【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~   作:パンダプリン

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第301話 祭りの終わりに

「これで、ガシャ祭り終了です! どうします? 明日も開催します? いっそ、毎日開催しても……」

 

「それだと、特別感が薄れて、ガシャ結果が散々なものになりそうですね」

 

「む……それはよくありません。では、不定期開催としておきましょう。では、各自解散してください」

 

 どうやら納得してくれたらしく、フィオナ様は満足そうに解散を宣言した。

 本人も今回の結果には、大いに喜んでいるらしく、テクニティスから譲ってもらったたくさんの本を持って、自室へと戻っていったようだ。

 

「カーマルも奥居(おくい)も悪かったな。手間かけて」

 

「まあ、僕たちの企みなんて不要だったみたいだけどね」

 

「す、すみません。勝手に貴重な蘇生薬を持ちだして」

 

 持ち出した蘇生薬というのは、きっとフィオナ様が保険として残していたやつだな。

 あの短時間でそれを持ちだしたと考えると、カーマルはさっそく万屋の帳簿を使用して、手元に蘇生薬を転送したらしい。

 身内だから、そういう使い方もできるのか、悪用する者の手に渡らなくてよかった……。

 いや、そもそもその場合は、転送もできないか?

 

「これ、侵入者が持っていたら、ダンジョン中のアイテムが根こそぎ転送されたりする?」

 

「いや、あくまでも所属する組織のアイテムの整理整頓だよ。僕の場合、各商店どころか、例の魔王ボックスの整理整頓も任せられているからね。だから、蘇生薬も転送できたってこと」

 

「よかった……。さすがに、周辺のアイテムを何でも転送できるわけじゃないよな」

 

「だから、こうしてしまえば、魔王様は蘇生薬が移動していたこともわからないってわけ」

 

 カーマルが手に持っていた蘇生薬は、一瞬で消えてしまった。

 きっと、転送機能で元の場所に戻したのだろう。

 

「ということで、これは僕の独断だから、オクイが謝ることじゃないよ。お叱りは僕によろしく」

 

 そう言って奥居をかばうカーマルだが、別に責めるつもりはない。

 というか、俺だって同じようなことをしていたからな。

 

「宝箱を透過して、フィオナ様のガシャ結果がハズレだったら、入れ替えようとしたんだよな」

 

「は、はい……すみません」

 

「俺も勝手に後から魔力を一万注いで、ガシャの結果を変えたから、二人を叱る権利はないよ」

 

「ああ、やはり君の魔力を後から注入していたか」

 

 ダスカロスやテクニティスみたいに、魔力操作に長けた者にはバレたみたいだな。

 ……そうなると、フィオナ様にバレていないか心配になってくる。

 

「ほええ、みんなそんな準備をしていたんですね。私は、選択肢に確認してもらって、駄目そうなら中断するくらいしかできませんでした」

 

 そういえば、時任(ときとう)も時任で、こちらを見守りながらずっとぶつぶつと呟いていたからな。

 幸い、中身が蘇生薬だったから止めることはなかったが、結果がまずそうなら止めてくれていたのか。

 

「トキトウは相変わらず度胸あんなあ……。祭りの邪魔をしたら、さすがのビッグボスも怒るんじゃないか?」

 

「そ、そのときは、選択肢が警告してくれるから! たぶん……」

 

「すごいなあ。みんな、僕なんて祈ることしかできなかったよ」

 

 いや、風間(かざま)の祈りはなんか効果高そうだから、これからも祈ってあげてほしい。

 勇者補正というか、幸運の値が高いみたいだからな。

 

「みんな良い結果なのに、魔王様だけがハズレだったらかわいそうだからねえ」

 

 俺だけでなく、あの場にいた者たちは共通してそのように考えていたようだ。

 何かできる者たちは行動を起こし、それ以外の者たちは祈ってくれていた。フィオナ様が、一部の従業員たちからは人望を獲得できていたようで、俺も嬉しくなる。

 

 ただ、一つだけ後悔があるとすれば……。

 

「フィオナ様を騙してしまった……」

 

「ボスって、ビッグボスに対して潔癖というか、忠義への妥協を許さねえよなあ」

 

 当たり前じゃないか。フィオナ様が相手だぞ。

 喜んでもらえたとはいえ、嘘は嘘だ。

 あれで本当に良かったんだろうか……。

 

「まあ、今回は初のお祭りだったし、良いんじゃねえの?」

 

「ええ、あまり甘やかしすぎると良くないので、次からは自力でハズレを引いてもらうべきかと」

 

 プリミラがとんでもないこと言い出した。

 いや、まあ……そうか。

 さすがに、フィオナ様の魔力が回復するたびに、俺もガシャを回していたら、ダンジョン魔力が枯渇しそうだしな。

 リグマが言う通り、初回限りということにしておこう。

 

「難しいこと考えちゃうのは、お腹が空いてるからだよ。ということで、あたしの新装備で料理作ったげるね~」

 

 マギレマさんが、機嫌良さそうに包丁片手に調理場へと向かった。

 あの包丁……武器にもなるんだよな?

