【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「わりと大変かも」
『い、意外とお客さん多いですね』
ピルカヤを通じて
俺以上に彼女はもっと大変だよなあ。
ピックアップアイテムを実現するためには、奥居の協力が必要不可欠だったからな。
「魔王ボックスもすっきりしました」
「同じアイテムが意外と溜まっていたんですね」
そのおかげで、ピックアップアイテムとして売りにできたけどな。
もはやフィオナ様自身も、どれだけハズレアイテムを重複させたか覚えてはいなかったようだ。
そんなハズレアイテムをフィオナ様が取り出し、プリミラとダスカロスにチェックしてもらう。
それらをピックアップアイテムとして宣伝し、奥居が適当なタイミングで透過して宝箱の中身を入れ替える。
そうすることで、次々と不用品が処分でき、カジノの利用客も喜ぶべき結果となる。
「オクイがこっそりと、私の宝箱の中身を蘇生薬に変えてくれてもいいんですけどね~」
『も、申し訳ございません。私では、蘇生薬を手に入れることができず……』
「気にしなくていいぞ。いつもの無理難題だ」
……俺がこっそりと蘇生薬を引いて、フィオナ様がガシャを回すタイミングで入れ替えてもらうか?
いや、騙すみたいで嫌だな。本人も冗談で言っているだけで、本当にイカサマして宝箱から蘇生薬を出したいわけではないだろう。
もっとも、真面目な奥居には、冗談が通じているか微妙なところだけど。
「あ、この利用客常連だな。ダンジョン魔力を注いであげよう」
ロペスには、運が良かったら宝箱が変化すると説明してもらっているが、裏側なんてこんなもんだ。
依怙贔屓上等で、客は選びまくっている。
ロペスも言っていたとおり、日頃からのご愛顧に感謝してのイベントだし、それでいいはずだよな。
好みの武器を手に喜んでいる獣人の男性を見ながら、俺もその様子に満足した。
「それにしても、さすがにこっちの狙いはそう簡単には出ないよなあ」
「魂喰らいの腕輪は、あれでなかなか希少ですからねえ。やはり注ぐ魔力量が人並みでは、なかなか低確率なのでしょう」
まあ、およそ一万を注いで引いた品だからな。
試しに回転数を増やしても良いが、さすがに表のガシャ祭りでは引ける人はいないかもしれない。
本命は、表が終わった後に開催予定の、地底魔界のメンバーで行う裏のガシャ祭りだな。
「あれ、なんか珍しい服装の集団が……」
「むむ……あれは、東の国の服装ですね」
「東の国、ですか。ここから東ってことですか?」
「いえいえ。サンセライオが南の国と呼ばれているのと同じで、東の国と呼ばれているのです。テイランは」
テイラン……。初めて聞く国の名前だな。
そして、そこに住む人々は、おそらく独自の文化が形成されているのだろう。
なんせあの服装だ。なんとなく中華という単語を彷彿させるというか、神秘的な印象というか、こちらの世界では物珍しい。
「ちなみに、テイランにも勇者はいるぞ」
「え、もしかしてこの集団の中に?」
「いやいや、さすがにそれはないみたいだ。テンユウのやつは来ていない」
リグマが口にした名前も初耳だな。テンユウ……。それが勇者の名前か。
あの集団と同じ種族ということは、人間の勇者ってことだな。
てっきり全員が別の種族かと思っていたが、どうやらそういうわけでもないらしい。
「テンユウってどんな勇者なんですか?」
「う~ん……。なんと言いますか。変わっている勇者ですね」
「変わっている」
「ええ。やはり積み重ねた知識や技術が独特なのでしょうね。ほら、あの服装だってそうですし」
なるほど。つまり、この世界では馴染みがない技術を持っていると。
「戦い方や移動法や魔法、色々なものがテイラン独自ですので、わりと戦いにくかったですね」
「フィオナ様が苦戦するほどですか……。それは、強敵ですね」
「いえ、苦戦はしていませんけど。知らない技術でしたので、ついつい興味がわいてしまいまして」
……もしかして、戦闘中に楽しんでいたんだろうか。
ちょっと想像できてしまった。鍛え上げた様々な技術で魔王を倒そうとする勇者。
