【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「なあ、レイよ……俺が目を離した隙に、エビとカニだらけになってるんだけど、なんなんだよぉあれ……」
「ハイドロロブスターとアイアンシザーズだ」
ハイドロロブスター 魔力:65 筋力:60 技術:43 頑強:55 敏捷:45
アイアンシザーズ 魔力:42 筋力:61 技術:36 頑強:69 敏捷:60
強いし大きいぞ。かわいくて頼りになる子たちだ。
「違う……名前じゃないんだ。聞いているのは」
「モンスターガシャを引いたら出てきたから、量産した」
「するなぁ!」
……なんで? 海にしっかりと適応している子たちだぞ。
現に、海エリアではしっかりと侵入者を撃退してくれている。
「あのエリア、攻略不能になるだろうが……」
「十匹ずつは多かったな。半分に減らすか」
「まだ多いと思うぞ」
「え~……三匹?」
「変に粘るんじゃねえよぉ……一で様子を見とけ」
一かあ……。まあ、あの子たち大きくて強いし、それでもけっこうな脅威になってくれるか。
「あと、足場悪すぎんぞ。あのままじゃ戦えねえって」
「海だからな」
「なんで、そこで自慢げなのか、俺にはもうよくわかんねえよぉ」
海なのに……。アナンタのやつ、スライムだから海が苦手なのか?
いや、リグマは普通に楽しんでいるし、アナンタだけが泳げないという可能性も……。
「人間も獣人も、泳ぎながら戦うとなったら、あのエビもカニも陸で戦うよりも凶悪だろ」
「あ~……たしかに、苦戦してるよなあ」
最近は真面目にダンジョンを攻略しようとしている獣人ですらも、エビとカニには逃げの一手だもんな。
もう少し足場を広くして、戦えるような場所を作ってやらないといけないか。
「あんな場所で戦えるのなんて、海人族くらいだぞ」
「海人族?」
その種族は、まだうちにやってきたことがないな。
そういえば、マギレマさんのレストランに人魚の常連がいるらしいし、それを指しているのだろうか。
「人魚のこと?」
「海人族は、獣人たちのように見た目はほとんど人間ですが、それぞれ海に適応した姿の者たちですね。レイが言った人魚も、海人族の一つではあります」
俺の隣でダンジョン作りの様子を眺めていたフィオナ様が、アナンタより先に疑問に答えてくれた。
ということは、人魚以外もいるということか。
「見た目はどんな感じなんですか?」
「全体的に青とか緑の肌で、体の一部には魚の鱗がついていたり、頭や背中にはヒレもあるのが一般的です」
なるほど……。海の種族って感じの特徴だな。
そういう人たちは、ダンジョンに来たことがない。
「アルマセグシアの住人なので、きっとマギレマのレストランには顔を見せていると思いますよ」
「人魚だけじゃなかったんですね」
「ええ。人魚もそれなりに来ているようですけどね。……それと、前も話しましたが海人族は、オルナスという勇者もいます」
「勇者ですか……。もしかして、アルマセグシアにダンジョンを作ったのって早計でした?」
「いえ? なにぶん広くて出入りする種族も多い国ですからね。新しいお店ができても、それほど不思議ではないはずです」
それもそうか。そもそも、獣人の国プリズイコスにだってダンジョンを作ったしな。
あのイドのいる国に作ってしまっているのだから、いまさらではあるか。
「ですが、さすがに怪しい出来事があった場合は、オルナスや海人族の兵が調査に乗り出すはずです。なので、あの偽物のダンジョンとのつながりをなくしたのは、良い判断でしたね」
「どうせ使い物にならなくなっていましたからね」
だとすると、けっこう危なかったかもしれないな。
なんせ、ダンジョン全てが水没していた。そして、その内部からの圧力で崩壊寸前だった。
きっとあの後、あのダンジョンは内部から壊れてしまっていただろうから、そのオルナスが不審に思って調査にきていたかもしれないな。
