【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第240話 フラグメントの支配者

「さて、徳は積みました!」

 

「……はあ」

 

「なんですか。その気の抜けた返事は! これからが本番ですよ!」

 

 すみません。寝起きでフィオナ様のテンションについていくのは難しいんです。

 一緒に寝ているときの時点で着替えはしていたので当然だが、今日はメイド服ではなく、いつもどおりのお美しいフィオナ様の姿になっていた。

 

「徳って?」

 

「私は魔王です」

 

「はい。あなたが魔王です」

 

「そんな私が、レイにうやうやしくメイドとして仕えました!」

 

「まあ、姿こそメイドでしたけど、中身はいつものフィオナ様でしたけどね?」

 

 見た目が綺麗だけど中身が残念から、見た目はかわいいけど中身が残念に変わっただけだ。

 

「ちなみに、レイはどちらの私が好きですか?」

 

「今のフィオナ様です」

 

「ほう! つまり、等身大の包み隠していない素の私のことが好きだと!」

 

「……あの、もしかしてこれから残念なガシャの話をしようとしていませんか?」

 

 なんか、読めてきたぞ。

 これはもうガシャをするテンションだ。等身大の素のフィオナ様って、ガシャ狂いのポンコツなフィオナ様ってことじゃないか。

 

「さすがはレイ。よく気づきましたね。全てはそこにつながるのです!」

 

「たまには、別のルートありませんかね……」

 

「ありません」

 

 言い切りやがったよ。この魔王様。

 

「魔王である私が、他者に奉仕することで徳を溜める。それは、ガシャに輝かしい結果をもたらすことでしょう!」

 

「まあ、思うだけは自由ですからね」

 

「思いの力が勝利を呼び寄せる。それがガシャです」

 

 思いの力だけなら、いつもそれなりにあるでしょうが。

 それで負けているってことは、その力は無駄なんですよ。きっと。

 

「では、ガシャのお時間です」

 

「じゃあ、ピルカヤに頼んでみんなを集めますか……」

 

『朝ごはん食べてからにしませんか~?』

 

「む、たしかに、腹ごしらえは大事ですね。では、朝の忙しい時間が終わって少ししてから、ガシャを回すことにしましょう」

 

 そう言いながら、フィオナ様は勝利を確信した顔で食堂へと向かった。

 ……徳を積んだのって昨日だよな? それで、これから開ける宝箱って昨日より前に魔力を注いだものだよな?

 徳って、それ以前の成果にも有効なんだろうか……。

 

    ◇

 

「今日は自信があります!」

 

 いつも自信だけはあるんだよなあ。この魔王様は。

 

「がんばってくださ~い!」

 

「ええ、余裕です!」

 

 きっと本当に当たりを引くことを望んでくれているのだろう。

 時任(ときとう)の応援に小さくガッツポーズをするフィオナ様。

 仲良くなったもんだな、この二人も。

 他の転生者たちは、時任の行動をギョッとした様子で見ているようだけどな。

 

「今日は俺はやりませんからね?」

 

「ええ、レイが出るまでもありません!」

 

 その言い方だと、俺は魔王であるフィオナ様より大物みたいな扱いだな。

 普通そういうセリフって、自分のほうが下の立場のときに出るもののはずなんだけど……。

 

「では、勝負です!」

 

 フィオナ様の指示のもと、宝箱を一つずつ開封していく。

 まずは……ああ、ちょっと惜しかったな。

 

「ば、万能薬……いえ、薬系のレア枠。近づいています! 確実に蘇生薬に近づいています!」

 

 今日のフィオナ様はこの程度じゃへこたれない。

 まだまだ自分を鼓舞して開封を続けていくようだ。

 まあ、開封してるの俺だけど。

 

「……万能薬ですね。私の運の悪さも治せませんか?」

 

「食料とか宝石とかが出るよりは惜しいんですけどね」

 

 数でごまかすタイプじゃないので、万能薬がレアなのは疑いようがない。

 一つしか出てこない系統のアイテムは、どうやら蘇生薬と同じくレアリティが高いアイテムみたいだからな。

 

「あれ? 宝箱壊れました?」

 

「落ち着いてください。同じものが三つって、今までもそれなりにありましたから」

 

「で、では! 次こそは蘇生薬です! これで最後なので、お願いします!」

 

 きっと駄目なんだろうなと思いながら開けると、ついには薬ですらないアイテムが出てきてしまった。

 ただ、このアイテムも一つしか入っていなかったので、それなりに希少なアイテムっぽいな。

 なんだろうこれ……。結晶?

