【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

260 / 262
第260話 あずかり知らぬところで命をあずかる

「それで、こっちがあたしの城。つまりキッチンね」

 

「これほどの設備が……」

 

 マギレマさんが、急に十人くらいの魔族らしき人たちを連れてきた。

 なんとなく話を聞いてしまっていたけれど、どうやらこの人たちはマギレマさんの部下にあたるらしい。

 知らない顔ばかりだけど、ダスカロス先生たちのように、魔王様が復活させた方々なのかな?

 

「そんで、この子たちが従業員。カザマくんに、セラちゃんに、ハラちゃん。他にもダークエルフやハーフリングがいるんだけど、まだ来てないみたいだね」

 

 マギレマさんに紹介されて、魔族の人たちが僕たちに目線を向ける。

 ……なんか、これだけ大勢にまじまじと見られると、少し緊張してしまう。

 

「……人間のようですが」

 

「そうだよ~。なんか問題ある?」

 

 ……挨拶をしようと思った矢先、魔王様やレイさんのように耳がとがっていて、イピレティスさんのように頭に角が生えた女性が、眉をひそめながら問いかける。

 そこまではいいんだけど、それに答えたマギレマさんの雰囲気が、なんだかちょっと怖いような気が……。

 

「……いえ、申し訳ございません」

 

「魔王様の方針でね。今は魔族以外のいろんな種族が仲間になってんの。だから、みんな仲良くしようね~」

 

「えっと……風間(かざま)武巳(たけみ)です。給仕や買い出しを担当しています」

 

「……プシシモだ。主に火の扱いを担当している」

 

 その後、(あらた)友香(ともか)も自己紹介をすると、他の魔族たちもそれぞれ名前と作業担当を教えてくれた。

 覚えきれるかなあ……。覚えられるまでは、マギレマさんに聞いたほうがいいかもしれないね。

 

「うんうん。みんな仲良くね~」

 

「あの、マギレマ様……」

 

「どうしたの?」

 

「魔王様の後を追って部屋を出ていったあの男は、何者なのでしょうか……?」

 

「私たちの記憶には、あのような魔族は存在していませんが」

 

 きっとレイさんだろうなあ……。

 魔王様と行動を共にしていると言われて、真っ先に思いつくのあの人だし。

 

「あれはレイくん。あなたたちも、私たちも、みんなあの方のおかげで生き返ったんだよ」

 

「ですが、あれではマギレマ様どころか、四天王様以上の存在のようではないですか……」

 

「私たちが知らない顔ということは、新参者なのでは? そのような者に大きな顔をさせるのは」

 

「その四天王を蘇生させたのもレイくんだからね~……だから、無礼なことをしたら怒るからね?」

 

 魔王軍の蘇生って、レイさんがしていたんだ……。

 そんな事実を知ったことよりも、マギレマさんやマギレマさんの足の犬たちが、なんか怖い……。

 うすうす気づいていたんだけど、もしかして僕たちって、彼らにあまり受け入れてもらえていない?

 

「レイくんは魔王様の側近だから、あたしたちはもちろんとして、四天王のみんなと同じかそれ以上に偉いの。それに魔王様のものだから、変なこと考えたらあたしもみんなを守れないからね? わかった?」

 

「はい……申し訳ございません」

 

 マギレマさんの忠告を聞いて納得したのか、彼らからの警戒心のようなものが薄まった気がする。

 なんとなく理解できた。レイさんって、魔王軍の最古参の方かと思っていたけど、案外入ってから日が浅い人のようだ。

 そんなレイさんが、次々と魔王軍のみんなを復活させているからこそ、魔王様はレイさんをお気に入りの魔族としてかわいがっている。

 

 今までの魔王軍の方たちは、それを察してすぐに受け入れていたけれど、今回復活した人たちは違ったようだ。

 見知らぬレイさんという存在が、魔王軍の重要人物として扱われているのを見て、新参者のくせになぜという疑問や妬みや警戒心から、若干の敵意のようなものをもってしまったんだろう。

 そして、僕たち人間やロペスたちハーフリングのような、別の種族がいることに対しても、やはり受け入れられなかったみたいだ。

 そんな彼らの心情を察して、マギレマさんは上司として、彼らにちょっと厳しめな態度をとって忠告したといったところか……。

 

「えっと……改めてよろしくお願いします」

 

 なので、ここはもう一度ここからやり直すべきだろう。

 僕の意図を察してくれたのか、魔族の方たちは少し迷ってから、だけどさっきよりも柔らかい態度で応えてくれた。

 

「ああ、こちらこそよろしく」

 

