【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「それで、こっちがあたしの城。つまりキッチンね」
「これほどの設備が……」
マギレマさんが、急に十人くらいの魔族らしき人たちを連れてきた。
なんとなく話を聞いてしまっていたけれど、どうやらこの人たちはマギレマさんの部下にあたるらしい。
知らない顔ばかりだけど、ダスカロス先生たちのように、魔王様が復活させた方々なのかな?
「そんで、この子たちが従業員。カザマくんに、セラちゃんに、ハラちゃん。他にもダークエルフやハーフリングがいるんだけど、まだ来てないみたいだね」
マギレマさんに紹介されて、魔族の人たちが僕たちに目線を向ける。
……なんか、これだけ大勢にまじまじと見られると、少し緊張してしまう。
「……人間のようですが」
「そうだよ~。なんか問題ある?」
……挨拶をしようと思った矢先、魔王様やレイさんのように耳がとがっていて、イピレティスさんのように頭に角が生えた女性が、眉をひそめながら問いかける。
そこまではいいんだけど、それに答えたマギレマさんの雰囲気が、なんだかちょっと怖いような気が……。
「……いえ、申し訳ございません」
「魔王様の方針でね。今は魔族以外のいろんな種族が仲間になってんの。だから、みんな仲良くしようね~」
「えっと……
「……プシシモだ。主に火の扱いを担当している」
その後、
覚えきれるかなあ……。覚えられるまでは、マギレマさんに聞いたほうがいいかもしれないね。
「うんうん。みんな仲良くね~」
「あの、マギレマ様……」
「どうしたの?」
「魔王様の後を追って部屋を出ていったあの男は、何者なのでしょうか……?」
「私たちの記憶には、あのような魔族は存在していませんが」
きっとレイさんだろうなあ……。
魔王様と行動を共にしていると言われて、真っ先に思いつくのあの人だし。
「あれはレイくん。あなたたちも、私たちも、みんなあの方のおかげで生き返ったんだよ」
「ですが、あれではマギレマ様どころか、四天王様以上の存在のようではないですか……」
「私たちが知らない顔ということは、新参者なのでは? そのような者に大きな顔をさせるのは」
「その四天王を蘇生させたのもレイくんだからね~……だから、無礼なことをしたら怒るからね?」
魔王軍の蘇生って、レイさんがしていたんだ……。
そんな事実を知ったことよりも、マギレマさんやマギレマさんの足の犬たちが、なんか怖い……。
うすうす気づいていたんだけど、もしかして僕たちって、彼らにあまり受け入れてもらえていない?
「レイくんは魔王様の側近だから、あたしたちはもちろんとして、四天王のみんなと同じかそれ以上に偉いの。それに魔王様のものだから、変なこと考えたらあたしもみんなを守れないからね? わかった?」
「はい……申し訳ございません」
マギレマさんの忠告を聞いて納得したのか、彼らからの警戒心のようなものが薄まった気がする。
なんとなく理解できた。レイさんって、魔王軍の最古参の方かと思っていたけど、案外入ってから日が浅い人のようだ。
そんなレイさんが、次々と魔王軍のみんなを復活させているからこそ、魔王様はレイさんをお気に入りの魔族としてかわいがっている。
今までの魔王軍の方たちは、それを察してすぐに受け入れていたけれど、今回復活した人たちは違ったようだ。
見知らぬレイさんという存在が、魔王軍の重要人物として扱われているのを見て、新参者のくせになぜという疑問や妬みや警戒心から、若干の敵意のようなものをもってしまったんだろう。
そして、僕たち人間やロペスたちハーフリングのような、別の種族がいることに対しても、やはり受け入れられなかったみたいだ。
そんな彼らの心情を察して、マギレマさんは上司として、彼らにちょっと厳しめな態度をとって忠告したといったところか……。
「えっと……改めてよろしくお願いします」
なので、ここはもう一度ここからやり直すべきだろう。
僕の意図を察してくれたのか、魔族の方たちは少し迷ってから、だけどさっきよりも柔らかい態度で応えてくれた。
