【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第225話 リモートサポートサービス

『す、すみません……。勝手に動きすぎて』

 

 まいったな……。すでにかなり奥まで進んでしまったらしく、しかも現地の人たちと一緒に行動しているのか。

 もっと早くに、こちらが気づいていればと悔やまれる。

 それよりも、転移温泉を封じたとはいえ、念のために壁でも作って、温泉に出入りできないようにするべきだったか。

 

「落ち着きなさい、レイ。今は、カザマたちを帰還させるのが先で、反省は後です」

 

「フィオナ様……」

 

 ついには、就寝中だった魔王様まで起こしてしまったらしく、気づけばフィオナ様が手を握っていた。

 魔王軍はともかく、他の種族の者たちは、皆一様に後ろへと控えてしまっている。

 だが、うん。大丈夫だ。幾分か落ち着いて、頭の中も冷静になれた。

 

「風間。周囲の状況を教えながら進んでくれ。こっちで指示を出す」

 

 情報は風間から伝えられる音だけ。

 それでなんとか向こうのダンジョンの全貌をつかみ、無事に帰還させないといけない。

 いいさ。俺だってダンジョンマスターのはしくれだ。それくらいやってやろうじゃないか。

 

    ◇

 

「はい! わかりました!」

 

 (あらた)友香(ともか)がもらったピアスのおかげで、レイさんとの連絡が取れるようになった。

 おかげで、地底魔界への帰還もできそうで、一安心だ。

 

「ど、どうしたんだ? 三人とも、誰かと話しているみたいだが」

 

 僕たち三人が、急にレイさんと会話をしていたせいで、タイラーさんが不思議そうに尋ねてきた。

 ええと、名前や所属は出さないようにって話だったし、うまいことごまかさないと。

 

「仲間と連絡が取れたので、サポートしてもらえることになったんです」

 

「おお、それは助かる。あんたたちの仲間なら、きっと頼りになるだろうからな」

 

「ええ。とても頼れる人なんです」

 

 そうだ。レイさんなら、きっとこんなダンジョン簡単に脱出させてくれる。

 あとは指示通りに、間違わずに進んでいくことにしよう。

 

「ええと、まず広い部屋にいます。引き返そうにも、同じような部屋と道ばかりで、正直なところどうやってきたのかもわからなくて……」

 

『こっちでマッピングしておく。進みながら、随時周囲の状況を教えてくれ』

 

「はい!」

 

 ピルカヤさんが周囲の状況を探れないのがいたいところだけど、そこは僕たちで道を開拓してなんとかしよう。

 ……焦らずに、一歩一歩前に進んでいけば、なんとかなるはずだ。

 

「長い道が続いていて、突き当たりで左右に分かれています」

 

『長くてなにもない道なら、罠が仕掛けられている可能性がある。足元の起動スイッチ、周囲と違う壁、天井からの落下物がないか、確認しながら進んでくれ』

 

 そう言われると、この長いだけの道が一気に危険な道に見えてくる。

 床。壁。天井。よく見てみると、壁が一部色が違う。床も盛り上がっている場所があるから、きっとこれが起動スイッチだ。

 

「あの壁と、この床。気をつけて進んでください」

 

「あ、ああ……。本当だ。そうか、さっきまでの道と違って、ここはもう罠だらけだったのか」

 

 タイラーさんたちも、僕が気づいた場所はなにか危険だと判断したらしく、慎重に進みながら口にした。

 実際に、似たような長いだけの道を進んだときは、なにもなかったからね。

 同じような場所なのに、こうも罠だらけというのが悪質だ。さっきは大丈夫だったから、どうせ罠なんてないと注意せずに進んでしまうところだろう。

 

「入り口のほうは、なにもない道が延々と続いていたからなあ……。たまに集中力が切れたころにモンスターが襲ってきたが、こんな罠までは仕掛けられていなかった」

 

「それと似たような構造にしながら、奥には大量の罠とか、嫌なダンジョンね……」

 

『道の真ん中あたりは、逃げ場がないから大岩が転がるような罠がないか気をつけてな。俺ならそうする』

 