    ◇

 

「お腹が空きました」

 

「すごい音でしたからね」

 

「も、もう! デリカシーにかけていますよ!」

 

「すみません。かわいい音だったので」

 

「え~……? 褒められているような、馬鹿にされているような、微妙なラインなのでつねるべきか迷いますね……」

 

「迷わないでくださいよ……。お腹が空くのはいいことじゃないですか」

 

 体調が健康ということだろうからな。

 たしかに若干馬鹿にはしていたけど、かわいかったのも本心だから、それで手打ちにしてください。

 

「今日は何を食べましょうかね? 最近は海の幸ブームでしたが、そろそろお肉にしますか」

 

「フィオナ様わりとがっつり食べますよね」

 

「え、ふ、太りましたか!?」

 

「いえ、ぜんぜん。綺麗なお姿です」

 

「ふふん! ならばいいのです!」

 

 今は綺麗なお姿ではなく、うざかわいいお姿になられたがな。

 というか、わりと食べてぐーたらしてるのに、全然太んないよなあ。

 もしかして、全部胸に……。いや、これは不敬な考えだからやめよう。

 

「……えっち」

 

「ち、違いますけど!?」

 

 違……わないのか。くそ~、視線がついそっちにいった俺の落ち度だ。

 そしてこの勝ち誇った顔だよ……。まったく、今日もうざかわいくてなによりだな。

 

「あれ、魔王様にレイくん。もうそんな時間ですか~」

 

「ええ、お昼のお時間です! マギレマ。今日はお肉が食べたいです」

 

「はいは~い。レイくんは何にする?」

 

「じゃあ、フィオナ様と同じもので」

 

 マギレマさんが注文を確認してくれたが、今日はその近くに彼女の部下たちもいる。

 そんな彼らは、フィオナ様の姿を見るとすぐに頭を下げて動きを止めていた。

 

「みんな、動いていいですよ」

 

「はい!」

 

「あの……もしかして、フィオナ様の前で勝手に動いたり喋ると、殺されたりするんですか?」

 

「そ、そんなことありませんけど!? でも、十魔将(とうましょう)より立場が下の子たちは、私の許可なく動くわけにはいかないと思ってしまっているんですよねえ」

 

「なるほど……」

 

 忠誠心が高すぎるということか? それはそれで、ちょっと不便だよなあと思ってしまうのは失礼か。

 

「マギレマ。この子たちに説明しましたか?」

 

「前とは違う職場になったって教えたんですけどね~。魔王様の命令が最優先ってことみたいです」

 

「なるほど……。では、改めて言いましょう。あなたたちの作業をその都度止めてしまっては、非効率的です。これからは、私がきても自由に動き、話しなさい。敬う気持ちは受け取っておきますが、私がいる間平伏し続ける必要はありません」

 

 フィオナ様の命令に、マギレマさんの部下たちは困惑しているようだった。

 だが、そこは魔王命令と受け取ったのか、少しの間をおいて全員がその命令に従うべく大声で返事をする。

 

「はい。そんじゃあ、料理続けるよ。魔王様を理由にサボらないようにね~」

 

「私は別にサボってもいいと思いますけど」

 

「じゃあ、魔王様のご飯は何時間か待ってもらいますね~」

 

「働き者って素晴らしいですよね」

 

 折れた。まあ、俺も昼食が夕食になるのはごめんなので、ここは何も言うまい。

 やっぱり、食を司る者って強いなあ……。マギレマさんの部下の方々にも感謝しておこう。

 と思っていたら、インプみたいな女性が近づいてきた。たしかプシシモさんって名前だったっけ?

 ちょうどいい。感謝を……。

 

「大変申し訳ございませんでした」

 

「え、なにが?」

 

 なんか、謝られたぞ……。

 

「私たちを蘇生していただいた方だというのに、私たちより立場が下の魔族と扱おうとしました。どうか、お許しください」

 

「……むしろ、その認識で合ってるんだけど」

 

「……私たちをかばうために、そのようなことを言っていただき、ありがとうございます。魔王様は当然ですが、今後はレイ様のためにも、命を懸けて働かせていただきます」

 

 そう言ってインプの女性が立ち去ってしまう。

 かばってない。全然かばってないというか、その認識で本当に正しいと思っている。

 

「合ってるんだけどー!」

 

 その言葉に振り向いたインプの女性は、俺に最大限の敬意を示すように頭を下げた。

 なんだこれ……。いったいどんな勘違いが発生しているんだ。

 俺が魔王軍で一番立場が低いのは、なにも勘違いじゃないというのに……。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。