【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第249話 ひとり遊びの達人

「人工海が順調なのは良いんだけど」

 

「良いことですね!」

 

 フィオナ様が嬉しそうなので、とても良いことだろう。

 そして、これまでと違って客層がつかめているようであり、魔力もさらに徴収できているのも、とても良いことだ。

 

「ええ、良いことなんです。ただ、順調だからこそ、ロペスの負担が大きくないかなと」

 

「ふむ……あの子は、たしかにずいぶんと多忙ですからね。ハーフリング版のリグマみたいです」

 

「ですよねえ」

 

 リグマが働き者という認識なのもそうだし、ロペスがそのリグマと同じく色々と抱え込んでいるのも事実だ。

 ダークエルフやハーフリングたちを手足のように使ってはいるけれど、さすがに新しい施設をなんでもかんでも任せるのは問題だと思う。

 

「ちょっと施設ごとの管理者をまとめてから、配置を検討したほうがいいかもしれませんね」

 

「おぉ……」

 

「どうしました?」

 

「フィオナ様が、魔王様らしいことを言っていると思いまして」

 

「ほほう、つまり私を見直したと。よし、ここはひとつがんばってみますか!」

 

 なんか、やけにやる気が出てきたようだ。

 フィオナ様って、人員の采配が得意だからなあ。

 部下を使うのが上手いというか、そこはさすが魔王って感じがする。

 

「なになに、お仕事の話? ボク役に立つよ?」

 

「ピルカヤは、すでにとんでもない貢献をしているから、これ以上は他の役割をふるわけにはいかないと思うぞ」

 

「う~ん……」

 

 嬉しそうでもあり、不満そうでもある顔をしている。

 

「まずは、地底魔界を除いてダンジョンが四つ、いえ五つですね」

 

「ゴブリンダンジョン、獣人ダンジョン、食堂ダンジョン、欲望のダンジョン。それとプリミラの畑も一応ダンジョンです」

 

「ゴブリンダンジョンは店舗も施設もないので良いとして、他三つにそれぞれの施設がありますね」

 

「獣人ダンジョンは、リグマが管理している宿屋。時任(ときとう)奥居(おくい)が管理している商店だけです」

 

 それぞれのもとに獣人や人間の従業員が何人もいるけれど、わりとベテランも増えてきている。

 今なら管理者が代わったとしても、彼ら彼女らがサポートすることで業務は回せそうだな。

 

「欲望のダンジョンは、宿に商店、カジノに温泉。そして今回の人工海ですね」

 

「ええ、ダークエルフとハーフリングたちが働いていますけど、管理はロペスでその補佐がクララですね。……やっぱり、ロペスの負担が大きそうです」

 

 あいつ現場にも出て働きづめだもんなあ……。

 本当に、魔王軍の面々はどうしてこうも仕事中毒みたいな者ばかりなのか……。

 上を見習ってくれ。この毎日だらだらしているかわいい生き物が、お前たちの目指すところだぞ。

 

「最後に食堂ダンジョンは、マギレマさんを筆頭に、調理担当はリピアネムとダークエルフと人間。給仕は風間(かざま)世良(せら)(はら)。それにカーマル、あとはこっちもダークエルフと人間たちです」

 

「ここが、だいぶ人員が多そうですね……」

 

「ドワーフダンジョンが潰れて、そのまま食堂ダンジョンに配置換えしましたからね」

 

 となると、ここから何人かを人工海に回すのが適当か?

 だとしたらカーマルかな……。風間たちは、買い出し部隊として案外替えが効かない存在だし。

 

「いっそのこと、オクイを人工海の管理者にして、トキトウの補佐をカーマルに任せるのもいいかもしれませんね」

 

「奥居ですか?」

 

「ええ。彼女、水着のデザインも得意ですし、特に海に興味がありそうなので、案外適任かもしれませんよ?」

 

 なるほど……。言われてみれば、普段控えめな彼女にしては、海や水着に対する食いつきが良かったな。

 時任と奥居に話だけでもしてみるか。

 

「フィオナ様って、本当に部下のことをよく見ていますね」

 

「数少ない楽しみでしたからね……」

 

 暇なのか。

 なら、娯楽施設でもカジノでも使ってもらってかまわないのだが。

 

「……娯楽施設で一緒に遊びます?」

 

「レイからそんな提案が! いいでしょう! 私は強いですよ! なんせ、暇なので一人で遊んでばかりでしたからね!」

 

 ……え? ぼっちなの?

