【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「あ……あわわ……え、ええと……ひぃ……」
「うん、落ち着いてくれ。みんなの前に出て怖かったな」
「は、はい……」
注目を浴びてパニック状態のプネヴマを、とりあえず落ち着かせる。
そんな彼女は、俺とフィオナ様を見て変な声をあげて興奮し始めた。
「ま、間近の……推し……ああ……あわわわわ……」
どうやら、相当パニック状態みたいだな。
二人して心配して声をかけるも、彼女はさらに動揺している。
「あ~……この子のこれは、もう諦めてください。私と一緒に引きますから」
見かねたようにエピクレシが、そう言いながらプネヴマを支えた。
この二人、友人同士らしく仲が良いからな。
そういうことであれば、エピクレシに任せるとしよう。
「良いですか? プネヴマ。目を閉じて魔力だけ込めてください」
「エ、エピクレシちゃん……ありがと~……」
多少のトラブルはあったものの、なんとかこの二人もガシャを回せそうだな。
宝箱を二つ出してやると、二人はそれぞれ魔力を注いだ。
「あ、血の魔術書……」
「私のほうは、亡者の魂の瓶ですね」
これまた、互いに交換できそうなアイテムを引き当てたっぽいな。
そう思いながら見ていると、プネヴマは案の定自分のアイテムをエピクレシに渡していた。
「あげる……エピクレシちゃんの、ほうが……活用、できそう……だから」
「ありがとうございます。ただそうなると、こちらも渡すべきなのでしょうが……あなたには、必要ないでしょうからね」
「うん……私、それなくても……似たようなこと、できるし」
「ですよねえ。といいますか、あなたの下位互換のアイテムですからね。亡者の魂を保管、管理できるアイテムなので」
ああ、そういう感じのアイテムなのか。
それなら、たしかに亡者に限らず魂を管理できるプネヴマには、不要かもしれないな。
「あ、そうです。それでは、ピルカヤ様の視界を通じて集めた、魔王様とレイ様の尊いお姿を記録した魔法結晶を」
「ほ、ほしい!!」
なにそれ……。俺とフィオナ様の尊い姿ってなんだ?
そんなもの身に覚えがないんだけど、エピクレシ捏造してない?
まあ、互いに納得しているのであれば、口出ししないでおこうか。
「私の尊い姿……つまり、魔王としてがんばってる姿でしょうか?」
「なるほど……レアですね」
フィオナ様に耳打ちされて納得した。
それならば、けっこうレアなフィオナ様だ。ぶっちゃけ俺も少しだけ欲しい。
「……レイが見たいのなら、たまに魔王っぽい私で接してあげましょうか?」
「いや、俺は取り繕わないフィオナ様のほうが好きですから」
「ですよね~。レイは普段の私大好きですもんね~」
上機嫌な様子で抱き着かれる。
たしかに、無理しているフィオナ様ではなく、ありのままのかわいらしいフィオナ様のほうが一緒にいて落ち着くからな。
「エ、エピクレシちゃん……! あ、あれも……欲しい!」
「今、記録用の魔法具ないので無理です」
「目に、焼き付けないと……」
なんか、すっごい見てくる。
息も荒いし本当に大丈夫なのか? あれ。
「なあ、テラペイア。プネヴマを医務室に連れて行かなくていいのか?」
「あれは、私にも治せない持病だ。ほうっておいても問題ない」
テラペイアが匙を投げるって、プネヴマも大変な持病を抱えているんだな……。
まあ、お医者さんが問題ないというのであれば、俺が気にしてもしょうがないか。
「それじゃあ、テラペイアも魔力を込めてくれ」
「ああ。まさか、自分で開ける側になるとは思わなかったがね」
そう言いつつも、しっかりと挑戦してくれているのは、魔王様が開催した祭りを盛り上げたいという気持ちもあるのだろう。
真面目だが、ノリが悪いわけではないからな。この先生は。
「さて、こんなものだろう」
しっかりと、一割ほどの魔力を残して準備を終えたのはさすがだな。
自分のコンディションも、よく理解しているのだろう。
そんな彼の宝箱を開けると、なんともよく似合っているアイテムが出てきた。
「これは……薬だな」
「なんの薬だろう? 回復薬とか万能薬とは違うみたいだけど」
「心当たりはある。たしかに、これは私にとって有益なアイテムだ。魔王様、レイ、感謝します」
「いえいえ。良いアイテムが引けたのならよかったです。ですが、それってなんの薬なんですか?」
「睡眠薬です。それも強力な」
睡眠薬……。
寝不足の患者相手には役に立ちそうだけど、うちにそんな患者いたっけ?
