【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「なんだ? 君たちは」
「はあ……やっぱり、状況も理解してない融通の利かない馬鹿NPCじゃん。めんどくさ」
なんか、ものすごい罵倒をされてしまった。
それにしてもNPC? 僕たちのことを言っているんだろうか。
勘違いというのもあるが、そんな発言をするということは、彼らも転生者?
「いいか~。一回しか言わないからよく聞けよ。こいつらは、捕まえたから人質な。抵抗したらこいつら殺すから」
「
「あ~はいはい。うるさいうるさい。そういうのいいから。……なんか、NPCっぽくない名前だな」
「当然だ。君たち、転生者だろ?」
「はあ? ……なんだよ。もしかして、お前ら転生者?」
どうしよう。
もうそれを推測できるようなことを言っちゃったけど、僕たちって転生者を名乗ってしまってよかったのかな。
「うわ~めんどくさ。てか、転生者のくせに、なんで俺たちの邪魔してんだよ。うざっ」
なんか……。エーニルキアで、勝手な行動をした転生者たちに似ている……。
女神からもらった力を絶対視しているというか、この世界の主役は自分たちだという考えというか。
「まあいいや。さっさと全員、その鎖の罠にかかれよ」
……ただ、かなりまずい事態ということは間違いなさそうだ。
僕が罠なんかにかかったせいで、このままじゃ全員が身動き取れなくなる。
そうして、ここにいるモンスターたちに襲われでもしたら、全滅してしまう。
「そうそう。素直に言うこと聞いておけば、楽に死ねるぞ~」
一人、また一人と、仲間たちが僕と同じ状況になっていく。
鎖が足に巻き付き、宙吊りにされてしまい、簡単には脱出もできない。
「だいたいなあ。せっかく入り口をふさいだのに、なに別ルートから侵入なんて卑怯なことしてんだよ」
「入り口をふさいだのは君たちか」
「お前らみたいなやつを、逃がすわけにはいかないからな。だからさっさと死んでくれ。お前らのせいで、ダンジョンが稼働できないし、迷惑だからよ」
入り口をふさいだだけじゃない。
この口ぶりからすると、そもそもこのダンジョンは彼らが用意したものということか?
「このダンジョン……君たちが作ったってことかい?」
「ああそうだよ。俺たち全員で協力して作ったダンジョンだ。せっかく作ったというのに、邪魔されてムカついてんだ。こっちは」
「ダンジョンを作る……? おい、ここは魔王が作ったんじゃないのかよ」
「いいの? NPCにばれても? せっかくピルカヤ対策までしてるのに、ここで話したらまずくない?」
「いいんだよ。どうせ、こいつらここで殺すし」
タイラーさんの言葉を無視して、なにやら物騒な会話をしている。
ピルカヤさん対策って……。そんなこともできるのなら、やっぱり女神の力は大したものだ。
「お前らさえいなくなれば、元通りダンジョンを使ってNPCどもを狩れる。邪魔者には退場してもらうぞ」
あくまでもダンジョンを稼働させて、侵入者を倒すことに徹底している。
その点だけはレイさんと同じだ。きっと、僕たちが日々過ごしているダンジョンも、侵入者から見たらこんな感じなんだろう。
わかったよ。わかっているさ。僕は、君たちに文句を言えるような立場じゃない。
魔王軍で働くってことはそういうことだろう。だけど、君たちだって別に善人じゃないだろう。
だからこれは、悪人同士の戦いってだけさ。
「なんで、わざわざ入り口を封鎖してまで、僕たちを殺そうとしたんだい? 放っておけば、そのまま入り口から出ていったのに」
「迷惑だからって言ったろ。ボスを倒されたことも、宝を回収されたことも、言いふらされたら困るんだよ。ただでさえ減ったNPCが余計に来なくなる」
「ふ、ふざけんな! 踏破したやつを殺すなんて知られたら、それこそ誰も来なくなるだろ」
思わずタイラーさんが叫ぶも、目の前の男はそれを鼻で笑うだけだった。
「だから、事情を知ってるやつを全員殺すって言ってるだろうが。わかんねえやつだな。このダンジョンには、俺たちとお前らしかいないんだよ。ここでお前らが死ねば、ボスが倒されたなんて誰も知らなくなる」
レイさんと同じと言ったけど、そこは訂正しよう。
レイさんはそんなせこい真似はしないからね。
むしろ、そろそろダンジョンの奥に進んでほしいとか、ボスを倒してほしいとか、なんか怖いこと言ってるし……。
さて……彼らは話に夢中で気づいていないようだし、そろそろ行動に移ろう。
思い通りにここで死ぬなんてまっぴらごめんだ。
視界の隅にとらえた鎖を見ながら、僕は
「な、なんだ!?」
直後、大きな破裂音が聞こえ足に痛みが走るが、それもすぐに治療される。
友香……。助かっているけど、そろそろ魔法のコントロールできてほしいなあ。
まず、友香の攻撃魔法によって、僕たち全員の足元が攻撃される。
鎖は破壊され、ついでに足も怪我をするが、とにかく拘束から解放された。
その直後に新の回復魔法によって、怪我した足はすぐに治療された。
これで全員が罠から解放されたけど、力業だよね……。なんとも、スマートじゃない脱出方法だ。
「逃げます。ついてきてください!」
あとはタイラーさんたちを先導して、あの鎖を辿るだけ。
今度こそ、あの鎖はロマーナさんのものだ。つまり、あの先には地底魔界に帰るための転移魔法があるはず。
「くそっ! 逃げんな!
