【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第299話 勧誘失敗の悪の道

「わりと、みんなが満足いく成果になっていますね」

 

「ええ、私も嬉しいです」

 

 だから、この魔王様ってみんなに好かれるんだよな。

 もちろん俺も、フィオナ様のこういうところも好きだ。

 部下の喜びを、自分のことのように喜んでくれるんだもんな。

 

「ただ、魂喰らいの腕輪は出てきませんねえ」

 

「ええ。ですが、残るは四天王たちなので、魔力量から見ても期待値は高いです」

 

「僕たち四天王扱いでいいんですか?」

 

「期待されても、重圧に負けそう……」

 

 カーマルの言葉に、アナンタが今日もまた潰れそうになっている。

 大丈夫。こいつは、負けても何度でも立ち上がれる強さを持っているから。

 だから俺は、今後も罠やモンスターを設置していく所存だ。

 

「なんか変なこと考えてねえかぁ?」

 

「いや、真面目なことを考えていた」

 

「なら、良いんだけどよぉ」

 

 首を傾げながら、アナンタが宝箱に挑戦する。

 さすがにリグマの特別な分体なだけあって、ともすれば十魔将(とうましょう)以上に期待できる。

 

「終わったぞぉ」

 

「ああ、それじゃあ中身は……」

 

 宝箱を開くと、そこにはたくさんの瓶が入っていた。

 回復薬……ではないな。毒消しや万能薬でもない。当然、蘇生薬でもない。

 なんだろう。さっきのテラペイアみたいに、また何かの薬だとは思うんだけど。

 

「胃薬だな。魔力が込められていて、効果も強力なものだ」

 

 なるほど……。テラペイアが説明してくれたが、どうやらアナンタが引いたのは大量の胃薬らしい。

 

「お前ぇ! これを引かせるほどの何かを企んでいるっていうのかよぉ!!」

 

「濡れ衣なんだけど!?」

 

 どうやらアナンタは、今後俺が何かを仕出かすと思ってしまったようだ。

 そのときのための胃薬だなんて、ちょっと深読みしすぎだろう。疲れているのかな?

 

「そもそも、アナンタなら胃薬なんてなくても、自前で回復できるんだろ?」

 

「俺の再生能力は、味方からの胃痛を回復するためのものじゃねえんだよなぁ……」

 

 まあ、不要だったらテラペイアに渡しておけば、きっと今後に役立ててくれるだろう。

 などと考えていたら、見物していた中に戻ったアナンタが絡まれている。

 

「あ、あの……アナンタ様。必要なときは、俺にもその胃薬わけていただけないでしょうか?」

 

「アナンタ様。恥ずかしながら、私にも」

 

「四天王様にお願いするのは気が引けるのですが、できれば私にも……」

 

「な、なんなんだよぉ。お前ら……。いや、いい。わかった。あいつのせいだな」

 

 だから、俺のせいじゃないだろ!?

 何かを悟ったアナンタが、タイラーやクララやプシシモたちに、困ったときは胃薬を渡すからいつでも来いと言っていた。

 気前の良さに感動したのか、なんかえらい感謝されているな。

 ……そんなに日々ストレスを感じているのか? テラペイアにそのへんを診てもらうべきか……。

 

「次は僕たちだね」

 

「俺は強化アイテムとかがいいな。頼んだぞレイ」

 

「頼まれてなんとかできるのなら、俺は毎日フィオナ様に蘇生薬を引かせていると思う」

 

「お願いします!」

 

「だから、無理なんですってば……」

 

 魔王が部下を拝まないでくれますか?

