【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「というわけで、捕獲強化週間にしようと思います」
「な、何が起こってんだよぉ! せめて、経緯を一から話せぇ!」
アナンタが真っ先に食って掛かってきた。
まあ待ってくれ。結論から先に話したのは、すまないと思っている。
なので、ちゃんとこれから理由も話すつもりだったんだ。
「ドルーレとトラベリオにもレストランを作っただろ?」
「作ったなぁ」
「さすがに、手慣れた従業員が必要ということで、マギレマさんの下で働いていた従業員や、宿やカジノで働いていた従業員を何人も向かわせた」
「あぁ。そこまではわかる」
「だから、配置転換元の従業員を追加で捕獲しておこうと思って」
「理由は納得できたが、どうせやりすぎるんだろうなぁ」
「そこは、みんなが俺を止めてくれ」
「お前、ついに自力で止まることを放棄してんじゃねえよぉ……」
さて、アナンタも納得してくれたことで、各ダンジョンに良い感じに捕獲檻を追加していくとしよう。
ゴブリンダンジョン。獣人ダンジョン。欲望のダンジョン。レストラン……は駄目だったな。
「とりあえず、海フロアの細い道全てに檻を仕掛けるのはどうだろう?」
「回避不能ですね~。さっすが、レイ様。その後、エビとカニに襲わせましょう」
「なるほど……」
「目的忘れるの早すぎんだろぉ!! グリフィンのほうが記憶力高そうだぞ!」
……鳥頭というやつか。
でもほら、うちの子たちはみんな賢いし。
「それと、さすがに道全てに檻を配置するのもやめたまえ。たしかに捕獲が目的ではあるが、回避不能の罠を見られてしまえば、今後そこを目指す者が減る」
「ですが、狭い道に仕掛けるのは良い案だと思います」
「じゃあ、数を減らしつつ採用と」
案を出す。アナンタが指摘する。ダスカロスが詳細な指摘をする。プリミラが褒めてくれる。
なんか、隙のない布陣が出来上がりつつあるな。
これなら、俺も思う存分様々な案を出せるというもの。
「ただ、プリミラは大事な仕事があるから、あまり俺にかまわなくても大丈夫だぞ?」
「いえ。レイ様がダンジョン改装を提案するときは、リピアネム様に代わっていただいているので問題ありません」
「なら安心だな」
プリミラやリピアネムに課された重要な役割。それは、ダンジョン入り口の監視だ。
今までならば、ピルカヤに全てを頼んでいた。
しかし、ヨハンがイドに暗影の指輪を渡したことでわかったが、分体を大量に作成しながら監視しているピルカヤでは、侵入者を見逃す可能性がある。
暗影の指輪を使用したときという、とても限定的な条件ではあるが、念には念を入れておきたい。
そのため、入り口の監視のみ、ピルカヤから視界を共有された四天王が担うようになっている。
さすがに、あれ以降は勇者なんて侵入していないが、油断すると大変な目に遭うからな。
「獣人ダンジョンは、無難に迷路の捕獲檻を増やすか」
「バジリスクたちに配置を教えておくのはどうだぁ? あいつらなら、うまく追い込みそうだ」
「毒の届かない場所に配置するのもいいかもしれない」
なるほど……。あとは、ばれないようになるべく死角で発動させたいな。
それにしても、この三人が一緒だとスムーズに進んでいくな。
時折イピレティスが興味深い提案をして俺の気が逸れてしまうも、すぐに本題に戻してくれるし、とてもありがたい。
「うむ。こんなところだろうな」
「じゃあ、あとは話していた通りに罠をしかけに」
「檻、な!」
「わかってるってば……」
なんとも信用がないことだ。
「イピレティスついていくなら、俺もついていかねえとなぁ……」
「僕はほら。レイ様の側近ですから」
「主人をそそのかすタイプの従者なんだよ。お前はなぁ」
まあ、そんな従者も個性的でいいじゃないか。
俺はイピレティスの殺意高めの発想も嫌いではないぞ。
「そこで、従者のことを誇るんじゃねえよぉ……」
「つまり、相思相愛! ……いえ、この発言はさすがに不適切ですね。やめときま~す」
何かを感じ取ったのか、イピレティスは耳をぴくぴく動かしながら、両手を上げて降参のポーズをとった。
