【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~ 作:パンダプリン
「これで、ガシャ祭り終了です! どうします? 明日も開催します? いっそ、毎日開催しても……」
「それだと、特別感が薄れて、ガシャ結果が散々なものになりそうですね」
「む……それはよくありません。では、不定期開催としておきましょう。では、各自解散してください」
どうやら納得してくれたらしく、フィオナ様は満足そうに解散を宣言した。
本人も今回の結果には、大いに喜んでいるらしく、テクニティスから譲ってもらったたくさんの本を持って、自室へと戻っていったようだ。
「カーマルも
「まあ、僕たちの企みなんて不要だったみたいだけどね」
「す、すみません。勝手に貴重な蘇生薬を持ちだして」
持ち出した蘇生薬というのは、きっとフィオナ様が保険として残していたやつだな。
あの短時間でそれを持ちだしたと考えると、カーマルはさっそく万屋の帳簿を使用して、手元に蘇生薬を転送したらしい。
身内だから、そういう使い方もできるのか、悪用する者の手に渡らなくてよかった……。
いや、そもそもその場合は、転送もできないか?
「これ、侵入者が持っていたら、ダンジョン中のアイテムが根こそぎ転送されたりする?」
「いや、あくまでも所属する組織のアイテムの整理整頓だよ。僕の場合、各商店どころか、例の魔王ボックスの整理整頓も任せられているからね。だから、蘇生薬も転送できたってこと」
「よかった……。さすがに、周辺のアイテムを何でも転送できるわけじゃないよな」
「だから、こうしてしまえば、魔王様は蘇生薬が移動していたこともわからないってわけ」
カーマルが手に持っていた蘇生薬は、一瞬で消えてしまった。
きっと、転送機能で元の場所に戻したのだろう。
「ということで、これは僕の独断だから、オクイが謝ることじゃないよ。お叱りは僕によろしく」
そう言って奥居をかばうカーマルだが、別に責めるつもりはない。
というか、俺だって同じようなことをしていたからな。
「宝箱を透過して、フィオナ様のガシャ結果がハズレだったら、入れ替えようとしたんだよな」
「は、はい……すみません」
「俺も勝手に後から魔力を一万注いで、ガシャの結果を変えたから、二人を叱る権利はないよ」
「ああ、やはり君の魔力を後から注入していたか」
ダスカロスやテクニティスみたいに、魔力操作に長けた者にはバレたみたいだな。
……そうなると、フィオナ様にバレていないか心配になってくる。
「ほええ、みんなそんな準備をしていたんですね。私は、選択肢に確認してもらって、駄目そうなら中断するくらいしかできませんでした」
そういえば、
幸い、中身が蘇生薬だったから止めることはなかったが、結果がまずそうなら止めてくれていたのか。
「トキトウは相変わらず度胸あんなあ……。祭りの邪魔をしたら、さすがのビッグボスも怒るんじゃないか?」
「そ、そのときは、選択肢が警告してくれるから! たぶん……」
「すごいなあ。みんな、僕なんて祈ることしかできなかったよ」
いや、
勇者補正というか、幸運の値が高いみたいだからな。
「みんな良い結果なのに、魔王様だけがハズレだったらかわいそうだからねえ」
俺だけでなく、あの場にいた者たちは共通してそのように考えていたようだ。
何かできる者たちは行動を起こし、それ以外の者たちは祈ってくれていた。フィオナ様が、一部の従業員たちからは人望を獲得できていたようで、俺も嬉しくなる。
ただ、一つだけ後悔があるとすれば……。
「フィオナ様を騙してしまった……」
「ボスって、ビッグボスに対して潔癖というか、忠義への妥協を許さねえよなあ」
当たり前じゃないか。フィオナ様が相手だぞ。
喜んでもらえたとはいえ、嘘は嘘だ。
あれで本当に良かったんだろうか……。
「まあ、今回は初のお祭りだったし、良いんじゃねえの?」
「ええ、あまり甘やかしすぎると良くないので、次からは自力でハズレを引いてもらうべきかと」
プリミラがとんでもないこと言い出した。
いや、まあ……そうか。
さすがに、フィオナ様の魔力が回復するたびに、俺もガシャを回していたら、ダンジョン魔力が枯渇しそうだしな。
リグマが言う通り、初回限りということにしておこう。
「難しいこと考えちゃうのは、お腹が空いてるからだよ。ということで、あたしの新装備で料理作ったげるね~」
マギレマさんが、機嫌良さそうに包丁片手に調理場へと向かった。
あの包丁……武器にもなるんだよな?
