。……そういえば、カザマってカールから、石細工習ってるっすよね?」

 

「ええ。師匠には、まだまだ及第点はいただけていませんが」

 

 まだまだ、いろんなことが中途半端だ。

 もっと、強くなって上手にならないといけない。

 その点を考えると、ロペスって僕たちの中で特にすごい気がするなあ。

 

「自分、最近カールに魔法工芸を教えてるっすから、カザマにもそのうち教えてもいいっすよ」

 

「本当ですか? それは、ありがたいです」

 

「まあ、カールの許可が下りてからっすけどね」

 

「う……」

 

 となると、まだまだテクニティスさんの教えは先の話になりそうだ。

 きっと師匠も、もっと基礎ができるまで許可を出してはくれないだろう。

 というか、焦るなとか生意気言うなとか叱られるかもしれない。

 

「もっとがんばらないとなあ……」

 

 給仕をしつつ、決意を改める。

 別に気もそぞろというわけじゃない。幸いというべきか、こういう給仕の仕事はすでに慣れたもので、マギレマさんからも評価をいただいている。

 前の世界でのバイトが、こんな形で役に立つなんて、なにが役立つかはわからないものだ。

 だから、仕事をこなしつつも、お客さんの会話まで耳に入ってくる。

 

「で、どうなんだよ? 例のダンジョン」

 

「ありゃあだめだ。実入りが全然ない」

 

「宝は少ないし、質も悪いからな」

 

「だけど、安全にモンスターを狩ることはできるんじゃなかったのか?」

 

「それも、あれだけだだっ広いとなあ……。時間がかかりすぎて効率が悪いぞ」

 

「モンスターたちが密集して強くなる場所は、こっちが死にかける罠も大量にあるしな」

 

「なんか、ちょうどいいリスクとリターンがない」

 

「結局は、欲望のダンジョンが一番か」

 

「距離以外は、あそこに勝るダンジョンなんてないんじゃないか?」

 

 これって、マギレマさんが集めている情報だったっけ。

 たしか、ここアルマセグシアに、レイさん以外が作ったダンジョンが出現したとかいう。

 最近は、この手の会話をするお客さんも多いし、あとでまとめてマギレマさんに報告しないとな。

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