【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第264話 誰よりもゲームプレイヤー

「悪いな。こんな値段で売ってもらって」

 

「気にすんな。獣人同士じゃねえか。その代わりというか、これまでのハーフリングとの取引もしてやってくれ。それと、俺のことは話題にしないようにな」

 

「それは構わねえが、ハーフリングはお前と無関係じゃないのか?」

 

「同郷のやつがいてな。そいつへの義理立てみたいなもんさ」

 

 同郷というか、同じ世界というべきか。

 まあ、どっちでもいいか。義理立て自体が適当な理由なんだから。

 さて、ピルカヤの野郎は、俺たちの話を監視してくれているだろうか。

 本当にいなかったら、とんだ見当違いな行動ってことになるが、こればかりは確かめようがないからな。

 

 ピルカヤのやつはとにかく厄介だ。

 それも現実となってしまったこの世界では、ゲーム以上にはるかに面倒くさい相手だ。

 どこにいてもほとんどあいつに情報が筒抜けというのは、実に恐ろしいじゃないか。

 それも、その気になればどこにでもある炎から、分体も本体も送り込める。

 あの破壊竜リピアネムとは別の意味で……いや、そもそも四天王は全員揃ってそんなのばかりか。

 

 蛇の獣人として生まれ変わったので、熱源の感知なんて便利な能力まで得たはいいが、ピルカヤの野郎はその感知程度じゃ見つけられない。

 そもそも本当は死んだままなので、俺は存在しないものを探そうとしているという可能性もある。

 それならそれでいいのだが、俺自身が確かめて安全を確保しない限りは、安心して行動できそうにない。

 

「さて、獣人たちへの回復薬の供給も順調だ」

 

 そして、はぐれ獣人である俺が、プリズイコスに入国してもおかしくないという状況も、作り上げることができている。

 できれば、ここで俺を危険視して襲いかかってくれたら楽なんだけどなあ。

 そうすりゃあ、イドの野郎がピルカヤを倒してくれるだろうからな。

 だが、本当に存在しないのか、それとも思いのほか慎重なのか、俺自身を囮にしてもピルカヤが仕掛けてくることはなかった。

 

「プランを変えるか」

 

 襲われないなら襲われないで、もう少し自由に動いても良いと考えよう。

 四天王を倒すなら、やっぱり転生者か勇者だろう。

 次に目指すはアルマセグシア。あそこの勇者オルナスのやつを動かしてみるとするか。

 

    ◇

 

「欲望のダンジョンか……」

 

「たしかに、最近ではダンジョン内部に海が発生したという話です」

 

「だからって、なんでオレが……ああ、本当にろくなことにならない。どうせまた転生者のしわざだろ? この前のダンジョンだってそうだったじゃないか」

 

「どうやら、内部に娯楽施設を作っていて、様々な種族がそこを利用しているみたいですね」

 

「なんだって、ダンジョンなんかに……。これだから、転生者ってやつはわけがわからないんだ」

 

 そもそも、この話の噂の出どころだって転生者じゃないか。

 ヨハンとかいう蛇の獣人。あいつもたしか転生者なんだろ?

 うちの国に何度も出入りしては商売をして、いつのまにか大金を稼いでいたやつだ。

 まるで、誰が何を欲しているか全て知りつくているかのように、見事に商売を成功させてみせた転生者。

 

「……その欲望のダンジョンの店も、ヨハンってやつが作ったんじゃないのか?」

 

「利用しているだけのようですね。それも、配下のはぐれ獣人たちだけで、本人は内部に入ることはしていないようです」

 

 じゃあ、別の転生者が作ったか?

 とにかく、ダークエルフの村の付近のダンジョンだろ?