 ここにいるのが、フィオナ様のポンコツぶりを少なからず知っている面々で良かった。

 ……あ、マギレマさんの部下たちは、今回が初めてだから違った。

 まあ、いずれ慣れて貰う必要はあるし、ここらで残念なところを見せておくべきだろう。

 

 そんなことを考えているうちに、二人とも手早く魔力を込め終わったらしい。

 なので、中身を確認していくが、やはり狙いのアイテムは出てこないようだ。

 

「カーマルのほうは帳簿で、ウルラガはオーブみたいだな」

 

「万屋の帳簿かあ。まあ、仕事に役立つね」

 

「知っているアイテムだったのか」

 

「まあね。登録した商品の場所や状況がわかるし、少しだけなら転送することもできるアイテムだよ。需要もわかるから、商店では便利だろうね」

 

「なるほど……」

 

 そつなく色んな場所の店員をこなすカーマルなら、そのアイテムを大いに活用できそうだが、商店では特に役立ちそうだな。

 それに、転送機能は至急在庫が必要になったときに、とても役立ちそうだ。

 

「ウルラガのほうは?」

 

「わからん。なんだこりゃ?」

 

「そちらは、ブラスターオーブですね」

 

 ウルラガのほうは、心当たりがなかったようだが、例によってプリミラが説明してくれる。

 

「魔力を込めると光と煙が発生して、目くらましができます」

 

「つまり、逃走用?」

 

「まじかよ……。使い道ねえじゃん」

 

「奇襲に使うとか?」

 

「んなつまらない真似するか」

 

「だよなあ」

 

 真正面から戦いたいタイプだからな。ウルラガって。

 となると、必要そうな誰かに使ってもらうほうが良いだろうな。

 

 これまでは、わりと挑戦者にあったアイテムが出現していたが、そろそろ宝箱も本気を出してきたということか。

 つまり、フィオナ様の結果は……。

 

「次、四天王のみんなだな」

 

「お、おう? どうしたレイくん。そんなに急いで」

 

 急かすつもりはないけれど、ちょっと急ぎつつ進めよう。

 これだけの人数が概ねアタリを引いているんだ。

 自分だけハズレだと泣くぞ。あの魔族。

 

「もしかして、お疲れでしょうか? であれば、私たちは辞退いたしますが」

 

「いや、そういうのじゃないんだ。そういうわけでは……」

 

「そうか? まあ、それならあと少しだし、もうちょっとだけ付き合ってくれ」

 

 リグマがテラペイアのほうを見ると、テラペイアが頷いていた。

 おそらく、俺が無理をしていないか確認してくれたんだろうな。

 

「そんじゃあ、適度に魔力を注いでみますか」

 

 適度とは言うが、そこはさすが四天王だな。

 カジノの客や従業員が、願いと共に必死に込めた魔力量を軽々と超えてくる。

 

「んじゃあ、よろしく~」

 

 そして、特に欲とか煩悩がない。

 宝箱に挑む心構えも完璧だ。……いや、俺までフィオナ様みたいな考えになっていたな。

 当たるときは当たる。外れるときは外れる。

 それだけのはずだ。

 

「ええと……また、宝玉っぽい何かだな」

 

「癒しの泡玉ですね」

 

「宝玉?」

 

「泡の玉と書いて、泡玉です」

 

 プリミラが字も解説してくれたのでわかったが、宝珠やオーブだけでなく泡の玉か……。

 名称や区分がややこしいなあ。

 

「泡ってことは、お風呂関係?」

 

「はい。水やお湯に浸けることで、泡が発生して体を癒やす効果が付与されます」

 

「つまり、泡風呂……」

 

 泡風呂を堪能するリグマの姿を想像してしまった。

 うん、なんか愉快な絵面だな。

 

「泡風呂を楽しむおじさんとか、どこかに需要あるんですかねえ……」

 

「……まあ、世界は広いから、きっとどこかには」

 

 ……まあ、効能は誰にでも利があるものだし、この際見た目は諦めてもらおう。

 

「じゃあ、次はボクだね~」

 

 そう言いながら、ピルカヤはちょびっとだけ魔力を注いだ。

 あれ、もう終わり?

