【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第221話 あれだけ求めていた機能の封印

「叱りにくいです……」

 

「前回、似たような失敗してたからね~。プリミラさん」

 

「う……その節は、大変申し訳なく……」

 

「いやいや、あれはもう終わったことだから、俺もテクニティスも気にしていないし」

 

「そう言っていただけると助かります……。それで、一体何事でしょうか?」

 

 もともと温泉なので周囲が濡れているのは仕方ないが、それにしても水浸しだ。

 噴出された温泉は天井にまで達したらしく、時折ぽとぽとと顔に水滴が垂れてくる。

 

「ピルカヤの前でいいところ見せようとしたら、二人が張り切りすぎたみたいだぜ」

 

 アナンタの説明を聞き、プリミラは納得したようにうなずく。

 そして、悪気はなかったので、ますます叱ることができないと判断したんだろう。

 軽く注意するだけで、その場はすませることになった。

 

「邪魔しちゃってごめんね~」

 

「いえ! そんなことはありません!」

 

「ピルカヤ様が、お邪魔だなんてことはありえないっす!」

 

 精霊組。上下関係がはっきりしているなあ。

 実際悪気があったわけでもないし、不幸な事故だったということだろう。

 

「それに、さっきのでなんとなくコツはつかめたっすからね」

 

「はい。レイ様のご要望、叶えられそうです」

 

「え、もうできるの? さすがだな」

 

 怪我の功名ということか。

 あんな事故だけで、温泉と融合した魔力を分析し、水質を変化させる方法を理解できるなんて、この二人やはり優秀だ。

 

「そういえば、転移温泉が降り注いだのに、ボクたち特に転移しなかったね」

 

「そうだな……。温泉とお湯は別物ってことか?」

 

「レイ様の認識であっていると思います。ですので、例えばお湯をすくって別の場所に移しても、それはもう転移機能が消えたただのお湯になりますね」

 

「なるほど……。それなりに制約があるんだな」

 

 話を逸らしてしまったが、ルトラもテクニティスもちゃんと作業を行っているようで、目の前の温泉が急激に変化していった。

 ずいぶんとわかりやすいな。やはり、あのリグマカラーの温泉のままにしておいて、案外正解だったかもしれない。

 

「さあ、できました。これで、この温泉は従来のものと同じになっています」

 

「早いな。それじゃあ、早速試して」

 

「いや、レイが万が一転移しちゃったら大変でしょ。ルトラとテクニティスを信じていないわけじゃないけど、念のためボクの分体が試すよ」

 

「たしかに……。悪いが頼んだ。ピルカヤ」

 

 見た目が普通の温泉のため、もう完全に成功したものと思っていた。

 だけど、万が一転移機能だけ残っていたら、俺はダンジョンの外に放り出されていたわけだし、いささか軽率だったな。

 それに引き換え、ピルカヤの分体であればなにも問題ない。

 転移した先で意識を放棄すれば、ただの炎になるだけだからな。

 

「うわ~……ぬるい~」

 

 うん。なにも問題なさそうだ。ピルカヤはちゃんとここに残っている。

 嫌そうな顔をしているのは、彼にとってはぬるま湯だからというだけだろう。

 

「成功ですね。やはり、ルトラの水の管理能力には、目を見張るものがあります」

 

 その様子を眺めていたプリミラも、感心したようにルトラを褒める。

 きっと、精霊の先輩としてピルカヤを、水属性の先輩としてプリミラを尊敬しているのだろう。

 ルトラは、やはり照れくさそうな反応をしていたが、さすがに今度は暴走のようなことにはならなかった。

 

「ところで、普通の温泉にはなったけど、これが時間経過で転移温泉になるってこと?」

 

「はい。この温泉は転移温泉のままですが、私とテクニティスで転移の効果を抑え込んでいるだけですので」

 

「だから、自分たちの力が切れると、元の転移温泉に戻るっす」

 

「どの程度の力で、どの程度の時間この状態を維持できるか、そのあたりは検証を重ねていきます」

 

 なるほど……。一時的に、転移機能が働かなくなっているだけだったのか。

 二人の干渉も、一度行ったからずっと続くものではなく、そのうち効果が消えてしまう。

 だから、朝から営業時間中だけ効果が発揮できるように調整すると。

 

「それだと、二人が毎朝大変じゃないか?」

 

「私は、どの道、毎朝お湯の管理は完璧にしていますので」

 

