【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「次は
「は、はい! 選択肢~。選択肢~! へ、返事してよ~!」
時任は、以前フィオナ様の宝箱の結果を調べたときのように、選択肢を駆使してより良い品物を引こうとしているらしい。
らしいのだが……。なんか、慌てているな。
「いっつもそう! 肝心な時以外は、助けてくれない!」
まあ、逆じゃないなら良いんじゃないかな。
肝心な時には助けてくれているみたいだし、時任と選択肢の仲は悪いものではないのだろう。
「後にするか?」
「いえ! こうなったら、自分の道は自分で切り拓きます!」
フィオナ様もそうだけど、どうして言う事が大げさなんだろう。
宝箱を一つ開けるだけで大騒ぎだ。
「私の全魔力と引き換えに、何か面白いもの出ろ~!」
「全部込めたら倒れるから、ちょっと残しておいてくれ」
「私のほとんどの魔力と引き換えに!」
まあ、転生者組の場合は俺がステータスを見ておいてあげよう。
ゼロになる前に止めてあげれば、気絶することもないからな。
「はい、そこまで」
「ま、まだやれます!」
「それ以上は倒れるから」
俺の言葉を信じてくれたようで、時任はしぶしぶと宝箱を開けることにした。
そんな彼女が手に入れたのは、金色のペンダントだ。
「あ、これかわいい。やった~! ふふん、選択肢に頼らずとも勝った~!」
彼女は何と戦っているんだろう。
まあ、喜んでいるのならよかったじゃないか。
「金運のペンダントですね。商売が繁盛するという噂の装飾品です」
「噂なのか」
「噂です」
効果のほどは不明と。
だけど、商売繁盛というのは、時任にも見合った効果だな。
ちゃっかりと、なかなかのアイテムを引いているようだ。
「次は
「はい。よろしくお願いします」
そう言うと、奥居は静かに宝箱に魔力を込め続け、こちらが止める前にその行為を中断した。
騒がしかった時任と違って、なんともそつなくこなすのが彼女らしいな。
そんな彼女が宝箱から、ずるずると大きなアイテムを取り出す。
「……網?」
本人も不思議そうにしているけれど、大きな網だな。投網?
「それは、漁師の魔網ですね。水に向けて投げると、周囲の魚が集まってくるものです」
「な、なるほど……」
人工海で使えなくもないか? ただ、のんびりと釣りをするとかではなく、もはや漁だよな。
魚が好きな奥居にとっては、良いアイテムだったのだろうか。
「次は
「はい! がんばります!」
がんばりでどうにかなるのだろうかと思うも、気合を入れている相手に水を差すのはよくないか。
それに、風間なら勇者として運の良さもあるし、役立つものを引きそうだしな。
こちらはこちらで、きっちりと魔力を残して注入を終えたが、普段の鍛錬の成果がこんなところにも出ているようだ。
「風間は羽飾りで、世良が剣。原が紋章みたいな装飾品か」
どれも装備品っぽいな。
プリミラの説明を聞くと、どれもそれなりに効果が高い装備品のようだ。
「ああ、そっか。つまり、これを
「そうね。私のも武巳にあげるわ」
「ありがとう。それじゃあ、僕のアイテムは二人に贈るよ」
たしかに、装備の説明を聞く限りでは、それぞれが引いたアイテムを交換したほうがよさそうだな。
互いにアイテムをプレゼントして、三人はなんかまた自分たちの空間に入ってしまった。
イチャイチャしやがって、仲が良くて何よりだな。
「で、次がロペスと」
「おう。散々ハズレを引くやつらを見てきたから、自分が挑戦するとなると少し緊張するな」
そんな様子には見えないが、どこまでが本音なんだろうか。
さすがに普段から見慣れているだけあって、ロペスは慣れた手つきで魔力を込めてから、宝箱を開いた。
そこには一冊の本が置いてあったが、なんだか魔力がこもっているような気がする。
「本? ……なんか、ただの本じゃなさそうだな」
「それは、精霊の契約書ですね。魔力が高い者が使用することで、精霊と契約して力を借りることができるものです」
「う~ん。俺の魔力じゃ使えない気がするなあ」
「精霊といっても、ボクより弱いけどね」
「そりゃあ、ピルカヤの旦那より強い精霊が出てくることはねえだろうさ」
ロペスはピルカヤと、その後ろのルトラとテクニティスを見ながら苦笑いしていた。
しかし、魔力が必要な本か……。ロペスにとっては残念ながらハズレかもしれないな。
後で、買い取ってやるか。
「次はクララか。あれ、他のダークエルフたちと一緒に並ばなかったんだな」
「私もそうしようとしたのですが、なぜかロペスと一緒に並ぶように言われまして」
「あれ、なんだったんだろうな?」
それは、きっと普段から君らが仲が良いからでは?
