【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第233話 プラダを着た魔王

「どうするの? タイラー」

 

「どうするのって言われてもなあ……」

 

 カザマくんに助けられて、まさか魔王軍の拠点で働くことになるとは……。

 そもそも未だに、カザマくんたちが魔王軍の手先ということが信じられない。

 頭の中がこんがらがりそうだ。俺たちを殺そうとダンジョンを作っていたのが、アルマセグシアの人間……?

 そんな俺たちを、魔王軍の人間であるカザマくんたちが救った……?

 

「とりあえず、仕事を覚えていくか」

 

「乗り気ね……。いや、まあこうなった以上は、私たちは人類の裏切り者ってことか……」

 

「そもそも、カザマくんたちに救われて、一緒に行動したからな。女神様からしたら、もう俺たちは魔族側だろう」

 

 バムの言うとおりだ。こうなったからには、魔王軍の一員としてやっていくしかない。

 そもそも……話が違いすぎる。魔王軍って、もっと問答無用に魔族以外を皆殺す連中じゃなかったのか?

 あのアルマセグシアの人間のほうが、よっぽど魔王軍っぽかったじゃないか。

 

「もう、わけがわからない……」

 

 俺たちに選択肢を与える時点で、話し合いもできない相手とは思えなかった。

 ただ、最後のあの一言。たったあれだけで、あの魔王の恐ろしさも十分に理解してしまった……。

 

「裏切ったら燃やす……か」

 

「たぶん、あの方が魔王ってことよね」

 

「寒気がした……。あの瞬間、力の一端を理解したが、その気になれば俺たちを簡単に消し炭にできるんだろうな」

 

    ◇

 

「そんな話をしていたよ」

 

「濡れ衣すぎない?」

 

 なんか、俺が魔王だと勘違いされている。

 焼き殺される危機を感じたって、それ絶対ピルカヤがあの瞬間になにか圧をかけただろ。

 だけどまあいいか。タイラーたちは俺の姿が見えていたってことは敵ではないけれど、転生者たちやダークエルフたちと違って、まだ他の従業員と同じ扱いくらいでいいはずだ。

 だったら、フィオナ様と会わせる必要はないし、このまま俺を魔王だと勘違いしてもらっておこう。

 

風間(かざま)たちが面倒をみるとやる気を出しているし、マギレマさんのところで働いてもらうことになるな」

 

「あの子たちも無理しがちなので、あまり作業は増やしたくなかったんですけどねえ。ですが、適任なのは事実ですし、しばらく様子を見ましょうか」

 

 今日もフィオナ様は部下に優しい。前回の功績を認め、ロマーナや風間たちに大量の金品を与えていたくらいには部下に甘いのだ。

 そして、そんなフィオナ様が適任だと考えたのなら、それが一番なのだろう。

 これまでも、最適な蘇生対象を選んでいたことから、人材の適性を見抜く力はすごそうだからな。

 

「ところで、魔王様が部屋でだらだらしてないなんて珍しいですね」

 

「ピ、ピルカヤまで、そんなことを! 私だって、たまにはこうしてダンジョンを歩きますけど!?」

 

「そのほうがいいと思いますよ~。散歩ならレイと一緒にどうぞ~」

 

「散歩といいますか、ラプティキに呼ばれたんですけどね」

 

 なんだ。やっぱり自主的にお出かけしているわけではなかったのか。

 それなら、俺とピルカヤがついて行っても邪魔かもしれないし、ここらで見送るとするか。

 

「ちなみに、レイも一緒に来てほしいそうです」

 

「え、俺も……?」

 

「じゃあ、ボクはここで別れますね~」

 

 ピルカヤがそう言いながら消えてしまった。

 俺とフィオナ様の呼び出しか……。え、お説教? 俺たちがセットで呼び出されるときって、たいていはお説教だからな。なんか、身構えてしまう。

 

    ◇

 

「ラプティキ。来ましたよ~」

 

「すみません魔王様。わざわざこちらにお越しいただきまして」

 

「ラプティキさん、今日は一人なんですね。珍しい」

 

 ラプティキさんの仕事場は、珍しいことに彼女一人しかいなかった。

 いつもなら、大量の服を見ている女性陣が何人かいるし、ラプティキさんは服の相談をしている者たちに囲まれているのに。

 

「注文されていた服も一通り作り終わって、手が空いたところなのよ。だから、ついに魔王様の番というわけ」

 

「用事を思い出したのでちょっと帰りますね?」

 

「駄目です」

 

 素早く逃げようとしたフィオナ様の腕に糸が絡まる。

 その気になれば無理やり引きちぎれそうだが、フィオナ様はその時点で諦めたようだ。

 

「なんで、そんな逃げようとしたんですか?」

 

「レイには前も言ったじゃないですか! ラプティキは、私のことになると優に数時間は着せ替えしてきますからね!?」

 

 あ~……。それは、ちょっと大変そうだな。

 

「安心してください魔王様。転生者の子たちから注文をされたことで、私はこれまでにないほど想像力が培われました。あのようなありきたりな服ではなく、今回はどれもすばらしい出来になっていると自負しております」

 

「うあぁ……やる気に満ちていますねえ……」

 

 フィオナ様は、そんなラプティキさんを無碍にすることもできず、観念したように着せ替え人形になることにしたようだ。

 俺……なんのために呼ばれたんだ? もしかして、フィオナ様が終わったら次は俺? いや、すでに断っているのに強要はしないよな?