 

「これで終わりです。では、各々自由に解散してください……」

 

「魔王様! 次がありますよ!」

 

「ええ、ありがとうございます。トキトウ……」

 

「ええと、魔王様。気を落とさないでください」

 

「ええ、大丈夫です。カザマ……」

 

「ビッグボス。いずれは今日の分の帳尻が合う結果になると思うぜ……」

 

「ええ、その日を待つことにします。ロペス……」

 

 今回は、見物客たちの目当てのものも出なかった。

 なのでいつもと違って、転生者も現地の従業員も慣れ親しんだ者たちは、去り際に口々にフィオナ様を励ましてくれているようだ。

 時任以外はおっかなびっくりって感じだけど、案外みんな地底魔界に慣れてくれているのだろうな。

 

「あ~……レイ~」

 

「はいはい」

 

 それでもフィオナ様の気分は晴れなかったらしく、名前を呼ばれたのでフィオナ様のもとへと近づく。

 あとはそのまま抱きつかれて頭をなで続けることになった。

 

「万能薬がどんどん溜まっていきますね」

 

「けっこう引いてますよね。前にロペスに話したら固まってましたけど、やっぱり入手が困難なんですか?」

 

「う~ん……まあ、それなりに大変ではありますかね。本当に何でも治せますから。状態異常だけじゃなくて風邪とかも」

 

「テラペイア要らずってことですか」

 

「さすがに毎回使っていると足りませんけどね。ええ、私がいくらハズレとして引いても足りませんね!」

 

 やばい。それだけのハズレを引いていると責めたみたいになってしまった。

 

「落ち着いてください。なんかすみませんでした」

 

「手が止まっていますよ。もっと魔王を甘やかしなさい」

 

「はい」

 

 まあ、さすがにテラペイアのほうが優秀だろう。

 使用回数制限がなくてわりとなんでも治せて、事前のケアまでしてくれるのだから。

 彼がいなかったら、魔王軍はワーカーホリック軍団として自滅している可能性すらある。

 

「ところで、万能薬じゃなかったこれなんですけど。どういうアイテムなんですか?」

 

 頭をなでていないほうの手に持っていた結晶っぽい何か。

 それを見るために、フィオナ様は一旦俺に抱き着くのをやめた。

 ……別に、ちょっと名残惜しいとかそういうのはない。全然ない。

 

「ふむふむ……ああ、群生の魂晶ですか。う~ん……モンスターに使います?」

 

 フィオナ様は、少し使いどころに困っているような反応を見せた。

 群れという名前でモンスターに使うとなると、集団を強化するアイテムだろうか。

 だとしたら、ゴブリンたちに使えばさらに強化できそうだな。

 

「ちなみに、群れの強化って感じですかね?」

 

「まあ、一応そうですけど。使い勝手はなかなか難しいアイテムですね」

 

 そうなのか。となると、単純な集団強化じゃないっぽいな。

 何か条件とかの問題か?

 

「群れを対象とするのは合っています。ですが、使用後にその群れは消滅して戻りません」

 

「え……複数のモンスターを犠牲に、なにかすごい効果があるとかですか?」

 

「いいえ。群れを一つに統合するのです。異なる個性の同系統の種族たちを一つにまとめて、その中で選び抜かれた一人が生き残るといいますか」

 

 なんだそれ……。まるで蠱毒だな。

 

「じゃあ、一人がすごい強化される代わりに、他の者たちはその一人に吸収されるってことですか?」

 

「そうですね。しかも、一度使用したら解除して群れに戻るとかもできません」

 

 それはたしかに、使いどころが難しいな……。

 

「じゃあ、モンスターを大量に作成して、すでにいるモンスターに吸収させてしまえば」

 

「レイの作成したモンスターたちは、作った直後はあまり個性がばらけていませんからねえ。たぶん、そこまでの強化にならないと思いますよ?」

 

 ますますもって使い勝手が難しい……。

 いったんはこのアイテムは保留かな?

 なんだか、魔王ボックスの肥やしになってしまいそうな気がしてきた……。

 

    ◆

 

 群生の魂晶

 

 群れを統合し、一つの力として操る魂核の結晶。

 所有者が群れの意志となり、群れが所有者の力となるべく統合する。

 使用後は、周囲の群れを消滅させる代わりに、群れの数の分だけ所有者の力を増強させるが、統合の解除はできない。

 

 その光を浴びた者たちは、群集の中の無数の声を調和させ、選び抜かれた唯一の意志を宿す。

 全ては一つ、全ては己。

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