「ああ、こちらこそよろしく」
◇
「お腹が空きました」
「すごい音でしたからね」
「も、もう! デリカシーにかけていますよ!」
「すみません。かわいい音だったので」
「え~……? 褒められているような、馬鹿にされているような、微妙なラインなのでつねるべきか迷いますね……」
「迷わないでくださいよ……。お腹が空くのはいいことじゃないですか」
体調が健康ということだろうからな。
たしかに若干馬鹿にはしていたけど、かわいかったのも本心だから、それで手打ちにしてください。
「今日は何を食べましょうかね? 最近は海の幸ブームでしたが、そろそろお肉にしますか」
「フィオナ様わりとがっつり食べますよね」
「え、ふ、太りましたか!?」
「いえ、ぜんぜん。綺麗なお姿です」
「ふふん! ならばいいのです!」
今は綺麗なお姿ではなく、うざかわいいお姿になられたがな。
というか、わりと食べてぐーたらしてるのに、全然太んないよなあ。
もしかして、全部胸に……。いや、これは不敬な考えだからやめよう。
「……えっち」
「ち、違いますけど!?」
違……わないのか。くそ~、視線がついそっちにいった俺の落ち度だ。
そしてこの勝ち誇った顔だよ……。まったく、今日もうざかわいくてなによりだな。
「あれ、魔王様にレイくん。もうそんな時間ですか~」
「ええ、お昼のお時間です! マギレマ。今日はお肉が食べたいです」
「はいは~い。レイくんは何にする?」
「じゃあ、フィオナ様と同じもので」
マギレマさんが注文を確認してくれたが、今日はその近くに彼女の部下たちもいる。
そんな彼らは、フィオナ様の姿を見るとすぐに頭を下げて動きを止めていた。
「みんな、動いていいですよ」
「はい!」
「あの……もしかして、フィオナ様の前で勝手に動いたり喋ると、殺されたりするんですか?」
「そ、そんなことありませんけど!? でも、
「なるほど……」
忠誠心が高すぎるということか? それはそれで、ちょっと不便だよなあと思ってしまうのは失礼か。
「マギレマ。この子たちに説明しましたか?」
「前とは違う職場になったって教えたんですけどね~。魔王様の命令が最優先ってことみたいです」
「なるほど……。では、改めて言いましょう。あなたたちの作業をその都度止めてしまっては、非効率的です。これからは、私がきても自由に動き、話しなさい。敬う気持ちは受け取っておきますが、私がいる間平伏し続ける必要はありません」
フィオナ様の命令に、マギレマさんの部下たちは困惑しているようだった。
だが、そこは魔王命令と受け取ったのか、少しの間をおいて全員がその命令に従うべく大声で返事をする。
「はい。そんじゃあ、料理続けるよ。魔王様を理由にサボらないようにね~」
「私は別にサボってもいいと思いますけど」
「じゃあ、魔王様のご飯は何時間か待ってもらいますね~」
「働き者って素晴らしいですよね」
折れた。まあ、俺も昼食が夕食になるのはごめんなので、ここは何も言うまい。
やっぱり、食を司る者って強いなあ……。マギレマさんの部下の方々にも感謝しておこう。
と思っていたら、インプみたいな女性が近づいてきた。たしかプシシモさんって名前だったっけ?
ちょうどいい。感謝を……。
「大変申し訳ございませんでした」
「え、なにが?」
なんか、謝られたぞ……。
「私たちを蘇生していただいた方だというのに、私たちより立場が下の魔族と扱おうとしました。どうか、お許しください」
「……むしろ、その認識で合ってるんだけど」
「……私たちをかばうために、そのようなことを言っていただき、ありがとうございます。魔王様は当然ですが、今後はレイ様のためにも、命を懸けて働かせていただきます」
そう言ってインプの女性が立ち去ってしまう。
かばってない。全然かばってないというか、その認識で本当に正しいと思っている。
「合ってるんだけどー!」
その言葉に振り向いたインプの女性は、俺に最大限の敬意を示すように頭を下げた。
なんだこれ……。いったいどんな勘違いが発生しているんだ。
俺が魔王軍で一番立場が低いのは、なにも勘違いじゃないというのに……。