【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第256話 独占した知恵の実の味

「あ~、つまんねえ!」

 

「そう言うなよ。ウルラガの旦那」

 

 今日も一仕事終えて、ロペスたちが戻ってきた。

 カジノはともかく、宿や商店はこの時間に人手はそこまでいらないため、ダークエルフやハーフリングを何人か残すだけとなっている。

 本来なら、そんな時間帯こそ獣人たちが面倒ごとを起こすのが常だったのだが、今ではウルラガがこうして引き上げても何も問題ないほどだ。

 それほどまでに、獣人たちは行儀良くうちの施設を利用している。

 

「表向きは変わったな。あいつら」

 

「馬鹿な獣人たちが全滅して、まともなのが残っただけじゃねえのか?」

 

「いや、本質は変わってないぞ旦那。ボスの言うとおり、表面上だけ行儀よくしているだけだ」

 

「ヨハンの言いつけを守ってということだよな」

 

「おそらくな……うちとしては、まともな客と変わらない以上は普通に対応しているが、問題あるかい?」

 

「いや、それでいい。ただ、何かしないように監視だけは必要だけどな」

 

 まともになった。上の方針で善良な客になった。それらの可能性もある。

 だけど、さすがに何か怪しいと勘ぐってしまうのが今の状況だ。

 

「ボクの出番だね」

 

「改めて言わなくても、ピルカヤはすでに監視してくれているから助かるよ」

 

「当然。ボク優秀だからね~」

 

「本当にな」

 

 だが、そのピルカヤの目を通しても、獣人たちはまともに探索をしているという情報しか入ってこない。

 違いをあげるとすれば、以前よりも注意深くというか、慢心せずに進んでいるというところだろうか。

 他の探索者と同じように、危険なことがあれば迷わず撤退するし、無謀な進撃を続けるということがなくなっている。

 

 元々、獣人たちはそんな無茶な探索をしても、ある程度は生きて帰ってきたし、成果を得てきた。

 それだけのポテンシャルが獣人という種族にはあるのだ。

 そんな獣人たちが、他の種族と同じくまじめに探索をすれば、当然今まで以上に深部へと進むこととなる。

 

「案外、本気でダンジョンを攻略しに来たのかもしれないな……」

 

 ようやく、ソウルイーターたちにも久しぶりの出番がありそうだ。

 

「そこで楽しそうにするんじゃねえよぉ……」

 

「今まで試せなかった部分も試せるからな。エビとカニゾーンは是非試してもらいたい」

 

「たまに、人間たちも被害に遭ってたけどな……」

 

「戦う前に終わってたから、効果のほどがよくわからないじゃないか」

 

「戦わせるような場所になってねえからだよ……」

 

 足場をもう少し広げるか……?

 まあ、そのへんも獣人たちの結果を見て調整していこう。

 

「ヒポグリフたち相手でも、けっこう優位に戦っているよな」

 

「能力だけは高いからね。それくらいはできるみたいだよ」

 

「元々は舐めてかかって死んでただけだからなぁ」

 

 堅実に戦うだけでも、だいぶ違ってくるみたいだ。

 なんなら、全員がしっかりとした防具で身を固めているようで、俺の鳥たちもなかなか苦戦してしまっている。

 さすがに無敵の防御というわけではないため、向こうの装備も破損したりしているようだが、有利なのはやはり獣人のほうだ。

 

「コカトリスの毒も喰らっているけど、回復してるな」

 

「ああ。女王様たちも言っていたが、商店でしっかりと消耗品を買ってから向かっているみたいだな。そのおかげで、売り上げがだいぶ伸びているし、なんなら倉庫から持ってくるたびに在庫が売り切れているくらいだ」

 

「金に糸目をつけずに、攻略しにきているってわけだ」

 

 その資金源がどこかと考えると、おそらくはあのヨハンなのだろうな。

 というか、装備品もたぶんあいつが関係しているだろ。

 全員揃って蛇の鱗みたいな装備を身に着けているし、あいつの部下という証でもあるのかもしれない。

 

「あ、火の球で焼けた」

 

「さらっと言っているが、とんでもない被害になってるぜ。ボス……」

 

「爆発させる方向で作成したからな。油と火の組み合わせは、やっぱり効果的みたいだ」

 

「自慢げに言っているが、ロペスはお前のやってることに引いてるだけだと思うぜぇ……」

 

「え、そうなの?」

 

「い、いや! そんなことはない!」

 

