【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「あ、あの……レイ様」
「次はプシシモたちか」
マギレマさんが、自分の部下たちを先に並ばせている。
ほんわかしているお姉さんという印象だけど、やはり部下をもつ偉い魔族なんだよなあ。
「後にしたほうがよろしいでしょうか?」
「なんで? 並んでいたんだから、順番通りで大丈夫だよ?」
「その、お邪魔ではないでしょうか。その……魔王様との睦み合いの」
「いつものことだから、気にしないでくれ……」
まあ、いつもと少し事情が違うというか、無意識にべったりしているだけみたいだが。
邪魔ってわけでもないし、もう慣れたもんだ。
「い、いつも……いえ、失礼しました。それでは、よろしくお願いいたします」
「はいはい」
宝箱を作成する。そのたびに、フィオナ様がぴくっと動いては俺を抱きしめる。
緊張してんなあ……。いっそ、一番最初に回してもらうのがよかったかもしれない。
もっとも、部下想いの魔王様のことだから、自分は最後でいいと遠慮するだろうけれど。
さて、プシシモもそろそろ魔力の注入が終わるな。
正直、このあたりからどうしても期待が高まってしまう。
魔王軍の面子は、他の者たちよりも魔力が高いことが多いからな。
そろそろ、魂喰らいの腕輪を引いてあげてくれ……。
「これは……」
「調味料?」
なんか、魔力とか一切関係ない調味料セットみたいなのが出てきたな。
「マギレマ様に献上いたします」
「ありがと~」
なんだろう。なんだか、先ほどから引いている者たちに見合ったものばかり出てくるな。
もしかして、これが物欲センサーに勝っているということなのだろうか……。
つまり、俺とフィオナ様はまだまだ邪念が多すぎるのでは?
その説を後押しするかのように、プシシモ以外の魔族たちも調理関係の道具やアイテムばかりを引いていた。
「フィオナ様」
「は、はい!」
「俺たち、まだまだ邪念が多いみたいですよ」
「え!? ど、どうしましょう……テラペイアに麻酔でもしてもらって、意識を
「テラペイアが許さないと思います」
事実、彼のほうを見ると大いに頷いていた。
というか、そこまでの覚悟でガシャを回さないでくれというか、そうしないと邪念を払えないのか。
「がんばりましょう」
「ノープラン! 私の頼もしいレイは、どこに消えたのですか!?」
「あなたの腕の中につかまっていますが?」
「あれ、いつのまに……」
ああ、やっぱり無意識だったんだな。
これでようやく、俺から離れて……くれないんですね。
意識的にだろうが、無意識だろうが、どちらにせよこの魔王様は俺をおもちゃにしたいらしい。
「あはは、いつも通り仲良しだね~」
「マギレマさん」
部下たちのガシャも終えて、料理長の順番が回ってきた。
この様子だと、マギレマさんも調理関係か。あるいは、犬に関する何かだろうか?
