【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「う~ん……。成功っちゃ成功なんだけどな」
「ふっふっふ……。人類たちが、次々とガシャの魅力に溺れていきましたね」
一番底のほうで溺れている魔族が、そう言いながら笑っている。
ちなみに、今回はわりと甘めな設定だったので、満足して去っていったお客さんが多いです。
溺れているのは、魔王様や王様だけという、なんとも一般人に優しいお祭りだった。
「だけど、結局魂喰らいの腕輪は、誰も引けなかったか」
予想はしていたけれど、こうなると裏のガシャ祭りに期待するしかない。
惜しいところはあったんだけどなあ。
なんか、いかにも呪われてそうな装備とかはあったし。
買い取ったものの、あれは何に使えばいいんだろう……。
「うう……すまない。私が軽率に封印を解いたばかりに」
「いや、あのときはあれが最善だったから問題ない」
というか、自分でも封印扱いなのか……。
ともあれ、リピアネムがあのまま戦っていたら、ヨハンが優勢だっただろうからな。
第二形態に移行したのは、正しい判断だと思う。
かっこいいし。かっこいいからな。
だからこそ、彼女を十全に暴れさせられなかったことだけが悔やまれる……。
リピアネムの戦場用に、各ダンジョンに一つ、天井が高い大広間を作っておくか。
「ちょっと大広間作ってきます」
「レイくん、たまにモンスター並みに本能で行動するよな」
「リグマ……。たまにじゃねえよぉ」
「もうそろそろカジノ組も戻ってくる。入れ違いになってしまうぞ」
たしかに、向こうの片付けも終わりつつあるし、撤収して戻ってきそうだな。
ダスカロスの言うとおり、ここは我慢しよう。
だけど忘れずに、後で作っておかないとな。
「……やはり、私も第二形態を」
「え、あるんですか!?」
「うう……想像以上の食いつき。ええい、ダスカロス! エピクレシ! 私に第二形態を用意なさい!」
「無理です」
ないかあ……。
前回もそうだったけれど、ダスカロス即答したもんな。
変身魔法みたいなのがあれば、あるいは……?
「カーマルとか変身得意だし、第二どころか色んな形態ありそうだよな」
「僕を巻き込まないでくれる? それに僕の変身は姿を変えてるだけだから、戦闘向きじゃないよ」
となると、変身魔法だけでは意味がないな。
「第二形態ではないが、マギレマも昔と今では戦い方が異なるな」
「ネムちゃん!?」
ああ、昔のマギレマさんってやつか。
たしか、今よりヤンチャしていたとかなんとか、だけどそんな姿想像できないな……。
犬だって、こんなにかわいいし人懐っこいし。
「ちょいちょい。なんで、魔王様第二形態談義その二が始まろうとしてんだよ」
そうだった。
まあ、本命はガシャ祭りだけど、ロペスたちが戻ってくる間のほんの雑談みたいなものだ。
「私、第二形態は犬がいいです」
「良いですよね。犬かわいいですし」
「う~! 絶対、犬にします!」
犬耳のフィオナ様……。ありだな。
ただ、一つだけ気がかりもある。
「気軽に顔舐めたら駄目ですよ?」
「マギレマの足だって、舐めてるけど受け入れてるじゃないですか!?」
いや、それはそうなんですけど。
さすがにマギレマさんの犬と、フィオナ様では違いすぎる。
「舐めませんという否定じゃないんですね……」
マギレマさんは、なんか色々と疲れたように、犬たちを俺から引き剥がした。
そんなことをしているうちに、どうやらカジノのほうは片付けも終わったらしいな。
戻ってきたロペスやクララが不思議そうにしているが、まあ些細な出来事なので気にしないでもらいたい。
「さて、全員揃いましたね」
「各施設はガナのやつに管理させて、魔王様のことを知らない従業員たちに、働かせていますからねえ」
「ガナは大丈夫なんですか? それだと、あの子がガシャを回せませんが」
「興味ないそうです」
「むむ……。それはそれで問題ですね」
健全です。
俺が言うのもなんですが、それが普通であり健全なのです。
まあ、健全なばかりでもよくないし、今日くらいはみんなで沼に沈むとするか……。
「というわけで、いつも私の応援をしている皆さん。あなたたちも、私の苦しみを味わうときです!」
どうしよう。前後の言葉のつながりがわかんない。
味方だと認識しておきながら、なお苦痛を味わわせようとするあたり、フィオナ様って魔王の才能あるんじゃないか?