「これで、働きすぎる者たちを、強制的に休ませることができます」
その言葉とともに見られた者たちは、皆一様に視線を逸らした。
ピルカヤだけが抗議しているな。たぶん、彼が最初の犠牲者になるのだろう。
「え、ええと……テラペイアに眠らされる前に、私も挑戦させてください」
「それは良いんだけど、自覚あったんだな」
ピルカヤの影響か、仕事中毒組に片足を突っ込んでいるルトラが、ごまかすように宝箱を所望した。
後ろで目を光らせているテラペイアは、見なかったことにしてあげよう。
「私が、なんとかして睡眠解除アイテムか、睡眠無効アイテムを引けば……ピルカヤ様のお役に」
「その献身は健全じゃないから、やめておこうな」
さすが精霊。俺たちの常識ではわからないことを言い出す。
まともに話が通じるテクニティスが、異端に思えるくらいだ。
そんな彼女が引き当てた物は、プリミラが使っている宝玉のような綺麗な玉だった。
「あれは、清浄の珠ですね。汚れた水を浄化する力を持っています」
水のスペシャリストなだけあって、その存在をしっていたらしく、プリミラが効果を説明してくれる。
つまり、ルトラの普段の仕事の一つを手助けしてくれるアイテムってわけか。
「これがあれば、私の仕事の負荷を軽減できるので、その分の時間でピルカヤ様のお手伝いを」
「するな」
ルトラの企てを、テラペイアが即座に阻止した。
そもそも、ピルカヤは自分の領分を他人に譲らないからなあ。
それが、かわいい後輩相手でも変わらないと思うぞ。
「仕事しすぎは良くないですよね~。僕たちみたいに、ちゃんと働くときと休むときは分ければいいのに」
これに関してはイピレティスの言うとおりだな。
隣で頷いているディキティスも、本来は部下の上に立つ身なので、そのあたりは徹底しているのだろう。
「どっちが先やる~?」
「私はどちらでもかまわないが」
「二人くらいなら、同時にもできるし、二つ作ろうか?」
現に、エピクレシとプネヴマがそうだったからな。
「じゃあ、それでお願いしま~す」
耳をぴこぴこと動かすイピレティスと、対照的に大人しくどっしりと構えているディキティス。
同じ十魔将同士だけど、わりと正反対な二人だなあ。
宝箱に魔力を注ぐときも同じだ。
イピレティスは、気合の言葉が口から漏れているが、ディキティスは、寡黙な様子で淡々と注いでいる。
「終わりました~」
先にイピレティスの準備が終わったので、宝箱を開けるとそこには短剣が入っていた。
まあ、たしかに彼女の武器は短剣だし、ちょうどいい結果になったかもしれないな。
「良さそうな武器~!」
「それは、ダンシングダガーですね。軽くて威力も高いですし、回避するごとに威力は上がっていくので、あなたによく似合っていますよ」
「やった~! 魔王様。これ装備した僕と戦いませんか?」
「私よりも、リピアネムやウルラガみたいに、戦いが好きな者と戦ったほうがいいと思いますよ?」
「なるほど~。リピアネム様~! 戦いましょう~!」
そう言いながら、イピレティスはリピアネムのところへと向かってしまった。
……大丈夫かな? 今のリピアネム、加減ができない状態だぞ。
イピレティスも弱いわけじゃないけれど、あの壁をぶち破った四天王最強相手が加減なしに襲ってくるとか、さすがに心配なんだが……。
これは、イピレティスのためにも、いよいよ魂喰らいの腕輪が必要になりそうだな。
「終わった。開けてもらってもいいか?」
「はいはい」
続いてディキティスの宝箱を開ける。
中にあったものは……勲章? 装飾品のアイテムっぽいな。
「戦場の勲章ですね。ディキティスには特に役立つはずです」
「どんな効果ですか?」
「部下のステータスが上がります。モンスターや魔族を率いるディキティスには、もってこいの装備ですね」
たしかに、それならばディキティスにぴったりだ。
それにしても、彼が指揮するモンスターって、それだけでかなり強かったよな。
それがさらに強化されるとなると、加減しないとまたアナンタが文句を言いそうだ。
「……っは! つまり、私があなたの部下になれば、魔力が一万に到達するのでは!?」
「……形式だけとはいえ、さすがに恐れ多いのですが」
「魔王命令です! ちょっと、私を部下にしてください!」
目の前で魔王によるパワハラが発生している。
ディキティスが、しぶしぶとそれを認めて、さっそくアイテムの効果を発揮するが……。
「レイ! 今の私の魔力はどうですか!」
「普段と何も変わりません」
「だ、だめですか……。ディキティス? あなた、私への忠義をちゃんと捨てていますか?」
「無茶言わないでください……」
ディキティスが困る姿って珍しいな。
さて、そんな彼のために、絶賛無理難題のパワハラ魔王様を止めてやるとしよう。