【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「昨日ダンジョン内の見回りをして思ったのだが」
すっかりといつもの狼男の姿に戻ったダスカロスが、ふと思い出したように口にした。
彼はいつも、ダンジョンや地底魔界の従業員たちを気にかけてくれるので、非常に助かっている。
「人工海の太陽代わりの光源だが、可能であれば別のものに変えるべきではないか?」
「なんで!? ボクよりすごい炎があるとでも言いたいの!?」
あ、ピルカヤが出てきた。
いつものように声だけじゃなくて、分体を作りだすほどの抗議だ。
それだけ、ダスカロスの言葉に異議があったのだろう。
「いや、君を超える炎など私は知らない」
「だよね~!」
チョロいなこいつ。
ダスカロスの言葉にあっさりと気を良くしたピルカヤは、冷静に話を聞けるようになったようだ。
まあ、ピルカヤ以上の炎なんて、本当になさそうだけど。
「しかし、例のクニマツという転生者が、もしも人工海にきたら問題だろう」
「一応、そうなる前に、事前の侵入者チェックはしているけどな」
「それは理解している。だが、クニマツ以外に似たような感知系統の能力を持つ者がいた場合、遊びの場にピルカヤの痕跡を残すのはまずいだろう」
……それもそうだな。
そういえばクララは、昔ピルカヤの魔力の痕跡を辿っていたっけ。
幸いこちらの味方になるつもりだったから何事も起きなかったが、あれが敵対する気での行動だったとしたら……。
ピルカヤの存在が、各国に知れ渡っていた可能性もあるな。
「よし、ピルカヤの太陽やめよう」
「なんで~!」
「仕方ないだろう。君の力はそれほど強力なのだから」
「う~! しかたないかもしれないけど、ボク強いけどさ~!」
ピルカヤの説得はダスカロスがしてくれるようなので、こちらは代わりの光源のことを考えてみるか……。
とはいっても、地底魔界全体を照らすような魔力光では駄目だよなあ。
フィオナ様が用意してくれたわけだし、あの光俺は好きだけど、太陽みたいに熱を感じたりはしないからなあ。
……そういえば、地底魔界もそれとつながるダンジョンも、フィオナ様の魔力光で照らされているわけだけど、そちらは大丈夫なんだろうか?
ピルカヤと同じく、鑑定やら魔力調査で魔王のしわざだとばれたりしないか?
まあ、そもそもダンジョン自体が魔王の悪あがきって思われているようだし、そこは問題ないのかもしれないな。
「とりあえず、テクニティスに相談してみるか」
魔力周りのことは俺ではわからないし、ダスカロスはピルカヤの相手をしている。
ならば、専門家であるテクニティスに相談するのが良いだろう。
◇
「というわけで、魔力問題の相談に来た」
「なるほど、自分は全然構わないっすよ」
「テクニティスは、また転移温泉の調整をしてくれていたみたいだな。悪いな、俺の頼みばかりきいてもらって」
「いえいえ。魔力関連でレイ様が自分を頼ってくれて嬉しいっす。魔力という分野なら、自分もダスカロスに負けないっすからね」
若干の自負心のようなものを感じる。
基本的に謙虚なテクニティスだが、それでもピルカヤと同じく精霊という種族だからか、得意分野を認められることが嬉しいらしい。
「それにしても、ピルカヤ様みたいな規格外の成果っすか」
「あいつ、簡単に太陽みたいなの作ってたからなあ……」
魔力関係に詳しくないとはいえ、俺だってあれがいかにすごいことなのかは理解している。
人工海は、小さいながらも海を内包している空間だ。
それらをあまねく照らす太陽なんて、いったいどれほどの魔力が必要なのか。
……いや、魔力の数値自体は135だったけれど、俺がそれだけの魔力を使ったとしても、同じことはできないと思う。
「魔力量と技術。その両方が必要になるってことだよなあ……」
「そうっすねえ」
「……火球を改良し続けたら、案外ピルカヤみたいに人工太陽とかできないかなあ」
「ピルカヤ様は古の四大精霊なんで、例外と考えたほうが良いと思うっすよ。というか、レイ様が太陽まで作れるようになったら、いよいよやばいと思うっす」
「やばいかあ……」
やばいといえば、うちの魔王様。
ということで、この際だからフィオナ様にも協力してもらうのはどうだろう?
