【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第246話 王様の公開お忍び

「地底魔海というのはどうでしょうか!」

 

「いいんじゃないですか。なんでも」

 

「せっかく名前を付けたのに! なんですか、その反応は!」

 

「同音なので、どちらを指してるのかわかりにくいですね」

 

「む……なるほど。地底海くらいのほうが……」

 

 あ、そこはしっかりと意見を取り入れてくれるんだ。

 さすがは魔王様。下からの意見はしっかりと聞いて考慮してくれる。

 

 海の試しを兼ねた遊びも終えて、魔王軍の者たちからなかなかの好評をもらえた。

 となると、あとはやはり生態系だよな。

 獣人とか、どこにもいない魚や甲殻類を探して、なんかちょっと残念そうだったし。

 

「魚とカニとエビと貝と海藻と……風間(かざま)たちは、何を買ってきてくれるんでしょうね」

 

「シーフードが好きなんですか? マギレマなら、きっと簡単に作ってくれますよ」

 

「獲れたてって美味しそうじゃないですか」

 

「わかります。話していたらお腹が空いてきましたね」

 

 そう言って、フィオナ様が腕に抱きついてきたので、そのままマギレマさんの食堂に向かう。

 ……水着のときは、さすがにここまでしてこなかったけど、改めて意識してしまうと、なんかちょっと恥ずかしい。

 いや、本人が気にしていないのだから、こちらが変なことを考えない方がいいか。

 

    ◇

 

「なるほど~。魔王様とレイくんもシーフードね」

 

「みんな考えることは同じなんですねえ」

 

「なんか、海の生態系に期待が寄せられているような気がしてきました……」

 

 昼時ということもあり、マギレマさんの食堂は表も裏も今日も大繁盛だ。

 裏の食堂、すなわち地底魔界の従業員用の食堂では、魚やらエビやらを注文する者が多く見受けられる。

 みんな、昨日の海で同じようなことを考えていたんだなあ……。

 

「気合を入れて海を作らないといけませんね」

 

「無茶はだめですよ。あれだけ大きな海なのですから、レイの魔力消費も馬鹿にならないでしょう?」

 

「作成時はだいぶ持っていかれますね。小さな海のくせに」

 

「海ですからね」

 

「ですが、海さえ作ってしまえば、あとは俺じゃなくてルトラたちの仕事ですから」

 

 俺は本当に作るだけだからな。

 水質の管理も生態の作成も、それに適したルトラやダスカロスの仕事だ。

 まあ、海だけでなくそれを入れるために、あらかじめ広間をたくさん連結させる必要はあるけれど、回復薬で魔力を随時回復すれば、俺への負担はないだろうしな。

 

「いつか、大きいエビみたいなモンスターも泳がせたいですね」

 

「ええ。きっと楽しい海になりますよ」

 

 半魚人みたいなモンスターとかも作れるかもしれない。

 海ダンジョン……いいじゃないか。

 いや、さすがに全域が海では厳しいけど、魔力に余裕ができたら客用の海だけじゃなく、侵入者用の海も作ってみよう。

 

「……魔王様とレイ様は、今日も恐ろしい企みをしているねえ」

 

「エビ食いながら、エビのモンスターで侵入者を倒す相談してる……。ビッグボスとボスだもんな。俺たちなんて、あの皿のエビ程度の存在なのかもしれねえな……」

 

    ◇

 

「……すまん! 海に面した国としては、是非とも参考にしたいんだ!」

 

 そう言って国を任せて遊び……視察に行くことにしたが、あいつら怒ってたなあ……。

 だが、これは王としての責務と言えよう。

 カジノもそうだったが、海を利用した娯楽の場となると、俺の国も黙ってはいられない。

 ここは是非、俺が直接楽しんで……体験して、今後の勉強をしなくてはならない。

 

「ロペスとか言ったな。あのハーフリング。まあ、十中八九転生者だろうな」

 

 (おおとり)姉弟と同じく、俺の国に引き込めればそれが一番だ。

 だが、まあ無理だろう。そいつは、この世界で生きていくに十分すぎる才覚を発揮している。

 ダンジョンの中に商店や宿? カジノという娯楽の場に、温泉という癒しの場の提供?

