【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第227話 二度は通れぬダンジョンの入り口

『終わりました……』

 

「そうか。それにしても、結局入り口どころか、逆にボスのところまで行ってしまったな。無駄に罠やモンスターを警戒させる指示も出してしまったし、色々と悪かった」

 

『い、いえ。レイさんのおかげで、無傷でボスまで倒せましたから』

 

『注意してなにもなかったほうが、不注意で罠にかかるより全然いいです』

 

 そう言ってもらえると助かる。

 しかし、思っていた以上に罠とかモンスターが少なかったんだよな。

 ……あれか。あえて手を抜いて難易度を緩和することで、侵入者を増やそうって話か。

 やるじゃないか。俺よりダンジョンのバランス調整が上手いってわけだ。

 

「レイも見習えよ。ほんとに……」

 

「できる限りの完璧を目指したいのに……」

 

「僕は、レイ様の思うがままにするのが、一番だと思いますけどね~」

 

「お前とディキティスは、レイに悪影響なんだよぉ……」

 

 大丈夫。最近では、ダスカロスだって効率よく侵入者を排除できるって、太鼓判を押してくれたから。

 あとは、徐々に加減していくだけですむはずだから。

 

風間(かざま)たちも、あとは逆走して入り口まで戻れば終わりだな」

 

『はい! 油断しないように進みます!』

 

「帰りも、こっちで指示は出すから、情報を共有してくれ」

 

 もうここまで歩き回ってしまうと、地底魔界につながる転移を見つけるのは難しいか。

 だったら、入り口からダンジョンを脱出してもらったほうがいい。

 そこがアルマセグシアだというのなら、そのままマギレマさんのレストランから帰れるしな。

 

    ◇

 

「……本当に長いダンジョンだな。うちもあのくらい長いほうが、集中力を低下させられるか?」

 

「いや、そうすることに意味はない。君が作ったダンジョンは、罠とモンスターのバランスが絶妙な状態だ。集中力が欠いてしまっては、侵入者を一方的に撃退する可能性が高くなるぞ」

 

「じゃあやめておくか。歩いてばかりじゃ、侵入者たちもつまんないだろうしな」

 

 現に、風間たちもわりとうんざりしている。

 歩いて、罠を解除か回避して、モンスターと戦って、また歩く。

 なんか、ほとんど歩いてばかりで、忘れたころにイベントが発生するダンジョンだな。

 

「あれ、行き止まり?」

 

 そんな歩みを長時間続けることで、ようやく一つの転機が訪れた。

 ただ、入り口ではなく、行き止まりにたどり着いたので失敗だけどな。

 

『引き返して、分かれ道を別に進みましょうか……』

 

「マップは作ったから、安心してくれ」

 

『ありがとうございます。それじゃあ……どうしました? タイラーさん。疲れたのなら、ここで休憩しておきます?』

 

『違う』

 

 風間が心配しているので、タイラーという男がへたり込みでもしたのかと思ったが、わずかに聞こえてきた声にはまだ力を感じる気がする。

 どことなく、不安な声にも聞こえるが、直接こちらと通信しているわけではないので、俺の思い込みかもしれないな。

 

『ここは、たしかに入り口だった』

 

『……間違いないんですか?』

 

 ……不穏な言葉が聞こえてきたぞ。

 行き止まりと思っている場所が、実は入り口だった?

 もしかして、なにか開閉するギミックでも仕掛けられている? 時間経過で閉じてしまうとか。

 それか、初期の地底魔界のように、手動で壁を作成して入り口をふさいでしまっているとか……。

 

『レイさん……。あの、入り口が』

 

「ああ。聞こえていた。まず、周囲に入り口を開くようなギミックがないか、できる限り調べてみてくれ。罠には気をつけてな」

 

『はい。それじゃあ、みんなで手分けして探してみます』

 

 見つかるのならいいけれど、最悪の場合は諦めることになりそうだな……。

 

「……閉じ込めたという可能性は、ないでしょうか?」

 

「あり得ると思う。ピルカヤやマギレマさんが集めてくれた情報の中に、出入口がふさがったなんて話は一つもなかったから」

 

 さすがに、アナンタに次いで俺とダンジョンを作る機会が多いためか、プリミラもそのことは俺と同じ考えに至ったらしい。

 入り口が閉ざされてしまい、その強度がうちと同じくらいだとしたら、風間たちに破壊させるのも難しいだろうな。

 それこそ、フィオナ様や四天王でようやくといったところか。

 だとすれば、入り口の破壊は現実的ではない。

 

『駄目そうです……』

 

「じゃあ、転移で戻るしかないな。風間、ここから長丁場の探索になると思うぞ」

 

『はい。覚悟しています』

 

 いや、待てよ……。

 入り口がふさがっているというのであれば、新たな侵入者はこないということだよな?

