【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「人工海が順調なのは良いんだけど」
「良いことですね!」
フィオナ様が嬉しそうなので、とても良いことだろう。
そして、これまでと違って客層がつかめているようであり、魔力もさらに徴収できているのも、とても良いことだ。
「ええ、良いことなんです。ただ、順調だからこそ、ロペスの負担が大きくないかなと」
「ふむ……あの子は、たしかにずいぶんと多忙ですからね。ハーフリング版のリグマみたいです」
「ですよねえ」
リグマが働き者という認識なのもそうだし、ロペスがそのリグマと同じく色々と抱え込んでいるのも事実だ。
ダークエルフやハーフリングたちを手足のように使ってはいるけれど、さすがに新しい施設をなんでもかんでも任せるのは問題だと思う。
「ちょっと施設ごとの管理者をまとめてから、配置を検討したほうがいいかもしれませんね」
「おぉ……」
「どうしました?」
「フィオナ様が、魔王様らしいことを言っていると思いまして」
「ほほう、つまり私を見直したと。よし、ここはひとつがんばってみますか!」
なんか、やけにやる気が出てきたようだ。
フィオナ様って、人員の采配が得意だからなあ。
部下を使うのが上手いというか、そこはさすが魔王って感じがする。
「なになに、お仕事の話? ボク役に立つよ?」
「ピルカヤは、すでにとんでもない貢献をしているから、これ以上は他の役割をふるわけにはいかないと思うぞ」
「う~ん……」
嬉しそうでもあり、不満そうでもある顔をしている。
「まずは、地底魔界を除いてダンジョンが四つ、いえ五つですね」
「ゴブリンダンジョン、獣人ダンジョン、食堂ダンジョン、欲望のダンジョン。それとプリミラの畑も一応ダンジョンです」
「ゴブリンダンジョンは店舗も施設もないので良いとして、他三つにそれぞれの施設がありますね」
「獣人ダンジョンは、リグマが管理している宿屋。
それぞれのもとに獣人や人間の従業員が何人もいるけれど、わりとベテランも増えてきている。
今なら管理者が代わったとしても、彼ら彼女らがサポートすることで業務は回せそうだな。
「欲望のダンジョンは、宿に商店、カジノに温泉。そして今回の人工海ですね」
「ええ、ダークエルフとハーフリングたちが働いていますけど、管理はロペスでその補佐がクララですね。……やっぱり、ロペスの負担が大きそうです」
あいつ現場にも出て働きづめだもんなあ……。
本当に、魔王軍の面々はどうしてこうも仕事中毒みたいな者ばかりなのか……。
上を見習ってくれ。この毎日だらだらしているかわいい生き物が、お前たちの目指すところだぞ。
「最後に食堂ダンジョンは、マギレマさんを筆頭に、調理担当はリピアネムとダークエルフと人間。給仕は
「ここが、だいぶ人員が多そうですね……」
「ドワーフダンジョンが潰れて、そのまま食堂ダンジョンに配置換えしましたからね」
となると、ここから何人かを人工海に回すのが適当か?
だとしたらカーマルかな……。風間たちは、買い出し部隊として案外替えが効かない存在だし。
「いっそのこと、オクイを人工海の管理者にして、トキトウの補佐をカーマルに任せるのもいいかもしれませんね」
「奥居ですか?」
「ええ。彼女、水着のデザインも得意ですし、特に海に興味がありそうなので、案外適任かもしれませんよ?」
なるほど……。言われてみれば、普段控えめな彼女にしては、海や水着に対する食いつきが良かったな。
時任と奥居に話だけでもしてみるか。
「フィオナ様って、本当に部下のことをよく見ていますね」
「数少ない楽しみでしたからね……」
暇なのか。
なら、娯楽施設でもカジノでも使ってもらってかまわないのだが。
「……娯楽施設で一緒に遊びます?」
「レイからそんな提案が! いいでしょう! 私は強いですよ! なんせ、暇なので一人で遊んでばかりでしたからね!」
……え? ぼっちなの?