「フィオナ様なら、太陽とか作れると思う?」
「ど、どうっすかねえ? 魔王様もまた、自分たち程度じゃ測れないお方っすけど」
「じゃあ、試しに呼んでみるか」
とはいっても、ここからはわりと遠いよな。
ピルカヤに頼んでフィオナ様に言づてしてもらうとするか。
「ピルカヤ~」
『な~に~?』
「お、分体のほうか。ということは、本体はまだダスカロスと話中だな」
『まあ、ボクすごいから。いまさらこの程度の並行作業余裕だけどね!』
「ああ、本当にすごいと思う。ところで、ちょっとフィオナ様を呼んできてほしいんだけど」
『オッケ~。たしか昼寝中だったと思うから、呼んでくるね~』
また寝てるのか……。暇なのか? 暇なんだろうなあ。
そのくせ、昨晩も俺を抱いたまますぐに就寝していたし、睡眠が趣味なのかもしれないな。
そんなことを考えながら、ピルカヤがフィオナ様を呼んでくれるのを待っていると、テクニティスがなんだかすごいものを見るような顔をしていた。
「どうした?」
「い、いえ……四天王を使って、魔王様を呼び出すって……やっぱり、自分が死んでいる間に、レイ様が地底魔界で一番偉い存在になっていたっすか?」
「そうだよ~。ついでに
「……いや! 違うから!」
おい、イピレティス!
ふだんは、こちらの後ろを黙ってついてきているのに、そんな誤解を招くようなことを……。
「……自分も一応十魔将っすけど、レイ様の舎弟っすね」
「そうそう。レイ様は魔王様の代理みたいなものだから」
……たしかに、今の自分の行動を顧みてみると、とんでもないことをしたんじゃないかと思ってしまう。
四天王であるピルカヤを、まるでパシリのように使って、最高権力者の魔王にわざわざ来てもらう。
幹部の一人を従者のように従え、別の幹部の一人は舎弟のように接している。
うわ~……俺、偉そうなやつじゃん。
◇
「お待たせしました~。なんですか? ガシャですか? お昼寝ですか?」
「調子に乗ってすみませんでした」
「な、なんですか!?」
土下座とまではいかないが、フィオナ様に向けて深々と頭を下げた。
呼び出されたことに不満一つ言わず、それどころかニコニコとしているのが、今はかえって申し訳ない。
「レイ様が魔王様の代理だとお話したら、なんかこうなっちゃいました」
「なんだ。そんなことですか。それなら間違いありませんし、問題もありませんよ。レイは側近ですからね」
「ですよね~」
「そうっすね」
いや、側近ってそういう言葉だったっけ?
俺が知っている側近って、別に魔王の代理とかそういう意味じゃなかったと思うんだけど……。
「レイ」
フィオナ様が手のひらを俺の頬に沿えると、優しい声で語りかける。
「あなたは、これまで通りでいいんです。何を反省なんてする必要がありますか」
「そうですよね~。レイ様いなかったら、僕たちいまだに死んだままですし」
いやあ、それとこれとは話が……。
「あなたは、私のお気に入りなので、全てが許されます」
う~ん……。
まあ、魔王軍ってみんな良い魔族だしなあ。
きっと変にかしこまったりしないで、のびのびとやりつつも成果を出すのが一番良いんだろう。
「というわけで、お昼寝ですね。それじゃあ、レイのことはもらっていきます」
「ごゆっくり~」
「お疲れ様っす」
あれ……?
なんか、寝室に連れて行かれそうになってる。
フィオナ様はともかく、テクニティスとイピレティスよ。
お前らは、本来の用件を知っているんだから、少しは止めようとしてくれよ……。