女王として、部下とともにガシャを回すよりは、気の合う友人と回した方が楽しめると考えてくれたのだろう。
ダークエルフの女王か……。
魔力も高い。理解もある。これは、期待してしまう……。
いや、またプレッシャーをかけるわけにはいかないし、平静を装わねば。
「それでは、失礼します」
「ああ。気負わずがんばってくれ」
さすがにクララほどの者となると、魔力を注ぐ時間が他よりも長い。
彼女の部下である他のダークエルフよりもだ。
一体どんなアイテムが出てくるのか……。
「では、いきます」
彼女がそう宣言してから宝箱を開けると、そこには耳飾りが入っていた。
……魂喰らいの腕輪ではなかったか。
「夜影の耳飾りですか」
その言葉はプリミラではなく、クララ自身が発したものだった。
どうやら、彼女が知っている装飾品を引き当てたらしいな。
「どんな効果なんだい? 女王様」
「暗闇での視界を向上させるアイテムだね。とはいえ、私は似たような魔法を使えるので、恩恵は薄いかもしれないが」
となると、残念ながらクララもあまり喜べない結果となってしまったか。
ロペスとあわせて、あとで交換するか買い取ってあげるかと考えていると、ロペスが妙案を思い付いたように口を開いた。
「なら、俺のアイテムと交換ってのはどうだい?」
「い、良いのかい? 君のアイテムのほうが、価値は上なのだが」
「だが、俺には持て余している。女王様は女王様で、そのアイテムを持て余している。互いに交換しちまえば、良いと思うんだが」
なるほど……。風間たちのときと同じだな。
互いのアイテムを交換してしまえば、ちょうど双方に利がある結果となりそうだ。
「君が良いのなら、私も助かるが……」
「ああ、そうしてしまおう。ボス、かまわないよな?」
「そうだな。風間たちもやっていたことだし、互いに納得しているのなら問題ないぞ」
となると、一度全員が引き終わるまでは、買い取りは考えないでも良さそうだな。
引いた者にとって不要なアイテムであっても、別の誰かには有益かもしれないし。
そうして、交換していくことで、うまく納得できるだろう。
「……なんか、やけに私の部下たちがうるさいようで、すまないねえ」
「盛り上がってんなあ。だが、タイミングおかしくないか? 自分たちが宝箱を開けていたとき以上って」
たしかに、なんかやけにダークエルフたちが盛り上がっている。
それほどまでに、クララが精霊の契約書を手に入れたことが喜ばしいのだろうか?
ともあれ、これで従業員たちは一通りガシャを引き終えたな。
続いては魔王軍のメンバーとなるが……フィオナ様、さっきから大丈夫か?
「フィオナ様。大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫です。ふっふっふ……。こういうとき、魔王というものは余裕をもって、どっしりと構えるものなのです」
そう。宝箱の結果を見ても一喜一憂していないのだ。
他人の宝箱でも、わりと反応を示す魔王様らしくない。
……ただその一方で、なんか、すごくそわそわしている。
魔王様。気づいていますか?
無意識なのか知りませんが、あなたさっきから俺をおもちゃにしています。
抱きしめては離し、頭をなでてはまた抱きしめて、自分の番が来るのを待ちきれないって感じですね。
しかし指摘するのも野暮なので、俺は落ち着きのない魔王様のおもちゃになりながら、宝箱を作り続けることにした。