【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第229話 勇者の先生

「なんだ? 君たちは」

 

「はあ……やっぱり、状況も理解してない融通の利かない馬鹿NPCじゃん。めんどくさ」

 

 なんか、ものすごい罵倒をされてしまった。

 それにしてもNPC? 僕たちのことを言っているんだろうか。

 勘違いというのもあるが、そんな発言をするということは、彼らも転生者?

 

「いいか~。一回しか言わないからよく聞けよ。こいつらは、捕まえたから人質な。抵抗したらこいつら殺すから」

 

武巳(たけみ)!」

 

「あ~はいはい。うるさいうるさい。そういうのいいから。……なんか、NPCっぽくない名前だな」

 

「当然だ。君たち、転生者だろ?」

 

「はあ? ……なんだよ。もしかして、お前ら転生者?」

 

 どうしよう。

 もうそれを推測できるようなことを言っちゃったけど、僕たちって転生者を名乗ってしまってよかったのかな。

 

「うわ~めんどくさ。てか、転生者のくせに、なんで俺たちの邪魔してんだよ。うざっ」

 

 なんか……。エーニルキアで、勝手な行動をした転生者たちに似ている……。

 女神からもらった力を絶対視しているというか、この世界の主役は自分たちだという考えというか。

 

「まあいいや。さっさと全員、その鎖の罠にかかれよ」

 

 ……ただ、かなりまずい事態ということは間違いなさそうだ。

 僕が罠なんかにかかったせいで、このままじゃ全員が身動き取れなくなる。

 そうして、ここにいるモンスターたちに襲われでもしたら、全滅してしまう。

 

「そうそう。素直に言うこと聞いておけば、楽に死ねるぞ~」

 

 一人、また一人と、仲間たちが僕と同じ状況になっていく。

 鎖が足に巻き付き、宙吊りにされてしまい、簡単には脱出もできない。

 

「だいたいなあ。せっかく入り口をふさいだのに、なに別ルートから侵入なんて卑怯なことしてんだよ」

 

「入り口をふさいだのは君たちか」

 

「お前らみたいなやつを、逃がすわけにはいかないからな。だからさっさと死んでくれ。お前らのせいで、ダンジョンが稼働できないし、迷惑だからよ」

 

 入り口をふさいだだけじゃない。

 この口ぶりからすると、そもそもこのダンジョンは彼らが用意したものということか?

 

「このダンジョン……君たちが作ったってことかい?」

 

「ああそうだよ。俺たち全員で協力して作ったダンジョンだ。せっかく作ったというのに、邪魔されてムカついてんだ。こっちは」

 

「ダンジョンを作る……? おい、ここは魔王が作ったんじゃないのかよ」

 

「いいの? NPCにばれても? せっかくピルカヤ対策までしてるのに、ここで話したらまずくない?」

 

「いいんだよ。どうせ、こいつらここで殺すし」

 

 タイラーさんの言葉を無視して、なにやら物騒な会話をしている。

 ピルカヤさん対策って……。そんなこともできるのなら、やっぱり女神の力は大したものだ。

 

「お前らさえいなくなれば、元通りダンジョンを使ってNPCどもを狩れる。邪魔者には退場してもらうぞ」

 

 あくまでもダンジョンを稼働させて、侵入者を倒すことに徹底している。

 その点だけはレイさんと同じだ。きっと、僕たちが日々過ごしているダンジョンも、侵入者から見たらこんな感じなんだろう。

 わかったよ。わかっているさ。僕は、君たちに文句を言えるような立場じゃない。

 魔王軍で働くってことはそういうことだろう。だけど、君たちだって別に善人じゃないだろう。

 だからこれは、悪人同士の戦いってだけさ。

 

「なんで、わざわざ入り口を封鎖してまで、僕たちを殺そうとしたんだい? 放っておけば、そのまま入り口から出ていったのに」

 

「迷惑だからって言ったろ。ボスを倒されたことも、宝を回収されたことも、言いふらされたら困るんだよ。ただでさえ減ったNPCが余計に来なくなる」

 

「ふ、ふざけんな! 踏破したやつを殺すなんて知られたら、それこそ誰も来なくなるだろ」

 

 思わずタイラーさんが叫ぶも、目の前の男はそれを鼻で笑うだけだった。

 

「だから、事情を知ってるやつを全員殺すって言ってるだろうが。わかんねえやつだな。このダンジョンには、俺たちとお前らしかいないんだよ。ここでお前らが死ねば、ボスが倒されたなんて誰も知らなくなる」

 

 レイさんと同じと言ったけど、そこは訂正しよう。

 レイさんはそんなせこい真似はしないからね。

 むしろ、そろそろダンジョンの奥に進んでほしいとか、ボスを倒してほしいとか、なんか怖いこと言ってるし……。

 

 さて……彼らは話に夢中で気づいていないようだし、そろそろ行動に移ろう。

 思い通りにここで死ぬなんてまっぴらごめんだ。

 視界の隅にとらえた鎖を見ながら、僕は(あらた)友香(ともか)に目配せをした。

 

「な、なんだ!?」

 

