【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第257話 マリンドームの海の幸

「なあ、レイよ……俺が目を離した隙に、エビとカニだらけになってるんだけど、なんなんだよぉあれ……」

 

「ハイドロロブスターとアイアンシザーズだ」

 

 ハイドロロブスター 魔力:65 筋力:60 技術:43 頑強:55 敏捷:45

 アイアンシザーズ 魔力:42 筋力:61 技術:36 頑強:69 敏捷:60

 

 強いし大きいぞ。かわいくて頼りになる子たちだ。

 

「違う……名前じゃないんだ。聞いているのは」

 

「モンスターガシャを引いたら出てきたから、量産した」

 

「するなぁ!」

 

 ……なんで? 海にしっかりと適応している子たちだぞ。

 現に、海エリアではしっかりと侵入者を撃退してくれている。

 

「あのエリア、攻略不能になるだろうが……」

 

「十匹ずつは多かったな。半分に減らすか」

 

「まだ多いと思うぞ」

 

「え~……三匹?」

 

「変に粘るんじゃねえよぉ……一で様子を見とけ」

 

 一かあ……。まあ、あの子たち大きくて強いし、それでもけっこうな脅威になってくれるか。

 

「あと、足場悪すぎんぞ。あのままじゃ戦えねえって」

 

「海だからな」

 

「なんで、そこで自慢げなのか、俺にはもうよくわかんねえよぉ」

 

 海なのに……。アナンタのやつ、スライムだから海が苦手なのか?

 いや、リグマは普通に楽しんでいるし、アナンタだけが泳げないという可能性も……。

 

「人間も獣人も、泳ぎながら戦うとなったら、あのエビもカニも陸で戦うよりも凶悪だろ」

 

「あ~……たしかに、苦戦してるよなあ」

 

 最近は真面目にダンジョンを攻略しようとしている獣人ですらも、エビとカニには逃げの一手だもんな。

 もう少し足場を広くして、戦えるような場所を作ってやらないといけないか。

 

「あんな場所で戦えるのなんて、海人族くらいだぞ」

 

「海人族?」

 

 その種族は、まだうちにやってきたことがないな。

 そういえば、マギレマさんのレストランに人魚の常連がいるらしいし、それを指しているのだろうか。

 

「人魚のこと?」

 

「海人族は、獣人たちのように見た目はほとんど人間ですが、それぞれ海に適応した姿の者たちですね。レイが言った人魚も、海人族の一つではあります」

 

 俺の隣でダンジョン作りの様子を眺めていたフィオナ様が、アナンタより先に疑問に答えてくれた。

 ということは、人魚以外もいるということか。

 

「見た目はどんな感じなんですか?」

 

「全体的に青とか緑の肌で、体の一部には魚の鱗がついていたり、頭や背中にはヒレもあるのが一般的です」

 

 なるほど……。海の種族って感じの特徴だな。

 そういう人たちは、ダンジョンに来たことがない。

 

「アルマセグシアの住人なので、きっとマギレマのレストランには顔を見せていると思いますよ」

 

「人魚だけじゃなかったんですね」

 

「ええ。人魚もそれなりに来ているようですけどね。……それと、前も話しましたが海人族は、オルナスという勇者もいます」

 

「勇者ですか……。もしかして、アルマセグシアにダンジョンを作ったのって早計でした?」

 

「いえ? なにぶん広くて出入りする種族も多い国ですからね。新しいお店ができても、それほど不思議ではないはずです」

 

 それもそうか。そもそも、獣人の国プリズイコスにだってダンジョンを作ったしな。

 あのイドのいる国に作ってしまっているのだから、いまさらではあるか。

 

「ですが、さすがに怪しい出来事があった場合は、オルナスや海人族の兵が調査に乗り出すはずです。なので、あの偽物のダンジョンとのつながりをなくしたのは、良い判断でしたね」

 

「どうせ使い物にならなくなっていましたからね」

 

 だとすると、けっこう危なかったかもしれないな。

 なんせ、ダンジョン全てが水没していた。そして、その内部からの圧力で崩壊寸前だった。

 きっとあの後、あのダンジョンは内部から壊れてしまっていただろうから、そのオルナスが不審に思って調査にきていたかもしれないな。

 

「勇者ってことは、オルナスも強いはずですけど、瞬殺したんでしたっけ?」

 

