【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第226話 ダンジョンマスターはとりあえず疑っている

「ちょ、ちょっと……! あいつら、全然罠にかからないじゃない!」

 

「どうするんだよ。このままじゃ、一番奥に設置した宝箱を回収されるぞ」

 

「先に、俺たちで宝箱を回収しちゃうか?」

 

「馬鹿。そんなことしたら、このダンジョンの奥になにもないって噂が広まって、NPCがこなくなるだろ」

 

「いくらNPCが馬鹿っていっても、さすがにそうなったら、もうここに来ないわよね……」

 

「あの宝箱。他より見た目が豪華だったし、絶対良い餌だからな。発見して言いふらしてもらうのはいいけど、取られちゃまずい」

 

 ダンジョンってことだし、一番奥にはボスみたいなやつと、そいつを倒した報酬は必要だ。

 だから、特に罠を大量に仕掛けて、雑魚の中でもまだマシなモンスターを何匹も配置した。

 道中で負傷するようなやつらなら、ボスを倒せずに俺たちの経験値になるか、逃げかえって情報を広めてくれるだろう。

 だけど、今回のNPCどもは、罠もモンスターもなんなく対処して、どんどん奥に進んでしまっている。

 

「やばいかもしれない……」

 

 こいつらに素直に攻略させてしまうか?

 いや。そんなことしたら、ただでさえ最近減っている経験値どもが、余計にここに来なくなる。

 こいつらには、なんとしてでも、ここで死んでもらわないといけない。

 

「そうだ。いいことを思いついた」

 

 どうするべきか悩んでいると、いいことを思いついた。

 要するに、殺せばいいんだろ? ダンジョンを脱出される前に、このNPCどもを殺せばいいだけだ。

 そうすれば、最奥にろくなものがなかったとか、すでに踏破して宝箱は回収済みだとか、変な噂が広まることもない。

 

南風(みなみかぜ)。入り口を塞げ」

 

「なるほどね。まずは、こいつらの処理を最優先にしちゃうってことね」

 

 話が早くて助かる。入り口を塞いでしまったら、新たな侵入者どもが来なくなるけれど、こいつらを逃がすよりマシだ。

 これで、全部うまくいく。きっとお前らは、最奥まで進んでボスも倒すんだろうな。

 だけど、それで終わりだ。出口がないダンジョンで、死ぬまで迷ってしまえ。

 

「でも、大丈夫? そんなことして、私たちまで危なくない?」

 

 せっかく話が決まったのに、塚本(つかもと)のやつが、不安そうにそう尋ねてきた。

 うっとうしいな。どうせそいつらが、俺たちに危害を加えないかって心配しているんだろ?

 まあ、わからなくはないけど心配しすぎだろ。

 

「平気だよ。南風が周りを壁で囲んでるから、侵入者どもがここに入ってくることはあり得ない」

 

「当然よ。私のダンジョンは、魔王だって壊せはしないわ」

 

「私のっていうか、俺たち全員の協力で作ったものだろ」

 

「そのせいで、こんな場所に全員で固まらなきゃいけないんじゃない」

 

 たしかに、南風だけだったら、わざわざこうしてダンジョンの中に入る必要はなかっただろうな。

 だが、俺のなわばりや、塚本の感覚共有は、そんな遠距離から効果を発揮できない。

 ダンジョン内の様子を知るためには、結局こうやって全員で中から監視するしかないのが現状だ。

 

 だが、そうしたほうが臨機応変に対応できる。

 こうして、ダンジョンの中を知ることができれば、必要に応じて追加の罠やアイテムも作成できるし、ダンジョンの作り替えもできるからな。

 池田(いけだ)だけは、魔物の従属のスキルだから、俺たちと一緒にいる必要はなかったけど、まあ、仲間外れにするとかわいそうだろ。

 

    ◇

 

『レイさん。罠はありませんでした』

 

「え~……。またか」

 

『はい。ですが、レイさんが言ったとおり、モンスターたちは背後から襲ってきたので、指示のおかげで助かりました』

 

「それはよかった」

 

 おかしいな……。なんで、わざわざモンスターだけなんだ?