「仲良しです。あげませんよ? 私のです」
「わ、わかってますって。ほら、今日はちゃんとこの子たちも良い子にさせていますし」
それでいつものように顔を舐めてこなかったんだな。
……少し残念ではあるが、今はガシャが優先だし、それでよかったのかもしれない。
「レイ?」
「え、なんですか?」
「あなたは、私のですからね?」
「もちろんです」
後ろから俺を抱きしめる力が強まった。
改めて確認されるが、そう思ってもらえているのなら、俺としても望むところだ。
「ならば良いです。では、マギレマ。宝箱の恐ろしさを知るが良いです」
「恐ろしい目にはあいたくないですね~」
苦笑いしながら、マギレマさんが魔力を込める。
犬たちも、そんな様子を良い子にして待っている。
さすがに
「あ、包丁じゃん」
そんな彼女が引き当てたものは、単なる包丁だった。
う~ん……。なんとも微妙な結果に見えてしまう。
「これ、戦いでも使えるから便利なんだよね~。ありがと~。レイくん」
「あれ、ただの包丁じゃないんですか?」
「うん。なんか頑丈だし、切れ味もすごくいいよ。人間とかも斬れちゃうから」
その言葉を聞いて、
職場の上司が、そんなこと言い出すもんだから怖かったんだろうなあ。
「あはは、カザマくんたちのことじゃないから平気だよ。悪い人間相手の話~」
そう言いながら、上機嫌な様子でマギレマさんは列から外れて下がっていった。
なぜだろう。心なしか、プシシモたちまで身震いしているのは。
「次はダスカロスか。ダスカロスの魔力なら、もしかしたら魂喰らいの腕輪が……」
「君に自覚はないのだろうが、プレッシャーをかけるのはやめなさい」
「リピアネムのためにも、そこをなんとか」
「まあ、私も狙えるのであれば狙いたいが、さすがに運を操作する手段は持ち合わせていないぞ」
むしろ持ち合わせていたら、フィオナ様に教えを
そんなダスカロスが引き当てたものは、眼鏡だった。
うん。先生と呼ばれるダスカロスに、よく似合っているな。
「賢者の眼鏡か……。名称だけを考えると、私よりもハラにふさわしいアイテムだな」
「なんか装備品っぽい名前だけど、頭が良くなったり?」
「意識が冴えるので、クリアな思考が可能になる。……ソウルイーターに使うか?」
「あの子、目がないけどな」
「装備自体は可能なはずだ」
眼鏡ソウルイーターか……。
だが、あの子ちょっとアホの子だから、装備が無駄になる可能性もありそうだな。
「次は……」
「私ね。よろしく、レイさん」
「はいはい」
ラプティキさんか。それじゃあ、宝箱を作成して……。
なんで、フィオナ様が抱きしめる力が強くなるんですかねえ。
「フィオナ様?」
「はっ! す、すみません。つい、本能的に、強めに抱きしめました」
「と、とりませんよ……?」
「ええ! なんせ、レイは私のですからね!」
「はい。存じ上げております」
俺の所有権アピールがすごい。
そもそも、俺に限らず魔王軍全てはフィオナ様のものなので、安心してください。
ラプティキさんは、そんなやり取りをしながらも魔力を注ぎ終えたようだ。
宝箱を開けてあげると、彼女がアイテムを取り出し始めるが……でかっ!
「こ、これはずいぶんと大きいわね……」
「お、魔織の織機っす! ラプティキ、服作りながら魔力も込められるっすよ」
「あら、そうなの? それは、できることが増えそうで助かるわ」
となると、ゲームによくある防御力がやたらと高い服とかも作れそうだな。
それなら、鎧と違って動きを阻害されないだろうし、俺も欲しいかもしれない。
「僕が運んでおきますね~」
「ええ、ありがとうイピレティス」
「代わりに、僕にかわいいメイド服作ってくださいね~」
さすがは筋力上位のイピレティスだ。
あの大きな織機を軽々と運んでいった。
それで、次はラプティキと話していたテクニティスの番か。
「レイ様。よろしくお願いするっす!」
「ああ、期待している」
「だから、それをやめなさい」
もはや口癖のようになっている言葉に、ダスカロスがすぐに指摘してくれた。
「あ、そうだった。ごめんテクニティス」
「いえ! レイ様と魔王様とリピアネム様のご期待、自分が応えてみせるっす!」
なんか気合を入れて魔力を注ぎ始めたが……これ、フィオナ様もたまにやって失敗するやつだ。
ごめんテクニティス。俺の余計な一言が、物欲センサーまみれのガシャチャレンジをさせてしまったようだ。
「……なんか、本がいっぱい出たっす」
「でかした。テクニティス」
「よくやりました。テクニティス」
「え、ええ……? 魔導書でもない、ただの本っすよ?」
たしかに、何の変哲もない本だ。高価でもなければ、効果があるわけでもない。
だけど、だからこそその分大量に出現している。
フィオナ様のためにも、本は多ければ多いほどいいからな。
俺とフィオナ様は、わけもわからない様子のテクニティスを褒めると、彼も役立てたことにまんざらでもない顔をしていた。