【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第296話 落ち着きがない舞台袖の魔王

「次は時任(ときとう)たちか」

 

「は、はい! 選択肢~。選択肢~! へ、返事してよ~!」

 

 時任は、以前フィオナ様の宝箱の結果を調べたときのように、選択肢を駆使してより良い品物を引こうとしているらしい。

 らしいのだが……。なんか、慌てているな。

 

「いっつもそう! 肝心な時以外は、助けてくれない!」

 

 まあ、逆じゃないなら良いんじゃないかな。

 肝心な時には助けてくれているみたいだし、時任と選択肢の仲は悪いものではないのだろう。

 

「後にするか?」

 

「いえ! こうなったら、自分の道は自分で切り拓きます!」

 

 フィオナ様もそうだけど、どうして言う事が大げさなんだろう。

 宝箱を一つ開けるだけで大騒ぎだ。

 

「私の全魔力と引き換えに、何か面白いもの出ろ~!」

 

「全部込めたら倒れるから、ちょっと残しておいてくれ」

 

「私のほとんどの魔力と引き換えに!」

 

 まあ、転生者組の場合は俺がステータスを見ておいてあげよう。

 ゼロになる前に止めてあげれば、気絶することもないからな。

 

「はい、そこまで」

 

「ま、まだやれます!」

 

「それ以上は倒れるから」

 

 俺の言葉を信じてくれたようで、時任はしぶしぶと宝箱を開けることにした。

 そんな彼女が手に入れたのは、金色のペンダントだ。

 

「あ、これかわいい。やった~! ふふん、選択肢に頼らずとも勝った~!」

 

 彼女は何と戦っているんだろう。

 まあ、喜んでいるのならよかったじゃないか。

 

「金運のペンダントですね。商売が繁盛するという噂の装飾品です」

 

「噂なのか」

 

「噂です」

 

 効果のほどは不明と。

 だけど、商売繁盛というのは、時任にも見合った効果だな。

 ちゃっかりと、なかなかのアイテムを引いているようだ。

 

「次は奥居(おくい)か」

 

「はい。よろしくお願いします」

 

 そう言うと、奥居は静かに宝箱に魔力を込め続け、こちらが止める前にその行為を中断した。

 騒がしかった時任と違って、なんともそつなくこなすのが彼女らしいな。

 そんな彼女が宝箱から、ずるずると大きなアイテムを取り出す。

 

「……網?」

 

 本人も不思議そうにしているけれど、大きな網だな。投網?

 

「それは、漁師の魔網ですね。水に向けて投げると、周囲の魚が集まってくるものです」

 

「な、なるほど……」

 

 人工海で使えなくもないか? ただ、のんびりと釣りをするとかではなく、もはや漁だよな。

 魚が好きな奥居にとっては、良いアイテムだったのだろうか。

 

「次は風間(かざま)の番か」

 

「はい! がんばります!」

 

 がんばりでどうにかなるのだろうかと思うも、気合を入れている相手に水を差すのはよくないか。

 それに、風間なら勇者として運の良さもあるし、役立つものを引きそうだしな。

 

 世良(せら)(はら)と三人で、風間たちは宝箱に魔力を込め始めた。

 こちらはこちらで、きっちりと魔力を残して注入を終えたが、普段の鍛錬の成果がこんなところにも出ているようだ。

 

「風間は羽飾りで、世良が剣。原が紋章みたいな装飾品か」

 

 どれも装備品っぽいな。

 プリミラの説明を聞くと、どれもそれなりに効果が高い装備品のようだ。

 

「ああ、そっか。つまり、これを武巳(たけみ)くんに渡せばいいんだね」

 

「そうね。私のも武巳にあげるわ」

 

「ありがとう。それじゃあ、僕のアイテムは二人に贈るよ」

 

 たしかに、装備の説明を聞く限りでは、それぞれが引いたアイテムを交換したほうがよさそうだな。

 互いにアイテムをプレゼントして、三人はなんかまた自分たちの空間に入ってしまった。

 イチャイチャしやがって、仲が良くて何よりだな。

 

「で、次がロペスと」

 

「おう。散々ハズレを引くやつらを見てきたから、自分が挑戦するとなると少し緊張するな」

 

 そんな様子には見えないが、どこまでが本音なんだろうか。

 さすがに普段から見慣れているだけあって、ロペスは慣れた手つきで魔力を込めてから、宝箱を開いた。

 そこには一冊の本が置いてあったが、なんだか魔力がこもっているような気がする。

 

「本? ……なんか、ただの本じゃなさそうだな」

 