 誰かを切った後にも料理に使うんだろうか?

 そもそも、料理に使った包丁で攻撃されるって、侵入者たちも複雑な気分になりそうだな。

 

「まあ、洗えばいいか……」

 

 マギレマさん料理に妥協しないからな。

 そのあたりの衛生管理は、誰よりもしっかりとしているはずだ。

 俺は余計なことを考えずに、そのあたりの問題は彼女に任せるべきだろう。

 

 ほどなくして、マギレマさんが部下のみんなと共に料理を運んできた。

 後夜祭ってわけじゃないけど、ちょっとした歓談の場みたいになっているな。

 ……それじゃあ、俺も居るべき場所に行くとしよう。

 

「マギレマさん。料理をいくつか持っていっていい?」

 

「ん? ああ、オッケー。魔王様のことよろしくね~」

 

 フィオナ様は、今ごろ自室で読書を楽しんでいるはずだ。

 なら、俺はそちらにお邪魔させてもらうとしよう。

 

    ◇

 

「失礼します」

 

「おや? みんなと話さなくて良いのですか?」

 

「はい。俺はフィオナ様と……あれ、もしかして、解散せずに楽しんでるって知っていました?」

 

「ええ。ですが、あの場に魔王がいては、気が休まらないでしょうからね。こうして席を外すことにしました」

 

 なるほど……。上司抜きで、部下だけで楽しんでもらおうという気遣いだったのか。

 それとも、まだ完全には自分が慕われていると自信を持てないか……。

 

「フィオナ様は、みんなに好かれているから、あそこに残っても良かったと思いますけどね」

 

「またまた~。人類が、よりにもよって魔王を好きになるわけないじゃないですか」

 

 ……なんか、少しだけフィオナ様の考えを知ってしまったような気がする。

 

「ですが、時任(ときとう)みたいな転生者たちも、カールみたいなこちらの人類も、フィオナ様のために頑張ってくれていますよ?」

 

「いい子たちですからねえ。あの子たちは、魔王の下で働かせるのは、かわいそうなくらいです」

 

 つまり、フィオナ様は自分のことをかなり過小評価されているようだ。

 難しいな。俺がいくら言っても、きっと自分から自覚してくれないと信じきれないだろうし。

 

「まあ、少なくとも俺は、フィオナ様の下で働きますけどね」

 

「レイは、魔族ですし、私のですからね。誰にもあげません」

 

 読んでいた本を閉じると、フィオナ様は俺を誰にも取られないように、力強く抱きしめた。

 普段から、かなりスキンシップが過剰だと思っていたけれど、こういうことなんだろうな。

 この魔族は、自分への自信がなく、それでいて他者のために行動してしまうのだ。

 一人でごろごろしているのが好きなのではなく、そうせざるを得なかったんじゃないか……?

 

「さて、それじゃあダラダラしながら一緒に本を読むとしましょう。今なら、みんなも楽しんでいますし、思う存分にだらけられますよ」

 

 ……いや、案外本気で一人でだらけるのが好きなのかもしれないけどさあ。

 わからん。さすがは魔王だ。

 俺ごときに、その本心を読み取ることなどできないのかもしれない……。

 

    ◇

 

「レイさんたち、戻ってこないな。まさか、何かあった? ちょっと様子を見に……」

 

「やめとけタケミ。二人の邪魔しちゃいけないぜ」

 

「邪魔……?」

 

風間(かざま)くんって、(あらた)ちゃんと友香(ともか)ちゃんとあんなに仲良いのに、案外鈍いんだねえ」

 

「毎晩三人で仲良くしてるくせにね」

 

「ま、待ってくれ! 別にそういうわけじゃ……」

 

「新と友香から聞いたわよ? 二人が嘘を言ってるってこと?」

 

「新!? 友香!?」

 

「いや~。隠すことでもないからね~」

 

「というか、隠すまでもなくバレてそうだったもの」

 

「……まあ、こういうときは、下手に言い訳せずに嵐が過ぎるのを待つべきだぜ。兄弟」

 

「ど、どうしてこんな話に……」

 

「鈍いお前さんが悪い」

 

「師匠まで!?」

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