「瞬殺しました」

 

「フィオナ様はそれでいいとして、四天王と比べたらどうですか?」

 

「そうですねえ……以前の四天王であれば、リピアネム以外は敗北していた可能性が高いですが、今なら一人で対処できるかもしませんね」

 

 一人だけ別格扱いされているリピアネムもわりとやばいよなあ。

 それにしても、いつの間にか四天王たちもそんなに強化されていたのか。

 フィオナ様の大爆死ガシャも、ちゃんと魔王軍の強化につながっているということだ。

 

「フィオナ様の爆死も無意味じゃないってことですね」

 

「な、なにをぅ!? 私だって、そろそろ蘇生薬を引いてみせますけど!?」

 

「ははは」

 

「もう! 最近そうでもなかったのに、また生意気になっていますよ!」

 

 なんか久しぶりにほっぺたをつねられた気がする。

 アナンタ助けてくれ……あれ、いない。じゃあイピレティス……。

 イピレティスのやつ、アナンタを連れて部屋を出ていこうとしている。

 

 おのれイピレティス。お前、俺の側近だったはずじゃないか。

 なんで、俺を置いて逃げ出しているんだよ。

 なんなんだその去り際のサムズアップと笑顔は。

 

「聞いていますか? レイ」

 

「ふぁい……」

 

「まったく……私の運の悪さは自覚してますけどね~」

 

 まあ、さすがに本人もわかっているよな。あれだけ爆死の連続なのだから。

 フィオナ様は、少しいじけたように俺の頬から指を離した。

 

「まあ、俺がその分カバーしますよ。フィオナ様の運が悪いというのなら、その分俺が蘇生薬を引きますから」

 

「……そうですね! レイは私のもの。つまり、レイのガシャ結果は私のものです! ……なんかそれだと強欲な魔王みたいなので、やっぱりレイのものです」

 

「いえ、俺は別に全然かまいませんけど」

 

「成果を奪うとピルカヤあたりに怒られそうですからねえ……。レイのガシャ結果はレイのもの。だけどレイは私のものです」

 

「そうですね。俺はフィオナ様のものですから」

 

 その答えに満足したのか。

 フィオナ様はドヤ顔と笑顔の中間みたいなかわいらしい表情で、俺の頭をなでるのだった。

 

「というわけで、そろそろレイもガシャを回したくなってきたのではないですか?」

 

「え~……俺、ガシャを回してエビとカニを当てたばかりなので、そこまでのガシャ欲は」

 

「そうですか。レイもついにガシャを回したくなりましたか。では、一緒に回しましょうか」

 

「聞いてます?」

 

「レイが嫌なら無理には勧めませんし、私はどちらでもいいのですが……。どうします? 回しますか?」

 

 ……さては、選択肢ないな。これ。

 もしも俺が時任(ときとう)の力を持っていたら、そもそも選択肢が発生しないやつだ。

 

「どちらでもいいんですか?」

 

「ええ、どちらでもいいですよ。回しても」

 

 ほら、すでにフィオナ様の中では、俺が宝箱ガシャを回すことになっている。

 ……魔力は、まあだいぶ増えているな。ほんと、マギレマさんには頭が上がらないな。

 であれば、ここらでガシャに浪費したとしても問題ないか。

 

「わかりました」

 

「本当ですか!?」

 

「なんで、驚くんですか……」

 

「レイもついに、宝箱ガシャを率先して回してくれるようになったんですねえ……」

 

「率先と言いますか。あれを」

 

 目を逸らすな魔王様。

 わりと無理強いしていた自覚はあるらしく、フィオナ様はかわいらしくとぼけてみせた。

 まあいいさ。かわいいから許そう。魔力はあるし、このタイミングで良かったと思う。

 

「じゃあ、みんなを集めて回すとしましょうか。ピルカヤ~。ガシャのお時間ですよ~」

 

『は~い。知らせるだけ知らせますね~』

 

 フィオナ様がウキウキしながらピルカヤに呼びかける。

 そしていそいそと自室へと戻っていったので、これまでに魔力を注いだ分の宝箱を取りに行ったのだろう。

 さて、そのうち一つでも蘇生薬だといいのだが……。

 俺は自分がこれから回すガシャよりも、フィオナ様の結果が良いものであってほしいと願うことにした。

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