【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「集合しましたね? それでは、ガシャのお時間です」
なんで歓声があがるんだよ……。
今から行われるのは、ただの爆死だぞ。いや、だからこその歓声か……。
フィオナ様。不憫だな。
「な、なんですか? その同情するような目は」
「俺はフィオナ様の味方ですから」
「そ、そうですか……。ええ、あなたはずっと私の味方です」
元々魔王軍だった者たちも、わりと蘇生薬のほうを願ってくれていると思います。
あと、ここでハズレを望んでいる者たちも、別にフィオナ様の不幸を願っているというわけでもないので、そこは許してあげてください。
「さて、そんなレイであれば、私のために十連か二十連ガシャくらいは、やってくれるはずですね」
「え……」
フィオナ様の味方やめたくなってきた。
足元を見られてしまったような気がして、なんとも微妙な気持ちだ。
「だめ……ですか?」
「駄目じゃありません」
……まあ、この上目使いには勝てないよなあ。
ほんと、見た目はとんでもなく良いんだ。この魔王様は。
中身はとんでもなく残念だけどな。そして、そこがかわいいんだけどな。
「安心なさい。私も今日は十連です」
「まあ、いいですよ。魔力もだいぶ溜まっているので、フィオナ様が望むなら二十連だってやりますとも」
「ほんとですか!? だから、レイって好きです!」
「はいはい……」
美人に抱きしめられているというのに、この何とも言えない気持ちはなんなんだろうな……。
それって、俺ではなくガシャが好きなんだと思いますよ。
「どうしました? ぼんやりとしていましたが」
「いえ、大丈夫です」
相変わらずのガシャ狂いの残念美人だと思っていたなどとは言えない。
なので誤魔化そうとするが、思いのほか真剣な表情で見つめられて少し気まずいな……。
「調子が悪いのであれば、こんなことをしている場合じゃありません。すぐに休んで」
「いえ、問題ありません。すみません。中断させてしまって」
「……ならいいのですが。それと謝罪なんていりません。ガシャなんかより、レイの体調の方が優先ですからね」
「……ありがとうございます」
さすがに、そこまで大事にされては困る。
ガシャが好きな魔王様ではあるが、それ以上に部下の心配をされる方だということは忘れてはいけない。
本当に何でもないので、そんな優しい魔王様の邪魔をするなどもってのほかだ。
「すみません。本当に大丈夫なので、始めてください」
その言葉だけだとまだ信用できていないのか、フィオナ様はその美しい瞳で俺をまじまじと見つめている。
両手を頬にあてて顔をしっかりと固定して、真剣な表情で観察されるが、最近はこれにも慣れつつある。
「ふむ。本当に大丈夫そうですね。では、開けてください」
あ、そうか。始めるも何も俺が開けるんだった。
気を取り直して、フィオナ様が渡した宝箱を開封する。
「草……?」
「月光草ですね。薬を調合する際に使用すれば、その効果が高まります。これはプリミラとテラペイアが、必要なときに使ってください」
「ありがとうございます」
ただの草にしか見えなかったが、ちゃんとそれなりの効果をもつものだったようだ。
相変わらず、見た目だけでは判断が難しいよな。
「次は、なんかすごく真っ黒な鉱石ですかね?」
「深淵の黒鉱石ですね。見てのとおり鉱石ですので、武器や防具の強化には使えると思います。こちらはカールとテクニティスですね」
あの二人が作るのだとしたら、それだけでもすごい装備が出来上がりそうだな。
「糸……」
次は糸。見るからに不思議な光を放っているので、ただの糸ってわけではないか。
「妖精の糸ですか。魔法と親和性が高い糸なので、ラプティキに渡しましょう。そうですねえ……セラやハラの装備を作れるんじゃないですか?」
それにしても、またも他者のためになるアイテムばかりが出てくるな……。
