【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第228話 貸し切りダンジョンの舞台挨拶

「そうなると、ロマーナ自身が転移する必要もないかもしれないな」

 

「どういうことでしょうか?」

 

「転移温泉に鎖を伸ばして、鎖だけを転移させるとかできないか?」

 

 それとも、鎖だけ千切れる? 千切れたら千切れたで、もう一度鎖を伸ばせばいいし、試す価値はあるよな。

 ロマーナは、俺の言葉の意図を理解してくれたらしく、転移温泉の中に鎖を垂らした。

 

「……たしかに、鎖の先だけが転移している感覚があります」

 

「それなら、ここでマップを確認しながら探れるし、効率はさらに上がるってわけだ」

 

 なんとか、順調に事が進められそうだ。

 最悪、他の探索者に見つかったとしても、鎖だけならそこまで問題もないだろう。

 

「聞こえていたかもしれないが、ロマーナの右腕をダンジョンに伸ばす。見つけたらそれを辿ってくれ」

 

『は、はい! すみません。色々とご迷惑をおかけしまして』

 

 それを言い出したら、転移温泉を作った俺の責任が大きいだろうなあ。

 だけど、ルトラやテクニティスが、自分の責任だと言い出しそうだし、責任を追及したら面倒なことになりそうだ。

 よし、全部押しつけよう。

 

「あの獣人どもが全部悪いから、大丈夫。それにもう対処したから」

 

『そ、そうですか……。お手数をおかけします』

 

 そう答えた風間(かざま)の声は、なんか若干引いているようだった。

 

    ◇

 

「鎖を探しましょう。それを辿ればロマーナさんと合流できるので、ここから脱出できます」

 

「……なあ。詮索するのはルール違反だって、わかっているんだけどな。あんたたち何者なんだ?」

 

 ……どうしよう。今まで聞かれなかったから、ここに迷い込んだ現地人と勘違いしてくれていると思ったんだけど、単にマナーとして聞いていなかっただけみたいだ。

 僕たちが、実は魔王軍の人間だって言うのは、さすがにまずいよね……。

 だけど、どうして今になってそんなことを聞かれてしまうんだろう。

 

「えっと……なんか変でした?」

 

「変というか……ロマーナってあれだろ? エルフの国のお偉いさん。そんなエルフと伝手があるなんて、ただ者じゃないと思ってな……」

 

 あ……。ロマーナさんって、そんなにすごい人だったんだっけ……。

 しまった。魔王軍の中でも、いつも常識的で優しい普通の人だったから、偉い人って印象がなかった。

 

「ええと……」

 

「いや悪かった。あんたたちが何者であろうと関係ない。俺たちの恩人だからな」

 

 どうしよう。そういえば、ここから地底魔界に戻ったとして、タイラーさんたちはどうなるんだろう。

 関係ないって言ったけれど、僕たちが魔王軍だと知ったら、そのときはさすがに敵対することに?

 

「ん? 鎖ってあれか?」

 

 タイラーさんの言葉通り、視界の先にはたしかに鎖が見えた。

 だけど、ロマーナさんの鎖って、あんなのだったっけ……?

 近くで観察しようと思い、僕はタイラーさんと一緒に鎖へと駆け寄っていく。

 

『風間待て!』

 

「なっ!? わ、罠か!」

 

 すると、その鎖は僕とタイラーさんの足に絡みつき、僕たちは宙吊りにされてしまった。

 やっぱり、これはロマーナさんの鎖なんかじゃない。

 だけど、これまでこんな鎖はなかったはずだ。もしかして、誰かが僕たちの会話を聞いて罠にかけた?

 ……うかつだった。もう帰れるという気の緩み。レイさんが止めようとしてくれていたのに、こんなにあっさりと罠にかかるなんて。

 

「とりあえず、この鎖を外して……」

 

「お、おい……。なんで、こんなにモンスターがいるんだよ……」

 

 足元の鎖をなんとかしようと奮闘していると、隣からタイラーさんの怯えるような声が聞こえてきた。

 周囲を見渡すと、僕たちを取り囲むような大量のモンスターたちが……。

 

「待ってなさい武巳(たけみ)。今こいつらを蹴散らして、助けるから!」

 

「タイラーも、そこでぶら下がっていていいわよ。数は多いけど、今まで倒したやつらと変わらないわ。私たちだけでもなんとかできるから」

 

 すでに、タイラーさんの仲間たちも、(あらた)友香(ともか)も、モンスター相手に交戦してくれている。

 僕とタイラーさんは参戦できないが、このモンスターの軍団くらいなら、これまで通りどうにでもなるはずだ。

 それにしても、ここに来るまでのモンスターたちは倒したはずなのに、どうしてこれほどのモンスターの軍団が……。

 