そして、そんな言葉に盛り上がる魔王軍も魔王軍だ。
今日も地底魔界は平和に狂っていて何よりだな。
「では、順番に挑戦してください。ちなみに、魔力を全部注ぐと失神するので、そこまでやってはいけませんよ?」
あれはあれで便利だけど、さすがにガシャ中に失神は良くないな。
せっかくのガシャ結果を見る前に眠ってしまっては、祭りに乗り遅れてしまってかわいそうだ。
それじゃあ、この列をさばいていくとするか。
プリミラとイピレティスが、魔力回復薬を用意してくれていることだし、魔力不足で宝箱を作れなくなることもないだろう。
まずは……ロペスと仲が良かったハーフリングたちからか。
◇
「金!」
「酒!」
ハーフリングたちの中には、便利そうなアイテムを当てた者がいた。
ドワーフたちの中には、鍛冶に使えそうな道具を当てた者がいた。
だけどそんな物よりも、ただの金品やら酒のほうが喜ばれるって、正直な種族だなあ……。
「なんというか、ハーフリングがすまねえ」
「ドワーフも、酒が全てではないのですが……」
見かねたロペスとカールが、謝罪というか言い訳というか、何とも言えないフォローをする。
だが、本人たちが喜んでいることだし、別にあれはあれで良いと思うぞ。
「次はタイラーたちか」
「良いんでしょうか。俺たちみたいな新参者まで」
「良いんじゃないか? むしろ、フィオナ様は爆死仲間を作ろうとしているだけだし」
「ば、爆死!? あ、あの……宝箱って爆発、するんですか?」
あ、そうか。通じないよな。
タイラーたちが、思い切り宝箱から距離を取ってしまった。
「いや、言葉の綾というか比喩というか、本当に爆発するわけじゃないから安心してくれ」
「そ、そうですか……? では、すみませんが俺たちも挑戦させてください」
最近まで現役だった冒険者ということだけあって、わりと魔力も高めなグループだ。
これは、期待できるか……? 特にズーイー。魔法使いである彼女は、それなりの魔力を込めてくれるだろう。
「な……なんだか、プレッシャーが急に」
「ごめん。期待を込めすぎた」
「い、いえ……では、失礼します」
俺の期待のまなざしを感じ取ってしまったのか、まずはズーイーから挑戦することになってしまった。
なんかすまないな。さっきはタイラーが挑みそうだったのに。
まあ、すぐに順番は回ってくるから許してくれ。
「……変わった」
宝箱の見た目が変わる。ここまでは、ハーフリングやドワーフたちも、たまに引き起こしていた現象だ。
だが、彼女はもう何段階か変化させながら、魔力をできる限り注ぎ続ける。
そんな宝箱から取り出したものは……。
「おお……! 癒しの雫だな」
小さな小瓶を見て、タイラーがズーイーを祝福する。
知らないアイテムだな。名前からすると回復系のアイテムか?
「プリミラ。あれって何?」
「回復薬と毒消しや麻痺消しが混ざったようなアイテムですね。傷を癒しつつ、体の不調も治してくれます」
「へえ、便利だな」
「魔力と水を込めることで、何度か使うことができます」
なるほど。冒険者からしたら、けっこう良いアイテムっぽいな。
タイラーたちは喜んでいたが、しばらくすると自分たちが冒険者をやめたことを思い出したらしい。
アタリかどうか首をかしげているが、まあきっとアタリだよ。それ。
そうして、他のメンバーもガシャを回していくと、それぞれ武器や防具、それに冒険者にとって有用なアイテムを引き当てていた。
嬉しいことは嬉しいけれど、いつ使うのか困ったような顔を浮かべている。
……いっそのこと、タイラーたちに冒険者としての活動をさせてあげてもいいかもな。
ダンジョンのテストプレイヤーとして、働かせてみるか?
「……な、なんか寒気が」
「大丈夫か? ピルカヤにあたっておくか?」
「ボクはかまわないけど、たぶんそういうのじゃないよ。それ」
タイラーたちは、四天王相手にそんなことできないと、頭を下げて後方へと移動した。
ピルカヤは、案外そういうの気にしないから、暖房代わりにしても怒らないぞ?
さて、次はダークエルフたちか。
彼ら彼女らも魔力が高いからな。成果に期待しよう。
「……プ、プレッシャーが」
「レイ様。期待を込めないであげたほうがよろしいかと」
そうみたいだなあ……。
どうにも、挑戦者に期待しすぎてしまい、それを感じ取っては委縮させてしまっているようだ。
「プリミラが今良いことをいいました! 期待をしすぎると、それがばれてハズレてしまいますからね! ほどよく期待するこのバランスが大事なのです!」
元気だな。この魔王様。
しかし、そんな助言をするわりには、魔王様は有言実行ができないようだ。
ダークエルフたちは、魔王という更なる重圧に圧し潰されそうになりながら、なんとも緊張しながらガシャを回し続けるのだった。