【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「それじゃあ、水棲系の大型モンスターの作成を」
「いえ、まずは小型の生き物、続いて大型の生き物です。モンスターとなれば、その後がいいかと思います」
「いいぞ! よく言ってくれたルトラぁ!」
うるさいな。アナンタ。
しょうがない。海系のモンスター作成はまた今度にしよう。
いつかは転移温泉の転移先を海につなげて、そのまま海系モンスターに処理してもらうとかできたらいいのだけど……。
いまだに、転移温泉は良さそうな転移先とつながらないからなあ。
「しかし、小さい魚とかエビとかか……。さすがに作れないな」
「そこまで作れたら、レイ様いよいよ神様みたいですからね~」
イピレティスの発言に、何人かが頷く。
だが、いよいよも何も神様手前まですら到達した覚えはない。
「そうなると、仕入れないといけないですね。アルマセグシアなら、それこそいくらでも魚も甲殻類も売っていますけど」
「僕たちが買いに行きましょうか?」
「そうだな。いつも食料の買い出しをしてもらっているみたいだし、
食料調達のついでに、ちょっとそのあたりの必要な生き物も買ってきてもらえればそれでいい。
買ってきてもらうものは、プリミラやルトラに選んでもらえばいいか?
水のスペシャリストって、海の世界の作り方にも明るいみたいだからな。
……なんだか、ルトラかプリミラの仕事が増えそうで不安になってきた。
そのあたりは、うまく調整しないといけないな。
◇
「良いですね!」
「ええ。本当に、すごい……」
言い出したのも奥居だったし、泳ぐのが好きだったりするのかもしれないな。
「砂浜までできるとはなあ。岩の罠といい、レイくんってやっぱり土属性仲間だったりする?」
「ダンジョンが土属性って考えると、案外それでいいのかもしれない」
「おじさん、土属性としてそれなりって自負はあったけど、そこまではできないなあ。土属性のハードル上げるのやめようね」
……そうか。リグマが土属性のスペシャリストだというのなら、ダンジョンはともかく岩の罠の強化版とかできるかもしれないじゃないか。
「リグマ。岩の罠に興味ない?」
「やめろぉ! うちの本体を変な沼に引きずり込むなぁ!」
「アナンタが止めるからやめとくわ」
「残念だ……」
まあ、そんなリグマも認めてくれるほどには、今回の海の砂浜はうまくいっているのだろう。
最初に作った海は、水面や海底の高さが全部均一だった。
なので、手前は水をなくして砂浜だけにして、奥に行くと水深がだんだんと深くなるようなイメージで作ったら、なんとかうまくできたようだ。
実は、けっこう革新的だと思う。
海がというよりは、イメージで出力するものを微調整できることがだ。
案外、転がる岩の形や大きさの調整とかもできるかもしれないし、地形に合わせて設置することで色々な効果が……。
「罠をもっと効果的に設置できるかも」
「するなよぉ……」
まだ具体的な内容は、何も言ってないじゃないか……。
「水が青い! 魚がいっぱいいる! 綺麗な海っぽい!」
「魚……」
「
「いえ、さすがにそんな本能に負けるつもりは……」
そうか。猫だもんな。
それで、奥居のやつ海やら魚を求めているのか。
魚釣り用の施設として侵入者に解放すれば、客を呼び込むことができるか?
あとは、水のリゾート地みたいな感じにすれば……。
「水の娯楽施設、ありかもしれませんね。フィオナ様」
「……本当に、あなたはすごいですね。レイ」
なんだか、フィオナ様も感激したような反応だ。
魔王様ですらこの反応なのだから、他の種族たちにも有効かもしれないと確信も高まる。
「私のダンジョンには、このような施設を作ることはできませんでした」
「そうなんですか? プリミラやルトラがいればできそうですけど」
「いいえ。あなたがいるからです」
「それは……どうも」
「これからも、頼りにしていますよ。私のレイ」
なんか、ポンコツじゃないただの美人だ。
もしも、今まで海のような施設を作れなかったというのなら、フィオナ様は海をあまり見ることができなかったのかもしれないな。
なら、俺も少しは役に立てたということで何よりだ。
◇
「はい、水着」
「どうも……」
なんとも手際が良い。
ラプティキさんが、大量に作っていたらしい水着を男性陣に配っていく。
男性陣だけだ。どうやら、女性陣はデザインの要望を聞いて、そこから作成していくらしい。
まあ、たしかに俺はあまりデザインとか気にしないし、他の男性陣もそこに異論はないようだ。
「
「ええ……無理。落ち着きなさい
「あら、私だけだと時間がかかりそうだから、オクイが要望をまとめてくれるなら助かるわよ?」
「がんばります……」
あれだけ手というか足はあるけれど、さすがのラプティキさんも手が足りていないみたいだ。
奥居のやつ、最終的にはラプティキさんの手伝いをすることになりそうだな。
「僕こういうヒラヒラした布がついてるやつがいい」
「ああ、パレオですね。こんな感じですか?」
「そうそう、いいね~。ラプティキ~、僕これ~」
イピレティスが奥居にデザインしてもらった水着を見せに行くも、ラプティキさんはそれを後回しにした。
彼女だけでなく、他の女性陣も後回しにされるが、誰もがそれに納得している。
「待ちなさい。あんたたち全員後回し。私の最優先は、魔王様だから」
俺もその言葉には納得だ。
なんせ、昔からフィオナ様を着せ替え人形にしていたラプティキさんだからな。
公私ともにまずはフィオナ様からと思うのも仕方がないことだろう。
だから、それに納得していないのはただ一人だけだった。
「わ、私のことは後でいいですから! まずはみんなの水着から作ればいいじゃないですか!」
「何言ってるんですか。まずは魔王様に決まっています」
「い、いやあ……私は別にそういう水遊びとか、そんなものには興味がないので……」
本当か? さっきは海ができていたことに感動している様子だったが、あれは俺の気のせいか?
いや、海に感動はしても泳ぎたくないというのはあり得ることだけど。
……海をあまり見たことがないような反応だったよな。
つまり、当然海に入った経験も少ない、あるいは無いわけで。
「フィオナ様。もしかして、泳げないんですか?」
「なにをぅ!? 泳げますけど!? 魔王ですから、海人族に負けない泳ぎもできますけどね!」
これは……どっちだ?
図星だったので強がっているのか、的外れな発言に憤慨しているのか、相変わらず表情がころころ変わるところはかわいいけれど、真意が読み取れない。
「いいでしょう! 魔王の恐ろしさを見せてあげますとも! ラプティキ、私の水着を作りなさい!」
「承知しました……レイさん。助かったわ」
ぷんぷんと怒るフィオナ様についていくラプティキさんが、俺に小声で耳打ちした。
なんかよくわからないけれど、その様子を見ていたフィオナ様は、先ほどのような勢いだけの怒りではなく、わりと本気で機嫌を損ねたのだけど、これはどういうことなんだ……。
「フィオナ様、よくわからん……」
「レイくん、すげえな。魔王様を振り回してる」
「いや、どちらかというと振り回されてるの俺なんだけど……」
「まあ、二人はそれでいいのかもな」
勝手に納得しないでくれ。
結局、俺はこの後フィオナ様にどう接したらいいんだ……。