【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
正直な感想を述べよう。
身の程をわきまえない不敬な魔族だと思っていた。
意識を取り戻して目の前にいたのは、魔王様や四天王の方々、
そんな方々と同じように、いや魔王様と同じような立場をふるまうかのようなあの方を見たとき、身の程知らずの魔族がいると思っていた。
魔王様の御前であるため、誰もそれを指摘できずにいたが、今思えばできなくてよかった。
マギレマ様から私たちを蘇生したのがあのお方だと聞き、私たちは少なからず動揺した。
きっと皆同じように考えていたのだろう。あの無礼な魔族は何者なのかと。
だが、その考えこそがあまりにも礼を欠いた考えだったのだ。
「マギレマさん」
「ん? どしたの? レイくん」
思わず跪きそうになる。が、なんとかその途中でそれを止める。
……慣れないな。魔王様やレイ様を前に、跪くこともなくこうして直立しているということに。
魔王軍は変わった。以前と比べて張り詰めた空気ではない。
だが、たるんでいるというわけでもなく、ついこの間は侵入した勇者を二人まとめて撃破できている。
ならば、今の空気こそがより良いものであり、私たちもそれに慣れなければならないのだろう。
「マギレマさんの部下のみんなって、まだマギレマさんのもとで教育が必要?」
「いやあ? この子たちはみんな優秀だからね」
そう言っていただけるのが何よりの喜びだ。
これからも、魔王軍のために腕を振るうこととしよう。
「じゃあ、マギレマさんの部下たちも店を持つってできそう?」
「う~ん……。行けると思うよ~。ただ、あたしの手伝いは何人か残しておきたいかな」
「ああ、それはそうするつもり。というか、そうしないとどうせマギレマさんが働きすぎることになるし」
「レイくんに言われたくないんですけど~」
「俺は最近休んでるから」
「善処しま~す」
「しない魔族の言い方なんだよなあ……」
……ん?
いつも通りの気軽な会話ではあったが、何かおかしな言葉がなかったか?
マギレマ様の部下に店を……?
「じゃあ、ピルカヤ。レストランに適した場所を探してもらえるか?」
「おっけ~。アルマセグシアだと客の取り合いになっちゃうし、サンセライオ……はあの王様に怪しまれるから、それ以外だね」
……とても気軽な会話だ。
気軽な会話で、とんとん拍子に話が進んでいく。
なんだこれ。堅苦しい雰囲気でない分余計に怖い。
「ドルーレかトルベリオなんか良いんじゃないかな?」
「どっちも知らない国の名前だ」
「カールの国とロペスの国」
「ああ、ドワーフとハーフリングの国か。たしかに、良さそうだな」
日常会話のように、何かとてつもなく大きなことをしようとしているのでは……。
「じゃあ、場所を教えてくれ。そっちに店を作るから。リピアネム~」
「なんだ?」
「たぶん、遠くまで移動することになるから、俺のこと運んでくれる?」
「うむ、承知した! 腕輪が壊れて暇を持て余していたからな。最速で運ぶとしよう!」
「あ、ちょっと加減してくれないと――うわっ!!」
行ってしまった……。
ピルカヤ様とリピアネム様を、手足のように使われている……。
「大丈夫かねえ。加減が効かないリピアネムに運ばせるとか、わりとすげえ胆力だな。レイくん」
「だ、大丈夫じゃないかなあ? ネムちゃんも、前よりは加減ができるようになったはずだし」
「でも、調理場には立たせないようにしたろ」
「まな板は斬らなくなったけど、ちょっと危なっかしいからね~」
「危なっかしいやつが、レイくんのこと超特急で運んでいきましたけど?」
「あはは~……レイくんも魔王様に背負われたときに、高速で運ばれることに慣れたんじゃない?」
なんとなく、その場に立ったままリグマ様とマギレマ様の話を聞いてしまう。
すると、マギレマ様から、とんでもない言葉が出てきた。
……魔王様に背負われて運ばれた!?