 扉の横にモンスターを配置しておき、部屋の中に入ってきた侵入者の背後を突く。

 それは、うちのゴブリンたちもよくやることだから、やっぱり俺と同じ考えでダンジョンを作っているんだろう。

 だけど、その役目を担うのが弱いモンスターだけだと、効果が半減してしまう。

 もっと強いモンスターに任せるか、数を増やすか、モンスター以外に罠も併用すると思ったんだけどな……。

 

『レイさん。この先は広間みたいです』

 

「モンスターたちは?」

 

『わりと多いですが、ただのゴブリンばかりで、数だけが多いという感じですね』

 

「それだけ数がいるのに、まだどのゴブリンにも発見されていないし、交戦状態じゃないってことか?」

 

『それが……向こうはこっちを見ているんですけど、うろうろとしているだけで、こっちにまでは来ないみたいです』

 

 向こうのゴブリンたちも、こっちのゴブリンみたいにちゃんと指示を聞くタイプってことか。

 だとしたら、ますます戦略の幅は広がりそうだし、ただのモンスターハウスってわけじゃないだろうな。

 

「モンスターを倒そうと近づいたら、罠にかかるとかかもしれない。モンスターの動きに注意しながら、まずは罠を探してくれ」

 

『はい。ええと……』

 

 さっきまでの罠と違って、見つけにくいように配置しているのか?

 だけど、あらかた見当はつきそうだよな。

 

「ゴブリンたちが近づかないのなら、そこに罠があるってことだと思う」

 

『なるほど……。じゃあ、ゴブリンたちが活動している範囲の中を、あえて進んでいけば』

 

 まあ、すでにゴブリンたちがいる場所は、罠ではないだろうな。

 うちの場合、ゴブリンが自分ごと罠にかかるように行動する場合もあるので、確実とは言えないが。

 

「ただ戦うだけじゃなくて、ゴブリンたちを活動範囲外に追い出してみてくれ。そうすれば、逆に罠を利用できそうだ」

 

『はい!』

 

世良(せら)の防御結界で、守りながらな」

 

『わかりました! みんなが怪我しないようにします!』

 

 これで、罠の余波に巻き込まれる可能性はぐっと減るし、最悪怪我をしても回復して態勢を立て直すことは可能だろう。

 ほどなくして、こちらにも大きな爆音が響いた。

 それに混ざって聞こえてくるのは、ゴブリンたちの悲鳴というか唸り声みたいなものだけ。

 どうやら、こちらへの被害はなかったようだな。

 

『レイさん! なんか、ボスっぽいモンスターがいました!』

 

「どんなやつだ?」

 

『武器を持った二足歩行の大きな蛇です!』

 

 うちにはいないモンスターだな。

 だけど、これまでの報告にはいなかったモンスターだし、難易度はこれまで以上と考えてもいいだろう。

 

『後ろには、ここで見た中では一番良さそうな宝箱もあります!』

 

「じゃあ、そこがボス部屋の可能性は高そうだな」

 

 うちと同じようなダンジョン構成であればの話だが。

 蛇か……。いけるかな?

 

『ガーゴイルくらい強い、かもしれません!』

 

 となると、今の風間たちなら倒せる相手だろう。

 ただ、油断していると、怪我をするくらいの敵であるのも事実だ。

 

「風間。竜の鱗の盾で体を隠すようにして、その場にいるやつらを守るように前に立ってみてくれ。世良は結界で全員を守って」

 

『はい! ……あれ、レイさん。敵の攻撃が止みました』

 

 あ、いけるんだ。

 世良の結界に加えて盾で身を守るのであれば、危険な目には遭わないだろうし、試しにやらせてみたらうまくいきそうだ。

 

「その状態で、(はら)が遠距離から削っていこう」

 

『は、はい! えっと、こんな感じかな』

 

『レイさん……。なにもできなくなった蛇が、友香(ともか)の攻撃でどんどん衰弱して……あ、倒せました』

 

「あまり知性がない爬虫類系のモンスターだったからかな? 竜の逆鱗に触れたくなかったんだろう」

 

 できたらいいな程度だったんだけど、まさか本当にそんなにうまくいくなんて……。

 うちのモンスターたちは、同じ戦法でやられたりしないよな?

 ディキティスとかウルラガは……。

 

「いや、俺はさすがに盾にビビったりしねえからな?」

 

「私も、盾をかまえているだけの相手に、何もできなくなるほど愚かではない」

 

「ならよかった。あくまでも、知性がない相手にだけ有効……」

 

 リピアネム大丈夫だよな? そう思ってしまい、目線がリピアネムに向くと、目が合った。

 まずい、失礼なことを考えたとばれてしまう。

 

「レイ殿、それは失敬ではないか? 私は、竜の鱗の盾であろうと、一撃で破壊してみせるぞ」

 

「あ、そこなんだ」

 

「うむ。私の攻撃は、並大抵の防御では通用しない」

 

「すごいな。これからも頼りにしているよ」

 

 その言葉で正解だったらしく、リピアネムは満足そうにうなずいた。

 ウルラガとディキティスという、爬虫類組からなんともいえない視線を送られるが、当人が満足しているためか、彼らがなにかを言うことはなかった。

 よかった……。空気を読んでくれて。

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