【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第220話 七色式嫉妬の炎

「意外となんとかなるもんだ」

 

「自分がいなくても、レイ様ならあっさりと作っていた気がするっす」

 

「いや、そんなことないぞ。俺だけだと、たぶん転移扉がそもそもできていないし」

 

 テクニティスのサポートは、非常に役立っている。

 転移温泉が出来上がったのも、きっとテクニティスのおかげだろう。

 まあ、まだまだ転移先がランダムという大問題を抱えてはいるが、一歩前進できたのはいいことだ。

 

「ここから、転移先の調整っすよね。そっちは、どうにも先が見えないっす」

 

「扉から温泉に変わったおかげで、開閉のたびにランダムってことはなくなったんだけどな」

 

「だけど、レイ様が作成するたびにランダムなんすよね」

 

「せめて、危険じゃない場所につながるのなら、ランダムでもいいんだけどな」

 

 危険というか、人類の住処につながらなければいいと思う。

 むしろ危険な場所につながるのは大歓迎だ。そうすれば、どこに転移しても高確率で侵入者を倒せるからな。

 

「なんか、死ぬような場所にだけ転移しないかなあ……」

 

「……っす」

 

「テクニティスが引くようなこと、言ってんじゃねえよぉ……」

 

「やあ、アナンタ。テクニティスは引いてないぞ。きっと、危険な場所をピックアップしてくれていたところだ」

 

「が……がんばるっす!!」

 

「やめとけって……。レイ、パワハラみたいな真似すんなよぉ」

 

「え、そうなってた? マジ?」

 

 それはだめだ。

 魔王軍は、みんな仲良くアットホームな職場を目指すべきだからな。

 それも、口だけでなく本当にそうあるべきだ。

 パワハラなんて横行するようなことがあれば、自身であろうと罰する必要がある。

 

「ちょっと、プリミラに怒られてくる」

 

「たまに、レイのそういうところわかんなくなるって、リグマのやつも言ってただろぉが!」

 

 そう言えば、前に似たようなこと言われたな。

 さすがは本体と分体だ。考えることがどこか似ている。

 

「じ、自分はいけるっすけどね!?」

 

「やめとけって……。お前じゃ、まだレイについていくのは荷が重い」

 

 ……いや、普通逆じゃないか?

 四天王の分体と、魔王軍の幹部なんだから。下っ端の俺がむしろ二人についていくべきだろう。

 

「よし! 俺も、もっとがんばるから!」

 

「なんで、悪化しそうになってんだよぉ!!」

 

 アナンタの悲鳴は、しばらく続いた。

 なんだか、不幸な行き違いがあったらしく、俺もアナンタもテクニティスも、一旦冷静になれたところで、再度作戦会議だ。

 

「そういえば、転移先の固定だけじゃなくて、もう一つやっておくべきことあった」

 

「なんっすか? 色っすか? 色っすね? 自分も、ちょっと不気味な色だな~って、思ってたんっすよ」

 

「たしかに、なんか黒とか銀とか紫がマーブル状に混ざり合ってるもんなあ……。不気味だ……」

 

「なんだぁ? それは、俺やリグマのスライム状態の体に対する嫌味かぁ?」

 

「……そういえば、アナンタとリグマって、スライムだったな」

 

「そっちかよぉ!」

 

 いや、忘れていたわけじゃないぞ。

 リグマの種族を忘れるほど、俺だってボケてるわけではない。

 ただ、普段から人間に近い姿だから、ついついスライム状態が本当の姿ってことを忘れていただけだ。

 イドと戦ったときとか、リグマは体の一部をスライム化させていたけれど、たしかに、この怪しげな温泉の色に似ているかもしれないな。

 

「冷静になって考えると、この色だと、侵入者たちが浸かってくれないか」

 

「温泉って、気づかなさそうっすね……」

 

「じゃあ、課題は三つってことだな。レイのほうは、なにが気になっているんだ?」

 

「俺は、この温泉を時間経過で切り替えられないことが気になる」

 

 そもそも、この温泉トラップの作成理由は、無断で有料温泉を使うような退場願いたい客層を、深夜に排除するためだ。

 なので、一番理想的なのは、日中は普通の温泉だけど、無断使用される時間帯のみトラップへと変わること。

 それも毎日となると、できれば時間経過で自動で切り替わってほしい。

 