それに対して、まるで手品を楽しむかのように、次の技を見せろと催促する魔王。
「……魔王ですねえ」
「ん? 魔王ですよ?」
ですよね。
まあ、苦戦しないというのなら、少しだけ安心した。
それにしても、アジア圏のような文化の国か……。
そんな者たちが来るほどに、うちのカジノも有名になったってことだな。
『これは……すごいですね。紅蓮の双剣がこれだけの魔力で』
ピルカヤに通用しなさそうな双剣を引き当てた女性は、喜ぶというよりは驚いていた。
その服装の色合いと良く似合う赤い双剣。
俺たちが手を加えていないので、自分で引き当てたわけだが……運が良いのか、魔力が高いのか、あるいは使い方が上手いのか。
なんとなく、東方の神秘みたいなものを期待してしまう。
『気に入ったのなら、今後もごひいきにしてもらえると助かるぜ。お姉さん方』
『ええ、興味深いです。あなたは……どうやら、普通のハーフリングではないようなので』
『運と勘と伝手にだけは恵まれていてねえ。まあ、あんたたちもそんな人脈の一つになってくれるなら、色々と助かるさ』
ロペスと二三言葉を交わし、女性たちは去っていった。
そして、その次に現れたのは、どうやら相当に待ちわびていた様子の王様だ。
『ついに、俺が新たな相棒と出会うときだ! 祝福の準備を頼むぞ。店主!』
『おや? 最初に引き当てた剣とはお別れで?』
『馬鹿を言うな。俺の愛剣として、大層活躍しているとも。なので、今回は防具や装飾品が良い。頼むぞ。店主!』
『俺には祈るくらいしかできねえんだがなあ……』
『良い! その祈りが力となる!』
相変わらず自信満々でやかましい王様だな。
しかも、どこかで聞いたような言葉まで……。
「フィオナ様と似たようなこと言っていますね」
「ええ、やはりあなどれませんね。リズワン。わずかな時しか生きられない人間の身でありながら、私と同じ答えにもうたどり着きましたか」
なんかそれらしいこと言っていますけど、あんたも宝箱ガシャを初めてからそんなに経っていないでしょうが。
どこに感心しているんだ。まったく。
「ですが。私の祈りのほうが上です。なんせ、レイがついていますからね」
……急に後ろから抱き着かれるのも、いつものこと。
そして、悪い気がしないというか、わりと嬉しいのもいつものことだ。
まだまだ、俺はこの方に必要としてもらっているようだし、魔王軍での生活も安泰だな。
「ぐえぇ……。永遠に……見て、いられる」
そして、口から魂が出る仲間の姿もいつものことだ。
なお、リズワンの新たな出会いは残念ながら訪れなかった。
……そろそろ、リズワンにもアタリを引かせてやるべきなのか?
◇
「……宝箱に魔力を注ぐという試みは、私たちも仮説を立てていましたが、こんな形で立証できるとは」
「ええ。それだけ多くの宝箱を保有している、あのロペスというハーフリング。その伝手とやらは、どうやらたしかなもののようです」
「ですが、魔力の注ぎ方は関係ありませんでしたね。あくまでも、注いだ魔力量のみが影響しているように思えました」
「楽しそうね」
「テンユウ様。はい、非常に興味深い催し物でした」
「そう。あなたたちが楽しめたのなら何よりよ。アタシも行けばよかったかしら?」
「リズワン王がいました。テンユウ様と鉢合わせになると、またスカウトされていたかもしれません」
「あの王様も、相変わらずねえ。サンセライオもいい国だけど、アタシはテイランが好きだからと言っているんだけどね」
「でしたら、私たちが引き続き宝箱の検証に通うのはいかがでしょうか?」
「無理する必要はないわよ? そう近い場所でもないのだから」
「いえ! 宝箱の検証ができれば、今後発見した際により品質の良いアイテムを手に入れられるかもしれません!」
「そのとおりです! 私たちであれば、リズワン王の引き抜きも気にせずに、宝箱を楽しめます!」
「え、楽しめる……?」
「それに、リズワン王よりも運がいいと思いますので、きっと今後も良いものを引けると思います!」
「……あなたたち、大丈夫よね? 破滅しないでよ?」