【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第236話 魔力が満ちればエルフは倒れる

「魔王ワープ」

 

「便利ですねえ。これ」

 

「魔王ですからね! そして、メイドでもあります」

 

 メイドの力は関係ないと思う。フィオナ様はしゃいでんなあ。

 案外、服装を変えたことで気分が高揚しているのかもしれない。

 であれば、フィオナ様も女の子だったということか。

 

 それにしても、魔王ワープ便利だ。

 獣人ダンジョンからレストランダンジョンへ、そこから今度は欲望のダンジョンへ。

 本来なら移動するだけでわりと時間がかかるのに、こうして一瞬ですむ。

 おかげで、いまだにダンジョンの侵入者や客が行動する前に、視察ができているからな。

 

 ……もしかして、これがあれば侵入者に姿を見られることなく撃退できるんじゃないか?

 

「フィオナ様。魔王ワープで接近して攻撃とかできます?」

 

「これ、けっこう集中が必要なんですよねえ。なので、使った前後でちょっと動きが固まってしまうので、そういうことには利用できないんです」

 

 じゃあ駄目だ。硬直中のフィオナ様に攻撃されるなんて、絶対にあってはならない。

 

 そんな話をしていると、ロペスは驚いた様子で俺たちの姿を見ていた。

 

「ビッグボス……それにボスも……ど、どうしたんだい? こんな時間に」

 

「ロペス。たぶん、この二人のことだから深く考えても意味ねえぞ」

 

「ウルラガの旦那……いや、さすがにそういうわけには」

 

 ウルラガ正解。さすがはリグマの分体だ。

 フィオナ様と俺をよくわかっている。

 

「ダンジョンの様子を視察している」

 

「ほら! やっぱ、そんなのほほんとした理由じゃねえぞ。ウルラガの旦那!」

 

「ええ……。お前、心配性すぎんだろ……」

 

 本当にな。ただの視察というか、もはや見学なのに。

 ロペスは相変わらず真面目だなあ……。

 

「それにしても、朝はここも静かだな。カジノも時間外だとこんな感じなのか」

 

 電源ではなく魔力で動いているはずだけど、時間外には省エネのために稼働させていないのは同じか。

 ますます温泉旅館っぽいな。営業時間外のゲームコーナーを思い出す。

 

「や、やっていくかい!? すぐに準備できるぜ!」

 

「いや、俺はカジノは別に……」

 

 朝っぱらから俺に忖度させるのは、さすがにかわいそうだろう。

 

「……」

 

「やってみたいんですか?」

 

「ま、まあ。興味がないといえば嘘になりますが!」

 

 うちのメイドは興味があったらしい。大丈夫かなこの魔族。

 ギャンブル中毒になんてなられたら、魔王軍が心配になってくるぞ。

 

「すぐに準備します! あ、あの……ところで、ビッグボスはなんでメイドの格好を」

 

「レイのメイドだからですが?」

 

「そ、そうでしたか。すみませんでした。変なことを聞いて!」

 

 そう言って、ロペスは準備のために慌ただしく行動を始めた。

 なんか悪いな。朝っぱらから。

 それと変なことは聞いていないぞ。変なのは、むしろうちの魔王様だ。

 

「楽しみですねえ」

 

 だが、こんなふうに楽しそうにされてしまうと、文句も言えなくなるからずるい。

 美人ってやっぱり得だなあ。

 

    ◇

 

「……なあロペス」

 

「なんだい? ボス」

 

「あれって、遠隔で操作とかしてる?」

 

「……やっぱり、わかるよなあ。前は悪かったなボス。喜んでもらおうと思ったんだけど、逆効果で」

 

「いや、それは俺を楽しませてくれようとしたってことだから良いんだけど」

 

 ロペスもダークエルフたちも、何も俺への嫌がらせをしていたわけじゃないからな。

 むしろ、最大限の忖度をした結果、互いにすれ違い悲しい結果になっただけだ。

 

「それを反省したから、今は遠隔で操作していないってことか?」

 

「それなんだけどなあ……。ぶっちゃけてしまうと、ビッグボスにも接待しようとしている」

 

「……フィオナ様はいつも爆死しているけど、ハズレを喜んでいるわけじゃないぞ?」

 

「……それはわかるんだが、あの現象は俺もよくわからねえんだ」

 

 良かった。ちゃんと当たりを引かせようとしてくれているみたいだ。

 ガシャじゃないから、当たりは当たりでもスロットの当たりだが。

 それはいいんだけど……。

 

