【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「ちょ、ちょっと……! あいつら、全然罠にかからないじゃない!」
「どうするんだよ。このままじゃ、一番奥に設置した宝箱を回収されるぞ」
「先に、俺たちで宝箱を回収しちゃうか?」
「馬鹿。そんなことしたら、このダンジョンの奥になにもないって噂が広まって、NPCがこなくなるだろ」
「いくらNPCが馬鹿っていっても、さすがにそうなったら、もうここに来ないわよね……」
「あの宝箱。他より見た目が豪華だったし、絶対良い餌だからな。発見して言いふらしてもらうのはいいけど、取られちゃまずい」
ダンジョンってことだし、一番奥にはボスみたいなやつと、そいつを倒した報酬は必要だ。
だから、特に罠を大量に仕掛けて、雑魚の中でもまだマシなモンスターを何匹も配置した。
道中で負傷するようなやつらなら、ボスを倒せずに俺たちの経験値になるか、逃げかえって情報を広めてくれるだろう。
だけど、今回のNPCどもは、罠もモンスターもなんなく対処して、どんどん奥に進んでしまっている。
「やばいかもしれない……」
こいつらに素直に攻略させてしまうか?
いや。そんなことしたら、ただでさえ最近減っている経験値どもが、余計にここに来なくなる。
こいつらには、なんとしてでも、ここで死んでもらわないといけない。
「そうだ。いいことを思いついた」
どうするべきか悩んでいると、いいことを思いついた。
要するに、殺せばいいんだろ? ダンジョンを脱出される前に、このNPCどもを殺せばいいだけだ。
そうすれば、最奥にろくなものがなかったとか、すでに踏破して宝箱は回収済みだとか、変な噂が広まることもない。
「
「なるほどね。まずは、こいつらの処理を最優先にしちゃうってことね」
話が早くて助かる。入り口を塞いでしまったら、新たな侵入者どもが来なくなるけれど、こいつらを逃がすよりマシだ。
これで、全部うまくいく。きっとお前らは、最奥まで進んでボスも倒すんだろうな。
だけど、それで終わりだ。出口がないダンジョンで、死ぬまで迷ってしまえ。
「でも、大丈夫? そんなことして、私たちまで危なくない?」
せっかく話が決まったのに、
うっとうしいな。どうせそいつらが、俺たちに危害を加えないかって心配しているんだろ?
まあ、わからなくはないけど心配しすぎだろ。
「平気だよ。南風が周りを壁で囲んでるから、侵入者どもがここに入ってくることはあり得ない」
「当然よ。私のダンジョンは、魔王だって壊せはしないわ」
「私のっていうか、俺たち全員の協力で作ったものだろ」
「そのせいで、こんな場所に全員で固まらなきゃいけないんじゃない」
たしかに、南風だけだったら、わざわざこうしてダンジョンの中に入る必要はなかっただろうな。
だが、俺のなわばりや、塚本の感覚共有は、そんな遠距離から効果を発揮できない。
ダンジョン内の様子を知るためには、結局こうやって全員で中から監視するしかないのが現状だ。
だが、そうしたほうが臨機応変に対応できる。
こうして、ダンジョンの中を知ることができれば、必要に応じて追加の罠やアイテムも作成できるし、ダンジョンの作り替えもできるからな。
◇
『レイさん。罠はありませんでした』
「え~……。またか」
『はい。ですが、レイさんが言ったとおり、モンスターたちは背後から襲ってきたので、指示のおかげで助かりました』
「それはよかった」
おかしいな……。なんで、わざわざモンスターだけなんだ?