「色は後回しにして、まずは時間で切り替えられるかを進めたいっすね」

 

「そうだな。最悪、入っている途中に切り替えてしまえば、色が変わったことに気づいても遅いからな」

 

「急に俺たちみたいな色になって、次の瞬間に見知らぬ場所って、なんなら下手に色を変えないほうが怖そうだなぁ……」

 

「よし、色の問題はなくなった」

 

 ラッキーだったな。

 言われてみれば、こっちのほうがインパクトがあるし、不正利用者の心に傷を負わせられるかもしれない。

 

「そこで、迷わず恐ろしいほうをとるっていうのが、レイなんだよなぁ」

 

「じゃあ、通常の温泉と、転移温泉の切り替えが課題っすね!」

 

「いっそ、ルトラのやつでも呼んでみるかぁ? 扉と違って温泉になったのなら、あいつも役立ちそうだしよぉ」

 

「なるほど、いいなそれ。精霊二人がかりなら、なんかうまくいく気がしてきた」

 

 さすがはアナンタだ。

 冷静に適切な人材を選んでくれる優秀さは、四天王の分体として長年魔王軍に所属しているからかもしれない。

 

    ◇

 

「精霊を集合させているのに、ボクだけ呼ばれないってなんなの!?」

 

 長年魔王軍に所属しているけど、冷静じゃない四天王がやってきた……。

 

「いや、そういうつもりじゃなくて」

 

「なに? ボクより、ルトラやテクニティスみたいな、若い精霊のほうが好みなの? ボク、優秀なんだけど?」

 

 ピルカヤの沸点よくわかんないんだよなあ……。

 精霊系あるいは、温度系のなにかと比較されて、自分が劣っていると思われるのが嫌ってところか?

 

「ピルカヤにはいつも世話になっているし、今後もすごく頼りにしているけど」

 

「うん……。うん? けど? けど、なに?」

 

 近いなあ……。真っ黒な中の金色の瞳が、俺のことを覗き込んでいる。

 

「転移温泉の改良だから、魔力に長けたテクニティスと、水質に長けたルトラが適任だと思ったんだよ」

 

「う~ん……。ついでに、マグマにすれば、ボクも役立つかもよ?」

 

「誰も入ってくれなくなるからだめ」

 

「ちぇ~……」

 

 不満そうではあるけれど、自分の得意分野ではないとわかったからか、ピルカヤは大人しく下がってくれた。

 そんなピルカヤを、後輩精霊二人は憧れのまなざしで見ている。

 わりとダメな面を見せていたような気がするけれど、あれでもいいんだ……。

 俺が、フィオナ様はポンコツでダメダメなところが、かわいいと思うようなものかな。

 

「どう? ルトラ。日中は普通の温泉で、営業時間外に転移温泉にできそう?」

 

「おそらく……可能だとは思います。テクニティスと協力して、転移の魔力と水質を解析さえできれば、その制御自体はそこまで難しいものではありませんから」

 

「さすがは水のスペシャリストだな。頼りになる」

 

 俺の脳裏に悪魔な少女が思い浮かんだが、彼女自身も水質の管理に限っては、ルトラに分があると太鼓判を押していたからな。

 きっと、この件に関しては、精霊二人が適切な人材のはずだ。

 

「すごいでしょ! ボクの後輩だから!」

 

「そっち方面を誇るようにシフトしたか」

 

 実際すごいので何も言えない。

 そんな俺とピルカヤのやり取りを気にすることもなく、二人は真剣な表情で……。

 いや、さすがはピルカヤと言うべきか、案外気にしてるな。この二人。

 ピルカヤに褒められたためか、照れくさい感情をなんとか隠そうとしているようだ。

 

「やめてやれよ。二人とも集中できなくなってるぞぉ」

 

 本当だ。なんか、温泉がぼこぼこと沸騰しているみたいに……。

 あれ? この光景、どこかで見たような……。

 

「あ、やべっす」

 

 テクニティスの声とともに、温泉は噴水のように噴出されると、俺たちをまんべんなく濡らし続けるのだった。

 ああ、珍しくプリミラのテンションが上がってしまい、水浸しになったときに似ていたのか。

 まあ、温泉だし、あのときほどの被害ではないし、この程度なら問題ないな……。

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