 

「良いのか? まだ魔力はだいぶ余っていそうだけど」

 

「ここで消費しすぎたら、見張りできないもん。ボク、アイテムより功績が欲しい」

 

「真面目だなあ。いつも助かってるし、功績はもう十分だと思うんだけど」

 

「……たまに、ボク以外の火や反する属性に浮気されるからね。ボクが一番ってこと、わかってもらわないと」

 

「精霊の考え、たまにわかんない……」

 

 話の流れを変えるわけじゃないけれど、本人が終わり宣言したわけだし、宝箱を開けてしまうか。

 

「……宝箱の中身焼き尽くした?」

 

「そんなことするわけないじゃん!」

 

 ピルカヤが心外だと主張するが、でもなあ……。

 宝箱の中には灰しかないぞ?

 

「それは灰燼の帳ですね。ピルカヤ様が燃やしたのではなく、元々そういうアイテムです」

 

「ほら~」

 

「ごめんごめん」

 

 そうやってまとわりつかれると、なんかソウルイーターを思い出してしまう。

 しかし、こんなアイテムもあるのか。たぶん、消耗品だな。

 

「使用することで、煙のように姿を消すことができるアイテムです。存在がバレそうになったときには、役立つかと」

 

「問題は、どの分体に持たせるかだけど、入り口を見張っている分体が妥当かな?」

 

「そうだねえ。これで、鑑定持ちにバレそうになっても隠れながら見張れるよ」

 

 たしかに、それはけっこう助かるな。

 今までは、バレる前に分体を消さざるを得なかったから、継続して監視できるだけでもありがたい。

 

「まあ、ボク優秀だから。索敵範囲外からも監視できそうだけどね~」

 

 それもそうだな。強化後のピルカヤは、索敵範囲外から見張れるほどの力を有している。

 案外、これに頼らずとも何とかなるかもしれない。

 

「じゃあ、そろそろプリミラも」

 

「はい。それでは、よろしくお願いいたします」

 

 プリミラは宝箱ガシャを引く順番となったため、小さくお辞儀をした。

 普段から、フィオナ様の宝箱ガシャに苦言を呈しているプリミラだが、彼女自身が引いた場合、どんな結果になるのか……わりと興味がある。

 

「こうでしょうか」

 

 魔力を注いでいく姿からは、若干の緊張がうかがえる。

 やはり、見た目相応の少女なんだよなあ。

 普段は有能で大人びているけれど、こういう遊びのときは本来の年齢にふさわしい姿を見せてくれるようだ。

 

「できました」

 

「うん。それじゃあ、開けるぞ」

 

 年相応というか、見た目相応にはしゃいでいるのを見ると、なんかほんわかする。だけど、こう見えて四天王だ。

 若干微笑ましいなどと思ってはいけない。

 

「……なんかの種?」

 

「大地の恵みの種です!」

 

 喜んでいるなあ。きっと、彼女にとってアタリを引けたのだろう。

 名前からすると、畑仕事関連に有益なアイテムっぽいな。

 

「作物を一晩で急成長させるアイテムです。消耗品なので、使いどころを考えないといけませんね……」

 

 そう言いながら、プリミラはすでに頭の中で、様々な作物のことを考えているようだ。

 そんなプリミラの様子を見守りながら、フィオナ様が近づいて口を開いた。

 

「プリミラ。それが宝箱ガシャのすばらしさですよ」

 

 ……この魔王様、慈愛に満ちた表情でプリミラを沼に誘おうとしているな。

 

「はい。ですが、中毒は良くないと思います」

 

「だ、誰が中毒ですか!?」

 

 あ、違うんだ。違うんですね。

 いや、違ってないよな?

 

「レイ」

 

「はい?」

 

「前も言いました。あなたが私の味方をしなかったら、いよいよ私の味方がいなくなります」

 

「あの頃より、味方だいぶ増えてますけど」

 

「でも、レイに味方してほしいんです~!」

 

 駄々っ子か。

 みんな見てくれ。これが恐怖の象徴である魔王の真の姿だぞ。

 

「甘やかしなさい」

 

「はぁい……」

 

 強制される甘やかしって、甘やかしていることになるんだろうか。

 ざわつくマギレマさんの部下や、魂が口から出ているプネヴマをよそに、俺はそんな考えと共にフィオナ様の頭をなで続けた。

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