「なんで、あんな大ハズレばかり?」

 

「なんでだろうなあ……」

 

 ロペスもわからないらしい。

 フィオナ様のそばにいるダークエルフはもう泣きそうになっている。

 フィオナ様も泣きそうになっている。

 

「遠隔で勝たせてくれようとしているんだよな?」

 

「そうしようとして、失敗しているらしい。うちの従業員がそろそろ気絶するかもしれねえ」

 

「……どうやら、魔王様の魔力が膨大すぎて、スロットの遠隔機能が悪さをしてしまっているようだねえ……」

 

 なるほど。そのせいで、ダークエルフの子も遠隔操作ができないでいると。

 フィオナ様が負け続けているのも、運じゃなくて忖度機能が正反対に牙をむいたせいか。

 不運な魔王様ってわけじゃなくてよかった。

 

「レイ~~!!」

 

「なんか、フィオナ様の魔力のせいでスロットがバグったみたいですよ?」

 

「なんと!? 私まで、そんなリピアネムみたいなことを……」

 

 たしかに、魔力版リピアネムみたいになっていたな。

 だけど、今まで魔力の操作で失敗したことはなかったはずなんだけど……ガシャ以外は。

 

「もしかして、ギャンブルになると熱くなって、操作が上手くいかなくなるんじゃないですか?」

 

「はははは。私に限ってそんなことはないでしょう」

 

「でしたら、私がカードで相手をいたしましょうか?」

 

 クララが提案してくれたが、たしかにこれなら魔力で何かがおかしくなることもないだろう。

 俺のときと違って、適度に勝ったり負けたりしてくれるというのなら、フィオナ様も楽しめるはずだ。

 

「いいでしょう! 私は強いですからね!」

 

「根拠がないのに、自信だけはあるんですよねえ……」

 

 魔王だから強いといえば強いけど、運のステータスは見えないからなあ。

 

    ◇

 

「……はぁ……はぁ」

 

「ビ、ビッグボス……頼むから、もう許してやってくれ。女王様が……あ」

 

 なんか、クララが気絶した。

 いったいなんだと言うのか。

 

「あ、あれ? ど、どうしたんですか? クララ? クララ~?」

 

「女王様は、ちょっと体調が悪いみたいだ。俺たちが介抱しておくから、安心してくれ……」

 

「そうか? なんか悪かったな。そんなときに来てしまって」

 

「いやいや、気にしないでくれ。本当に大丈夫だから」

 

 たしかに、ダークエルフだけど顔色が悪くなっているもんな。

 というか、意識を失うほど体調が悪いのに、よく俺たちに付き合ってくれたものだ。

 

「テラペイア呼ぼうか?」

 

「いやいや、女王様の体調不良の原因はわかっている。だから、ビッグボスもボスも安心して他を見てきてくれ」

 

「悪いな。何かあったらすぐ言ってくれ」

 

「ああ。そうさせてもらう」

 

 間が悪かったか。であれば、フィオナ様をつれてさっさと次に行こう。

 それにしても、女王が気絶したというのに、ロペスもダークエルフたちもあまり慌てていなかったな。

 ……もしかして、持病でも抱えているのか? やはりテラペイアに相談したほうが……?

 

    ◇

 

「起きたかい?」

 

「あ、ああ……な、なんだかとても大変な思いをしたよ……」

 

「魔力に鋭いわけでもなく、直接対面しているわけでもない。そんな俺でもちょっときつかったからなあ……。女王様への威圧は俺が感じたものの比じゃなかったろうさ」

 

「そ、そうだねえ。魔力の感知には自信があるんだ。だから、魔王様が私を脅したわけじゃないともわかっている。そして……あれが、無意識だということがわかってしまったのが、より恐ろしかったよ……」

 

「え、無意識であれなのか……?」

 

「恐ろしいことにね……。レイ様が言っていたとおり、魔王様はギャンブルには熱が入る方なのだろう。そして、無意識に放った魔力で、私は気絶したようだ……」

 

「ボスも、無意識に殺意をばらまくダンジョンを作るって、アナンタの旦那が言っていたな……」

 

「案外、似た者同士なのかもしれないねえ……」

 

「ってか、なんで魔王様はレイのメイドになってたんだ?」

 

「ウルラガの旦那……。そういえば、なんでだろうな?」

 

「……やはり、レイ様が魔王軍のトップだということなのではないかねえ? 魔王様をメイド扱いできるのなんて、あの方くらいだろう」

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