【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第242話 ビオトープの創生日記

「レイさん。一つ思いついたことがあります」

 

 珍しいな。奥居(おくい)がそんなに主張してくるなんて。

 時任(ときとう)と違って、奥居はもっと控えめなことが多いからな。

 だからこそ、彼女の提案の内容が気になるのも事実。

 続きを促すと、やはりいつもと少し異なる様子で、やや高揚気味に話しを続けてくれた。

 

「プリミラさんとレイさんが協力すれば、ダンジョンの中に海かプールか大きな湖とか作れるんじゃないでしょうか」

 

 なるほど、たしかにそういう施設も作れるな。

 というか、最後のはもうある。

 

「大きな湖なら、俺だけでも作れるぞ」

 

「ええ!? 使わないんですか!?」

 

 まるで時任だな。どうやら俺が想像している以上に、彼女は気分が高まっているみたいだ。

 海とかプールが好きなのか? もしかして、泳ぎが好きなのかもしれないな。

 ……そうか、遊泳のための設備か。なんだかその考えにたどりついていなかった。

 大きな湖でどうやって侵入者を倒そうか。そればかりを考えていたけど、普通は最初に考える利用方法は飲み水の確保とか泳ぐことだよな。

 

「侵入者用じゃなくて、娯楽の一環として設置すればよかったのか……」

 

「あの……むしろ、他にどんな用途が」

 

「ラッシュガーディアンで落としてから、吊り天井を落として、脱出できなくするとか」

 

「……」

 

 絶句された。無理もない。アナンタに禁止されたコンボの一つだからな。

 俺だってちゃんと言いつけを守っているから、実際にそのコンボが日の目を見たことはないぞ。

 

「それで、そんなに食いつくってことは、奥居って水泳が得意だったとか?」

 

「あぁ、いえ。その……。ラプティキさんに水着を作ってもらえそうなので……」

 

 ラプティキさんすごいな……。水着まで作れるのか、あの魔族。

 

「そ、それに、例えば魚とかも放流しておけば、釣り堀みたいにできるかもしれません! 侵入者たちから利用料とかとれば、人を呼び寄せられるかもしれませんよ!?」

 

「うん、わかった。わかったから、落ち着いて。実際に、奥居の案はありだと思うし、ちょっと相談して検討してみるよ」

 

 魚……。うちにはいないから、仕入れることになるか?

 アルマセグシアなら簡単に仕入れられるだろうし、なんだったら海のほうにいけば捕まえることもできそうだな。

 となると、大きな湖よりは海みたいなものを作ったほうがいいだろうし、まずはプリミラと協力してみるか。

 

    ◇

 

「ということなんだ」

 

「ということでしたか」

 

 しゃがみながら、じょうろで花に水をあげているプリミラに先ほどの話を伝えた。

 水魔法でなく、そうやって水をあげているのは、気分的な問題なんだろうか。

 

「では、どこか大きな場所で試してみましょう」

 

「大丈夫か? プリミラの仕事がまだ残っていたりは」

 

「畑はモンスターとダークエルフのおかげで、今日も順調です」

 

「さっきの花は?」

 

「あれは、私が趣味で育てているお花ですが、水はしっかりとあげたので大丈夫です」

 

 なるほど、それでやけに牧歌的な姿だったのか。

 相変わらず、趣味と仕事の切り分けが魔王軍で一番上手だな。

 

「ということは、プライベートの時間だったのに邪魔してしまったわけか。悪かったな」

 

「いえ、ちょうど一区切りついたところでしたので。それに、レイ様のお役に立てるのであれば、そちらを優先いたします」

 

 四天王なのに、やたらと俺を立ててくれるよなあ。

 まあ、それを言い出したら、四六時中俺の後ろについてくれているイピレティスだって、俺より上の役職なわけだけど。

 

「では、行きましょうか。まずは地底魔界用で実験でしょうか?」

 

「そうだな。一回作ってメニューに登録されたら、侵入者側のダンジョンにも作っていくとしよう」

 

 プリミラは小さなじょうろを片付けると、仕事モードに切り替えて俺たちについてきてくれた。

 

    ◇

 

「みんな暇なの?」

 