 いや、フィオナ様の周りには魔王軍がいる。

 そうか。つまりこれは、俺がカジノで味わった、あの何とも言えない気持ちと同じことなのだろう。

 魔王であるフィオナ様と遊んだとしても、魔王軍は忖度してフィオナ様を勝たせてしまう。

 なので、部下に優しいフィオナ様は、そんな気遣いをさせないためにも、一人遊びに行きついた可能性が高そうだ。

 

「まあ、俺が勝ちますけどね」

 

「いいでしょう。そうなったときは、レイに魔王の座を明け渡して」

 

「なんか、今一気に勝ちたくなくなりました」

 

「ま、魔王ですよ!? 地底魔界の最高権力者に何の不満が!」

 

「俺の魔王様はフィオナ様だけですから」

 

「……ま、まあ! レイがそこまで言うのなら、私が魔王でもいいですけどねえ!」

 

 むしろ、それ以外に何があるというんだ。

 魔王の座をかけた戦いなんて、もっと強そうな相手とやってください。

 

    ◇

 

「あ、魔王様とレイさん。こんにちは~」

 

「お疲れ様です」

 

「ああ、時任と奥居。ちょうどよかった」

 

 娯楽室には先客がいた。

 夕方なので、仕事を終えた者たちもちらほらとここで遊んでいるようだ。

 うちの職場、けっこうなローテーションをするから、本当なら実働時間は少ないからな。

 

 管理者である時任と奥居、それにロペスですら、他の者に引継ぎをしてこうして早めに仕事を終えるのが普通だ。

 風間たちは、最近ちょっとワーカーホリックの雰囲気をかもし出しているので、注意が必要だけどな。

 

「ロペスくん。私の仇はきっとレイさんが討ってくれると思うよ!」

 

「その場合、勝ち星はボスにつくだけだと思うぜ」

 

「ポーカーか?」

 

「ああ。トキトウが選択肢をフル活用して挑んでくる」

 

「さっきの口ぶりだと、ロペスが勝っているみたいだけど、よく勝てるな……」

 

 選択肢を使ったポーカー勝負とか、時任に勝てる気がしないんだが……。

 同じようにロペスが女神の力を使ったとしても、開錠ではどうにもならないだろう。

 本当に、どうやって勝っているんだ?

 

「運がいいからな。俺は」

 

 しれっとそう言ったが、なんかわかったかもしれない。

 こいつ。俺に接待したときのように、カードを操作しているな?

 なるほど。時任の選択肢はその場限りのものだから、勝負の場に引きずり出してから手札を変えているのか。

 

「最近、選択肢が反抗的ですからね! 私が勝負してから、結果を変えたりするんですよ!」

 

「それは……まあ、選択肢もがんばっているだろうから、あまり責めないでやってくれ」

 

 むしろ気づけ。時任よ。

 

「それで、ボスが戦うかい? それとも、まさかビッグボスが……」

 

「いや、そっちはそっちでやってくれてかまわない。俺はちょっとフィオナ様と戦うから」

 

「魔王様とレイさんに一騎打ち……」

 

 まあ、そうなるのかな?

 別にこの場にいる全員でやってもいいけど、ふんふんと鼻息を荒くして意気込んでいるフィオナ様を見るに、まずは一騎打ちする必要がありそうだ。

 

「カードを配りなさいロペス」

 

「は、はい! ええと……なんの勝負を?」

 

「ジンラミーです!」

 

 え、なにそれ知らない。

 

「オーケー。ボスもそれでいいよな?」

 

 え、みんな知ってるの? もしかして、有名なゲームなのか?

 さすがにルールもわからないゲームで遊ぶ気はなく、意気込んでいるフィオナ様には悪いが、勝負前にルールを聞くことにした。

 なるほど……。要するにトランプを使った麻雀みたいな遊びか。

 

「まずは、一度やってみましょうか。な~に、魔王は寛大ですからね。胸を借りるつもりで挑んでくるといいです」

 

 そのどや顔を切り崩してやろう。

 そう思った俺がフィオナ様に勝つことはなかった。

 ……普段から宝箱ガシャで爆死続きなのに、こういうときばかり運が強いなこの魔族。

 

「へ~、面白そう。ロペスくん。これなら、私も勝てるんじゃない!?」

 

「まあ、相手をするのはかまわねえが」

 

「なら、私たちは観戦しましょうか。レイも負け続きではかわいそうですからね」

 

 悔しいが実際に負け続きなのでしかたがない。

 俺は隣に座って腕を組んでくるフィオナ様に、何も言い返すことができなかった……。

 

    ◆

 

「プリミラ。トランプで遊びましょう」

 

「ですが、私には役目が」

 

「全部後です。これが最優先のあなたの仕事です」

 

「わかりました」

 

「……あの、楽しいですか?」

 

「申し訳ありません。よくわかりません」

 

「……私は、あなたの邪魔をしていますか?」

 

「魔王様が邪魔などありえません」

 

「…………この後、あなたは何をしますか?」

 

「遅れていた仕事を終わらせます」

 

「そうですか、すみません。もう大丈夫です。ありがとうございました」

 

「はい。いつでもお声がけください」

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