【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
『終わりました……』
「そうか。それにしても、結局入り口どころか、逆にボスのところまで行ってしまったな。無駄に罠やモンスターを警戒させる指示も出してしまったし、色々と悪かった」
『い、いえ。レイさんのおかげで、無傷でボスまで倒せましたから』
『注意してなにもなかったほうが、不注意で罠にかかるより全然いいです』
そう言ってもらえると助かる。
しかし、思っていた以上に罠とかモンスターが少なかったんだよな。
……あれか。あえて手を抜いて難易度を緩和することで、侵入者を増やそうって話か。
やるじゃないか。俺よりダンジョンのバランス調整が上手いってわけだ。
「レイも見習えよ。ほんとに……」
「できる限りの完璧を目指したいのに……」
「僕は、レイ様の思うがままにするのが、一番だと思いますけどね~」
「お前とディキティスは、レイに悪影響なんだよぉ……」
大丈夫。最近では、ダスカロスだって効率よく侵入者を排除できるって、太鼓判を押してくれたから。
あとは、徐々に加減していくだけですむはずだから。
「
『はい! 油断しないように進みます!』
「帰りも、こっちで指示は出すから、情報を共有してくれ」
もうここまで歩き回ってしまうと、地底魔界につながる転移を見つけるのは難しいか。
だったら、入り口からダンジョンを脱出してもらったほうがいい。
そこがアルマセグシアだというのなら、そのままマギレマさんのレストランから帰れるしな。
◇
「……本当に長いダンジョンだな。うちもあのくらい長いほうが、集中力を低下させられるか?」
「いや、そうすることに意味はない。君が作ったダンジョンは、罠とモンスターのバランスが絶妙な状態だ。集中力が欠いてしまっては、侵入者を一方的に撃退する可能性が高くなるぞ」
「じゃあやめておくか。歩いてばかりじゃ、侵入者たちもつまんないだろうしな」
現に、風間たちもわりとうんざりしている。
歩いて、罠を解除か回避して、モンスターと戦って、また歩く。
なんか、ほとんど歩いてばかりで、忘れたころにイベントが発生するダンジョンだな。
「あれ、行き止まり?」
そんな歩みを長時間続けることで、ようやく一つの転機が訪れた。
ただ、入り口ではなく、行き止まりにたどり着いたので失敗だけどな。
『引き返して、分かれ道を別に進みましょうか……』
「マップは作ったから、安心してくれ」
『ありがとうございます。それじゃあ……どうしました? タイラーさん。疲れたのなら、ここで休憩しておきます?』
『違う』
風間が心配しているので、タイラーという男がへたり込みでもしたのかと思ったが、わずかに聞こえてきた声にはまだ力を感じる気がする。
どことなく、不安な声にも聞こえるが、直接こちらと通信しているわけではないので、俺の思い込みかもしれないな。
『ここは、たしかに入り口だった』
『……間違いないんですか?』
……不穏な言葉が聞こえてきたぞ。
行き止まりと思っている場所が、実は入り口だった?
もしかして、なにか開閉するギミックでも仕掛けられている? 時間経過で閉じてしまうとか。
それか、初期の地底魔界のように、手動で壁を作成して入り口をふさいでしまっているとか……。
『レイさん……。あの、入り口が』
「ああ。聞こえていた。まず、周囲に入り口を開くようなギミックがないか、できる限り調べてみてくれ。罠には気をつけてな」
『はい。それじゃあ、みんなで手分けして探してみます』
見つかるのならいいけれど、最悪の場合は諦めることになりそうだな……。
「……閉じ込めたという可能性は、ないでしょうか?」
「あり得ると思う。ピルカヤやマギレマさんが集めてくれた情報の中に、出入口がふさがったなんて話は一つもなかったから」
さすがに、アナンタに次いで俺とダンジョンを作る機会が多いためか、プリミラもそのことは俺と同じ考えに至ったらしい。
入り口が閉ざされてしまい、その強度がうちと同じくらいだとしたら、風間たちに破壊させるのも難しいだろうな。
それこそ、フィオナ様や四天王でようやくといったところか。
だとすれば、入り口の破壊は現実的ではない。
『駄目そうです……』
「じゃあ、転移で戻るしかないな。風間、ここから長丁場の探索になると思うぞ」
『はい。覚悟しています』
いや、待てよ……。
入り口がふさがっているというのであれば、新たな侵入者はこないということだよな?