そして今回は素材系が多いようだ。
「光精の羽根ですね。カザマの装備はこちらを使いましょう」
「炎滅の護符ですね。ピルカヤ対策になりそうなので、これは魔王ボックスに入れて誰にも渡さないようにしなければ……」
「今のボクなら貫通できますけど~」
その後も、やはり蘇生薬は出てこない。
だけど、部下の役に立つものが出ているので、フィオナ様もそれなりに満足しているように見える。
……本当に、部下想いの良い魔王様なんだよなあ。
「さて、次で最後ですか」
そして、そんな状況でもまだまだフィオナ様は諦めていない。
相変わらず、不屈の精神で宝箱ガシャを回す魔族だな……。
「では、開けますよ」
「ええ。お願いします」
そうして開いた最後の宝箱からは、虹色の薬が入っていた。
「フィオナ様!」
「え、ええ! どうです! 私だってできるんですよ!」
周囲の者たちは一瞬静まり返っていたが、その後せきを切ったかのように、フィオナ様の偉業をたたえていた。
うわあ、すごいな。外れたときとは比べ物にならないほど、場が盛り上がっている。
よかった。ちゃんと当たりを引いても喜んでもらえたじゃないか。
俺が蘇生薬を引いたときと違って、熱狂といえるほどには祝福されているようだ。
やはり、この魔王様はみんなに慕われているということの表れだろう。
「長かった! 非常に長いハズレ期間でしたよ。本当に!」
「おめでとうございます。苦戦しましたねえ」
「いやあ、本当に。勇者より強かったです。宝箱」
実際、一番フィオナ様を苦しめていた存在なのかもしれないな……。
俺に抱き着きながら、フィオナ様は満足そうにドヤ顔を披露し続けている。
「ふう……これで、もはや勝利は確定しました。さあ、レイ。あとは蘇生薬を二十本ほど引いちゃってください」
「俺への要求が、魔王並みの無茶振りなんですけど……」
「魔王ですので」
いつものホワイトカラーな魔王軍はどこへ……。
これでは、本当に悪の組織のボスじゃないか。
「まあ、適当に引きますけど、期待されすぎると困りますよ」
「大丈夫です。なんせ、私のレイですから」
そこまで期待されているのであれば仕方ない。
せめて、一つか二つほどは引けたらいいのだけど……。
◇
「お見事です」
「……やっぱり、10000と9999の差って大きいんですね」
「ですねえ。でも、私はとても満足していますよ?」
そうやって、自分の結果よりも他人の結果を喜んでくれるところが、慕われる原因の一つなんだろうな。
俺もフィオナ様のそういうところは、好ましく思っているし。
さて……蘇生薬が十四本か。
残りの六つは、なんだか様々なジャンルの本が出てきた。
魔導書とか、そういう類いかと思ったのだけど、ただの本もかなり混じっているらしい。
「本は……私がもらってもいいでしょうか?」
フィオナ様が遠慮がちにみんなに尋ねるが、当然ながら反対する者は一人もいなかった。
別に魔王相手だから逆らえないのではない。
本心から、それでいいと考えているのが伝わってくる。
まあ、当然だよな……。
本当ならこれまでの宝箱の中身だって、全てフィオナ様のものなのだから。
それを善意で分け与えて、自分が何かを欲することは一度もなかった。
そんなフィオナ様が珍しく欲しているのであれば、皆譲ろうという気になったのだろう。
「問題ないと思いますよ。全部フィオナ様のものにしてしまってください」
「そ、そうですか。どうもありがとうございます」
珍しいアイテムや高価そうな品物でなく、それが良いのか。
本当に欲がないみたいだな。
だが、蘇生薬もちゃんともらってもらう。
さて、この合わせて十五本の蘇生薬をどうするのだろうか。
「なんとか将って役職は全員蘇生が終わったんですよね?」
「ええ。
ああ、そういえば最近何度か必要になっていたな。
ちょうどいい。この機会に蘇生してしまったほうがよさそうだ。