【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「レ、レイ様……魂……捕獲しました」
「そうか! ありがとう。助かったよプネヴマ」
「え、えへへ……」
これで、ようやくけりがついた……。
人の体を乗っ取るとか、とんでもない加護を渡すなよ。あの女神め。
「私が……ちゃんと管理……しますので……もう、勝手に憑依は……しません」
「それなら安心だな。……というか、その状態でもまだ死んでないって、ヨハンすごいな」
「体に入っていない……状態ですから……そのうち、消滅、します……けど」
しぶといやつだった。
そして、何よりもゲーム経験と学習能力の高さが恐ろしかった。
そんなやつが何度もやり直せるとか、たしかに一番最適な力を与えていたといえるかもしれないな。
「ふう。久しぶりに戦いましたね」
「フィオナ様。お疲れ様です」
プネヴマと話していたら、フィオナ様がみんなを引き連れて戻ってきた。
ロペスとピルカヤは戦闘していないからいいけれど、プリミラやリピアネムはすぐに治療しないとな。
「テラペイアは……」
「呼ばれたので来たぞ。プリミラは……万能薬を使用したので、毒はもう抜けているな。君はベッドで休むといい。リピアネムも大した怪我はないが、回復薬を使っておくとしよう」
すでにピルカヤが呼んでいてくれていたため、テラペイアがちょうどやってきた。
部屋に入るなりこちらの様子を観察して、テキパキと的確な指示を出してくれるのはさすがだ。
「私は、そのうち治ると思うのだがな……」
「君の場合はそうかもしれないが、まあ治せるうちに治しておけ」
「そうだな……。魔王様、レイ殿。次こそは、私一人で勇者を倒してみせます」
まあ、あれはしょうがないよ。
レベルが最大に近い勇者の体をもった、やり込み知識のあるゲームプレイヤーが相手だし。
しかも、俺がもっと広い戦場を作っておかなかったせいで、本領発揮すらできなかったのだから。
「では、医務室に向かうぞ。テラペイア」
「ああ、なんだったら私が運んでもいいぞ」
「いや、問題ない。こうして力が有り余っているほど……」
壊れたな。
リピアネムの剣が、音を立てて握り潰されてしまったな。
「わ、私の剣が!」
「……おい待てリピアネム。お前さん、以前より力が増しているんじゃないか?」
テラペイアの言葉に、リピアネムだけでなく俺も思い当たることがあった……。
そうだった。戦闘中の出来事だし、その後のトラブルのせいですっかり忘れてしまっていた。
「魂喰らいの腕輪!」
たしか……力を封じるだけじゃなくて、その間に封じた力の分だけ解放時にパワーアップするとかだったよな。
「リピアネム」
「な、なんだ? 私に近づいたら危ないぞ。どうやら、力の制御ができなくなっているようだ」
「ちょっと、ステータス確認してもいいか?」
「うむ。レイ殿ならいくらでも見てかまわんが……」
リピアネム 魔力:100 筋力:150 技術:140 頑強:100 敏捷:150
うわあ……。
この世界のステータスって、たぶん一旦は99がカンストだ。
だけど、例外として勇者や四天王の得意分野は上限が増えて、120とかになっていた。
フィオナ様は、なんかもうおかしいからいいとして、リピアネムのこのステータスはちょっとやばい。
「……全部のステータスが、上限突破してそう」
「そうか! 私もまだまだ強くなれるというわけだな!」
嬉しそうに尻尾をふるリピアネムだが、その尻尾は筋力150で振るわれている。
当たったら、吹き飛ばされて大怪我しそうだな……。
前回の筋力は120だから上昇値は30。だが、たかが30と侮るなかれ。
「ええい! 暴れるな! 周囲の者が吹き飛ぶぞ!」
「あ、そうだった……。むう……オルナスめ、厄介なことをしてくれる」
オルナスじゃなくてヨハンだけどな。
それにしても、こんなにステータスが増えているとなると、以前以上に破壊の化身になっていそうだなあ。
せっかくまともな生活を送れていたのに、これではかわいそうだ。
「フィオナ様。リピアネムがかわいそうですし、また魂喰らいの腕輪手に入りませんかね?」
「レイが自分からガシャの提案をしてくれるなんて嬉しいですが……。狙って引けると思いますか? 私ですよ?」
なんという説得力だ……。
なんかもう、フィオナ様からは、二度と魂喰らいの腕輪が手に入らない気がしてきた。
「ロペス~。なんか、良いアイディアない?」
「ええ!? 俺!?」
いや、だって今回も最終的にはヨハンの企みを看破してくれたし。
ロペスって、あのヨハンよりも頭が良いってことだろ?