「もう命令してるよ!」
当然、僕たちを逃がすつもりなんてないから、向こうも必死に追いかけてくる。
モンスターを倒せないわけではないけれど、この数に足止めされてしまうと、向こうの転生者たちに何をされるかわかったもんじゃない。
今はとにかく、逃げることを最優先にしないと。
◇
「馬鹿め。そっちは行き止まりだ」
「何言ってんの! あの怪しい穴に逃げ込もうとしているんじゃない!」
「あ、そうか! おい、逃げんな!」
教えてもらえるのはありがたい。
鎖を辿った先に、地底魔界へ帰還する転移箇所が存在することを確信できる。
幸い、互いの距離が縮まることはない。遠距離から攻撃しようにも、走りながらそれができるほどの器用なモンスターもいないらしい。
……うちのゴブリンたちなら、平然と走りながら投石くらいはしてくるからね。
「武巳くん! たぶん、あれだよ!」
新が声を上げる。目の前には、たしかに空中に開いた穴から、鎖が垂れてきている。
思っていたより高い……。登れるかな? いや、そもそもタイラーさんたちはどうすれば。
このまま一緒に地底魔界へ? 彼らはこの世界の人間であって、魔王軍に良い印象を持っていないんじゃないか?
レイさんは……レイさんなら……。
よく、僕たち人間を受け入れてくれたな。あの人。
そうか。あの人も、そうやって僕たちやロペスたちを、一人一人誘ってくれたのか。
なら、あの人を裏切ることはあり得ない。最悪の場合の覚悟も決めよう……。
「タイラーさん!」
「な、なんだ!?」
「僕たち、魔王軍です!」
「ええ!?」
「それでも、一緒に来てくれますか!?」
タイラーさんたちが、ざわめくのがわかる。
ここで断られたら……彼らは、魔王軍の敵ということだ。
だから、どうか断らないでほしい……。
「一緒に逃げてるってことは、あいつらと無関係ってことでいいのよね!?」
「え、ええ! このダンジョンは、魔王様と無関係です!」
「だったら、自分たちを殺そうとする人間より、自分たちを救おうとする魔王軍の方が信用できるな!」
「で、でも女神様は……」
「どっちにしろ、この子たちがいなかったら、とっくにゴブリンたちに殺されていたわ。魔王軍に助けられた時点で、もう私たちに女神の加護なんてない!」
そういえば、カール師匠も言ってたけど、女神様ってそのへん徹底してるのかな……。
「カザマくん! 魔王軍は、俺たちを生かしてくれるか!?」
「だ、大丈夫です! 僕も説得します!」
「なら、助けてくれ!」
「はい!」
とは言ったものの……。あの鎖を一人ずつ登って帰還するのかな?
いくらロマーナさんといえど、この人数を一度に引き上げるのは無理だろうし、自分たちで登るしかないはず……。
さすがに、追いつかれてモンスターに攻撃されるか、罠で攻撃されるよね……。
仕方ない。だったら、僕がなんとしてでも。
「ここは僕が護るので、あの鎖の先に行ってください!」
他の人たちはなにか言いたそうにしていたが、時間がないと理解しているのか、感謝の言葉だけを投げかけてくれた。
よし、がんばれ僕。絶対にここを守り切らないと。
「はあ? なにあいつ! 一人でこの数をどうにかできると思ってるの?」
「おい、モンスターども。あの鎖を登ってるやつから狙え!」
それはまずい……。ど、どうしよう。こういうときって、普通僕を先になんとかするべきだろ!
なんとかモンスターたちの攻撃に対応を。いや、新に結界を張ってもらって、ああ、もう! 頭がこんがらがる!
そんな僕をなだめるかのように、背中を叩かれた。
「よくやった。あとは私に任せるといい」
「ロ、ロマーナさん?」
あれ、鎖は……。ああ、よかった。ちゃんとロマーナさんの右手は、転移の穴の中に伸びている。
どうやら、僕たちはこの場を切り抜けることができたみたいだ。