「勇者ってことは、オルナスも強いはずですけど、瞬殺したんでしたっけ?」
「瞬殺しました」
「フィオナ様はそれでいいとして、四天王と比べたらどうですか?」
「そうですねえ……以前の四天王であれば、リピアネム以外は敗北していた可能性が高いですが、今なら一人で対処できるかもしませんね」
一人だけ別格扱いされているリピアネムもわりとやばいよなあ。
それにしても、いつの間にか四天王たちもそんなに強化されていたのか。
フィオナ様の大爆死ガシャも、ちゃんと魔王軍の強化につながっているということだ。
「フィオナ様の爆死も無意味じゃないってことですね」
「な、なにをぅ!? 私だって、そろそろ蘇生薬を引いてみせますけど!?」
「ははは」
「もう! 最近そうでもなかったのに、また生意気になっていますよ!」
なんか久しぶりにほっぺたをつねられた気がする。
アナンタ助けてくれ……あれ、いない。じゃあイピレティス……。
イピレティスのやつ、アナンタを連れて部屋を出ていこうとしている。
おのれイピレティス。お前、俺の側近だったはずじゃないか。
なんで、俺を置いて逃げ出しているんだよ。
なんなんだその去り際のサムズアップと笑顔は。
「聞いていますか? レイ」
「ふぁい……」
「まったく……私の運の悪さは自覚してますけどね~」
まあ、さすがに本人もわかっているよな。あれだけ爆死の連続なのだから。
フィオナ様は、少しいじけたように俺の頬から指を離した。
「まあ、俺がその分カバーしますよ。フィオナ様の運が悪いというのなら、その分俺が蘇生薬を引きますから」
「……そうですね! レイは私のもの。つまり、レイのガシャ結果は私のものです! ……なんかそれだと強欲な魔王みたいなので、やっぱりレイのものです」
「いえ、俺は別に全然かまいませんけど」
「成果を奪うとピルカヤあたりに怒られそうですからねえ……。レイのガシャ結果はレイのもの。だけどレイは私のものです」
「そうですね。俺はフィオナ様のものですから」
その答えに満足したのか。
フィオナ様はドヤ顔と笑顔の中間みたいなかわいらしい表情で、俺の頭をなでるのだった。
「というわけで、そろそろレイもガシャを回したくなってきたのではないですか?」
「え~……俺、ガシャを回してエビとカニを当てたばかりなので、そこまでのガシャ欲は」
「そうですか。レイもついにガシャを回したくなりましたか。では、一緒に回しましょうか」
「聞いてます?」
「レイが嫌なら無理には勧めませんし、私はどちらでもいいのですが……。どうします? 回しますか?」
……さては、選択肢ないな。これ。
もしも俺が
「どちらでもいいんですか?」
「ええ、どちらでもいいですよ。回しても」
ほら、すでにフィオナ様の中では、俺が宝箱ガシャを回すことになっている。
……魔力は、まあだいぶ増えているな。ほんと、マギレマさんには頭が上がらないな。
であれば、ここらでガシャに浪費したとしても問題ないか。
「わかりました」
「本当ですか!?」
「なんで、驚くんですか……」
「レイもついに、宝箱ガシャを率先して回してくれるようになったんですねえ……」
「率先と言いますか。あれを」
目を逸らすな魔王様。
わりと無理強いしていた自覚はあるらしく、フィオナ様はかわいらしくとぼけてみせた。
まあいいさ。かわいいから許そう。魔力はあるし、このタイミングで良かったと思う。
「じゃあ、みんなを集めて回すとしましょうか。ピルカヤ~。ガシャのお時間ですよ~」
『は~い。知らせるだけ知らせますね~』
フィオナ様がウキウキしながらピルカヤに呼びかける。
そしていそいそと自室へと戻っていったので、これまでに魔力を注いだ分の宝箱を取りに行ったのだろう。
さて、そのうち一つでも蘇生薬だといいのだが……。
俺は自分がこれから回すガシャよりも、フィオナ様の結果が良いものであってほしいと願うことにした。