 つまり、目撃者も最小限ということになる。

 

「転移温泉から、誰かが増員に向かうっていうのは? 今なら、目撃されないと思うんだけど」

 

 誰に向けてというわけではないが、そんな意見を周囲に提案してみる。

 皆それぞれ、それが可能か、こちらへの影響はどうかと考えてくれているようで、頼もしいかぎりだ。

 

「ボクが入れない結界が、どこまでを阻んでいるかだね。魔族全員っていうのなら、手出しができない」

 

「魔王軍所属ということはないだろうな。であれば、カザマたちまであの場所に入ることはできなかったはずだ」

 

「種族の問題か、あるいは魔の属性を持つのが問題かと思います。ピルカヤ様が入れないのであれば、後者かと」

 

 集まった推測は、こちらにとって不利というか、あまり良い物ではなかった。

 しかし、わりと説得力があるため、その前提で考えるべきだろう。

 

「駄目っすね。自分も、ルトラも、ウルラガさんも、入れないっす」

 

 精霊はだめ。スライムとはいえ、ドラゴンであるウルラガもだめ。

 

「俺は……入れそうだぜ。ボス」

 

 ハーフリングは大丈夫。種族じゃないな。やっぱり、魔の者かどうかってことだろう。

 

「ロペスを……いや、時任(ときとう)奥居(おくい)なら」

 

「は、はい! がんばります!」

 

「私なら、透過してモンスターも罠も効きませんから、地図の作成は進むと思います」

 

 たしかに、奥居なら問題ないかもしれないけど、相手はゴブリンばかりだったぞ。

 ゴブリンメイジがいないと言い切れるか?

 風間たちと違って、時任と奥居は戦闘能力自体はない。

 時任はもちろんのこと、奥居だって、魔法を使う敵がいたら、あっさりとやられる可能性が高い。

 

 魔法、魔の者……属性……?

 

「エピクレシ」

 

「は、はい!」

 

「ロマーナは、今も聖属性で自分を強化することって、できるんだっけ?」

 

「はい。私はアンデッドにはなりましたが、元々の強みである聖属性の扱いは、エピクレシ様に残していただいています」

 

 ロマーナ本人が教えてくれた。

 それなら、試してみる価値はあるか。

 

「ロマーナ。聖属性で自分を強化した状態で、転移温泉が起動するか確かめてくれ」

 

「承知しました」

 

 これでうまくいくのなら、時任や奥居に無理をさせずにすむ。

 ロマーナの強さなら、この程度のダンジョンどうということはないはずだ。

 

「問題ないようです」

 

 ロマーナが、テクニティスとルトラとともに、転移機能を確認してくれた。

 ならば、増援を送ることは可能だ。

 問題があるとすれば、通信機能のアイテムが足りないってことか。

 下手にロマーナを動かしてしまうと、今度は彼女がダンジョンの中で迷うことになる。

 

「それでは、今すぐに救援に向かいますが、よろしいでしょうか?」

 

「いや、ちょっと待ってくれ。ロマーナって通信魔法は使えるか?」

 

「……残念ながら、そう言った技術方面の魔法までは、会得しておりません」

 

 なんとか、合流させる方法はないものか。

 そこで、ふとロマーナの右腕が目に留まった。

 鎖の腕……。

 

「エピクレシ。ロマーナの鎖ってどのくらい伸ばせる?」

 

「魔力が続く限りですね。もっとも、伸ばしすぎると本人も制御が難しそうですが」

 

 制御はともかく、長さはかなり余裕があると考えていいというわけだ。

 

「ロマーナ。転移した場所から動かずに、鎖だけを伸ばして風間たちを探れるか?」

 

「そうですね……。はい。可能かと思います」

 

 これなら、ロマーナが迷うことなく、風間たちと合流させることもできる。

 なんとか……。この件にも決着がつけられそうだな。

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