 直後、大きな破裂音が聞こえ足に痛みが走るが、それもすぐに治療される。

 友香……。助かっているけど、そろそろ魔法のコントロールできてほしいなあ。

 

 まず、友香の攻撃魔法によって、僕たち全員の足元が攻撃される。

 鎖は破壊され、ついでに足も怪我をするが、とにかく拘束から解放された。

 その直後に新の回復魔法によって、怪我した足はすぐに治療された。

 これで全員が罠から解放されたけど、力業だよね……。なんとも、スマートじゃない脱出方法だ。

 

「逃げます。ついてきてください!」

 

 あとはタイラーさんたちを先導して、あの鎖を辿るだけ。

 今度こそ、あの鎖はロマーナさんのものだ。つまり、あの先には地底魔界に帰るための転移魔法があるはず。

 

「くそっ! 逃げんな! 池田(いけだ)! モンスターにあいつらを殺させろ!」

 

「もう命令してるよ!」

 

 当然、僕たちを逃がすつもりなんてないから、向こうも必死に追いかけてくる。

 モンスターを倒せないわけではないけれど、この数に足止めされてしまうと、向こうの転生者たちに何をされるかわかったもんじゃない。

 今はとにかく、逃げることを最優先にしないと。

 

    ◇

 

「馬鹿め。そっちは行き止まりだ」

 

「何言ってんの! あの怪しい穴に逃げ込もうとしているんじゃない!」

 

「あ、そうか! おい、逃げんな!」

 

 教えてもらえるのはありがたい。

 鎖を辿った先に、地底魔界へ帰還する転移箇所が存在することを確信できる。

 幸い、互いの距離が縮まることはない。遠距離から攻撃しようにも、走りながらそれができるほどの器用なモンスターもいないらしい。

 ……うちのゴブリンたちなら、平然と走りながら投石くらいはしてくるからね。

 

「武巳くん! たぶん、あれだよ!」

 

 新が声を上げる。目の前には、たしかに空中に開いた穴から、鎖が垂れてきている。

 思っていたより高い……。登れるかな? いや、そもそもタイラーさんたちはどうすれば。

 このまま一緒に地底魔界へ? 彼らはこの世界の人間であって、魔王軍に良い印象を持っていないんじゃないか?

 

 レイさんは……レイさんなら……。

 よく、僕たち人間を受け入れてくれたな。あの人。

 そうか。あの人も、そうやって僕たちやロペスたちを、一人一人誘ってくれたのか。

 なら、あの人を裏切ることはあり得ない。最悪の場合の覚悟も決めよう……。

 

「タイラーさん!」

 

「な、なんだ!?」

 

「僕たち、魔王軍です!」

 

「ええ!?」

 

「それでも、一緒に来てくれますか!?」

 

 タイラーさんたちが、ざわめくのがわかる。

 ここで断られたら……彼らは、魔王軍の敵ということだ。

 だから、どうか断らないでほしい……。

 

「一緒に逃げてるってことは、あいつらと無関係ってことでいいのよね!?」

 

「え、ええ! このダンジョンは、魔王様と無関係です!」

 

「だったら、自分たちを殺そうとする人間より、自分たちを救おうとする魔王軍の方が信用できるな!」

 

「で、でも女神様は……」

 

「どっちにしろ、この子たちがいなかったら、とっくにゴブリンたちに殺されていたわ。魔王軍に助けられた時点で、もう私たちに女神の加護なんてない!」

 

 そういえば、カール師匠も言ってたけど、女神様ってそのへん徹底してるのかな……。

 

「カザマくん! 魔王軍は、俺たちを生かしてくれるか!?」

 

「だ、大丈夫です! 僕も説得します!」

 

「なら、助けてくれ!」

 

「はい!」

 

 とは言ったものの……。あの鎖を一人ずつ登って帰還するのかな?

 いくらロマーナさんといえど、この人数を一度に引き上げるのは無理だろうし、自分たちで登るしかないはず……。

 

 さすがに、追いつかれてモンスターに攻撃されるか、罠で攻撃されるよね……。

 仕方ない。だったら、僕がなんとしてでも。

 

「ここは僕が護るので、あの鎖の先に行ってください!」

 

 他の人たちはなにか言いたそうにしていたが、時間がないと理解しているのか、感謝の言葉だけを投げかけてくれた。

 よし、がんばれ僕。絶対にここを守り切らないと。

 

「はあ? なにあいつ! 一人でこの数をどうにかできると思ってるの?」

 

「おい、モンスターども。あの鎖を登ってるやつから狙え!」

 

 それはまずい……。ど、どうしよう。こういうときって、普通僕を先になんとかするべきだろ!

 なんとかモンスターたちの攻撃に対応を。いや、新に結界を張ってもらって、ああ、もう! 頭がこんがらがる!

 そんな僕をなだめるかのように、背中を叩かれた。

 

「よくやった。あとは私に任せるといい」

 

「ロ、ロマーナさん?」

 

 あれ、鎖は……。ああ、よかった。ちゃんとロマーナさんの右手は、転移の穴の中に伸びている。

 どうやら、僕たちはこの場を切り抜けることができたみたいだ。

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