【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第241話 アレンジ前のバニラアイス

 群生の魂晶を魔王ボックスにしまおうとしたら何かを思いついたらしく、フィオナ様は顎に指を当てて少し考えるしぐさをした。

 きっと名案を思い付いたのだろう。どこか嬉しそうに口を開いた。

 

「リグマ。あなたなら、これを使いこなせるんじゃないですか?」

 

「あ~……たしかに、俺なら意味がありそうですね」

 

「では、このアイテムはあなたに授けましょう。これで、四天王全員の強化が完了です!」

 

 リグマは頭をかきながら、フィオナ様からアイテムを受け取った。

 たしかに、ピルカヤから始まった四天王の強化はこれで全員分完了した。

 ……いや、リピアネムだけ弱体化だけど、ある意味で強化だから問題ないか。

 

「リグマならって……ああ、もしかして分体にも有効なんですか? そのアイテム」

 

「ピルカヤのように自我が同期している分体なら無理でしょうけど、リグマの特別な分体たちは自我が別ですからね。きっとうまくいくと思います」

 

「まあ、カーマルやらアナンタやらと統合したときは強化されるでしょうね」

 

「分体を出していたときは、その分弱体化していたんだよな? でも、このアイテムがなくても元から統合できなかったっけ?」

 

「できるけど、そのときはおじさんとしてしか統合できんのよ。だけどこれがあれば、例えば戦闘特化ならウルラガで統合したり、持久戦ならアナンタで統合したりと選択肢は増えそうだ」

 

「なるほど……分体ごとの個性を活かせるわけだ」

 

 しかし、アナンタで持久戦って……。

 なんかめちゃくちゃ文句言いながら戦い続けそうだな。

 

「それに、おじさんなら元から分裂できるから。一度統合したら戻せないっていうデメリットなんて無視できるわけ」

 

「聞けば聞くほどリグマにピッタリかもな」

 

 デメリットがある系のアイテムは、基本的に効果が高いだろうし、それを無視できるというのは強い。

 たしか、ピルカヤのアイテムもそんな感じだったしな。

 

「はい。というわけで、おじさんたち集合~」

 

「おっさんなのは自分だけでしょ」

 

「俺たちまだ若いからな」

 

「で、誰を主人格にして実験するんだ?」

 

「ええい、いずれお前らもおっさんになるんだからな!? まあ、それはそのうち自分で味わってもらうとして、アナンタにでもなるか」

 

「俺かよぉ……」

 

「そんじゃあ、がんばって主人格を勝ち取れアナンタ」

 

「せめて、サポートしろって……」

 

 そう言いながら、リグマたちは群生の魂晶を使うと一人のスライムになってしまった。

 しばらく動きがないのは、中で主人格が誰になるか選定中のためだろうか。

 

「うええ……なんか、力がいつも以上にあって気持ち悪いぃ……」

 

 そうして残ったのはたしかにアナンタだった。

 

「ってか、内部からあいつらの声が聞こえて気持ち悪いんだけど……いつもなら、会話するごとに姿が変わるはずなんだけどなぁ」

 

 ああ、そういうものなのか。

 きっと、リグマがベースだったときは、発言者の姿に代わって一人芝居するみたいに会話していたんだろうな。

 だけど、今は直接内部で会話できていると。そのあたりも、今回のアイテムによる強化のおかげなのかもしれない。

 

「それで、パワーアップした感じはあるのか?」

 

「まあ、それなりにはなぁ。ただ、戦力として期待されても困るぞ。そういうのは、ウルラガやガナに任せるべきだし」

 

 このままでは自分一人で働くことになると思ったのか、アナンタは早々に分裂してしまった。

 分体はそれぞれ、リグマとカーマルとウルラガへと変化したため、これまでと何も変わっていないことが確認できる。

 

「まあ、問題なさそうだな。アナンタが言ったとおり、厄介ごとには戦闘能力が高いウルラガのもとに集うとしよう」

 

「だよなぁ」

 

「だけど、耐久が必要なときは、お前のもとに集うからな?」

 

「……だよなぁ」

 

 アナンタもリグマの発言をしぶしぶと認めている。

 リグマの分体たちが別人格なのは知っていたが、特性も案外違うものらしい。

 

「アナンタって、そんなに耐久戦向きなの?」

 

「こいつは、おじさんたちの中で一番再生能力が高い。だから、一番倒しにくいってわけさ」

 

 耐久力が高い……。再生までできる……。つまり。

 

「嫌だからなぁ! レイのダンジョンの実験体になるための再生能力じゃねえから!」

 

 まだ何も言っていないのに、そこまで嫌がることないだろう。

 それにしても、ウルラガが戦闘能力が高くて、アナンタが再生能力が高いとしたら、他はどうなんだろう。

 