 二人は、着替えのために席を外してしまったので、一人取り残されてそんなことを考える。

 

「はい。レイさん感想」

 

「思っていた以上に、現代風の服装ですね」

 

「馬鹿! 服じゃなくて、魔王様への感想!」

 

 おだやかなラプティキさんにしては珍しく、大声でこちらを非難してきた。

 ああ、そっちか。フィオナ様の感想ね。

 

 上はシンプルな薄い黄色い服。何の飾り気もないセーターみたいだけど、ニットって言うんだっけ?

 下は黒っぽいロングスカートだけど、たしかフレアスカートとか言ったな。

 思った以上に似合っている。ファンタジーでなく、現代の女性っぽい服装なのにうまく着こなすものだ。

 

「似合ってますね。いや、本当に」

 

「そ、そうですか! まあ、私魔王ですからね! このくらいはお手の物ですから!」

 

「じゃあ、次いきますね」

 

「え、は、速い……」

 

「終わったらすべて献上いたしますから。あとは、魔王様がお好きに着て、レイくんを誘惑してください」

 

「な、なんてことを言うんですか!」

 

 フィオナ様に文句を言われながらも、ラプティキさんは次の服を早く着せたいのか、そのまま別室に移動してしまった。

 誘惑って……。する必要ないだろ、フィオナ様に限って。

 そんな搦手使わずとも、魔王様の強さは絶対なんだから。そういうのはもっと戦闘能力が低い者がとる手法だ。

 というか、俺みたいな雑魚なら、そんな状態異常をかける必要すらない。

 

「マギレマじゃあるまいし! 恥ずかしいんですけど!?」

 

「大丈夫ですって」

 

「袖がないから肩から腋から丸出しじゃないですか!」

 

「上に羽織るから大丈夫ですよ。ちなみにそれブルゾンというそうです」

 

 なんか、すでにトラブルが発生しているらしい。

 それでも出てきたフィオナ様は美しかった。

 マギレマさんみたいな黒いチューブトップの上に、ベージュの上着を羽織っており、先ほどとは別の丈の長いスカートが良く似合っている。

 

「はい。感想」

 

「綺麗だと思います」

 

「ふふん! 私も、やればできるんですよ!」

 

 だが、その表情と態度で台無しでもある。

 いや、俺はこっちのフィオナ様のほうが好きだから、それを指摘するつもりはないけど。

 

    ◇

 

「す、すごいですね……」

 

「わかったでしょう……。これが、ラプティキです……」

 

 その後も、見事なまでに俺たちの世界にあったようなファッションを、フィオナ様が披露した。

 いや、披露したのはもはやラプティキさんなのかもしれない。

 転生者女子組が、彼女に色々注文していたのは知っていたが、そこからこれほどまでに応用するとは……。

 

「さて、こんなところかしら。レイさんは、どの魔王様が一番好きだった?」

 

 かなり、多かったからな……。どれと言われると……。

 

「俺は……いつものフィオナ様が一番好きです」

 

「そ、そうですか~! いやあ、レイが私のことを大好きなのは知っていますけど!? そう言われたら仕方ないですね~!」

 

 いや、そこまで言ってない……。

 というか、単に見慣れたフィオナ様が一番良いというだけだ。

 現代のファッションに身を包むフィオナ様も良いが、もっとファンタジーらしいほうがこの世界や場所にも合っているしな。

 

「そう言われたら、さすがにお手上げね。魔王様、それは献上いたしますので、気が向いたときにでも着てください」

 

「ええ。私のためにありがとうございます。ラプティキ」

 

「それと、最後に一つ。ちょっと来ていただけますか?」

 

 そう言って、二人はもう一度別室に移動してしまった。

 なんだろう。とっておきの服でもあるんだろうか。

 

「無理に決まってるじゃないですか!!」

 

「ですが、効果は絶大ですよ?」

 

「そういうのじゃありませんから!」

 

 なんか……こっちにいても聞こえてくるけど。いったいどんな服を……。

 

「では、一応お渡ししますので、ここぞというときに使ってください」

 

「使いませんけど!?」

 

 言い争っているというか、一方的にフィオナ様が突っ込みを入れている感じだ。

 そんな様子で二人が部屋から戻ってくるも、フィオナ様はいつもの服装だった。

 

「あれ? 着替えなかったんですね」

 

「着替えるわけないでしょう! レイのエッチ!」

 

 え……なんだその濡れ衣。別に、着替えているところを見せろとか言ったわけじゃないのに。

 珍しく、フィオナ様が理不尽な上司になってしまわれた。

 

「おすすめは、就寝時です」

 

 ああ、なるほど。パジャマか。

 だから、今は着ていないということだろうな。

 そんなふうに納得していた俺の後ろで、フィオナ様は小声でぶつぶつと何かをつぶやいていた。

 

「透け透けの……あんな、透け透けの……服で……」

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