つまり、目撃者も最小限ということになる。
「転移温泉から、誰かが増員に向かうっていうのは? 今なら、目撃されないと思うんだけど」
誰に向けてというわけではないが、そんな意見を周囲に提案してみる。
皆それぞれ、それが可能か、こちらへの影響はどうかと考えてくれているようで、頼もしいかぎりだ。
「ボクが入れない結界が、どこまでを阻んでいるかだね。魔族全員っていうのなら、手出しができない」
「魔王軍所属ということはないだろうな。であれば、カザマたちまであの場所に入ることはできなかったはずだ」
「種族の問題か、あるいは魔の属性を持つのが問題かと思います。ピルカヤ様が入れないのであれば、後者かと」
集まった推測は、こちらにとって不利というか、あまり良い物ではなかった。
しかし、わりと説得力があるため、その前提で考えるべきだろう。
「駄目っすね。自分も、ルトラも、ウルラガさんも、入れないっす」
精霊はだめ。スライムとはいえ、ドラゴンであるウルラガもだめ。
「俺は……入れそうだぜ。ボス」
ハーフリングは大丈夫。種族じゃないな。やっぱり、魔の者かどうかってことだろう。
「ロペスを……いや、
「は、はい! がんばります!」
「私なら、透過してモンスターも罠も効きませんから、地図の作成は進むと思います」
たしかに、奥居なら問題ないかもしれないけど、相手はゴブリンばかりだったぞ。
ゴブリンメイジがいないと言い切れるか?
風間たちと違って、時任と奥居は戦闘能力自体はない。
時任はもちろんのこと、奥居だって、魔法を使う敵がいたら、あっさりとやられる可能性が高い。
魔法、魔の者……属性……?
「エピクレシ」
「は、はい!」
「ロマーナは、今も聖属性で自分を強化することって、できるんだっけ?」
「はい。私はアンデッドにはなりましたが、元々の強みである聖属性の扱いは、エピクレシ様に残していただいています」
ロマーナ本人が教えてくれた。
それなら、試してみる価値はあるか。
「ロマーナ。聖属性で自分を強化した状態で、転移温泉が起動するか確かめてくれ」
「承知しました」
これでうまくいくのなら、時任や奥居に無理をさせずにすむ。
ロマーナの強さなら、この程度のダンジョンどうということはないはずだ。
「問題ないようです」
ロマーナが、テクニティスとルトラとともに、転移機能を確認してくれた。
ならば、増援を送ることは可能だ。
問題があるとすれば、通信機能のアイテムが足りないってことか。
下手にロマーナを動かしてしまうと、今度は彼女がダンジョンの中で迷うことになる。
「それでは、今すぐに救援に向かいますが、よろしいでしょうか?」
「いや、ちょっと待ってくれ。ロマーナって通信魔法は使えるか?」
「……残念ながら、そう言った技術方面の魔法までは、会得しておりません」
なんとか、合流させる方法はないものか。
そこで、ふとロマーナの右腕が目に留まった。
鎖の腕……。
「エピクレシ。ロマーナの鎖ってどのくらい伸ばせる?」
「魔力が続く限りですね。もっとも、伸ばしすぎると本人も制御が難しそうですが」
制御はともかく、長さはかなり余裕があると考えていいというわけだ。
「ロマーナ。転移した場所から動かずに、鎖だけを伸ばして風間たちを探れるか?」
「そうですね……。はい。可能かと思います」
これなら、ロマーナが迷うことなく、風間たちと合流させることもできる。
なんとか……。この件にも決着がつけられそうだな。