「カーマルやもう一人の分体は別の長所があるってことだよな? じゃあ、リグマはその全部の力を持っているとか?」

 

「いやあ? こいつらは一つの能力に特化させてるから、おじさんよりその点は秀でてるぜ」

 

「リグマのやつも姿を変えてドラゴンの力を扱えるが、俺ほどじゃねえからな」

 

「まあ、俺みたいに何度も再生できるわけじゃねえけどよぉ……だからって、俺が殺戮ダンジョンの実験台は嫌だ」

 

 つまりリグマは万能型で、他の人格は特化型ってことだな。

 

「僕は見た目だけなら、変化の精度や速度はリグマよりは上だね」

 

「そうだなあ。残りのガナは、俺以上の数に別の自我の分体を作れるぞ」

 

「すごいな。じゃあ、ガナってやつからさらに人手が増やせるのか」

 

「まあ、その分ガナの分体は弱いけどな。そのへんは、今回魔王様から授かったアイテムでなんとかなりそうだ」

 

 リグマ一人でずいぶんとできることが多いな。

 ゲームではさぞかし厄介だったんだろう。各人格で行動が変化するとかなら、行動パターンも多そうだし。

 これは、きっと今後もリグマの仕事量が減ることはないんだろうなあ……。

 

「ねえ。なんかおじさんについて不吉なこと考えてない?」

 

「……ボクも分体いっぱい作れるんだけど!」

 

「うわ! ピルカヤ。どうした急に」

 

 ピルカヤの顔が目と鼻の先に近づいた。

 なんか、前もこんなことあったような気が……。

 

「ボクも、分体、いっぱい、作れるんだけど~」

 

「そ、そうだな。いつもそれで助かってるし」

 

「でしょ~? リグマさんもすごいけど、ボクもすごいからね?」

 

「それは、重々承知だけど……」

 

 圧がすごいな。

 ピルカヤってたまにこうなるけど、働きすぎて疲れているんだろうか。

 リグマのほうを見ると、俺になんとかしろって言っている。

 

「ピルカヤのおかげで、魔王軍は毎日安心して運営できていますよね? フィオナ様」

 

「ええ、なんせピルカヤは四天王ですからね! 魔王軍はみんな頼りになるので助かります」

 

「魔王様とレイが認めてくれているなら、ボクはそれでいいですけどね」

 

 よかった。フィオナ様の部下自慢のおかげで、ピルカヤも落ち着いてくれたようだ。

 思えば、魔王軍で一番手柄や功績にこだわっているからな。

 同じ四天王、それも分体を作れるリグマばかり評価されたことで、もしかして嫉妬したのか?

 

「フィオナ様……ピルカヤって案外嫉妬しやすいっぽいですね」

 

「ええ。ですが、良いことです」

 

 ピルカヤに聞こえないように、フィオナ様に耳打ちをすると、フィオナ様は嬉しそうにそう言った。

 そうか? まあ、ピルカヤの場合感情が炎の出力にも直結するし、そうなのかもしれないか。

 すっかり機嫌が直った精霊を見ながら、俺もなんとなくそう納得することにした。

 

    ◆

 

「ピルカヤ。何か問題はありますか?」

 

「いいえ。地底魔界の外も中も、いたって順調ですよ~」

 

「そうですか。たまには休みませんか?」

 

「いいえ。ボクまだまだ働けるんで大丈夫ですよ~」

 

「そうですか……。それでは、無理だけはしないように。あなたの力は魔王軍にとって替えのない力ですから」

 

「はい。それじゃあ、ボク見張りがあるので」

 

 休みませんね……。実際にそれで問題がないようなので、あまり強く言えません。

 彼は今日もまた、淡々と世界中を見張ってくれています。

 

「おや、リグマ。珍しいですね。あなたがこちらにいるなんて」

 

「魔王様。お久しぶりですねえ。アルマセグシアの潜入の報告のため戻りました」

 

 銀色の大きな体を見かけるのも久しぶりに思えます。

 彼もまたピルカヤと同じく分裂ができるのですが、どうしても本体に意識が集中してしまいますからね。

 一応地底魔界に残している分体は、たびたび銀の水たまりみたいになって動きが止まっていることも多いようです。

 

 彼は、ピルカヤほどの分体の制御はできませんからね。

 特に別々の場所に分体を配置して、それぞれを操作するのは難しいのでしょう。

 

「あなたもピルカヤも、分体まで作って無理に働くことはないのですが」

 

「四天王ですから。それに俺の場合は、分体を作ったとしても、目に見えるものの操作が限界ですからね」

 

「それでも強力な力には違いありません」

 

 今後も四天王には頼ることになるでしょう。

 来たる人類との戦いにおいて、彼らにはまだまだ迷惑をかけることになりそうです。

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