 ほら見ろ。ロペスだって、もっと罠を組み合わせたほうが良いって思っている。

 

「諦めんなロペス! お前が甘やかすだけ、こいつが制御不能になるんだぞぉ!」

 

「お、俺はダンジョンのことはよくわからねえからな……」

 

 たしかに、なんでもかんでもできるってわけじゃないか。

 そうでなくてもできる範囲が広いのだから、ダンジョンのことがわからなくても誰も責めはしないだろう。

 

「獣人たちが水辺に逃げて火を消そうとしているな」

 

「ああ。その先はエビとカニをたくさん配置してあるから、大変だろうけどな」

 

「なんで他人事なんだよぉ……」

 

 火は消えたが、そのまま大量の巨大なエビとカニに襲われる獣人たち。

 ……ああ、やっぱりか。全員が撤退を選択している。

 今までの獣人たちなら、そのままモンスター相手に無茶な戦いを挑んで敗北していたが、今の獣人たちはちゃんと逃げることを選択するようになっているな。

 

「……ボス。なんか、エビがビームみたいなの撃ったんだが」

 

「水鉄砲だな」

 

 背後からの予想外の攻撃に、何人かの獣人が倒れていく。

 獣人たちは、それでも悪態をつきながら、見事に海ゾーンから逃げおおせてみせた。

 

「水鉄砲……? レーザーじゃないのか?」

 

「それなら、獣人を貫けているだろ?」

 

「あの硬そうな鱗の装備に穴開いてんだが……」

 

「中身は無事だからなあ」

 

 まあ、水を圧縮したものみたいだし、装備を貫けただけでも大したもんだ。

 多少のダメージを負った獣人たちは、すぐに回復薬を惜しみなく使用して体勢を立て直すと、そのまま入り口まで逃げていく。

 本当に、方針がまるっきり変わったものだ。

 自分たちを攻撃した巨大なエビに反撃することもないなんて。

 

    ◇

 

「ムカつく! なんだ、あのクソエビ!」

 

「鳥どももだ。空に逃げてばかりで鬱陶しいったらねえよ」

 

「いや、毒もだろ。あのニワトリとトカゲ、毒をばらまいては逃げまくって、卑怯なやつ——」

 

「おい!」

 

 失言に気がついたんだろう。

 まあ、失言ってほどじゃねえけどな。俺は別に気にしていない。

 だが、それを許しちまうと舐められる。そっちは許すわけにはいかねえからな。

 多少は釘をさしておくとするか。

 

「へえ、毒でじわじわと殺すのは卑怯なのか」

 

「い、いや! ヨハンさんのことを言ったわけじゃ……」

 

 そいつの言葉はそこまでだった。

 別に殺しちゃいない。卑怯な毒を食らわせてやっただけだ。

 しばらくは麻痺して動けないし口も開けないだろう。

 

「俺の毒とそのモンスターどもの毒、どっちが上だった?」

 

「ヨ、ヨハンさんです!」

 

「お世辞はいらねえから、本音を言え」

 

「あ、あの……それでも、ヨハンさんのほうが上だと思います」

 

「そうか」

 

 ってことは、モンスターたちの毒はやっぱり解毒薬でどうにでもなるはずだな。

 麻痺毒のほうは、解毒薬じゃ対処できないみたいだから、別に対処用のアイテムが必要と……。

 どちらも毒のはずなのに、ゲームでは別の状態異常だったせいだろうな。面倒なことだ。

 

 それにしても、俺の毒の方が上ねえ……。

 やっぱり、レベルを上げたことによって、毒の効果も上昇しているってことか?

 となると、今後もレベル上げはしたいところだが、あのダンジョンに入るかと言われると……。

 

「まあ、あり得ねえな」

 

 ウルラガってやつの強さは、俺よりもかなり上だった。

 ロペスを守ってるのがあの男だけだというのなら、どうにかできるかもしれないが、あいつのことだ。

 どうせ、別の隠し玉でも用意しているだろうな。

 

 それに、あのダンジョンの足を踏み入れて感じた嫌な感じ……。

 ウルラガだけじゃない。別のやばいやつがあそこにはいる。

 

 絶対にいるだろ。——ピルカヤが。

 

 嫌だ嫌だ。四天王が後ろ盾なんて、とんでもねえ話だ。

 魔族に取り入るとは、なんとも行動力のあるやつじゃねえか。

 知らねえんだろうなあ。魔王を追い詰めたら、壊神(こわれがみ)のせいで世界が崩壊することなんて。

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