【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「さて、私の番だな」
リピアネムが、堂々とした立ち振る舞いで現れた。
残りはフィオナ様とリピアネムと俺だけ。今回はもう魂喰らいの腕輪を引けないのでは?
そんな思いも、いよいよ高まってくるというものだ。
「もとより、自分の不始末は自分で対処するつもりだ! レイ殿、宝箱を頼む!」
「まあ、力みすぎずにな」
ほんと頼むよ。今のリピアネムが力んだら、宝箱すら破壊しそうなんだから。
変身後の全力で、移動するたびに天井や壁を削っていたからな。
イドの全力のパンチや、フィオナ様がちょっと疲れると言っていたことを、ただの移動で行っていたのだから、その破壊力のすさまじさがうかがい知れる。
「私の全ての魔力をここに注ごう!」
「気絶するからやめなさい」
ダスカロスの忠告がちゃんと届いていたのか、リピアネムは意識を失うこともなく、宝箱への魔力注入が完了した。
そんな彼女の気合や祈りは宝箱へ通じるのか……。まあ、無理だよなあ。
開けた瞬間にわかった。魂喰らいの腕輪ではない。普段彼女が使っている細身のそれとは違った重厚な剣が、そこには鎮座していた。
「だめか。よし、もう一度!」
「魔力が回復していないから、せめて後にしようか」
「むむ……出るまで挑戦すれば、必ず手に入ると思ったのだが、そう簡単でもないのか」
だから自信満々だったのか……。
そりゃあ、出るまで引けるのなら、いつかは当たるだろうさ。
だが、そう簡単ではないのは、フィオナ様を見ていればわかるだろう。
「リピアネム様。魂喰らいの腕輪ではありませんが、一応こちらも力の制御は可能です」
そんなリピアネムに、プリミラが気になることを言った。
問題ない?
「このアイテムって、もしかしてリピアネムの力を制御できるの?」
「はい。魔鋼の訓練剣と言って、持ち主の力を奪いながら自重を増す大剣です。戦闘用ではなく、主に訓練のために使用されます」
「じゃあ、これを使えば一応力の制御はできるわけか……」
「なんと!? では、目的はすでに果たせたというわけだ!」
まあ、そうなんだけど。一つ問題があるとすれば……。
「常にこの大剣を持ち歩いて行動することになるのか……」
「そこは……たしかに、不便ですね」
プリミラも、それを気にしているからこそ、一応と言っていたんだろうな。
だが、当のリピアネムは気にした様子はなく、尻尾をふって喜んでいる。
「力の制御ができるのであれば、問題あるまい」
「う~ん……どうせなら、日常生活に支障をきたさないものを、あげたいところだけどなあ」
まあ、所詮は一度目の開催だし、これから何度かガシャを回し続ければいつかは出てくれることだろう。
リピアネムにはすまないが、しばらくは大剣を持って生活してもらうか……。
「じゃあ、俺も適当に一回だけ回しますね」
「ええ、十回でもいいですよ?」
「一回だけ回しますね」
「百回でもいいですよ?」
なんで増えるんだよ。ガシャ限定で欲望の限りを尽くすのやめてくれませんか?
そもそも、さすがに百回を回せるほどのダンジョン魔力は溜まっていない。
「では、一回だけ」
「強情ですねえ」
あなたもです。
さてと、魔力はどうするか。いつも通り一万でもいいのだけど、今回は魂喰らいの腕輪のほうが目当てなんだよな。
エピクレシの推測どおり、一万から壁を超えて蘇生薬の確率が上がるのだとしたら、むしろ今回は一万に届かないようにしたほうが良いんじゃないか?