扉の横にモンスターを配置しておき、部屋の中に入ってきた侵入者の背後を突く。
それは、うちのゴブリンたちもよくやることだから、やっぱり俺と同じ考えでダンジョンを作っているんだろう。
だけど、その役目を担うのが弱いモンスターだけだと、効果が半減してしまう。
もっと強いモンスターに任せるか、数を増やすか、モンスター以外に罠も併用すると思ったんだけどな……。
『レイさん。この先は広間みたいです』
「モンスターたちは?」
『わりと多いですが、ただのゴブリンばかりで、数だけが多いという感じですね』
「それだけ数がいるのに、まだどのゴブリンにも発見されていないし、交戦状態じゃないってことか?」
『それが……向こうはこっちを見ているんですけど、うろうろとしているだけで、こっちにまでは来ないみたいです』
向こうのゴブリンたちも、こっちのゴブリンみたいにちゃんと指示を聞くタイプってことか。
だとしたら、ますます戦略の幅は広がりそうだし、ただのモンスターハウスってわけじゃないだろうな。
「モンスターを倒そうと近づいたら、罠にかかるとかかもしれない。モンスターの動きに注意しながら、まずは罠を探してくれ」
『はい。ええと……』
さっきまでの罠と違って、見つけにくいように配置しているのか?
だけど、あらかた見当はつきそうだよな。
「ゴブリンたちが近づかないのなら、そこに罠があるってことだと思う」
『なるほど……。じゃあ、ゴブリンたちが活動している範囲の中を、あえて進んでいけば』
まあ、すでにゴブリンたちがいる場所は、罠ではないだろうな。
うちの場合、ゴブリンが自分ごと罠にかかるように行動する場合もあるので、確実とは言えないが。
「ただ戦うだけじゃなくて、ゴブリンたちを活動範囲外に追い出してみてくれ。そうすれば、逆に罠を利用できそうだ」
『はい!』
「
『わかりました! みんなが怪我しないようにします!』
これで、罠の余波に巻き込まれる可能性はぐっと減るし、最悪怪我をしても回復して態勢を立て直すことは可能だろう。
ほどなくして、こちらにも大きな爆音が響いた。
それに混ざって聞こえてくるのは、ゴブリンたちの悲鳴というか唸り声みたいなものだけ。
どうやら、こちらへの被害はなかったようだな。
『レイさん! なんか、ボスっぽいモンスターがいました!』
「どんなやつだ?」
『武器を持った二足歩行の大きな蛇です!』
うちにはいないモンスターだな。
だけど、これまでの報告にはいなかったモンスターだし、難易度はこれまで以上と考えてもいいだろう。
『後ろには、ここで見た中では一番良さそうな宝箱もあります!』
「じゃあ、そこがボス部屋の可能性は高そうだな」
うちと同じようなダンジョン構成であればの話だが。
蛇か……。いけるかな?
『ガーゴイルくらい強い、かもしれません!』
となると、今の風間たちなら倒せる相手だろう。
ただ、油断していると、怪我をするくらいの敵であるのも事実だ。
「風間。竜の鱗の盾で体を隠すようにして、その場にいるやつらを守るように前に立ってみてくれ。世良は結界で全員を守って」
『はい! ……あれ、レイさん。敵の攻撃が止みました』
あ、いけるんだ。
世良の結界に加えて盾で身を守るのであれば、危険な目には遭わないだろうし、試しにやらせてみたらうまくいきそうだ。
「その状態で、
『は、はい! えっと、こんな感じかな』
『レイさん……。なにもできなくなった蛇が、
「あまり知性がない爬虫類系のモンスターだったからかな? 竜の逆鱗に触れたくなかったんだろう」
できたらいいな程度だったんだけど、まさか本当にそんなにうまくいくなんて……。
うちのモンスターたちは、同じ戦法でやられたりしないよな?
ディキティスとかウルラガは……。
「いや、俺はさすがに盾にビビったりしねえからな?」
「私も、盾をかまえているだけの相手に、何もできなくなるほど愚かではない」
「ならよかった。あくまでも、知性がない相手にだけ有効……」
リピアネム大丈夫だよな? そう思ってしまい、目線がリピアネムに向くと、目が合った。
まずい、失礼なことを考えたとばれてしまう。
「レイ殿、それは失敬ではないか? 私は、竜の鱗の盾であろうと、一撃で破壊してみせるぞ」
「あ、そこなんだ」
「うむ。私の攻撃は、並大抵の防御では通用しない」
「すごいな。これからも頼りにしているよ」
その言葉で正解だったらしく、リピアネムは満足そうにうなずいた。
ウルラガとディキティスという、爬虫類組からなんともいえない視線を送られるが、当人が満足しているためか、彼らがなにかを言うことはなかった。
よかった……。空気を読んでくれて。