 ルトラが珍しく胸を張って誇らしげにしている。

 それは、自分の能力と仕事に誇りを持っているような態度だった。

 

「自分も問題ないっすよ~。自分朝型っすから」

 

 たしかに、テクニティスも早起きだよな。

 俺と一緒に温泉の研究をしていたときも、徹夜する前に眠ってしまうくらいには健康的な生活リズムだったし。

 なら、悪いけどここは二人に任せてしまうか。

 

「負担にならないのなら、それでお願いしてもいい?」

 

「はい。お任せください」

 

「余裕っす」

 

 あとは、うまく時間調整を行うことと、転移先の問題か……。

 時間調整は二人に任せるとして、転移先は本当にどうしたもんかなあ。

 作るたびに転移先が変わって、望む転移先が出たらその温泉は、そのまま使用するようにするか?

 

 ……温泉ガシャじゃん。宝箱ガシャ。モンスターガシャに続く、新たなガシャが実装されてしまった……。

 ガシャまみれの日々になりつつあるが、トップがあれだからかもしれないな。

 

「おや、みんなで仲良くお風呂の改良中ですか?」

 

「あ……あれなフィオナ様」

 

「あれって、なんですか! 出会いがしらにそんなことを言う、悪い口はこれですか!」

 

「ま、魔王様……。レイ様もきっと、悪く言うつもりはなかったと思うっす」

 

 そうだぞ。もっと言ってやれテクニティス。

 そうしないと俺のほおがつねられる。

 

「ほう。それでは、どのようなつもりだったのか聞いてみようじゃありませんか」

 

「ガシャ狂いの魔王様という意味です」

 

「う……。否定しづらいところを責めてくるなんて、成長しましたね。レイ」

 

「レイ様が正しいです」

 

「わかりましたってば!」

 

 さて、プリミラも味方になってくれたし、本人も納得したし、フィオナ様のお戯れは終わりにして、本題に戻ろう。

 転移温泉。作るたびに転移先が変わる、すこぶる使い勝手が悪い転移装置。

 問題なのは、やはり作るたびに危険が生じるというところだろう。

 扉と違って、閉じて遮断するという対処はできないので、リセットするか、精霊コンビに機能を制限してもらう必要がある。

 

「温泉ガシャを引くにしたって、安全を確保した状態じゃないと、イドの家にでもつながったら最悪だからな」

 

「そのときは、私が殺しましょうか?」

 

 平然と言うんだもんなあ……。時折魔王としての顔を見せるから、あなどれない。

 さっきまで、戯れていた魔王様とは思えないほどだ。

 

「いえ、フィオナ様の手は煩わせたくありません。安全に転移先を確認できる仕組みが、やっぱり必要ですね」

 

「そ、それなら、自分にいい案があるっす!」

 

 テクニティスがなぜか緊張した様子で、手を挙げながら発言した。

 それにしても、こうもすぐに解決策を思いつくとは、もう完全に、転移温泉のことは彼に頼るべきだろうな。

 

「言ってみてくれ。たぶん、二人に任せるのが最善だろうから」

 

「で、ではっ! レイ様が転移温泉を作るときに、自分とルトラが転移機能を制限すれば、少なくとも作成した段階で、変なやつが転移してくることもないはずっす!」 

 

「なるほど……。二人が制御してくれたら、普通の温泉になるからな」

 

「それで、徐々に機能の制御を解放していけば、覗き穴みたいな感じで、最低限の確認ができるサイズの転移装置になると思うっす」

 

 ドアスコープみたいに、向こうの様子だけ確認するってことか。

 たしかに、それなら考えなしに作るよりもずっと安全だ。

 それでも、目からビームみたいなのを出してこられたら、攻撃を仕掛けられてしまうけど、誰かが迷い込んでくるよりはずっといい。

 

「できるか?」

 

「やってみせます」

 

「任せるっす!」

 

 優秀なようでなによりだ。

 さて、安全を確保できたら、転移先ガシャだな……。

 これまでと違って、ハズレが本当にハズレだろうから、最悪すぐにリセットできるように構えておかないと。

 

「ガシャはいいものですからね。ところで、どうです? その勢いで宝箱ガシャも」

 

「いえ……それはさすがに」

 

「え~。つれないですね~」

 

 かわいく不満そうにしてもだめだぞ。

 プリミラの視線を感じながら、俺はなんとかフィオナ様をなだめることにした。

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