「よし、今回は一万はやめよう」
「なるほど……つまり、私と同じ条件で戦うつもりですか。受けて立ちましょう!」
なんか勘違いした魔王様が昂っておられる。
そもそも、あなたと戦ったら色々と俺の負けです。
さて、魔力は注ぎ終わったし、馬鹿なことを考えていないで宝箱を開けるか。
「お? ……ああ、違うなあ。こんな見た目じゃなかったし」
一瞬ではあるが、思わず喜びそうになってしまった。
それもそうだろう。宝箱からは腕輪が出てきたのだから。
だが、残念ながら魂喰らいの腕輪ではない。見た目があれとは別物だし、きっと別の装備品なんだろう。
「無垢の腕輪ですね。レイにしては珍しく、普通の成果ですね」
「俺を何だと思っているんですか」
「私のものだと思っています」
「それは合っていますけど」
というか、この魔王様いよいよ緊張しているな。
俺に抱き着きながらも、若干ぷるぷると震えているぞ。
ガシャ祭りなんて開催したものの、それがプレッシャーになるのはどうなんだろう?
「……レイ様」
「どうした? カール」
珍しいな。カールがこんなふうに、みんながいる場所で俺に何かを言ってくるなんて。
それだけ、重要な話な気がするし、フィオナ様に抱き着かれたままだけど、真剣に聞かないと。
「無垢の腕輪は、他の装備と融合させることで真価を発揮する装備です」
「ってことは、魔鋼の訓練剣と融合させれば、魂喰らいの腕輪みたいになるってこと?」
「理屈ではそうなります。技術さえあればですが」
「それじゃあ、カールに任せるとかは……」
「魔力の操作も必要なので、申し訳ありませんが私だけとなると成功する確率は低くなりそうです」
なるほど……。プリミラの装備を改造するときと同じだな。
……ってことは、そのときと同じ方法で解決できると。
「テクニティス。カールと協力して、無垢の腕輪と魔鋼の訓練剣から魂喰らいの腕輪を作れるか?」
「やってみるっす! カール! 自分たちで、リピアネム様を封印するっすよ!」
「は、はい。封印……と言っていいのでしょうか」
「頼んだぞ。カール。テクニティス。どうか私を封印してくれ!」
リピアネムの扱いよ……。本人すらそんな発言をしているのだから、まあ俺やカールが気にすることじゃないな。
こうなると、カール自身が宝箱から引いていた鍛冶用のハンマーが、さっそく役立ちそうだ。
「フィオナ様。これでフィオナ様以外は、ガシャ祭りが終わりました」
「え、ええ! わ、わかっていますよ?」
うむ、大いに緊張されている。
そうだよなあ。ここまでのみんなが、大なり小なり自分か親しい者が役立つものを引いている。
つまり、全員がガシャに勝利しているといえる状況だ。
そんな状態で、フィオナ様だけ爆死するようなことがあれば、さすがにかわいそうにもほどがある。
……いいよな?
いつもなら、しょうがないと思うけれど、今回ばかりは話が別だよな?
「い、いきますよ!」
……ここにきて、もうずいぶん経つ。
俺はいつもフィオナ様の味方でいたつもりだけど、今回初めてこの魔族を騙すことになるわけだ。
「……蘇生薬蘇生薬蘇生薬」
ぶつぶつと、まるで呪詛のように蘇生薬という言葉を繰り返しながら、フィオナ様が魔力を込める。
……そんなんだから、外れるんじゃないでしょうか。
まあいい。こっちも準備しよう。タイミングが重要だが、幸い表のほうのガシャ祭りで、それにも慣れた。
「今です! さあ、レイ! 開けてください!」
今だな。それじゃあ、ダンジョン魔力を一万注ぎ直して……。
うん? なんか違和感が……ああ、そういうことか。
存外、いや当然というべきか、フィオナ様はみんなにずいぶんと慕われているらしい。
「そ、蘇生薬です! やはりガシャ祭り……。祭りというハレの日の力が、参加者に勝利をもたらすということですね!」
「おめでとうございます」
俺の言葉に続いて、参加者は口々にフィオナ様を祝福している。
うん。やっぱり、フィオナ様はみんなに慕われているよな。
「
「は、はい……」
宝箱の下にいる奥居に向けてそう言うと、彼女はこっそりとみんなのもとへと戻り、カーマルに蘇生薬を手渡していた。
ハズレを引いたときのために、いつでも交換できるように待っていてくれたんだろうなあ。