誰かを切った後にも料理に使うんだろうか?
そもそも、料理に使った包丁で攻撃されるって、侵入者たちも複雑な気分になりそうだな。
「まあ、洗えばいいか……」
マギレマさん料理に妥協しないからな。
そのあたりの衛生管理は、誰よりもしっかりとしているはずだ。
俺は余計なことを考えずに、そのあたりの問題は彼女に任せるべきだろう。
ほどなくして、マギレマさんが部下のみんなと共に料理を運んできた。
後夜祭ってわけじゃないけど、ちょっとした歓談の場みたいになっているな。
……それじゃあ、俺も居るべき場所に行くとしよう。
「マギレマさん。料理をいくつか持っていっていい?」
「ん? ああ、オッケー。魔王様のことよろしくね~」
フィオナ様は、今ごろ自室で読書を楽しんでいるはずだ。
なら、俺はそちらにお邪魔させてもらうとしよう。
◇
「失礼します」
「おや? みんなと話さなくて良いのですか?」
「はい。俺はフィオナ様と……あれ、もしかして、解散せずに楽しんでるって知っていました?」
「ええ。ですが、あの場に魔王がいては、気が休まらないでしょうからね。こうして席を外すことにしました」
なるほど……。上司抜きで、部下だけで楽しんでもらおうという気遣いだったのか。
それとも、まだ完全には自分が慕われていると自信を持てないか……。
「フィオナ様は、みんなに好かれているから、あそこに残っても良かったと思いますけどね」
「またまた~。人類が、よりにもよって魔王を好きになるわけないじゃないですか」
……なんか、少しだけフィオナ様の考えを知ってしまったような気がする。
「ですが、
「いい子たちですからねえ。あの子たちは、魔王の下で働かせるのは、かわいそうなくらいです」
つまり、フィオナ様は自分のことをかなり過小評価されているようだ。
難しいな。俺がいくら言っても、きっと自分から自覚してくれないと信じきれないだろうし。
「まあ、少なくとも俺は、フィオナ様の下で働きますけどね」
「レイは、魔族ですし、私のですからね。誰にもあげません」
読んでいた本を閉じると、フィオナ様は俺を誰にも取られないように、力強く抱きしめた。
普段から、かなりスキンシップが過剰だと思っていたけれど、こういうことなんだろうな。
この魔族は、自分への自信がなく、それでいて他者のために行動してしまうのだ。
一人でごろごろしているのが好きなのではなく、そうせざるを得なかったんじゃないか……?
「さて、それじゃあダラダラしながら一緒に本を読むとしましょう。今なら、みんなも楽しんでいますし、思う存分にだらけられますよ」
……いや、案外本気で一人でだらけるのが好きなのかもしれないけどさあ。
わからん。さすがは魔王だ。
俺ごときに、その本心を読み取ることなどできないのかもしれない……。
◇
「レイさんたち、戻ってこないな。まさか、何かあった? ちょっと様子を見に……」
「やめとけタケミ。二人の邪魔しちゃいけないぜ」
「邪魔……?」
「
「毎晩三人で仲良くしてるくせにね」
「ま、待ってくれ! 別にそういうわけじゃ……」
「新と友香から聞いたわよ? 二人が嘘を言ってるってこと?」
「新!? 友香!?」
「いや~。隠すことでもないからね~」
「というか、隠すまでもなくバレてそうだったもの」
「……まあ、こういうときは、下手に言い訳せずに嵐が過ぎるのを待つべきだぜ。兄弟」
「ど、どうしてこんな話に……」
「鈍いお前さんが悪い」
「師匠まで!?」