 オレたちアルマセグシアには関係ない。と言いたいのだが、まあ頼られる理由もわからないでもない。

 人工的な海の施設は別にいいが、ダンジョンの奥に新たに出現したという海と巨大なモンスターたち。

 それらは、オレたち海人族以外では、環境の違いもあって戦うのは厳しい相手か……。

 

「ダンジョンの内部が変化しているのか、あるいは転生者たちのしわざなのか……」

 

 確かめる必要はありそうだな。

 ああ、本当に……面倒ごとばかりで嫌になる。

 

    ◇

 

『魔王様。レイ』

 

「どうした? ピルカヤ」

 

 いつもの楽し気な雰囲気ではない。その真剣な声色からは、彼の四天王としての顔を感じさせる。

 何かあったな。それも、こちらにとって良くないことが。

 

『アルマセグシアから、勇者オルナスが兵士を引き連れて欲望のダンジョンに向かっています』

 

「勇者か……」

 

 俺が知らない新たな現地の勇者。イドとリックに続く三人目の勇者か。

 ダンジョンに訪れるのは、イド以来だから二人目の相手だな。

 あのときは、慢心からイドと対面するなんて愚行を犯した。

 その結果、四天王三人の足手まといとなり、自身も怪我をしてしまうという醜態を見せてしまった。

 

「今は……四天王だけでなく、十魔将(とうましょう)も全員復活している」

 

 戦力は十分。罠やモンスターという選択肢だって、あのとき以上。

 だけど、相手は勇者だ。油断するわけにはいかない。

 それに、こちらの情報をなるべく持ち帰らせるわけにもいかない。

 

「フィオナ様。オルナスは、魔王軍の面々も知っているんですよね?」

 

「ええ、四天王はもちろんのこと、十魔将も全員顔を覚えられています」

 

 となると、使える戦力はモンスターと転生者と現地の従業員。

 ただし、転生者と現地の従業員を戦力と数えるのはかわいそうか。

 いくら風間(かざま)たちが強くなってきているとはいえ、こちらの勇者の相手をさせるわけにもいかないだろう。

 

「俺のモンスターたちに本気で襲わせた場合、オルナスは倒せますか?」

 

「残念ながら、ほとんど相手にならないですね……」

 

 申し訳なさそうに事実を告げるフィオナ様だが、そこは薄々と察していたことなので問題ない。

 むしろ、正しい情報を与えてくれたことに感謝するだけだ。

 

「となると、罠も大して効果がなさそうですね」

 

「ええ。迷路とかなら、ある程度の時間稼ぎにはなりますが、ダメージを与えることを期待すべきではありません」

 

 そうなると、選択は三つ。

 一つは、オルナスが気づかないうちに不意打ちで一撃で殺す。

 一つは、オルナスにばれてしまうことを覚悟して、四天王や十魔将に相手をしてもらう。

 一つは、無視して帰ってもらうのを待つ。

 

 不意打ちは難しいだろうな。イドを相手にしたとき、弱体化していても大暴れされた。

 あのレベルと考えると、四天王ですら奇襲して姿がばれることなく倒すのは無理だろう。

 なら、フィオナ様に頼むかというと、それも駄目だ。

 万が一、一撃で倒せなかったら、魔王の復活が世界中に知れ渡るのはリスクでしかない。

 

 四天王や十魔将に相手をしてもらうのは、もっと良くないな。

 倒すとなると、かなり苦労するだろう。

 こちらの手の内をかなり見せることになるし、魔王軍の幹部が復活してる情報まで持ち帰られる。

 

 となると、消極的だが無視するしかないか。

 ……そもそも、どんな目的で来たのか次第だな。

 リズワンみたいに、ただ遊びに来てくれただけならいいのだが、兵士も一緒となるとそんな穏やかな理由じゃないだろう。

 

「私が海水で洗い流しましょうか?」

 

 ピルカヤ含めた四天王、それに十魔将たちもこちらに集合し始める。

 そんな中、プリミラが提案をしてくれた。

 ……案外、それで諦めてくれないかな?

 

「オルナスは、海人族ですからね。海流に逆らって進むことは、むしろ得意としているはずです」

 

 しかし、フィオナ様の発言によりその案も現実的ではないことがわかる。

 あのプリミラの激流に逆らって泳げるってことか。

 とんでもないな。海人族。

 

「う~ん……しょうがない。おじさんがなんとかしよう」

 

 どう対応すべきか頭を悩ませていると、リグマが気だるげな声で、しかし真剣な様子で、そんな言葉と共に申し出た。

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