「なんか温泉以来のおもしろ施設ができそうだからなあ。興味があるんだろう」

 

 リグマがそう答えた。

 リグマだけではない。俺とプリミラの後ろには魔王軍の者たちが、こちらの作業を見学している。

 発案者の奥居はわかるんだけど、他のみんなは出来上がってから見にきたらいいのにな……。

 俺へのプレッシャーか。追い詰められた方が強いタイプと勘違いしているというのか。

 

「まあ、やることに変わりはないからな。俺は大きな湖を作るから」

 

「では、私はそれに合わせるように、海水を発生させますね」

 

「自分がその調整をするっす」

 

「私は観測します」

 

 四人がかりだ。なんとも頼もしい。

 こうなったら、心配するようなことは何もない。

 というか、俺抜きでも三人で完成させそうな勢いでさえある。

 

「それじゃあ、大きな湖作成」

 

「……」

 

「プ、プリミラ様! 無言はこわいっす!」

 

「……大丈夫です」

 

 大丈夫? 潮流の宝玉変な効果ないよね?

 意識を乗っ取られるとかだと大変だぞ。テラペイアとプネヴマあたりに、後で念のため確認しておくか。

 

「大きな湖ってだいぶ広いと思っていたけど、海のことを考えるともう少し広げたいよな」

 

「今のままでも広いですが、水游施設としてはもう少し広げたいかもしれませんね。レイ様、お願いします」

 

「無茶ぶりがすぎる……」

 

 畑のときといい、プリミラはたまに年相応な無邪気さらしきものを見せるからな。

 まあ、普段から魔王軍のためにがんばってくれている彼女のわがままだ。しっかりと応えてみせようじゃないか。

 

「とはいっても、広げるってどうするかなあ……。消費魔力を増やせばいけるか?」

 

 湖を覗いてみる。当然だけど中には何もいない。

 綺麗な水が広がっていて、水底はまるで見えないほどに深いようだ。

 ……どれくらいだ?

 

「ルトラ。この湖ってどれくらい深いかわかる?」

 

「はい。数十メートルほどは……」

 

 深すぎる。特に気にしていなかったが、無駄に水深があったらしい。

 やっぱり、この湖の役割って侵入者を沈めるためなのかもしれないな。

 湖に水棲系のモンスターを配置しておいて、侵入者を水底まで引きずり込むとか。

 ……やってみよう。今度絶対しかけてみよう。

 

「なんか変なこと考えてんだろ、お前ぇ! 作業に集中しろよぉ……」

 

 あ、そうだった。

 アナンタの言うとおり、今は湖を広くすることに集中しないと。

 罠は罠、娯楽施設は娯楽施設だ。罠の方はあとで一人でもできるからな。

 

 とにかく、そんなに深い湖だというのなら、深さをある程度削って代わりに広くできないだろうか。

 ダンジョンマスターさん。そのへん融通が利きませんかね?

 湖のイメージをしつつ、ダンジョンマスターさんにお願いすることで、改めて大きな湖を作成してみる。

 

「大きな湖作成」

 

 すると、見るからに広い湖が作成された。

 

「あ、いけた」

 

「……新しい湖が作成できるようになったのですか?」

 

「いや、大きな湖には変わりないけど、なんか浅くした分広げられた」

 

「……すばらしいですね。では、改めてこの湖と海を混ぜるように……テクニティス、ルトラ、協力お願いします」

 

「了解っす!」

 

「かしこまりました」

 

 やはり、俺抜きでなんとかなりそうだ。

 四天王と幹部二人だからなあ。きっと今までと違って、この三人でどうにかしてくれることだろう。

 

「こんな感じでしょうか……レイ様、準備できました。もう一度湖を作っていただけますか?」

 

「早いな。それじゃあ、一旦消して……いくぞ~」

 

 俺の作成に合わせて、プリミラとテクニティスとルトラが魔力を操作する。

 そうして三度目の大きな湖を作成すると、そこには小さな海ができあがっていた。

 

 小海作成:消費魔力 30

 

 やっぱり中に生き物はいないけど、これなら海の生き物を入れて生態系とかも作れるんじゃないだろうか。

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