【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「それじゃあお疲れ~。いや~、カザマくんに、セラちゃんに、ハラちゃんは、本当に頼りになるね~」
「い、いえ、慣れているだけなので」
「その慣れているってことは、お姉さんもっと自慢してもいいと思うけどな~。ルカちゃんみたいに」
ピルカヤさんみたいに……。さすがに、あそこまで確固たる自信は持てないかな。
だって、所詮はバイトの延長だし、あんな手柄をたてられているわけじゃない。
「失礼します!」
あとは解散といったタイミングで、
僕たちが言えた事じゃないけど、この二人もいつも一緒に行動しているな。
「あれ、どうしたの? トキトウちゃん」
「あ、マギレマさん。すみません。まだお仕事中でしたか?」
「いや? もう終わったよ。もしかして、この子たちに用事?」
「そうです!
僕の名前は呼ばれないけど、別にはぶられているとかそういうわけじゃない。
女子は女子で、その手のグループがあるというだけだ。
断じて疎外感とかはない。……それはそれとして、僕もロペスと一緒に見に行こうかなあ……。
というか、時任さんの発言って、要するに魔王様がまた宝箱開封の儀を行うってことだよね。
すでにアイテム配布と考えているあたり、彼女の中では魔王様はまた目当てのものを入手できないと決まっているらしい。
……もしかして、選択肢ですでに結果がわかっているとかじゃないよな?
「あの……時任さん」
「ん? どうしたの?
「いや、それは別にいいんだけど。もしかして、選択肢ですでに魔王様がなにを引き当てるかわかってる?」
「い、いやいやいや! さすがに、それで喜んでたら、私不敬で死ぬからね!?」
よかった……。最低限、それが不敬だという自覚はあったのか。
だとしたら、彼女の中でも、魔王様の未来は不確定というわけだ。
魔王様が喜ぶことになるか、レイさんとイチャつくことになるか、どちらの未来になるかは、まだ誰にもわからない。
新と友香を先に向かわせて、僕は僕でロペスと合流してから開封の儀を見に行くことにした。
魔王軍の一大イベントなわけだし、開催することがわかっているのであれば、わりとみんなが見学に行くからね。
ロペスやダークエルフの方たちも、興味があることに変わりはないみたいだ。
◇
「レイ~」
「はいはい」
魔王様が、レイさんに頭をなでられている。
……やっぱりさあ。そういう関係ってことでいいんだよね?
というか、レイさん以外そんなことできないもんね。
「……ボスがいなかったら、しばらくビッグボスは機嫌が悪かったんじゃねえのかな」
「そんな魔王様の感情を変えることができるなんて、やはりレイ様はとんでもない方だねえ……」
ロペスとクララさんが、なんだか恐ろしいものを見るように、そんなことを言っている。
なるほど……。そういう見方もあるのか。
もしも、この場にレイさんがいなかったら……。
狙ったアイテムが出ずに、期待を裏切られた魔王様。
しばらく機嫌が悪い状態で、魔王軍全体がその感情や魔力にあてられて、ピリピリした状態になる。
僕にはまだわからないけれど、特に魔力によるプレッシャーがすごいみたいだから、ここで暮らす者たちの精神にも重圧がかかる。
その結果、今みたいにのびのびとした仕事なんてできずに、仕事の成果や質が下がってしまうことだろう。
それが定期的に繰り返されるとなると、なんだか、居心地の悪い職場になりそうだなあ……。
「はあ……。それでは、これらの戦利品はいつもどおり、みんなで使ってください。喧嘩はしないように」
そう言って、魔王様はレイさんを抱えて去っていく。
噂では、魔王様の寝室に運ばれているとか……。大人な関係だ……。
「ボスとビッグボス。今日もすげえな……」
「ああ。僕たちも、いつかはあんなふうに……」
「タケミ。お前が勇者として、がんばろうとしているのは知っているが、さすがにああなるのは……」
「? 勇者は、関係ないんじゃないかい?」
「お前は……心根が強いな。俺には、とても目指せないぜ」
ロペスも……? 驚いた。いや、彼ならたしかに良い仲の女性がいても不思議ではないけれど。
普段からそんな様子を見せないし、そもそも相手と思える人も見た覚えはなかったからだ。
……もしかして、クララさん? たしかに、二人が一緒にいることが多い気がする。
だとしたら、玉の輿? いや、ダークエルフたちの境遇を考えると、苦労も多そうかな。
「僕は、君のことを応援しているよ。ロペス」
「おいおい、よしてくれ。俺は今に満足している。そんな高みを志すつもりはないんだ」
そういう考えもありなのかな……?
たしかに、僕も今の生活には満足している。
毎日が充実していて、隣には新も友香もいるからね。
だけど、魔王様やレイ様のようにと思ってしまう。
「それよりも、セラとハラがなにか獲得して戻ってきたみたいだぜ」
「本当だ。相変わらず、たくましいなあ……」
つい、思考に没頭してしまっていると、二人が今回の戦利品を持ってきたみたいだ。
なんだろう。小さいアクセサリーのようなものだけど、二人が嬉しそうならなんでもいいか。
「
「僕? いや、僕よりも君たちが」
「ちゃんと三人分もらってきたから大丈夫だよ。ほら、おそろい」
そう言って、二人が手に持っていた小さなアクセサリーを見せてくる。
でもこれ……。どうやってつけるものなのかな?
あれ……? もしかして、これってピアス? 僕、こんなものつけたことないんだけど。
「へえ、ピアスかい。いいんじゃねえの?」
「でしょ? さすがロペスくん。いっぱいつけてるだけあるね~」
うん。たしかに、ロペスは耳にいくつも穴を開けているね。
転生する前もつけていたらしいけど、こっちでもわざわざ穴を開けたみたいだ。
いや、だけど……。僕にとっては、全然馴染みがないな。
「え……。つけるの? 耳に穴が開くんだよ? 痛くない?」
しり込みしてしまう。風紀的な意味だけでなく、痛そうという点の不安のほうが大きかった。
「問題ないぜ。ボスもビッグボスも、それに周りの魔族たちも、そのへんは寛大だ。俺を見てりゃあ、わかるだろ?」
「いや、それはそうなんだろうけど……」
ロペスという前例があるのはわかっているから、ここでの風紀的な問題は気にしていないとも。
万が一、元の世界に戻ることがあるとしたら、この体は関係がないので、穴が開くのも問題はないだろう。
だけど……。
「痛くない?」
つい、そんなことを聞いたらロペスは驚いたように目を見開いた。
なんだよ。悪いか。初心者なんだぞ。そこが気になるに決まっているじゃないか。
「問題ないだろ。普段の自分のこと考えてみろよ」
「僕のこと……?」
「そうそう。だって、私たちどうせ毎日の特訓で体に穴くらい開くから、慣れちゃったよ」
「さすがに、欠損とかはまだ無理だけどね~。まあ、ロマーナさんやダスカロス先生との訓練に比べたら、このくらいなんてことないでしょ」
「あ……」
まあ、そうか。なんというか、戦闘状態という非日常だから気にしていなかったけれど、僕たちってわりと負傷にもなれていたんだなあ……。
新が、聖女として傷を癒してくれるからか、なんかもう当たり前になっていた。
「俺よりよっぽど痛みに強いだろうし、今さらピアス程度どうってことないと思うぜ」
ロペスが後押ししてくれるが、どうだろう。
ロペスの場合、なんか僕たちよりもよほどそういうのに慣れてそうだよね。
修羅場をくぐっていそうというか……。
とにかく、これを装着することは問題がなさそうだ。
おそろいか……。なんというか、ちょっと嬉しいね。