いや、フィオナ様の周りには魔王軍がいる。
そうか。つまりこれは、俺がカジノで味わった、あの何とも言えない気持ちと同じことなのだろう。
魔王であるフィオナ様と遊んだとしても、魔王軍は忖度してフィオナ様を勝たせてしまう。
なので、部下に優しいフィオナ様は、そんな気遣いをさせないためにも、一人遊びに行きついた可能性が高そうだ。
「まあ、俺が勝ちますけどね」
「いいでしょう。そうなったときは、レイに魔王の座を明け渡して」
「なんか、今一気に勝ちたくなくなりました」
「ま、魔王ですよ!? 地底魔界の最高権力者に何の不満が!」
「俺の魔王様はフィオナ様だけですから」
「……ま、まあ! レイがそこまで言うのなら、私が魔王でもいいですけどねえ!」
むしろ、それ以外に何があるというんだ。
魔王の座をかけた戦いなんて、もっと強そうな相手とやってください。
◇
「あ、魔王様とレイさん。こんにちは~」
「お疲れ様です」
「ああ、時任と奥居。ちょうどよかった」
娯楽室には先客がいた。
夕方なので、仕事を終えた者たちもちらほらとここで遊んでいるようだ。
うちの職場、けっこうなローテーションをするから、本当なら実働時間は少ないからな。
管理者である時任と奥居、それにロペスですら、他の者に引継ぎをしてこうして早めに仕事を終えるのが普通だ。
風間たちは、最近ちょっとワーカーホリックの雰囲気をかもし出しているので、注意が必要だけどな。
「ロペスくん。私の仇はきっとレイさんが討ってくれると思うよ!」
「その場合、勝ち星はボスにつくだけだと思うぜ」
「ポーカーか?」
「ああ。トキトウが選択肢をフル活用して挑んでくる」
「さっきの口ぶりだと、ロペスが勝っているみたいだけど、よく勝てるな……」
選択肢を使ったポーカー勝負とか、時任に勝てる気がしないんだが……。
同じようにロペスが女神の力を使ったとしても、開錠ではどうにもならないだろう。
本当に、どうやって勝っているんだ?
「運がいいからな。俺は」
しれっとそう言ったが、なんかわかったかもしれない。
こいつ。俺に接待したときのように、カードを操作しているな?
なるほど。時任の選択肢はその場限りのものだから、勝負の場に引きずり出してから手札を変えているのか。
「最近、選択肢が反抗的ですからね! 私が勝負してから、結果を変えたりするんですよ!」
「それは……まあ、選択肢もがんばっているだろうから、あまり責めないでやってくれ」
むしろ気づけ。時任よ。
「それで、ボスが戦うかい? それとも、まさかビッグボスが……」
「いや、そっちはそっちでやってくれてかまわない。俺はちょっとフィオナ様と戦うから」
「魔王様とレイさんに一騎打ち……」
まあ、そうなるのかな?
別にこの場にいる全員でやってもいいけど、ふんふんと鼻息を荒くして意気込んでいるフィオナ様を見るに、まずは一騎打ちする必要がありそうだ。
「カードを配りなさいロペス」
「は、はい! ええと……なんの勝負を?」
「ジンラミーです!」
え、なにそれ知らない。
「オーケー。ボスもそれでいいよな?」
え、みんな知ってるの? もしかして、有名なゲームなのか?
さすがにルールもわからないゲームで遊ぶ気はなく、意気込んでいるフィオナ様には悪いが、勝負前にルールを聞くことにした。
なるほど……。要するにトランプを使った麻雀みたいな遊びか。
「まずは、一度やってみましょうか。な~に、魔王は寛大ですからね。胸を借りるつもりで挑んでくるといいです」
そのどや顔を切り崩してやろう。
そう思った俺がフィオナ様に勝つことはなかった。
……普段から宝箱ガシャで爆死続きなのに、こういうときばかり運が強いなこの魔族。
「へ~、面白そう。ロペスくん。これなら、私も勝てるんじゃない!?」
「まあ、相手をするのはかまわねえが」
「なら、私たちは観戦しましょうか。レイも負け続きではかわいそうですからね」
悔しいが実際に負け続きなのでしかたがない。
俺は隣に座って腕を組んでくるフィオナ様に、何も言い返すことができなかった……。
◆
「プリミラ。トランプで遊びましょう」
「ですが、私には役目が」
「全部後です。これが最優先のあなたの仕事です」
「わかりました」
「……あの、楽しいですか?」
「申し訳ありません。よくわかりません」
「……私は、あなたの邪魔をしていますか?」
「魔王様が邪魔などありえません」
「…………この後、あなたは何をしますか?」
「遅れていた仕事を終わらせます」
「そうですか、すみません。もう大丈夫です。ありがとうございました」
「はい。いつでもお声がけください」