 そして、今回は人工海を建てたなんて噂じゃないか。

 一人で大成功しているやつだ。国なんてしがらみにしか思わないやつなんだろう。

 

「というわけで、お手並み拝見と行こうじゃないか」

 

 俺の国で真似できること。真似できないこと。真似していいこと。真似してはいけないこと。

 それらを理解するためには、真剣に遊び……体験しなくてはならない。

 あいつらを言いくるめられる成果を持ち帰らねば、外出禁止と言い出しかねないからな!

 

「おや、お客様。今日もカジノかい?」

 

 うむ。相変わらず俺を王ではなく、一人の客人として扱ってくれる。

 実に気遣いが出来ている。こういうところも高評価だ。

 ……もしかして、本当に知らないのか? たしかに、エーニルキアやプリズイコスと比べて小国だが、俺の国知名度が低いのか?

 

「ああ、実は俺はとある国の王なんだが」

 

「……いや、知ってっけどさあ。あんた、お忍びじゃなかったのかい」

 

「ならば良い!」

 

 良かった。ちゃんと知っているようだ。

 やはりこのハーフリングは気遣いができる男だ。転生者だというのに珍しい。

 

「そんで、また宝箱かい? リズワン王」

 

「いや、面白いものを作ったそうじゃないか。転生者」

 

「……どこで聞いたんだい?」

 

 ふむ、転生者という言葉に反応はなく、肯定も否定もないか。

 まあ、この男が転生者だということは、ハーフリングたちの間では有名な話だからな。

 あえて言いふらすつもりはなく、かといって隠しているわけでもないのだろう。

 ということならば、どこで聞いたというのは人工海のほうになる。

 

「俺の国も海を娯楽としているのでな。似たような場所ができたとあれば、多少は耳にも入ってくるとも」

 

「パクったつもりはないんだが、気を悪くしたのであれば謝っておくよ」

 

「いや、誰でも思いつくことだ。もっとも、それを実現できる力は誰でもとはいかないがな。それに、この場所ならばうちと客がかぶることもあるまい」

 

「遠いからなあ……それなのに、そこそこ頻繁に通っていいのかい? あんた王様だろ」

 

「視察も仕事だ」

 

「プライベートで遊んでるだけに見えるんだがなあ……」

 

 いかん。このままでは、部下でもない者にまで叱られる。

 これ以上俺の評価が落ちる前に、駄目元で打診だけはしておくか。

 

「俺のもとで働くつもりはないか? 転生者ロペスよ」

 

「……悪いな。俺はここの代表だ。あんたのもとにつくわけにはいかない」

 

「だろうな」

 

 これほどの才覚。そして、協力者たちとのつながりを重視する情もある。

 実に惜しい。転生者としての力もわからぬ男だが、それ抜きにしても十分すぎるほどに有能な男だというのに。

 だからこそ、誰かの元で働くような男ではないということか。

 

「悪かった。案内してくれ」

 

「はいよ。そんじゃあ、まずは水着を買ってもらうところからだな」

 

 そう言いながら責任者自らが案内してくれるのは、俺が王であるからということだろうか。だとしたら残念だ。

 ここは俺という個人を、責任者自ら対応する男だと評価したからであってほしいものだ。

 

    ◇

 

「ふむ、悪くない」

 

 というよりも、よくもまあダンジョンにこれほどのものをと感心するばかりだ。

 砂浜があり、見渡す限りの海が広がる。今も肌を照らす太陽のごとき熱。この光源は熱魔法か?

 さすがに、本物の海ほどの広さとまではいかないが、うちやアルマセグシア以外の者であれば十分満足できる出来栄えだろう。

 

 周囲の客たちも泳ぎ、潜り、波に揺られて楽しんでいる。

 そう、波だ。ただの海水だけでも十分なものだと思うが、本物の海と同じく断続的な波が発生している。

 水魔法? あるいは風魔法か? これほど手がかかる設備をよくも作り上げたものだ。

 ……もしや、俺たちがカジノで失った金銭で。なるほど、商売上手め。

 

「……海の中に生き物まで」

 

 転生者ロペス。底知れない男だ。

 それだけに、他の国に持っていかれても困るな。

 少なくとも、エーニルキアもプリズイコスもアルマセグシアもヤニシアも、どの国もこの男を勧誘すらしていないことは間違いない。

 ならば今しばらくは、この有用な男の情報を他に漏らすわけにはいかないだろう。

 他国に持っていかれるにはあまりにも惜しいからな。

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