「え~と……俺、宝箱にそこまで詳しくねえんだけどなあ。リピアネムの姐御がつけていた腕輪って、やっぱり希少なのかい?」
「魂喰らいの腕輪自体は、そこまで珍しいものではなかったはずだ。ただ、あれほど使いこなせる者など、リピアネムくらいだろうがな」
テラペイアがロペスの質問に答えてくれた。そして、そのままプリミラを連れて医務室まで向かったようだ。
そうか。あれって、そこまでのレアアイテムじゃなかったのか。
「そういうことなら……。いっそ、カジノの客でも募って、回数を稼いで無理やり狙ってみるってのはどうだ?」
「……たしかに、使いにくい装備みたいだから、当たっても買い取らせてくれそうだな」
ぶっちゃけ、呪いの装備だと思ってたくらいだし、欲しがる人は少ないだろう。
「……つまり、ガシャ祭りということですね!」
「お、おう。どうだいビッグボス? たまには、他人の運試しを見る側に回るのも、悪くないんじゃないか?」
「いいえ! そういうことであれば、私も参戦すべきでしょう!」
……まあ、フィオナ様だからな。
ガシャ祭りとまで聞いて、この魔族が見ているだけなんてありえない。
「でも、さすがにフィオナ様がカジノの客に混ざるのは、どうかと思いますよ」
「むむむ……。さすがに、私ほどのベテランが混ざってしまうと、素人相手には大人げないですか」
「そういうことじゃないです」
どこまで本気なんだ。どこまでも本気っぽいな。
あんた魔王だろうが。
「おじさん良いこと思いついたぞ」
「新しい罠の話?」
「レイくんの良いことが物騒なのは、もう諦めるとして……。カジノだけでなく、うちはうちで希望者全員で、宝箱を開けてみりゃあ良いんじゃないですかねえ?」
なるほど……。外でも内でもとにかく宝箱を回してみるわけか。
大勢と試行回数を増やせば、誰かがリピアネムの力を封印する装備を引き当てそうだな。
「リグマの案を採用します。それでは、第一回ガシャ祭りの準備を進めましょう!」
第一回って言った。
この魔族、ちゃっかりと後々も開催して、恒例行事にしようと企んでいらっしゃる。
「うちで回す分には、普段見ているだけのみんなが挑めるという特別感があるから良いと思います。だけど、祭りというからにはカジノのほうも、何か普段と違う特別感が必要じゃありませんか?」
「そうですねえ……。なんかレイががんばったら、期間限定で装備が出やすくなったりしませんか?」
「無茶言わないでください」
それができるのなら、フィオナ様に山ほど蘇生薬を引かせている。
だが、残念ながら俺は運営サイドではないのだ。
宝箱だけはなあ……。もしかしたら他のメニューのように、上記メニューがあるかもしれないなんて思えない。
だって、あれだけ何個も何個も作っているのに、一度たりともそんな兆候は見られなかったからな。
だから、この運試しに俺が手を加えるのは不可能と思って良いだろう。
「……いっそのこと、盛り上げるために裏から魔力を追加しますか?」
追加……とも違うか。どちらかというと乗っ取りだ。
宝箱は、魔力供給を後に行うことで、その結果が上書きされるからな。
複数人で同時に注ぐなんてできない仕様だ。
なので、カジノの挑戦者が魔力を注ぎ終えたタイミングで、俺がそれよりも多めにダンジョン魔力を注ぐことで、本人が注いだ魔力量以上のアタリを引かせてあげるのはどうだろう?
「今だけ、低確率で宝箱がランクアップとでも謳っておけば、それなりに集客効果ありませんかね?」
「むしろ、私にそれをやってほしいくらいですが……」
「その場合、1万からじゃないですか……。さすがに、そんな大量の魔力は使いませんよ」
「それでも、カジノの利用客にとっては、高い効果が見込めるわけですね……。では、それでいきましょう!」
となると、魔力をさらに集めたいな。
マギレマさんの部下のみんなも、そろそろ魔王軍に慣れてきたことだし、ここらで店でも増やすか……?