 そろそろ道の中央に差し掛かるというくらいで、レイさんからそんな忠告をもらった。

 改めて、天井を見上げると……あった。レイさんが言ったとおり、この道の幅と同じくらいのサイズの球体の岩だ。

 あんなものが転がってきたら、避けることはできなかっただろう。

 

「たぶん、落石の罠があります。どこかにスイッチがあるかもしれないので、気をつけましょう」

 

「うおっ……本当だ。あんなもんが降ってきたら、全員轢き潰されているぞ」

 

「……ねえ、この床。他の罠のスイッチよりわかりにくいけど、これがあの岩を落とすスイッチなんじゃない?」

 

 ズーイーさんが、他と色が違う地面を指さした。たしかに、なんか怪しい……。

 色が違う床は、通路の幅いっぱいまで並んでいるため、ジャンプして飛び越えないとだめそうだ。

 レイさんに報告をすると、少し考えてから答えてくれた。

 

『……色が違う場所の前後も怪しい。床が押し込めるようになってないか? 軽く触れて確かめてみてくれ』

 

 言われた通りに、色が違う床だけではなく、その手前を軽く手で押してみる。

 ……あった! たしかに、何の変哲もない手前の床が沈むようになっている。

 

「お、おい……。もしかして、そっちが罠を起動する床なのか?」

 

「は、はい。おそらく……」

 

 反対に、色が違う床は手で押し込もうとしても、まったく動かなかった。

 足で軽く体重をかけてもなにも反応しない。つまり、手前の方が罠を起動するためのスイッチの役割ということか……。

 

「いや、本当に助かる。あんたたちダンジョンの探索に慣れていないようだったが、その遠隔から指示をくれている仲間は、相当に詳しいようだな」

 

「ええ。そうですね」

 

 だって、ダンジョンを作る側の人だから……。

 それにしても、レイさんって、ふだんこういうことを考えながら、罠を仕掛けているのか。

 作成したダンジョンのテストプレイを募っていたことあるけれど、あのとき参加していたら、僕たちはすぐにリタイアすることになっていただろうなあ……。

 

「そろそろ、曲がり角につきます」

 

『曲がり角にも罠はあるはずだ。それか、モンスターが待ち伏せしている。不意を突かれないように注意しながら進んでくれ』

 

「タイラーさんたちは、左に敵がいないか確認してください。僕たちは右を」

 

「ああ、わかった」

 

 いつでも戦えるように身構えながら、僕たちは同時に道を曲がった。

 すると、ゴブリンたちが、今にもこちらに襲いかかろうとしている姿を発見する。

 大丈夫。ゴブリンさんたちなら、最初に何度も戦ってもらったから、動きにもだいぶ慣れている。

 

 友香が小さめな攻撃魔法を放ち、その間に僕も剣を振り下ろす。

 相手がこちらに何かをする前に、問題なく対処できた。

 念のため、復活しないことを確認してから一息つく。

 背後のタイラーさんたちのほうにもゴブリンがいたようで、彼らもしっかりとゴブリンを倒していた。

 

「これが嫌なんだよなあ……。歩き疲れて集中力がなくなったところに、モンスターたちが奇襲してくる」

 

「ええ。わかっているはずなんだけど、どうしても集中力が長続きできないからね」

 

 たしかに、いつまでも集中しているのは難しいからね。

 やけに長い道だと思っていたけれど、罠だけでなく、そういう効果も見込んでいるのか。

 

「でも、入り口はもっと無駄に歩かされていたし、モンスターに遭遇する頻度も低かったから、あっちのほうが精神的に疲れるけどな」

 

「じゃあ、モンスターが少ないほうに進めば、入り口に戻れるかもしれませんね」

 

 さっきも似たようなことを言っていたが、どうやら入り口に近いほど危険は少なくなるようだ。

 なら、僕たちはできる限り危険じゃない場所に進んでいけば、それが入り口ということになると思う。

 なんとなく方針も決まったことで、わずかに心に余裕も生まれてきた。

 このままいけば、きっとこのダンジョンを無事に脱出することもできるだろう。

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