【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

294 / 294
第294話 東の国の狂った使者

「わりと大変かも」

 

『い、意外とお客さん多いですね』

 

 ピルカヤを通じて奥居(おくい)の声が聞こえてくる。

 俺以上に彼女はもっと大変だよなあ。

 ピックアップアイテムを実現するためには、奥居の協力が必要不可欠だったからな。

 

「魔王ボックスもすっきりしました」

 

「同じアイテムが意外と溜まっていたんですね」

 

 そのおかげで、ピックアップアイテムとして売りにできたけどな。

 もはやフィオナ様自身も、どれだけハズレアイテムを重複させたか覚えてはいなかったようだ。

 

 そんなハズレアイテムをフィオナ様が取り出し、プリミラとダスカロスにチェックしてもらう。

 それらをピックアップアイテムとして宣伝し、奥居が適当なタイミングで透過して宝箱の中身を入れ替える。

 そうすることで、次々と不用品が処分でき、カジノの利用客も喜ぶべき結果となる。

 

「オクイがこっそりと、私の宝箱の中身を蘇生薬に変えてくれてもいいんですけどね~」

 

『も、申し訳ございません。私では、蘇生薬を手に入れることができず……』

 

「気にしなくていいぞ。いつもの無理難題だ」

 

 ……俺がこっそりと蘇生薬を引いて、フィオナ様がガシャを回すタイミングで入れ替えてもらうか?

 いや、騙すみたいで嫌だな。本人も冗談で言っているだけで、本当にイカサマして宝箱から蘇生薬を出したいわけではないだろう。

 もっとも、真面目な奥居には、冗談が通じているか微妙なところだけど。

 

「あ、この利用客常連だな。ダンジョン魔力を注いであげよう」

 

 ロペスには、運が良かったら宝箱が変化すると説明してもらっているが、裏側なんてこんなもんだ。

 依怙贔屓上等で、客は選びまくっている。

 ロペスも言っていたとおり、日頃からのご愛顧に感謝してのイベントだし、それでいいはずだよな。

 好みの武器を手に喜んでいる獣人の男性を見ながら、俺もその様子に満足した。

 

「それにしても、さすがにこっちの狙いはそう簡単には出ないよなあ」

 

「魂喰らいの腕輪は、あれでなかなか希少ですからねえ。やはり注ぐ魔力量が人並みでは、なかなか低確率なのでしょう」

 

 まあ、およそ一万を注いで引いた品だからな。

 試しに回転数を増やしても良いが、さすがに表のガシャ祭りでは引ける人はいないかもしれない。

 本命は、表が終わった後に開催予定の、地底魔界のメンバーで行う裏のガシャ祭りだな。

 

「あれ、なんか珍しい服装の集団が……」

 

「むむ……あれは、東の国の服装ですね」

 

「東の国、ですか。ここから東ってことですか?」

 

「いえいえ。サンセライオが南の国と呼ばれているのと同じで、東の国と呼ばれているのです。テイランは」

 

 テイラン……。初めて聞く国の名前だな。

 そして、そこに住む人々は、おそらく独自の文化が形成されているのだろう。

 なんせあの服装だ。なんとなく中華という単語を彷彿させるというか、神秘的な印象というか、こちらの世界では物珍しい。

 

「ちなみに、テイランにも勇者はいるぞ」

 

「え、もしかしてこの集団の中に?」

 

「いやいや、さすがにそれはないみたいだ。テンユウのやつは来ていない」

 

 リグマが口にした名前も初耳だな。テンユウ……。それが勇者の名前か。

 あの集団と同じ種族ということは、人間の勇者ってことだな。

 てっきり全員が別の種族かと思っていたが、どうやらそういうわけでもないらしい。

 

「テンユウってどんな勇者なんですか?」

 

「う~ん……。なんと言いますか。変わっている勇者ですね」

 

「変わっている」

 

「ええ。やはり積み重ねた知識や技術が独特なのでしょうね。ほら、あの服装だってそうですし」

 

 なるほど。つまり、この世界では馴染みがない技術を持っていると。

 

「戦い方や移動法や魔法、色々なものがテイラン独自ですので、わりと戦いにくかったですね」

 

「フィオナ様が苦戦するほどですか……。それは、強敵ですね」

 