「待った待った! ちょっと! 察しなさいよ。頭悪いわね! なに知らん顔してモンスターと戦ってんのよ!」

 

「NPCだからな。どうせ、決められた行動しかできないんだろ」

 

「え、それじゃあ人質の意味ないってこと? めんどくさ」

 

 疑問の答えを考える間もなく、今度は聞き覚えのない男女の声が突然聞こえた。

 ……なんだか、色々と問題がありそうな発言だね。

 なんとなく、わかってきたかもしれない。

 

    ◇

 

「入り口を封鎖したのはいいけど、こいつらどうすんの? モンスターは当然役に立たないし。罠も生意気にも回避するじゃない」

 

「強キャラなのかもな。だとしたらめんどくせえ……」

 

 たしかに、今までの雑魚NPCとはなんか違うよな……。

 ということは、ゲームのストーリーに関係するキャラなのかもしれない。

 そして、そんな強いNPCを倒すことができたら、もしかして、俺たちが獲得する経験値もかなりのものになるんじゃないか?

 

「このまま餓死するまで待つか? うまくいけば、一気にレベルアップできるかもしれないぞ」

 

「え~! それまでずっとダンジョンを封鎖するの? 他のNPC殺せないじゃん!」

 

「それに、ダンジョンが閉鎖されたなんて噂が広がったら、今後の経験値稼ぎに影響が出るんじゃない?」

 

 たしかに、その意見も一理あるな……。

 だからといって、このNPCどもはそう簡単に殺せる気がしない。

 なにか方法は……。

 

『鎖を探しましょう。それを辿ればロマーナさんと合流できるので、ここから脱出できます』

 

 は? この期に及んでまだ脱出できる気でいるのか?

 所詮はNPCだな。命令された通りにしか動けない、応用が利かない人間もどきだ。

 

「てか、鎖ってなんだ?」

 

 たしかに、少し気になる。そんな目印用意した覚えはない。

 

南風(みなみかぜ)。そんなオブジェクト作っていたっけ?」

 

「作るわけないじゃない。そんな何の意味もないもの。めんどくさいだけよ」

 

「あ、私の罠にそういうのあったかも。殺す用じゃなくて、捕獲する用のやつ」

 

高槻(たかつき)か。だとしても、そんなもの頼りにどうする気なんだ……」

 

 それを辿ったところで……。やっぱり、別に出口につながるとかはない。

 なわばり内の様子を探ってみても、そんな鎖の存在は……。

 いや、なんだあれ? 行き止まりのはずの場所に、空中に穴が開いている。

 それだけでなく、そこから鎖が垂れ下がってきて、徐々にダンジョンの中を這うように伸びていく。

 ……これか!

 

塚本(つかもと)。共有してるな?」

 

「ええ。なんなのこれ? 私たちのダンジョンに、変なもの垂らさないでほしいんだけど」

 

「あの先。どこかにつながってそうだな。じゃあ、このNPCどもの仕業か」

 

 なんてやつらだ。

 正規の手順でダンジョンを攻略するでもなく、ズルをしようとしているのだから許せない。

 そっちがそのつもりだったら、こっちもそれを利用してやろうじゃないか。

 

「高槻。鎖の罠をあいつらの近くに設置できるか?」

 

「できるけど。どうするの? たぶん、捕まえてもすぐに逃げるよ? あいつら無駄に強いし」

 

 それもそうか……。あいつらが頼りにしている鎖と勘違いさせて罠にかける。

 そこまではいいのだが、すぐに逃げられてしまっては意味がないし、次からは通用しなくなる。

 ……なら、逃げる前になんとかするか。

 

「全員捕まえるのは……無理だよな」

 

「まあ、無理よね。せいぜい一人か二人じゃない?」

 

池田(いけだ)。残っているモンスターを、全部あいつらにぶつけるぞ」

 

「え? そんなことしたら、罠だけであいつらを倒すってことになるぞ?」

 

「いいんだよ。時間稼ぎだから。高槻の鎖の罠で捕まえて、残りをモンスターで押さえておく。その間に、罠で捕まえたやつを人質に残りも捕まえよう」

 

 そうすれば、あのNPCどもも全滅させることができる。

 

「モンスターたちは、そんな高度な命令に対応できないし、誰が人質の話するんだ?」

 

「全員で行くしかないだろ。モンスターもNPCも馬鹿ばっかりだからな。俺たち人間が話してやらないとな」

 

 どうせ、NPCだ。こっちには、罠も、モンスターも、人質もある。だから、安全は確保できている。

 たまには、直接現場に出向いてやるとするか。

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