「それは、精霊の契約書ですね。魔力が高い者が使用することで、精霊と契約して力を借りることができるものです」

 

「う~ん。俺の魔力じゃ使えない気がするなあ」

 

「精霊といっても、ボクより弱いけどね」

 

「そりゃあ、ピルカヤの旦那より強い精霊が出てくることはねえだろうさ」

 

 ロペスはピルカヤと、その後ろのルトラとテクニティスを見ながら苦笑いしていた。

 しかし、魔力が必要な本か……。ロペスにとっては残念ながらハズレかもしれないな。

 後で、買い取ってやるか。

 

「次はクララか。あれ、他のダークエルフたちと一緒に並ばなかったんだな」

 

「私もそうしようとしたのですが、なぜかロペスと一緒に並ぶように言われまして」

 

「あれ、なんだったんだろうな?」

 

 それは、きっと普段から君らが仲が良いからでは?

 女王として、部下とともにガシャを回すよりは、気の合う友人と回した方が楽しめると考えてくれたのだろう。

 

 ダークエルフの女王か……。

 魔力も高い。理解もある。これは、期待してしまう……。

 いや、またプレッシャーをかけるわけにはいかないし、平静を装わねば。

 

「それでは、失礼します」

 

「ああ。気負わずがんばってくれ」

 

 さすがにクララほどの者となると、魔力を注ぐ時間が他よりも長い。

 彼女の部下である他のダークエルフよりもだ。

 一体どんなアイテムが出てくるのか……。

 

「では、いきます」

 

 彼女がそう宣言してから宝箱を開けると、そこには耳飾りが入っていた。

 ……魂喰らいの腕輪ではなかったか。

 

「夜影の耳飾りですか」

 

 その言葉はプリミラではなく、クララ自身が発したものだった。

 どうやら、彼女が知っている装飾品を引き当てたらしいな。

 

「どんな効果なんだい? 女王様」

 

「暗闇での視界を向上させるアイテムだね。とはいえ、私は似たような魔法を使えるので、恩恵は薄いかもしれないが」

 

 となると、残念ながらクララもあまり喜べない結果となってしまったか。

 ロペスとあわせて、あとで交換するか買い取ってあげるかと考えていると、ロペスが妙案を思い付いたように口を開いた。

 

「なら、俺のアイテムと交換ってのはどうだい?」

 

「い、良いのかい? 君のアイテムのほうが、価値は上なのだが」

 

「だが、俺には持て余している。女王様は女王様で、そのアイテムを持て余している。互いに交換しちまえば、良いと思うんだが」

 

 なるほど……。風間たちのときと同じだな。

 互いのアイテムを交換してしまえば、ちょうど双方に利がある結果となりそうだ。

 

「君が良いのなら、私も助かるが……」

 

「ああ、そうしてしまおう。ボス、かまわないよな?」

 

「そうだな。風間たちもやっていたことだし、互いに納得しているのなら問題ないぞ」

 

 となると、一度全員が引き終わるまでは、買い取りは考えないでも良さそうだな。

 引いた者にとって不要なアイテムであっても、別の誰かには有益かもしれないし。

 そうして、交換していくことで、うまく納得できるだろう。

 

「……なんか、やけに私の部下たちがうるさいようで、すまないねえ」

 

「盛り上がってんなあ。だが、タイミングおかしくないか? 自分たちが宝箱を開けていたとき以上って」

 

 たしかに、なんかやけにダークエルフたちが盛り上がっている。

 それほどまでに、クララが精霊の契約書を手に入れたことが喜ばしいのだろうか?

 

 ともあれ、これで従業員たちは一通りガシャを引き終えたな。

 続いては魔王軍のメンバーとなるが……フィオナ様、さっきから大丈夫か?

 

「フィオナ様。大丈夫ですか?」

 

「ええ、大丈夫です。ふっふっふ……。こういうとき、魔王というものは余裕をもって、どっしりと構えるものなのです」

 

 そう。宝箱の結果を見ても一喜一憂していないのだ。

 他人の宝箱でも、わりと反応を示す魔王様らしくない。

 

 ……ただその一方で、なんか、すごくそわそわしている。

 魔王様。気づいていますか?

 無意識なのか知りませんが、あなたさっきから俺をおもちゃにしています。

 抱きしめては離し、頭をなでてはまた抱きしめて、自分の番が来るのを待ちきれないって感じですね。

 

 しかし指摘するのも野暮なので、俺は落ち着きのない魔王様のおもちゃになりながら、宝箱を作り続けることにした。

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