……ウサギってだけあって、索敵能力とか高そうだからな。だからこそ、彼女にしかわからない何かがあったのかもしれない。
「ほら、いくぞ駄目主従」
「は~い」
なんかもう、アナンタが引率の先生みたいだ。
さしずめ、俺とイピレティスは、そんな先生の手を焼く問題児ってところか。
ならば、ここは合格点をとってやろうじゃないか。
◇
「それで、従業員が一気に増えたってわけか。まあ、おじさんも最近手が空いてたし、新人教育は任せておきな~」
「リグマが育てた従業員、すっかり一人前だったからな」
「おかげで、おじさんもすっごい楽」
「じゃあ、代われよぉ……」
「……そっちはほら、適材適所だし。おじさん最終的にレイくんの案採用しちゃいそうだから」
「こいつ……檻の中に毒仕掛けようとしたかんなぁ……」
違うんだ。イピレティスが檻の中で槍の罠なんていうから、俺はせめて毒くらいならって思って……。
だいたい、毒だって最後は回復できるんだから、いいじゃないか。
むしろ、毒状態で交渉したほうが、従業員として従順になると思うんだけど……。
「脅して働かせたって、裏切り警戒することになって、めんどくせえからなぁ?」
まあ、不穏分子が内部にいるほうが厄介か……。
「それじゃあ、リグマに新人教育お願いしてもいいか?」
「お~う。任せときな」
「ただ、カジノとか食堂のほうは、それぞれマギレマさんとロペスに……」
……言っててちょっと不安になってきた。
あの二人、最近は負担を減らすようにしてきたけど、特にマギレマさんはまだまだ忙しいからな。
従来の業務に加えて、新人教育まで追加してまうのは問題だろう。
そもそも、ロペスはともかく、マギレマさんは魔族だからな。新人がいきなり言うことを聞かないか。
「レイ様。私が請け負いましょうか?」
「クララ」
ダークエルフの女王ということは指導者ではあるな。
なんならうちにきたときに、部下たちに様々な指示を出したり教育してくれた。
能力としてはまったく問題ない。
ロペスの補佐みたいになっているが、ロペスほど忙しくもない。
かつての徹夜上等な働き方がうそのように、彼女は規則正しく無茶をしない優等生だ。
「それじゃあ、お願いしても良いか?」
「はい、お任せください。必ずやレイ様と魔王様に、ご満足いただく結果を出してみせます」
あとは、もう少し俺相手に気軽に接してくれていいんだけどなあ。
ロペスとのやり取りを聞く限りでは、どちらかというとロペスと軽口を叩き合えるような性格っぽいし。
この前二人揃って休暇を取らせたときも、けっこう仲良く満喫していたみたいだからな。
◇
「という感じになりました。万事順調です」
「ぐえ~……」
「なんですか。その敗北したときみたいな声は」
「この前、魔王らしく振舞って正体を明かしたばかりなのに! もう、新たな従業員たちが……」
「ああ、そういうことですか。たしかに、いつかは今回の従業員たちにも正体を明かすことになる可能性はありますね」
「めんどくさい~」
だらけてるな。とってもフィオナ様らしい。
だが、さすがにそう何人も相手に正体を明かすことにはならないだろう。
前回だって、タイラーたちみたいな優秀かつ風間たちお墨付きの従業員か、ロペスの仲間でありお墨付きだった従業員だけが対象だ。
さすがに、そう簡単にフィオナ様の正体を明かすことにはならない。
少なくとも、今後はここで一生を過ごすと割り切れる者たちでないとな。
「想像しているだけで疲れました。魔王はレイの膝枕を所望します」
「硬いだけですけど……」
「所望します!」
「はぁい……」
何が良いんだろう。こんなの。
逆だったら、やわらかそうだし気持ちよさそうだし……。
やめよう。
「……私がしてあげましょうか?」
「何も言ってないじゃないですか!」
「レイがやらしい目で、私のふとももを見てましたからね~」
「そんな目で見てません!」
にやにやと笑うフィオナ様に、俺は今日も敗北するのだった……。
さすがは魔王。人の欲望に付け込んでくるじゃないか……。
そして想像以上にやわらかかった。さすがは魔王だ……。