【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
さて、そろそろわかってくれただろ?
俺は厄介な侵入者であり、転生者だぞ。
ロペスと組んでいる魔王軍がいるとしたら、さぞかしここで討ち取っておきたい存在だろ。
俺もだ。
俺もできることならば、お前ら魔王軍を潰しておきたい。
女神がどうとか、この世界の主人公たちがどうとか、そんなのはどうでもいい。
邪魔なんだよ。お前らは。
お前らがいると、こちらも安心して生きていけない。
ふとした拍子に、こちらを殺せるような危険なやつらが、野放しになっているなんて、たまったもんじゃないだろ?
「だから、ロペスと組んでる魔王軍は、ここで潰しておきたいんだ」
「そうでしたか」
「ヨ、ヨハンさん! あいつ、もしかして――」
死んだか。
まあ、しょうがないよな。相手は四天王だ。
初めはピルカヤかと思ったが、一向に出てくる様子がなかった。
だから、リグマかプリミラあたりかと思い、適当に水辺を進んでみたが……そうか、プリミラのほうだったか。
そりゃあ、ロペスのやつも強気になれる。
後ろ盾が四天王だというのであれば、勇者以外じゃ太刀打ちできないだろうからな。
さて……俺が招いた勇者様は間に合うかな?
無理だろうな。さすがに、今この場に現れて、俺を救ってくれるなんて劇的な登場は期待していない。
周囲の獣人たちが死んでいく。
あの大槌に叩き潰されて、いとも容易く一人ずつ部下を失っていく。
まあ、時間稼ぎにもならねえだろうなとは思っていたさ。
「なんだ。名乗りはしないのか? ゲームのときみたいに」
「? 何のときみたいにですか?」
「ゲームだよ。お前らが敵キャラのゲームだ」
「……あなたの言葉、ところどころ聞き取れません。何かを企んでいるのでしょうか」
聞き取れない? ……ああ、そういうことか。
転生者なんて言葉をこの世界の住人が知っているから、てっきり向こうの世界の知識は何でも話せるのかと思っていた。
だが、この様子じゃいくらか規制がかかってやがるな。
何考えてる、あのクソ女神。……もしかして、この世界の生物に配慮でもしたか? 自分たちは、ゲームの世界の生き物だと知ることがないように。
「企んでいるっていうのは、あんたのほうだろ。四天王プリミラ」
「……知っていましたか」
「よ~く知っているさ。それで、あんたがロペスの後ろ盾ということで良いのか?」
「何の話でしょうか」
ちっ……。面倒なやつだな。
これがピルカヤなら、反応でわかったが、よりによってプリミラかよ。
かまをかけようにも、この無表情で人形みたいなガキじゃわかりやしねえ。
「まあ、どっちでも構わないけどな。どうせ四天王であることには変わらないんだ。ここで倒せば、今後はかなり楽になる」
さっき、よりによってプリミラと考えたが、訂正しよう。
プリミラで良かった。倒すだけなら、一番楽だからな。
「っと!」
「む」
ほんと、勘弁してほしいよな!
あの巨大な槌を軽々と猛スピードで振り回すのだから、動きのパターンを知っていなかったら、俺も周りの獣人どもみたいに潰されて終わってた。
「ギリギリ、最低限のレベルには到達したが! やっぱ! 余裕ねえなあ。おい!」
回避する。とにかく攻撃を避ける。
焦るな。思い出せ。何度このガキ相手に負けてきた。
パターンは全部覚えただろ。ノーダメクリアだって、できるようになっただろ。
それを実際に、ぶっつけ本番で、チャンスは一度きりで行うだけだ。
駄目だ。やっぱ、言葉にしたら無理難題だと思う。あのクソ女神。せめて、コンティニュー機能つけとけよ。馬鹿が!
「ちょこまかと……」
さすがに、このレベルで四天王は厳しすぎるな!