……もしかすると、自分たちが蘇生する前にとんでもない激戦があったのかもしれない。
そして、負傷したレイ様を、魔王様が直々に運んで避難したのだろう……。
おのれ人類め。……っと、この考えはいけないのだったな。
現在の魔王軍には、人間やダークエルフや獣人もいる。人類だからと、全てを敵視してはいけないのだった。
「たぶん、吐くぞ」
「そのときは、この子たちでなぐさめてあげるから平気」
「たぶん、魔王様に睨まれるぞ」
「……魔王様になぐさめてもらおう!」
あれ? そういえば、魔王様への伺いとか必要ないのだろうか……?
いいのか? いいのかもしれないな。実質魔王軍を動かしているのはレイ様とお聞きしている。
魔王様は、我々のような死んだ部下を蘇生させるのに注力していて、自由に動けないということだったな。
ならば……レイ様が、実質の魔王軍のトップということではないか。
「戻ったぞ!」
速い……。聞いた限りでは、ドルーレとトルベリオの地下まで行ったはずなのだが……さすがはリピアネム様だ。
そして、レイ様は……なんか、ぐったりしているような気がするが、あれは大丈夫なのだろうか。
いや、私ごときが心配するのは不遜というものか。
「とりあえず、両方の国にレストランを作ったから、マギレマさんがそこの責任者を決めてくれる?」
「りょうか~い。……じゃあ、ファギトはドルーレのほうの料理長をよろしくね~」
そうか、ファギトがドルーレの……私!?
「あ、あの……マギレマ様。よろしいのでしょうか?」
「何が?」
「ええと……。魔王様の決定もなく、私が料理長などと。そもそも、その私の実力で」
「へ~きへ~き。ファギトの実力なら十分通じるから。プシシモだって、人工海で立派にやってるでしょ? それと、魔王様にはレイくんが後から言っておけば大丈夫だから」
や、やはり……レイ様が、実質的な魔王軍の決定権を握っているということだろうか?
それにしても、これまでマギレマ様のもとで働き続けていた私が、自分の店を持つ……?
大丈夫なのだろうか? プシシモと同じということは、あくまでも簡易的な小さな店ということだろうし、そこまで客も来ないということか?
「そういえば、どんな店なんだ?」
「ちょっと待って。今視界を共有するから」
リグマ様の疑問に、ピルカヤ様が答えると、そのお力で私にも新たなレストランの外観と内装が見えてきた。
……大きい! 全然、簡易的でもなければ、客入りもすごいことになってしまいそう!
というか、こんな立派なレストランをあの短時間で作ったレイ様って、なんなのだろうか……。
「それじゃあ、ファギト……さん?」
「ファギトでお願いします!!」
なんで、私に敬称つけようとしてんだ! この魔族!
「あ、うん……。大変かもしれないけど料理長よろしく。ダークエルフやドワーフたちから、料理が得意な従業員も選んでおくから」
その頼みに……誰が断れるだろうか。
「承知いたしました。どうかお任せください」
「跪かなくていいんだけどなあ……」
とんでもない方だと思う。
世間話みたいなことから、あれよあれよといううちに新たなレストランまで作成されて、そこの料理長としての働きまで期待されてしまうとは。
だが……期待していただいていることはたしかだ。
不安はあるが、この方の信頼に応えられるように、人類ともうまくやってみるとしよう……。
「不安があれば、私が手伝ってもいいぞ」
「たしかに、この子ならお店を任せられるとは言ったけど、ネムちゃんの対応しながらは無理だからやめてあげて」
「むう……。まな板は斬らんぞ?」
「でも、技術がちょっと大雑把になっちゃってるから、また腕輪をつけるまで修行しながらがんばろうね」
「任せるがいい! 私も、以前のように破壊のみの竜ではないことを見せてやろう!」
……え?
リピアネム様。マギレマ様の下で働いているの?
……本当に、魔王軍って変わったのだな。