【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第293話 ガシャ祭り

「ガシャ祭り。期間限定宝箱ギャンブル……?」

 

 なんだそりゃ。

 通いなれたカジノに、見慣れない看板。そこには、やはり見慣れない言葉が書いてあった。

 宝箱ギャンブルはわかる。私も何度も利用しているし、負けたり勝ったりを楽しませてもらっている。

 期間限定……。

 

「え!? もしかして、終わっちゃうの!?」

 

 いつでもチャレンジできるものだから、今後も楽しめると思っていたのに……。

 なんということなの。まさか、今しか遊べないギャンブルだったなんて。

 

「いえ、すみません。そういう意味ではなくてですね」

 

 私の驚きの声を聞いて駆け寄ってきた、顔見知りのダークエルフの店員が、慌てたように説明をしてくれた。

 ……なるほど。まずは良かった。今後も宝箱は楽しめるのね。

 それにしても、期間限定宝箱……。なんとも魅力的な言葉じゃない。

 

「いつから? ……それも書いてあったわね。ごめんなさい」

 

「いえ、そこに記載されているとおり、近々開催されますので、よろしければご参加ください」

 

「ええ。楽しみにしているわ」

 

 ……気になる。

 今日のカジノは、資金の上限を低めにしておきましょう。

 そうして、カードでも、スロットでも、ルーレットでも、負けたけれど大丈夫。

 なぜならば、私は宝箱は我慢したから。

 

 今日駄目だった分の不運は、期間限定宝箱で一気に取り戻せるはず。

 そうに違いない。そうあってほしい。そうあってください。

 

    ◇

 

 欲望のダンジョンの宿に泊まる客は三種類。

 一つはダンジョンに挑む者。一つは人工的に作った海で遊ぶ者。そして最後の一つはカジノを目当てに訪れた者。

 だけど、今回は宿の利用者のほとんどが、私と同じくカジノ目当ての宿泊客だ。

 

 だからでしょうね。目が覚めると、宿の中はいつもよりも騒がしかった。

 みんな、今日から開始される期間限定ガシャ祭りを楽しみにしている。

 私もそのための準備は終わっている。資金をいつもより多めに確保しておいたし、宝箱以外のギャンブルで不運は体験しておいた。

 ……いける! 私は勝利を確信しながら、食事をすませてカジノへと向かった。

 

「にぎわってるわね……」

 

 まだ午前中だけど、カジノにはすでに夜くらいの客が入っていた。

 普段なら、この時間はそこまでの客はいないけれど、やっぱりみんなガシャ祭りとやらに興味があるみたい。

 とりあえず、ダークエルフの従業員から整理券をもらってひと段落する。

 

 時計を見ると、開始時間はまだ少し先みたいね……。

 まだかしら。時間を潰すために別の遊びに興じてもいいけれど、集中できないし何よりも運を消費したくない。

 集まっている他の客も同じようで、どこかそわそわしつつも心ここにあらずといった感じだ。

 

 そんな周囲の客がざわめきだす。

 見知ったハーフリングとダークエルフが、この場に歩いてきたからだ。

 このカジノを経営しているロペスというハーフリング、それにそんなロペスに雇われているダークエルフたちの女王のクララ。

 私たちカジノ利用者全員が、名前を知っているくらいには有名な二人。

 

「さて、待たせたな。ここに来てくれているけどカジノを利用していないってことは、あんたら全員ガシャ祭りが目当てってことでいいんだよな」

 

 人間が、獣人が、ハーフリングが、海人族やドワーフたちが、口々にその言葉を肯定する。

 私もついそこそこに大きな声で反応してしまった。

 まいったわね……。思った以上の熱狂だし、自分もそんな熱にあてられているみたい。

 

「ご愛顧いただいているようで何よりだ。じゃあ、開始前に説明させてもらうぜ」

 

 あそこで人一倍盛り上がっているのって、サンセライオの王様では……?

 いえ、やめておきましょう。ここで他人を詮索するのはマナー違反ね。

 

「もう気付いていると思うが、宝箱の周囲には魔法で映像が投影されている。これが今回のピックアップアイテムだ」

 

 ピックアップ……?

 今だけ限定で買い取り価格が上がるとかかしら?