「いえ、苦戦はしていませんけど。知らない技術でしたので、ついつい興味がわいてしまいまして」

 

 ……もしかして、戦闘中に楽しんでいたんだろうか。

 ちょっと想像できてしまった。鍛え上げた様々な技術で魔王を倒そうとする勇者。

 それに対して、まるで手品を楽しむかのように、次の技を見せろと催促する魔王。

 

「……魔王ですねえ」

 

「ん? 魔王ですよ?」

 

 ですよね。

 まあ、苦戦しないというのなら、少しだけ安心した。

 それにしても、アジア圏のような文化の国か……。

 そんな者たちが来るほどに、うちのカジノも有名になったってことだな。

 

『これは……すごいですね。紅蓮の双剣がこれだけの魔力で』

 

 ピルカヤに通用しなさそうな双剣を引き当てた女性は、喜ぶというよりは驚いていた。

 その服装の色合いと良く似合う赤い双剣。

 俺たちが手を加えていないので、自分で引き当てたわけだが……運が良いのか、魔力が高いのか、あるいは使い方が上手いのか。

 なんとなく、東方の神秘みたいなものを期待してしまう。

 

『気に入ったのなら、今後もごひいきにしてもらえると助かるぜ。お姉さん方』

 

『ええ、興味深いです。あなたは……どうやら、普通のハーフリングではないようなので』

 

『運と勘と伝手にだけは恵まれていてねえ。まあ、あんたたちもそんな人脈の一つになってくれるなら、色々と助かるさ』

 

 ロペスと二三言葉を交わし、女性たちは去っていった。

 そして、その次に現れたのは、どうやら相当に待ちわびていた様子の王様だ。

 

『ついに、俺が新たな相棒と出会うときだ! 祝福の準備を頼むぞ。店主!』

 

『おや? 最初に引き当てた剣とはお別れで?』

 

『馬鹿を言うな。俺の愛剣として、大層活躍しているとも。なので、今回は防具や装飾品が良い。頼むぞ。店主!』

 

『俺には祈るくらいしかできねえんだがなあ……』

 

『良い! その祈りが力となる!』

 

 相変わらず自信満々でやかましい王様だな。

 しかも、どこかで聞いたような言葉まで……。

 

「フィオナ様と似たようなこと言っていますね」

 

「ええ、やはりあなどれませんね。リズワン。わずかな時しか生きられない人間の身でありながら、私と同じ答えにもうたどり着きましたか」

 

 なんかそれらしいこと言っていますけど、あんたも宝箱ガシャを初めてからそんなに経っていないでしょうが。

 どこに感心しているんだ。まったく。

 

「ですが。私の祈りのほうが上です。なんせ、レイがついていますからね」

 

 ……急に後ろから抱き着かれるのも、いつものこと。

 そして、悪い気がしないというか、わりと嬉しいのもいつものことだ。

 まだまだ、俺はこの方に必要としてもらっているようだし、魔王軍での生活も安泰だな。

 

「ぐえぇ……。永遠に……見て、いられる」

 

 そして、口から魂が出る仲間の姿もいつものことだ。

 

 なお、リズワンの新たな出会いは残念ながら訪れなかった。

 ……そろそろ、リズワンにもアタリを引かせてやるべきなのか?

 

    ◇

 

「……宝箱に魔力を注ぐという試みは、私たちも仮説を立てていましたが、こんな形で立証できるとは」

 

「ええ。それだけ多くの宝箱を保有している、あのロペスというハーフリング。その伝手とやらは、どうやらたしかなもののようです」

 

「ですが、魔力の注ぎ方は関係ありませんでしたね。あくまでも、注いだ魔力量のみが影響しているように思えました」

 

「楽しそうね」

 

「テンユウ様。はい、非常に興味深い催し物でした」

 

「そう。あなたたちが楽しめたのなら何よりよ。アタシも行けばよかったかしら?」

 

「リズワン王がいました。テンユウ様と鉢合わせになると、またスカウトされていたかもしれません」

 

「あの王様も、相変わらずねえ。サンセライオもいい国だけど、アタシはテイランが好きだからと言っているんだけどね」

 

「でしたら、私たちが引き続き宝箱の検証に通うのはいかがでしょうか?」

 