反撃の一つでもしたいところだが、よりによって相手はプリミラだ。
こちらの攻撃なんてまるで意に介することもなく、ゲームのように怯むことなく反撃されるのがオチだ。
反撃することで優位になるどころか、致命的な隙を晒すだけになるのはごめんだね。
「えい」
見た目は子供。声も子供。かけ声だって、まるでごっこ遊びをしている子供のようだ。
だというのに、自分の真横に振り落とされた鉄塊は、やすやすと命を奪ってしまうのだからたちが悪い。
気の抜ける声に、何考えてるかわからない無表情。ゲームのまんまの行動に、恐怖しつつも安堵する。
「い、良いのかよ? 俺なんかに手こずっていたら、オルナスのやつがやってくるぜ」
さすがに、コントローラーを握っての操作じゃないからな。
精神はゲームよりも疲弊する。それに、こちらの場合は肉体の疲労というものもある。
ゲームだったら、こんな言葉をかけたところで、無慈悲に俺の命を奪ってくるだけだろう。
しかし、ここは現実。プリミラのやつも、俺の言葉を聞いて思うところがあったらしく、動きを止めてくれた。
……よし、少しだけ休ませてもらおう。いくらなんでも、俺一人で四天王相手はきつすぎる。
「……勇者が? あなたが手引きしているということですか?」
「さあ、どうだろうな? 案外適当なことを言ってるだけかもしれないぞ?」
そうそう。考えてくれ。
そうしている間に、こちらも体力を回復させてもらうからさ。
「……仕方ありません。これをすると、少し熱中してしまって恥ずかしいのですが」
そう言いながらも、やはり表情は変えず感情なんて見せずに、四天王の上級悪魔は……。
周囲の水を操作して、襲いかかってきた。
「おい、嘘だろ!?」
やべえ。
もしかしたらとは、たしかに考えていた。
ここがゲームではなく現実である以上、その可能性だって当然考えていたとも。
だが、実際にやられると、そんな言葉をつい口にしてしまうほど、それは恐ろしく理不尽な行動に見えてしまう。
プリミラの第二形態とでもいえばいいのだろうか……。
水をまとって手足のように動かす行動パターン。
それは、ゲームではHPを一定以上まで削らない限り、見せることのない戦法だったはずだ。
「くそがっ!!」
だというのに、現実ではどうだ。
一定以上どころか、こちらは一切の攻撃もできておらず、HPなんて当然万全のはずだろうが。
それなのに、いきなり第二形態だなんて、リピアネムに拘束具を使ったときじゃあるまいし、勘弁してくれよ。
「……」
しかも、このチビときたら、先ほど以上に反応が悪くなっていて、まるで俺なんか眼中にないように殺そうとしてやがる。
幸い、まだ攻撃パターンが知っているものだから良いのだが、違うパターンでくるようになったらそのときは……。
ああ、まずったなあ。レベル、もう少し上げておけば良かった。
いや、泣き言を言っても始まらない。
しっかりしろ。目的を果たしてこんな窮地くぐり抜けてやろうじゃないか。
ロペスや従業員を俺の管理下に置く。
あのドラゴンは邪魔だから殺す。ロペスの後ろ盾の魔王軍も邪魔だから殺す。
そうだ。それで全てが終わりだ。
そうなったら、使える駒も増える。こんな危険を冒さずとも、今後は悠々自適なゲーム生活を送れるというもの。
「はっ……!」
ああ、やっぱりな。
そりゃあ、いつまでもこっちが知ってる攻撃方法ってわけにはいかないか。
あのソウルイーターやエビやカニは、ゲーム中は雑魚だから行動パターンが少なかった。
そのせいか、実際に戦うと早々にこちらの知らない攻撃を繰り出してきて面食らった。
だが、四天王はゲーム中の強敵であり、攻撃のパターンがあまりにも多い。
だからこそ、ゲームでは厳しい相手だったが、現実でもその範囲内での攻撃ばかりであり、まだ対処可能だった。
……だが、これは無理だ。
逃げ場がない。受けることもできない。
周囲を水に囲まれて、あとはこの激流に飲みこまれるだけ……。
「あ~あ……仕方ない。できれば、もうちょい後にしたかったんだがなあ」
賭けになってしまうが、死ぬくらいならやっておくとするか。