 

「協力者のおかげでな。期間限定ではあるが、俺たちは、これらのアイテムが出現しやすいような状況を作り出すことに成功した」

 

 説明が始まってから静かに話を聞いていた周囲もどよめきだす。

 あと、王様うるさいわね……。正体隠す気ないでしょあなた。

 ロペスさん勧誘してんじゃないわよ。

 

「それだけではなく、運が良ければ、込めた魔力以上に宝箱の中身を向上させられるようにもなっている」

 

 もしかして、魔力注入の効率でも上げたってこと?

 相変わらず、しれっととんでもないことするわね……。

 普通なら、そんな検証することはできない。

 そもそも、宝箱をこれだけ用意できるのがおかしいのよ。

 

 ……やっぱり転生者なのかしら?

 そして協力者も転生者だからこそ、私たちでは到底なしえないことを実現できているのでしょうね。

 薄々気付いているけれど、周囲には言わないし、下手したら周囲もそう考えているでしょうね。

 だって、ロペスさんが転生者と知られたら、面倒ごとに巻き込まれてカジノがなくなるかもしれないし……。

 だから、そこの王様。堂々と勧誘するのやめなさいよ。

 

「最後に、ここまで楽しみにしてもらっているのだから、俺たちとしても満足はしてもらいたい。だから、扱いづらいアイテムや装備を引いてしまったその時は、これまた期間限定で高額で買い取らせてもらおう」

 

 それは、ありがたいわね……。

 入手しづらいけれど、それ以上に扱いにくいなんてアイテムはいくらでもあるもの。

 そういうものを引き当ててしまったときは、無駄に運だけを消費してなんともいえない気分になってしまう。

 だけど、高額で買い取ってもらえるのなら、ちゃんと勝ったという気持ちになれそうね。

 

「それじゃあ、楽しんでいってくれ」

 

 始まった!

 列を乱す者も割り込む者もいない。

 みんながみんな、お行儀よく整理券に従って並んでいる。

 当たり前ね。そんなことで騒ぎを起こして、運を遠ざける真似したくないもの。

 

「ほう、さっそくとは。お客さん幸先が良いようだねえ」

 

「ま、まじか!」

 

 なるほど……。

 普段なら、時間いっぱい魔力を込めても見た目が変化するのは稀なのに。

 今は挑戦者の男が、わずかに魔力を込めただけで宝箱の外見が変化している。

 これが、さっき説明にあった中身が向上するという現象……。

 

「おめでとう。黒翼のブーツとは、なかなか良いものを引いたじゃないか」

 

「お、おう! ありがとな!」

 

 良いなあ……。身軽になれる装備じゃない。

 斥候みたいな役割は当然として、装備の重量も減らせるから重装備の者や、魔法使いたちも愛用する者はいるのよね。

 だからこそ、高いしあまり手に入らないのだけど。

 

「お、こっちはさっそくピックアップのアイテムだな」

 

「やった! これでもう今日は勝ちね!」

 

 あっちはあっちで、ピックアップ一覧にあるアイテムを引いている。

 ……これは、いつも以上に宝箱で勝てる可能性が高いみたいね。

 

「それでは、次の方どうぞ」

 

「ええ」

 

 私の番だ!

 ……お願い! 昨日は宝箱を引かないよう我慢したし、他のギャンブルで負けたから、その分ここで勝たせて!

 そんな祈りを込めながら、宝箱に魔力を注入していく。

 普段なら、相当魔力を注がないと変化しないけれど……。どうかしら。

 

 変わった!

 それも、一気に何段階か変化した!

 このまま魔力を込め続ける? いえ、欲をかいたらいけないって話だった。

 なら、このタイミングが最良のはず!

 

 急いで宝箱を開く。

 普段よりも豪華な外見なので、少しばかり緊張してしまうけれど、それ以上に期待を込めてしまう。

 そうして中から取り出したのは、小さなランタン……。

 

「魔力の灯……」

 

「おや、おめでとう。見る限り、君は魔法使いのようだし、きっと役に立つだろうね」

 

「え、ええ! ありがとう。大切に使うわ」

 

 魔力の灯……。クララさんが言うように、私みたいな魔法使いと相性が良いアイテム。

 魔法の威力を純粋に底上げしてくれるため、魔法使いなら誰でも欲しがるアイテムじゃない。

 それだけに、手に入れるのは大変だけど、まさかこんな形で手に入るなんてね……。

 

 満足した。とても満足した。

 だから、あとは気分よく他のギャンブルをしても大丈夫ね。

 

 ……まあ、負けたけど。

 負けたけど、最初に勝ったから実質負けじゃないわね。これは。

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