「無理する必要はないわよ? そう近い場所でもないのだから」

 

「いえ! 宝箱の検証ができれば、今後発見した際により品質の良いアイテムを手に入れられるかもしれません!」

 

「そのとおりです! 私たちであれば、リズワン王の引き抜きも気にせずに、宝箱を楽しめます!」

 

「え、楽しめる……?」

 

「それに、リズワン王よりも運がいいと思いますので、きっと今後も良いものを引けると思います!」

 

「……あなたたち、大丈夫よね? 破滅しないでよ?」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

ヤバマーズ ~毒喰らい男爵の人生逆転劇~(作者:裃 左右)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

▼ 飢え死に寸前、貧乏男爵。毒物を食ってるうちに、新エネルギー発見!?▼ 壊れた『病み堕ちループ令嬢』のため、世界を敵に回す。ヤバい仲間と、最底辺からの人生大逆転っ!▼ 超絶シビア、実力派内政サバイバル!▼~あらすじ~▼ エルフもドワーフも真似できない。人間の武器は――救いようのない『執着』だ。▼ 我がヤバマーズ男爵家は、一言で言って「マジでヤバい」▼ 初代…


総合評価:1768/評価:8.96/連載:172話/更新日時:2026年07月31日(金) 08:13 小説情報

ソル&ヴァルキリー:かませ騎士に転生した俺、破滅回避のため落ちこぼれヒロインを育成していたらいつの間にか天才と呼ばれてしまう(作者:マテリ-AL)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

全51話・約32万字/完結済み▼毎日20:18更新▼『ソル&ヴァルキリー 』。神の代弁者・魂導者(ソル)となり、戦乙女(ヴァルキリー)を空へ育て導くヒロイン育成系学園RPG。▼これは、そんなゲームの世界で、▼「戦乙女という空を飛べて広範囲殲滅魔法を使える存在がいるのに、騎士になる意味はあるのか……?」▼と考えてしまい、魂導者となったやられ役のかませ騎士、ルシ…


総合評価:6143/評価:8.42/完結:52話/更新日時:2026年05月09日(土) 10:18 小説情報

(ガワだけ)胡乱なカードゲームおじさん(作者:十田心也)(オリジナル現代/冒険・バトル)

【バトルワールド】▼それはただのカードゲームに非ず▼それは世界中の人々を熱狂に導き、いまだ醒まさせない▼ある国では1枚のカードを手に入れるため、世界有数の富豪が一文無しになり都市が壊滅した▼またある国では、そのカードゲームが最も強い者が皆を率いるリーダーとなった▼長年争っていた両国が、1回のカードゲームの勝負で終戦に合意したこともある▼カードゲームの枠を超え…


総合評価:3641/評価:8.22/連載:25話/更新日時:2026年07月29日(水) 20:00 小説情報

家事代行先は闇堕ち寸前魔法少女の家でした~貧乏一人暮らしの俺は生活力を買われて内緒の焦れ甘同棲生活を始めることになる~(作者:水瓶シロン)(オリジナル現代/恋愛)

「ぎゅって、して……?」▼「構ってくれないと闇落ちしちゃうよ……?」▼ 高校入学を機に一人暮らしを始めた『御守望』は、青春を勉強とバイトに費やすような限界貧乏生活を送っていた。▼ 幼くして両親を失っている望が頼れる人は、田舎に住む祖父母くらいだが、なるべく負担は掛けたくない。▼ そのため、睡眠時間を犠牲にして死に物狂いで勉強することによって好成績を維持し、入…


総合評価:4830/評価:8.73/連載:89話/更新日時:2026年07月03日(金) 12:07 小説情報

エロゲ転生〜やり込んだ知識でハーレム無双〜(なお特殊性癖)(作者:星野林(旧ゆっくり霊沙))(オリジナル現代/冒険・バトル)

やり込んだエロゲに転生してしまった主人公。▼抜きゲー世界であるが、バトルもあるので、死なない、詰まない様にしながらエロく生きたいと思います。▼なお初っ端から周回用アイテムを回収する模様。▼カクヨムとマルチ投稿▼諸事情により未完▼本当に申し訳ない。▼理由は活動報告にて


総合評価:5082/評価:8.25/未完:130話/更新日時:2026年06月01日(月) 18:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>